2013年1月30日(水)
スクウェア・エニックスが2月7日に発売する3DS用RPG『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』の開発者インタビューを掲載する。
本作は、2000年にPS用ソフトとして発売された『ドラゴンクエスト』シリーズ7作目となるタイトルのリメイク作。3DS版では奥深いストーリーはそのままに、新機能が追加され、より遊びやすく進化している。さらに、“すれちがい通信”にも対応し、遊びの幅も拡大。ゲーム中の音楽に東京都交響楽団演奏によるオーケストラ音源を採用し、重厚なシナリオをさらに彩り豊かなものとしている。
本記事では、電撃オンラインで実施中の“ゲームやろうぜ!キャンペーン”の“読者が選ぶ年末年始にプレイしたいゲームランキング(1月期)”において、ダントツの1位となったことを記念し、開発者へのインタビュー記事をお届けする。
お話をお聞きしたのは、本作のプロデューサーを務める藤本則義さん(スクウェア・エニックス/『ドラゴンクエスト』シリーズプロデューサー)、開発を担当した眞島真太郎さん(アルテピアッツァ/アートディレクター)、杉村幸子さん(アルテピアッツァ/プラニングディレクター)の3人。より遊びやすく進化している『ドラゴンクエストVII』の魅力を、大いに語っていただいた。
▲左から、藤本さん、眞島さん、杉村さん。PS版の際の思い出も交えつつ、今回の3DS版の注目ポイントをたっぷりと語っていただいた。 |
――まず最初に、3DS版『ドラゴンクエストVII』の制作が決まった時の率直な気持ちについて教えてください。
藤本:個人的に『ドラゴンクエストVII』は携帯機に向いていると感じていたので、ずっとリメイクをしたかったんですけど、いろいろな事情があって、なかなか実現できなかったんです。その中でも大きな理由というのが、PS版をプレイしてくださった方ならご存知だと思うのですが……『ドラゴンクエストVII』はボリュームがものすごいんですよ(笑)。
眞島:しかも、PS版『ドラゴンクエストVII』の開発時期は、デジタルに移行するちょっと前、つまりアナログの時代だったので、基本的に開発の資料はすべて紙で作成していたんです。
藤本:その量がもう、すごいんですよ! 会社には歴代シリーズの仕様書が当時のまま残っているのですが、他のナンバリングタイトルと比べても膨大なんです。『ドラゴンクエストVII』だけの専用棚があるくらい多いです(笑)。リメイクをするとなると、当然その資料をイチからすべて見直していくということでもあり、それには相当な覚悟がいるぞ、と……。
ただ、PS版の発売から10年以上が経ち、今のタイミングを逃すとずるずると携帯機でリメイクできないままになってしまうと思い、覚悟を決めてリメイクを決意しました。
▲石版を集めることで、さまざまな世界を冒険することになる『ドラゴンクエストVII』。PS版の際は、プレイ時間が100時間以上という大ボリュームでも話題を呼んだ。 |
眞島:たしかに、すごい量でしたもんね。3DS版を作ることが決まり、スクウェア・エニックスさんと打ち合わせをするたびに、ものすごい量のファイルをアルテピアッツァに持ち帰っていましたから。シナリオテキストだけでも、分厚いファイルが40冊近くあったと思います。
藤本:アルテピアッツァさんに仕様書をお渡しするためにコピーするのが、まず大変でした。コピーして、何回かに分けてお渡しして、そして、その膨大な仕様書をデータ化していって……。何カ月くらいかかりましたっけ?
杉村:いただいた紙を打ち込み直してデータに変えるだけでも、ざっと1年くらいはかかりましたね(苦笑)。
藤本:どんな風にリメイクをするかというアイデアを考えつつ、同時進行で紙の資料をデータにして、ゲーム開発の下地を作るだけで最初の1年くらいを費やしました。
――そんな大ボリュームのPS版にアルテピアッツァさんもかかわっていらしたんですよね。あらためて3DSで作るということになり、どんなお気持ちでしたか?
眞島:そもそもが100時間以上遊べるゲームですからね。頑張るのは当然として、大変な開発になることには覚悟を決めました。
杉村:自分にとって『ドラゴンクエストVII』は、すごく感慨深い作品なんです。PS版の開発が始まった当時はまだ、ポリゴンで3D表現をするゲームは少ない状況でした。そんな中で『ドラゴンクエストVII』は、シリーズ初の3Dにすることになり、どんな画面の見せ方をするかをすごく話し合いました。
その時、眞島はCGで参加していたのですが、ゲームのイメージを固めて行く段階で、建物がくにゃっとしている、とても柔らかみのあるグラフィックを提案してきたんです。その時、「こんな風に味のある3Dの見せ方もできるんだ!」と驚きましたね。3Dになっても『ドラゴンクエスト』らしさを残せる感じで、ビックリしました。
藤本:不思議な温かみのある感じですよね。
杉村:今はもう技術的にもかなり進歩しているので、あらためて3Dで作ることにまったく心配はしていなかったのですが、あの時の衝撃が忘れられなくて。それが根底にあったので、3DS版ではどんなグラフィックで表現をするのかという部分は、当時の想いを大切にしながら考えました。
▲PS版の際にも評価が高かった『ドラゴンクエスト』らしいグラフィック。今回の3DS版でも、温かみがあるグラフィック表現は健在だ。 |
――3DSでリメイクするに際して、生みの親である堀井雄二さんからの要望やアドバイスはありましたか?
