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2012年7月23日(月)

Xbox 360『ルートダブル』超絶ネタバレ全開ロングインタビュー前編――絶対にクリアしてから読んでください!!

文:ごえモン

インタビューには、『ルートダブル』に関する致命的なネタバレが数多く含まれています。絶対にグランドエンドを見てから読んでください。

■鹿鳴市の名前は“鹿鳴館”から

――ものすごく情報量の多いパッケージですね。ちなみに発売前の段階では、どこまで考察されていると想定されていましたか?

 プレイする前では、ほぼわからないだろうと考えていました。色や構図、悠里のスタイル辺りは想像できるだろうと思っていましたが、悠里が透けている部分や、なぜ対比関係になっていて、どのような意味合いでこんな処理がされているのかはわからないだろうなと。でも、クリアしてから見れば「なるほどな」となると思います。それはタイトルもそうですよね。いろいろと情報は拾えるけど、本当の意味はクリアしないと絶対にわからないレベルにしています。

――“クリアして初めてわかる情報”と言えば、公式サイトに書かれている7不思議がほとんど正解でビックリしました。

 7不思議については、ネタバレの恐れもあるので公式サイトへの掲載は大変悩みました。でも、ズバリ載せてしまえばそこまで深読みしないだろうと予測して、雰囲気作りのために、あえて掲載しました。

■鹿鳴市の7不思議

その1――ラボはただの原子力研究所じゃない。兵器の製造など、もっと国家的で危険な研究を行っている。

その2――旧鹿鳴市立病院の焼け跡には、火災で死んだ人の幽霊が出る。

その3――街中の監視カメラは防犯のためじゃなくて、一般市民を監視するために作られた。

その4――BCを悪用する悪のコミュニケーターと戦う、正義の組織が存在する。
通称BC警察。彼らの正体は謎に包まれているが、その本部は鹿鳴市にある。

その5――正しいやり方を知らずにBCを使っていると、そのコミュニケーターはやがて、心が壊れた怪物になってしまう。

その6――怪物化した人は、鹿鳴市保安課の隠蔽部隊によって捕まえられて、市役所の地下に幽閉される。

その7――???
夏彦も忘れてしまっている最後の噂。
いずれ作中で語られるかもしれないが、今はまだ忘却の彼方にある。

――プレイしていない人が気にするとすれば、明かされていない7番目くらいですよね。

 7番目はシナリオの中でもBルートのラストまで伏せられていますが、他はほぼズバリの真相が書いてありますよね。若干曲解しているところはあれど、まるっきり嘘は1個もないという。

 元々、学園ものを盛り上げるために、僕が「7不思議を入れたいですね」と提案したところから始まりました。あれは政府が意図的に市民をコントロールするための情報でもあるので、最初に出来上がった7不思議は嘘も結構含まれていました。それをBルートを仕上げる過程で、担当ライターさんがより良く調整してくださいまして。解釈次第では真実である、というものに差し替わり、それがBルートの終盤やCルートで次第に真実とリンクしていきます。

――7不思議の他に、公式サイトで本編のヒントが掲載されている部分はありますか?

 以前、Twitterで“キャラクター紹介ページに秘密がある”とツイートしました。実は悠里だけ“ラボに閉じ込められる”という部分の表記が違います。他のキャラは、“閉じ込められる”と未然形で書いてあるのですが、悠里だけ“閉じ込められている”と現在進行形になっているんです。彼女は最初からラボにいた、では夏彦の目の前にいる悠里は? と。

 他にもズバリという表現ではないですが、悠里のプロフィールにはヒントが多いですね。“病院での検査が好き”とか、あとは“無職”ですね。“無職”は、別に奇をてらった設定なのではなく、彼女はどこにも属していないという意味です。仕事をしていないという意味でもあり、そもそも現実社会におらず、抹消された存在なんだと。

 このように、どうでもいい情報に見えて、すべてわかったうえで見ると実は意味がある、という部分がちょこちょこあります。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

――クリア後に見るとおもしろい部分ですが、私は風見のプロフィールの“趣味:クラシック音楽収集”が好きです。

 あれは、元々は渡瀬と風見が恋人だったことのヒントとして、共通したキーワードを入れておくとおもしろいなと思って入れた設定です。月島チームがシナリオを書いていく過程で、風見はクラシック音楽に全然興味がないけど、渡瀬と付き合いたいがために話を合わせた、というエピソードを作ってくださったんです。当初2人をつなぎとめるものとして作った設定が、でき上がってみると風見の必死さが感じ取れる大変かわいらしい設定になりました。

