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2012年11月22日(木)

『旧ファイナルファンタジーXIV』と『新生ファイナルファンタジーXIV』は似ていても何もかもが違う――αテストを経て吉田プロデューサーが語る

文:電撃オンライン

■αテストの手ごたえとβ版への展望は?

――αテストもまもなくフェイズ3に入り、いろいろ感想も届いているとは思いますがいかがですか?

吉田:僕はやっぱりαフォーラムの感想スレの「α版だと思ってなめてました」という言葉がもっともうれしかったですね。そこはやはりプロデューサーレターLIVEでも言いましたが、目指しているハードルが高く、そのハードルの高さを開発側にも示す必要がありました。

 実際、グローバルスタンダートのMMORPGをプレイしている日本人は少なく、かつゲーム開発者でとなると本当に少ない。だから『新生FFXIV』の開発陣にも「これが新生FFXIVなんだよ」と提示する必要がありました。「グローバルスタンダートってこれなんだから。死ぬほど苦しい思いをしてがんばったけど、最低ラインがこれだからね」と。

 ちなみにスケジュールの遅れに関しても、スケジュール通りに基礎実装が終わっていても、いたるところにあるデコボコな部分をならさない限り、ゲームにはならないからと。そこは僕自身が最低ラインとして納得がいく形にしてから、αテストを始めさせていただきました。だからこそ「これαテストにしては品質高いね」と言っていただけるのが、素直に嬉しいのです。

――グローバルスタンダードを目指しつつも、NPCの吹き出しとかは日本的ですよね。

吉田:ええ。海外ではNPCのセリフもボイスでやる作品も多く、初動の評判はよいのですが、冷静に見てみればやはりアップデートがカンタンにできなくて苦労しているんです。MMORPGの『新生FFXIV』では、パッチを2カ月に1回リリースするとしても4言語(日本語、英語、仏語、独語)あります。さらに軌道に乗って言語が増えたら、音声の場合は完全に足かせになります。

 MMORPGにとって、パッチの更新スピードはそれこそ命綱。ここの足を引っ張るシステムなら、本当に意味がない。英語が母国言語ならまだ違いますが、我々は日本人ですし、やはり多言語対応は英語発信に比べると、遅くなってしまいますからね。だから「日本のRPGらしい表現方法は?」と考えたとき、吹き出しだったり、メッセージウィンドという表現を選択しました。

――一部では「もうβテストでもいいのでは?」という声が聞こえるぐらい、全体的に見てもα版の時点で完成度は相当高いですね。

吉田:僕自身は相当なコアゲーマーなので、もう少し厳しいご意見をいただくかなと覚悟していたのですが、ありがたいご意見をたくさんいただいています。開発スタッフはやはり不安なんですよね、一度失敗をしていますし。僕がいくら「これがスタンダード」だと言っても、はたしてこの『新生FFXIV』はお客さんに認められるのだろうかと。反響があるまでスタッフも実感がわきませんし、だからこそお客様に触れていただいての高評価は、開発スタッフたちのモチベーションアップにつながっています。ちなみに制作スタッフは『旧FFXIV』と9割同じです。

――しかし、このクオリティですとユーザーさんの期待もさらに大きくなりますよね。

吉田:僕はそれでいいと思います。期待していただけるのに応えていくのが僕らの仕事ですし、正常な関係だと思います。先ほども言いましたが、なんなく日本が全体的に停滞ムードで、他人にもあまり期待しないし、だからあまり自分にも期待しないでね、という雰囲気があるかなあと。でも、期待されることって、本来苦しいんじゃなく、嬉しいことなので、せっかくここまで支えていただいたわけですし、徹底的にがんばってみようと思います。

――プロデューサーレターLIVEでは、βテストの開始が年明けからとのアナウンスがありましたが、一部のデータをα版に持ち込むというようなことはあるのでしょうか?

