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2012年11月2日(金)

『エクストルーパーズ』スペシャル対談の後半をお届け! “青春の方程式”と聞いてサテライトの河森監督が思いついたのは?

文:電撃オンライン

■ブレンのキャラクターがより生きたアニメPV

『エクストルーパーズ』

――サテライトさんにアニメPVを依頼することになった経緯を教えてください。

小嶋:マンガチックということを意識しながら作っていたところ、サウンドチームから挿入歌を作りたいという提案を受けました。その後、主題歌もあったほうがいいという考えが沸いてきて、主題歌があるならば、絵を乗せたいと思いました。

 元々、CGでオープニングをやるつもりだったのですが、こういう業界にいると映像化するのは憧れの1つになります。振りきってやりたいということで、いろいろなところを探していた時、「サテライトさんはこの期間だったらイケる!」ということを聞きました。主題歌をMay’nさんにお願いすることが決まっていたので、渡りに船だと思い、お願いしました。

――結果的にOKをもらい、お願いしたと。

小嶋:安田さんには、シナリオやできている動画を見ていただき、世界観や勢いを確認してもらいました。その結果、見事な絵コンテをあげていただきました! 元気のいいところとアクション、さらにキャラの葛藤も見られていいバランスでした。

佐藤:最初と最後のブレンのセリフで、彼がどういうキャラなのか、すぐにわかる。すごくうれしかったです。

『エクストルーパーズ』

安田:ゲームのPVやオープニングだと、髪がサラサラ動いたり、綺麗な自然を見せたりというのが多いのですが、今回はキャラの勢いや青春ものというところをどう出すかを、意識しました。そこまで枚数を描けないという制約があったので、そこは悩みましたがなんとかなりましたね。最初はショートバージョンだけで終わる予定だったのですが、いろいろあって長いPVを作ることになりました。その分、いろいろなシーンを描けたので、よかったです。

佐藤:ゲームを遊んだ後にPVを見ると、1カットずつの意味を理解できて、またおもしろいと思います。

安田:今回、改めてゲームの密度感、情報量の多さに驚きました。ちょっとしたエフェクトや本作であれば書き文字などは、マジメに作る方向に向かっているため、現在のアニメでは出しにくい。試行錯誤もありましたが、カプコンさんと相談しながら進めていきました。

――映像中は、吹き出しや書き文字、カットインなど、通常のアニメでは見られないような演出が多かったですね。

『エクストルーパーズ』

安田:そうですね。あまり使わないので、書き文字の大きさも最初はわかりませんでした。自分がやっていたような作品はシリアスものが多かったので、昔ながらのカメラを移動させるクイックパンやクイックティービーも避ける傾向にありました。そういうことをやれるということで、懐かしいものになっても仕方ないと割り切りつつ、楽しんで作っていました。今放送している『ジョジョの奇妙な冒険』も描き文字が出ていますが、あれでいいんだなと見ながら思っています。

小嶋:勢いがありますしね。

安田:テンポ感もいいです。絵の密度感、綺麗さだけがアニメのおもしろさではないことを再確認しました。

佐藤:昔って、絵が止まっていても集中線があると、頭の中で勝手に動いていた。

安田:色もパースも、何もかもが理屈っぽくなってきている。そこらへんは、マンガアニメに戻ってもいい気がしますね。

河森:おもしろくなるためにならいいけど、窮屈になるためにやる必要はない。例えば、当時の『宇宙戦艦ヤマト』の戦艦だって、別にああいう見た目にする必要はなかったけど、宇宙船を戦艦ヤマトにしたからよかった。飛ぶわけがないのを飛ぶようにするから、“センス・オブ・ワンダー”だったけど、そこさえも許されなくなっている。

佐藤:理屈ありきで絵が始まっていると、切ないですね。

河森:もちろん、そういうガチガチの作品があってもいいんだけど、全部がそうなってしまうと、おもしろくないかな。

小嶋:元々ファンタジーでリアルでない話を描いているので、リアルのリアルを追及してもいいんですが、そうじゃないムチャクチャなものもあるから、リアルな作品が引き立つ。ただ、やめるとどう言われるかという不安もあって、抜け出しにくい現状です。

