News

2013年6月5日(水)

『ねらわれた学園』PS3だからこそ実現した“史上初のアニメ資料集”とは!? アニメ評論家・氷川竜介氏とSCE技術者に聞く

文:伊藤誠之介

 バンダイナムコゲームスから、6月6日に発売される『ねらわれた学園 劇場版アニメ&完全版資料集 Hybrid Disc』。このソフトで要注目なのが、“PlayStation 3”用ビューアー型コンテンツ“PlayView”の機能を駆使した、約2,000ページにおよぶ“完全版資料集”だ。その内容については、前回掲載した動画レビュー+座談会記事で詳しく紹介した通り。

『ねらわれた学園』

 今回は、この“Hybrid Disc”の制作を担当したバンダイナムコゲームスの小菅寛史氏、ソニー・コンピュータエンタテインメントでPlayViewの開発を担当している森貞英彦氏、そしてアニメ評論家として数々の雑誌やTV番組などで活躍し、今回の完全版資料集でもアニメガイドを執筆している氷川竜介氏の3名にお集まりいただいた。この完全版資料集の感想や制作の舞台裏、そしてPlayViewを使ったアニメ資料集の展望まで、自由に語ってもらった。(※対談中は、敬称略)

『ねらわれた学園』
▲左から氷川氏、小菅氏、森貞氏。

■“青春のきらめき”が表現された作品の全貌を、PlayViewで楽しめる

――完全版資料集の話に入る前に、まずは劇場アニメ『ねらわれた学園』の内容と、簡単な紹介をお願いします。

氷川この『ねらわれた学園』は、僕らの世代にとっては『時をかける少女』と対をなす大事なタイトルです。『ねらわれた学園』は眉村卓さん、『時をかける少女』は筒井康隆さんという、日本を代表するSF作家が1960年代末に学習雑誌の連載として発表したジュブナイルSF小説で、これを原作にした映像化が連綿と続いています。まず1970年代にNHKで放映された『少年ドラマシリーズ』で、そろって実写ドラマ化されたのが出発点です。

『ねらわれた学園』 『ねらわれた学園』

 1980年代に入ると『ねらわれた学園』が薬師丸ひろ子さん、『時をかける少女』が原田知世さんの主演で、大林宣彦監督によって映画化されました。その後もTVドラマ化などを経て、2000年代になると『時をかける少女』が、細田守監督の手によって劇場アニメ化され、続編スタイルをとったので新展開にはいりました。

 このように1960年代から続く流れがあるので、僕なんかは“『ねらわれた学園』が劇場アニメになります”って聞いた時とたん「あっ、やっぱり!」って反応したわけですね。それだけのコンテクスト(文脈)が存在していたわけですから。

 しかも監督が中村亮介さんで――中村さんは、TVアニメの『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』を監督された方です。自分はその第1話の放送を見て、「ぜひ監督さんを取材させてほしい」とお願いしたぐらい、はっとする作品でした。明らかに他のアニメとは違う、新しいことをやろうとしている意欲を感じたんです。

 アニメの『ねらわれた学園』は、そんな中村監督らしい画面のエフェクトや、光学的な処理が全編にわたって使用されています。きらめく光や色の鮮やかさと、ちょっとギャグっぽい方向にまで振れるような、しなやかな肉体のアニメーションによって、青春のきらめきが表現されているんです。

『ねらわれた学園』 『ねらわれた学園』

 物語的には、はっきりとした対立軸とクライマックスがあって戦いがあって終わり、みたいな仕立てにはなっていません。そこは好き嫌いが分かれると思いますが、それも含めて新鮮に感じました。そういう意味ではストレートに興奮しておもしろいからオススメというよりは、何度見ても興味が尽きず、味わい深い作品なのでどうですか、という感じです。……全然簡単な紹介じゃなかったですね(笑)。

