2013年6月17日(月)
藤坂:ちょっと話が脱線しますけど、さっき先輩後輩って話が出たじゃないですか。実はヨコオさんって、僕にとっては後輩にあたるんですよ。向こうが年上だし、業界歴的には大先輩なんですけど。
松下:どういうことですか?
藤坂:僕らは昔、キャビアに入社する前に、同じ会社に所属していた時期がありまして。その時、僕のほうが彼より半年ほど早く入社していました。キャリア的にはヨコオさんのほうが長いし、すごい先輩なんだけど、一応は僕のほうが先輩だった時期があるわけです(笑)。
柴:なんというか、距離感が独特なんですよね、この2人。僕から見ると、すごく不思議で絶妙な距離感。ちなみに、ヨコオさんってちょっと恐いイメージもあると思うんですけど。
松下:恐いっていうか、油断できないってイメージです、僕にとっては。ただ、開発中はいつも怒ってるって聞きましたし、きっと恐い人なんでしょうね。
柴:そんなヨコオタロウとガチで殴り合える、数少ない人間ですよ。この藤坂公彦という男は。
藤坂:殴り合えるっていうか、僕、先輩だから(笑)。
柴:もうね、藤坂さんはヨコオさんのダメ出しに対してダメ出ししたりしますから。それって、実は藤坂さんにしかできないことですよ。
藤坂:いや、ダメ出しにダメ出しってほどのものでもないと思うけど。ただ、「別にそれ、やらなくてもいいんじゃないの~?」って言うくらいのものです。
松下:それがすごいってイメージはありますけどね、僕とかから見ると。
藤坂:ヨコオさんって自分の意見を強く主張する人なんですけど、それに反対されたり、反論されたりすることを嫌がったりはしないんですよね、たぶん。
松下:たぶん?
藤坂:ええ、たぶん。少なくとも、反論に対して「口答えしやがって!」っていうような、理不尽な人ではない。普通にディベート好きなだけだと思います。
松下:ちなみに、前回の座談会でヨコオさんは、藤坂さんのことを“自分にはコントロールできない人”だとおっしゃってましたよ。
藤坂:いやいや(笑)。それを言うなら、ヨコオタロウこそ誰もコントロールできないでしょう。
松下:やっぱりそうなんですか? そこは柴さんのご意見をうかがってみたいところ。
柴:いや、全然いい人ですよ、ヨコオさんは。ただ、ちょっと……言い方が悪かったりしますね。なのでたまに現場と揉めてます(笑)。まあ、揉めることは悪いことではないんですが、ディレクターってまとめるとこが仕事なんで(笑)。実は今回、そんなヨコオさんの力をもっとも発揮できるよう、『DOD1』の時とは役割分担を変えました。
松下:そういえば、肩書きが普通のディレクターではなく、”クリエイティブ・ディレクター”になってますよね。
柴:ええ。本作ではゲーム全体を見るというよりは、世界観というか、シナリオや設定関連をメインで見てもらっています。そのうえで、ユーザーさんがゲームを遊んだ時に楽しんでもらえるよう、うまくまとめてもらっている感じです。より俯瞰してゲームを見てもらうようにしました。そういう意味で、『DOD3』はすごくいい。よりヨコオタロウの色が前面に出ていると思います。
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▲シリーズ最新作である『DOD3』は、今まで以上にヨコオタロウさんの色が前に出た作品になるとのこと。 |
藤坂:『DOD1』の時とか、とにかく大変そうでしたからね。ディレクターとして、ゲーム全般を細かく見てたから。
柴:彼に個性を発揮してもらおうとした場合、それは足かせになりかねないんですよね。やっぱり、クリエイティブな方向に尖りきってる人だから。世界観とか、そっちのことだけに専念してもらったほうがいいと判断して、今回はチームを回すディレクターは別の人にお願いしました。見ている感じ、なかなかに大変そうですけどね、その彼は(笑)。
藤坂:しかし、もう『DOD1』から10年も経つんですよねぇ。
松下:酔いが回って、しんみりしてきちゃいましたか?
藤坂:いや、当時は本当に何もわからなかったなって思い出して。柴さんはまぁ、プロデューサーとして新企画を立ち上げるぞって感じだったと思うんですけど。僕は何も知らない状態だったので。
柴:僕にとっても『DOD1』はコンシューマでは初のプロデュース作品だし、わからないことだらけだったけどね。藤坂さんからしたら、本当にわからないことしかなかったんじゃない?
藤坂:ですね。だって僕、最初はキャラデザインの担当ですらありませんでしたから。原案こそ僕が考えるけど、それを●●●●さんか■■■■さんのどちらかに発注して、デザインをお願いしたいって言ってましたもんね?
柴:そういうこと言ってたねぇ。
松下:●●さんって、ヨコオさんも大好きなあのアニメ作品の?
柴:はい。
松下:■■さんって、少年誌、青年誌で立て続けにヒットを飛ばしているあの■■さん?
柴:はい。そういう強烈な個性を持った人たちに頼もうって話をしていました。
松下:そ、それはすごいですね。柴さんの提案だったんですか?
柴:そうですね。まあ、いつの間にかその話はなくなったんですけど。きっと、お金がなかったんだろうね(苦笑)。
藤坂:先方が忙しすぎて、都合がつかなかったんじゃないですか?
柴:最終的には、藤坂さんのイラストがピッタリだと思って、彼にキャラデザインをお願いしたわけですけれども。
松下:いちファンとして言わせていただければ、その選択は間違っていなかったと思います。
藤坂:うれしいこと言ってくれるなぁ。
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▲藤坂公彦さんが描く美麗なイラストや趣向が凝らされたデザインは、間違いなく『DOD』シリーズならではの魅力。 |
松下:しかし、キャラデザインの件もそうですけど、柴さんの嗅覚には驚きます。さんざんお話を聞いてきましたけど、キャラボイスを担当するキャストも、ちょっと普通とは違うじゃないですか。
柴:そうですか? たまに失敗しますけど(苦笑)。
松下:この前の座談会では、ヨコオさんが「柴さんはこのキャスト陣を選んだことで、東スポに載りたいって言ってた」、なんておっしゃってましたけど。
柴:いや、言ってないです、そんなこと(笑)。罠か何かだと思いますよ、ヨコオさんの。
松下:罠ですか。うーん、あるかも(笑)。でも、なんだか憎めない人ですよ、ヨコオさんって。
柴:そうなんですよねって、ダメダメ。憎んだほうがいいと思いますよ。ダメなことはダメだって、はっきり言ったほうがいい。
松下:なるほど(笑)。
柴:クリエイターとしては本当に素晴らしい人なんですけど、とにかくアクが強いんですよね、あの人。
松下:『DOD3』でも、お2人が取っ組み合いをしながら作品を作っているのが目に見えるようです。
柴:いや、そんなことはないです。『DOD3』に関しては、“ヨコオタロウが作りたいものをしっかり作らせる”っていうのが、一番大切なコンセプトなので。そういう意味では、比較的甘いです。
松下:甘やかしちゃってますか!
柴:僕が思うにヨコオさんって、どちらかというと世界観が気になる人なんですよ。で、僕はどちらかというとゲームシステムが気になる人なので。そういう意味では、絶妙にかみ合ってなくて、結果、ぶつからない部分も多いのかなって。
藤坂:まぁ、柴さんほどゲームの詳細を気にするプロデューサーも珍しいです。ゲームの内容まで話ができるので、それはいいことだと思いますけど。
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Character Design : Kimihiko Fujisaka.
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