吉田:いえ、それは事実上不可能です。大規模で並行開発しているために無理なのです。もちろん、スケジュールに余裕があればできますが……α版はαブランチという1つの大きな開発の流れで進んでいて、もう1つ別にβ版の開発も進んでいるんです。

 このαブランチはいわゆるパラレルワールド的なもので、あくまでサーバー的な問題やどうしても解決しなくてはいけないものの洗い出しを行い、修正もαブランチ内で行います。それで、αテスト修正時に、その部分だけをβ版にコンバートするわけです。β版は今、ものすごい勢いでコンテンツを実装し始めていて、バグの数もすごい。だから逆にβ版からα版にデータを入れようとうすると、そのバグまで持ち込んでしまう危険性がかなり高いのです。そうなると、どちらもメンテナンスしなくてはいけなくなり、ものすごいコストも時間もかかってしまうんです。

 あとはそれこそ「もうこれβテストじゃん」と言われてしまいますしね。たしかにα版でもっと遊びたいとご意見をいただいていますが、こちらはすいません。本来αテストはサーバー負荷試験だということを、たまには思い出していただけると嬉しいなと(笑)。

――あの完成度ですともっと遊びたいという欲求が出てきてしまうのも、正直言って無理はないかと思います(笑)。

吉田:そう言っていただけるのはうれしいです、本当に。αテストは今後、海外での試験と24時間接続のエイジングテストを11月末には行います。

――となると、βテストまではしばらく時間が空くことになるのでしょうか?

吉田:ええ。さすがに1度αテストを閉じないといけません。αテストを担当しているスタッフもいて、戦力が分散されるのが一番きついんです。その間は動画や雑誌などでのPR展開をしっかりやっていきたいと考えています。プロデューサーレターLIVEで見せた、α版で使えないキャラのPRとかも含めてですね。

 その代わり、テスターに応募していただいた方には、αテスト期間中にできるだけ多くアカウントを配布します。普通MMORPGのα版のログイン率は、40%から20%ぐらいに下がるのが一般的なんです。プレイできる範囲が狭いですし。だから『新生FFXIV』も最初は2ワールドでと思っていたんですが、『新生FFXIV』は60%以上でログイン率が全然落ちない。追加でアカウントを増やすと、さらに伸びて全然ログイン率が落ちなかったりします。

 ワールドをもう少し追加しないと、プレイに支障が出そうです。スタッフからは「吉田さんがαテストにログインするのを止めればいいんですよ」とか言われていますが(笑)。確かにこんなαテストは普通ではあり得ませんが、これはこの2年支えてくださった方へのお礼でもありますので、3~4つにワールド数を増やすのもありかなあと。ここで一度触れて安心していただいて「たしかにこれだったらもう少し待ってもいいな」、「どこまでやれるか楽しみに見てやるよ」という雰囲気に持っていければいいなと考えています。ただ、もう少し守秘義務は守ってほしいなと。メディアさんにすらお願いしているのに(苦笑)。

――そうですよね(苦笑)。ただ、もちろん悪いことではありますが、遊べていない方はあれを見てテンションを上げているようですからね。

吉田:やっぱり僕からするとα版は最低ラインで、グラフィックの最終調整も終わってない状態なんです。これが『新生FFXIV』の実力かと、例えばポジティブな意味で言われるのも、少しモヤっとしてしまうんですよ。もちろん「これはないだろう」と言われている部分に関しては、こちらも最初から想定していますので当然直します。そこはβ版に期待していただければなと。

――βテストが来年とのことですが、具体的なスケジュールなどはどうなるのでしょうか?

吉田:基本的にはβテストのフェイズ1だけは、負荷試験の続きもあるので、少しクローズドな形にさせていただくかもしれません。ですが、フェイズ2からはとにかくアカウントを増やして、いろんな人に触れていただこうかと。

――オープンβはどのタイミングでしょうか?

吉田:オープンの定義は難しいんですよ。僕のなかでは誰でもクライアントダウンロードして、興味さえあればすぐにプレイできるのがオープンかなと。ただ、ポイントはデータのリセットがあるかないかというところですね。

――『旧FFXIV』のセーブデータはどのタイミングで反映されるのでしょうか?

吉田:フェイズ3で一度コンバートした状態にするので、こちらで確認していただく予定です。これは世界でだれも経験したことがない状況ですし、みなさんのデータがちゃんと引き継がれているか確認させてください。

――α版をプレイしていて、自分のキャラがこの『新生FFXIV』でどう表現されるのか楽しみです。ちなみにβ版では全種族のキャラメイクを試せるのでしょうか?

吉田:ええ。βテストでは全種族選べます。ただ、一部が未コンバートでダミーのモーションが入っている可能性があるかもしれません。例えば、ミコッテの耳とかはヘルム1つとってもミコッテ用になっているんです。それを全部コンバートするのには、とても時間がかかるので……。いずれにせよ、βを実施している期間内にはすべての種族に触れていただくことが可能になります。

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