『エクストルーパーズ』

河森:自分も『マクロス』で理屈くささから抜けられなくなったので、『アクエリオン』では神話を出して「そこは神話だから」という風にしていました。自分に対して安心させるキーワードを見つけるのに、時間がかかるよね。マンガスタイルを突き詰めて、マンガが持つおもしろさはなんなのかを見つけられれば、おもしろい表現になる。

小嶋:ツルツルしたままだと、ひっかからない。何かとっかかりがないと進めなくて、それが見つかると前に行きますね。

佐藤:とっかかりに対して「え~~~っ!」という反応がありますが「それは心に引っかかっているってことです! それをみんなが感じるなら最終的に好きになる」って何度も話して説得します。

河森:それでも納得してくれなければ、そことは仕事をしないのが精神衛生的にはいいですね。

小嶋:それこそ頭突きがそうでしたね。最終的に僕がいろいろな人に「大丈夫だから!」って言ってまわりました。

佐藤:でも、最終的にムービーのスタッフも頭突きを足していましたね。「ああ、好きになってくれたんだ」って思いました。

安田:自分も冒頭に頭突きを入れましたしね(笑)。

佐藤:あのシーンもうれしかったです。

――そのアニメPVで気に入っているところはどこですか?

小嶋:ブレンとギンギラの関係はこのゲームでは外せないので、僕はギンギラが起動する冒頭が好き。そして“いくぞ!”ってなるつかみにグッと来ました。絵コンテを見た時に、イケる!って思いましたね。

『エクストルーパーズ』

佐藤:僕は、最後のシーンで雪の中にブレンが倒れるところです。あそこのポーズを含めて、キャラが定着した感じがありました。雪原の景色が『ロスト プラネット』がアニメになっている感じを表現していて、そのうえで、ああいうポーズで雪の中に倒れているのが、『ロスト プラネット』と『エクストルーパーズ』の接地面。そこから離陸して、違う世界にいくのを感じました。

小嶋:手を上げて終わってもおかしくないじゃないですか? そこから倒れるのは、なぜ足したのですか?

安田:アニメでは、『ガンバの冒険』や『あしたのジョー』が好きなんです。『ジョー』であればボクシングしているシーンだけではなく、「あらよっと」って柵を乗り越えたり、パチンコしたりするような日常が見えるシーンが好きです。個人的に食事やくつろいでいるような、なんでもないシーンが大事だと思っていました。

『エクストルーパーズ』

 食事シーンは無理でしたが、勉強しているシーンや教官に追われているのを笑われるようなシーンは入れました。奥深さというには大げさですが、キャラクター性を広げるためにああいう演出はアリかなと。それで雪の上に倒れる主人公を最後に足しました。

小嶋:ゲームでは表現できないものがあるため、アニメをお願いしました。そういう細かい部分を入れてきてくれたので、「これでお願いします!」と伝えました。あまり修正するところはありませんでしたね。

河森:PVを見て、コクピットに乗っているキャラの作画が大変だと思いました。

佐藤:やっぱりそういうところを見てしまうんですね(笑)。

『エクストルーパーズ』

河森:ただ、絵がカッコいいので「大変なのによくやっているなあ」と。ロングショットの戦闘では、雪原のクールな広がりの見せ方はいいなと。その分キャラに寄った時の熱さが映えるしね。あとは、とにかく書き文字的のおもしろさですよね。

安田:ゲームで書き文字を見た時に、3Dで効果的に使われていました。アップに出るだけでなく、カメラが回りこむと、文字も回りこんだように見える。アニメで3Dができればいいのですが、なかなかそうはいかない。パンチした時は回したのですが……「ゲームっていいなあ」と思いました(笑)。

小嶋:ゲームはいいんですよ(笑)。最初は単に出していたんですが、それではつまらないので、試行錯誤してどこまで本気でやりきるかを考えました。ゲームのおもしろさは気持ちよさなんですよ。その気持ちよさをどう出すか。文字をただ出すのではなくて、うまく消えるから次の文字が生きてくる。そこをスタッフがうまくやってくれましたね。

安田:文字を説明のために出すのか、視覚や印象のために出すのかで、変わってきますよね。

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