藤本:このプロジェクトが決まった時に、一度堀井さんと一緒にPS版をプレイしたんです。その時の堀井さんの印象は、今見てみると、謎解きがなかなか難しいとのことでした。
PS版を作った当時、謎解きやギミックを扱ったゲームが流行っていて、『ドラゴンクエストVII』も“謎解きアドベンチャー”を意識した要素を取り入れて作ったのですが、今プレイすると堀井さん的にも「時代を感じるね」となりまして。
――たしかにPS版は、序盤の難易度が意外と高かった覚えがあります。スイッチを押したり、岩を動かしたり、パズル的な要素が多くて、歯ごたえがありました。
藤本:難しい謎が解けた時はすごく爽快感があるんですが、あまりにも迷いすぎて先に進めないと、フラストレーションがたまっていきます。
そこで3DS版は「わかりやすく、迷わない『ドラゴンクエストVII』というコンセプトで作っていきたい」というお話を一番最初にいただいて、それを徹底していく形になりました。特に最初のエスタード島は、作っては壊し、作っては壊しの繰り返しで大変でした(苦笑)。
杉村:他の部分を進めながら、導入部分だけ並行して1年くらいかけて作りましたね。
藤本:3DS版のコンセプトを形にするという理由もあったんですけど、堀井さんは一番最初のとっかかりをすごく重要視される方なんです。最初の冒険をスムーズに進めてクリアできれば、ユーザーがエンディングまで行ってくれるきっかけになるんじゃないか、と。
それにプラスして、「序盤は特にテンポよく進めたいね!」という要望もありました。そんなわけで、最初のエスタード島は何度もリテイクしながら調整した結果、PS版とはまったく違う形になりました。
眞島:謎解きの数や難易度を調整したので、序盤のプレイテンポは相当変わりました。
藤本:とにかく、“最初のバトル”が訪れるタイミングにこだわりましたね。PS版よりもかなり早い段階でバトルを楽しめるようになるので、その勢いでガンガン冒険を進めてほしいですね。
――“あらすじ”や“石版レーダー”といった新機能も、“遊びやすさ”を重視するうえで追加されていったのでしょうか。
▲下画面にはミニマップが表示されるので、探索の際はかなり便利に。また、左上の水晶のようなものは“石版レーダー”で、主人公たちが石版に近付くと、光って反応する。 |
藤本:謎解きの爽快感は残しつつも、難しすぎてフラストレーションがたまることは避けたい。そこから考えて、新キャラクターの“石版案内人”が生まれ、石版レーダーという新システムを搭載しました。
また、久々にゲームを再開した時に、これまでどんな冒険をしてきたのかを思い出せるように、“あらすじ”も追加することになりました。
――余談ですが、PS版を遊んだ身としては、占いの形で石版のヒントをくれる占い師のおばあさんがどうなるのか気になります。新キャラクターの“石版案内人”が登場した今、もしかしていなくなっているのでは……。
杉村:ご安心ください。あのおばあさんは3DS版でも登場します。直接的なヒントではありませんが、先に進めなくなった時になんとなくお告げめいた助言をくれるという、PS版と同じ役回りですね。
3DS版は本当に遊びやすくなっていますが、ユーザーに一方的に情報を与えるということはしていません。石版案内人のアドバイスも、答えをそのまま教えるというよりヒントに近い形ですし、あくまでも“どうしても先に進めなくなった時に、聞きたければ聞いてください”というスタンスです。
できるだけ自力で石版を見つけたい人は、石版案内人よりも占い師のおばあさんを頼っていただくと、ちょうどいい難易度になるのではないかと思います。
あらすじ機能も、自分が冒険を終えてから読むと楽しめる備忘録のようなものなので、プレイ中にネタバレになるようなことはありません。
▲ストーリーを進めるために必要な石版が集めやすくなっているのは、PS版のプレイ経験がある人にとっては嬉しい限り。3DS版で初めて触れるユーザーも、石版案内人からもらえるヒントによって、ストレスなく進められるだろう。 |
→“ぱふぱふ”も立体的に!? グラフィカルに表現されたバトルに注目(2ページ目へ)
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