――ありがとうございます。続いては、PlayViewとはいったいどういうものなのかを、簡単に教えてください。

森貞PlayViewの元々の始まりは、“すごく巨大な画像を見る技術”だったのです。巨大というのは数十億ピクセルという超高解像度の画像のことなのですが、そのような画像を、たくさんの画像をうまくつなぎ合わせて作る技術が当時ありました。ところが、できあがった巨大な画像が見られるビューアーがなかったのです。そこで開発されたのが、どのような巨大な画像もサクサク見ることができるビューアー。これが、“PlayViewの原型”です。

 ですからPlayViewの基本になっているのは、画像の一部をズームして拡大したり、逆に後ろに引いて全体を見渡したりといった操作が、非常にスムーズにできるという点です。さらにビューアーの機能として、動画を配置したり音を鳴らしたりといったこともできるんですが、画像に近寄ると動画が再生されたり、音楽が再生されたりといったことが、自然にできるようになっています。それに加えて、普通のコンテンツと組み合わせた際の相性も考慮して、ページめくりの機能などを入れたりと、どんどんと進歩してきました。

『ねらわれた学園』
▲こちらは、PlayView『ねらわれた学園』完全版資料集の目次。絵コンテや解説と該当するシーンの動画をひもづけて表示させる機能など、ただの画像ビューアーにとどまらないコンテンツとなっている。

――最初は巨大画像ビューアーだったものが、今ではPS3でコンテンツを楽しむための1つのフォーマットになっているというわけですね。

森貞そうですね、コンテンツのフォーマットという見方もありますが、僕らとしては滑らかにズームできるとか、快適なスピードでページが送れるとか、直感的な操作で近寄ったら動画が再生されるとか、見せ方にこだわっています。このようなこだわりが、PlayViewの強みだろうと。そういう意味では非常に“プレイステーション”らしいデジタルコンテンツだと思っています。

『ねらわれた学園』 『ねらわれた学園』
▲実際に使ってみるとわかるが、まったくストレスなく資料を閲覧することができる。左の画面を見れば、絵コンテが動画や原画部分と連動していることが直感的にわかるのではないだろうか。

――そして今回、PlayViewで『ねらわれた学園』の完全版資料集が制作されましたが、その具体的な内容を教えてください。

小菅内容は大きく6つのカテゴリに分かれているんですけど、まず最初に、氷川さんによるアニメガイドですね。これは『ねらわれた学園』の見どころを氷川さんが紹介する文章のすぐ横で、実際のアニメの動画を参照できるように配置しています。テキストと画像と映像、サウンドが融合した、PlayViewの特徴がよくわかるコンテンツだと思います。

『ねらわれた学園』
▲氷川さんのアニメガイドは、完全版資料集の見どころの1つ。随所に本編動画が盛り込まれているのは、PlayViewならでは。

 続いては実際のメイキング資料として、キャラクター設定、絵コンテと総作画監督修正原画、背景美術資料と、版権イラストを収録しています。そして最後に、劇場公開時に販売された劇場プログラム、いわゆるパンフレットですね。これはダイジェスト版という形で収録しています。あとはプレスシートという、公開前のプレミア試写会で来場した方だけにお配りしたレアグッズですが、今回はこちらも特別に収録しています。

『ねらわれた学園』
▲プレミア試写会の来場者にのみ配布されたプレスシート。PlayViewでは、細かい字までハッキリと読むことができる。

→PlayViewで得られる“資料と自分の脳ミソが直接つながっているかのような感覚”

(C)眉村卓・講談社/ねらわれた学園製作委員会
(C)2013 NBGI
“PlayStation”、“PS3”および“PlayView”は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの商標または登録商標です。

1 2 3 4

データ

▼『ねらわれた学園 本編映像』ダウンロード版
■発売日:2013年6月5日
■価格:HD版(特典映像あり)……3,500円(税込)/SD版(特典映像なし)……2,500円(税込)
▼『ねらわれた学園 本編映像』レンタル配信版
■発売日:2013年6月19日
■価格:HD版……500円(税込)/SD版……400円(税込)
※視聴期間に限りがある
▼『ねらわれた学園 PlayView「完全版資料集」』ダウンロード版
■発売日:2013年6月6日
■価格:2,000円(税込)

関連サイト