『ルートダブル』 『ルートダブル』
▲橘風見

――プロフィールだけではなく、“舞台紹介”などにもストーリー展開を予感させる表現が書いてありますね。

 ラボの解説の中で、ついでのようにBCの説明をしていたり、“ここには記されていない国家機密レベルの研究”とか書いてあったり、Aルートの終盤で明かされる“実は原子炉がない”真実のヒントが散りばめられたりしています。

――舞台紹介で1つだけ気になっていたことがあります。“鹿鳴市の市章”は太極図をモチーフにしたものなのでしょうか?

 おっしゃる通り、陰陽道の太極図がモチーフです。太極図は光と闇を意味しているものなので、“鹿鳴市の市章”には赤と緑という補色(反対色)を採用しています。鹿鳴市には、BCについての真実をすべて知ったうえで、いいところも悪いところも清濁併せ呑んで向き合っている、という成り立ちがあります。つまり、光と闇が混在している街なんです。

 あとは、渦が向き合っているところから“渦中”であると。6と9が重なっているようなマークにもなっています。実は、鹿鳴市のモデルは“筑波研究学園都市”なのですが、そのつくば市の市章をモデルにしています。そのマークを見た時に「これはアレンジしたら使えるかも!」と思い今の形になりました。

『ルートダブル』
▲鹿鳴市の市章

――鹿鳴市については、「どう見ても筑波です」というユーザーさんの感想をよく見かけました。

 街の外観はほとんどソックリですよね。ちょこちょこ鹿鳴市にするためにアレンジしていて、例えば“鹿鳴湖”って霞ヶ浦がモデルなんですよ。ラボは表面上は原子力研究所なので、冷却するための水が必要なんですね。でも筑波には川も海もないので、ムリヤリゴリっと持ってきています(笑)。その他、鹿鳴市の特徴の1つである“街に入るための6つの門”も、実際に筑波にある6種類の都市ゲートをモデルにしています。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

――その鹿鳴市ですが、鹿鳴市という名前の由来はなんなのでしょう?

 僕は企画段階では、まず仮の名前をつけるのですが、鹿鳴市は元々仮の名前だったんです。数字の6みたいな名前にしたいと思っていたので、「ろくろくろく……」と連想した時に“鹿鳴館”を思い出して、「あ、鹿鳴でいいや」と(笑)。

 そんな仮の名前だったのですが、そもそも鹿鳴には“歓迎する、もてなす”みたいな意味があるんです。研究者や知識人、技術者を集めて研究しやすい環境を作る“表のもてなし”と、世間で迫害されているコミュニケーターたちを集めて、安穏とした平和な楽園を作る“裏のもてなし”の2つの意味に当てはまったので、仮の名前だった鹿鳴を正式採用しました。

 そして、その鹿鳴から連想して、Qというテロリストを作ったんです。

――なるほど。数字の9からQがきているんですね。

 発端はそこでした。なぜなら、6は第六感──五感を超えたBCを象徴する数字であり、それをひっくり返す、つまり敵対するものとして、9──Qがいるからです。余談ですが、元は同じ物なのに見る位置を変えると別物になる象徴として6と9を扱っています。同じ人間なのに相容れない関係、価値観が異なる存在というわけです。

 また、ひっくり返すと変わるネタは、W粒子とM粒子のWとMにも使っています。横道にそれたので話をQに戻しますが、9から始まり、そこからQuestionを絡め、今の世界に不満があって「これでよいのか」と問いをぶつける意味合いに変化させました。よくよく調べてみると、Qが頭文字の単語には“隔離する、排斥する”という意味のQuarantineもあるので、“世の中から迫害されている存在”というニュアンスも込められます。なので「これはおもしろいじゃん!」と思っていたのですが、イエティさんからは「オバ●みたいでちょっとマヌケじゃない?」と言われたりして……(笑)。でも、Qという言葉って少し不思議な感じがしませんか? 字面もそうですが、そこに得体の知れなさや実態の見えなさが出たらいいなと思いつけています。

→『たったひとつの冴えたやり方』と『ルートダブル』の関係性(6ページ目)

(C)イエティ/Regista

データ

▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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