2013年7月29日(月)
――そんな岡部さんは、今回楽曲を作るにあたって、どれくらい世界観を把握されているのでしょうか?
岡部:やはり、作品の雰囲気をしっかりつかんでいないと楽曲も作れませんので、事前にストーリーやキャラクターの人となりについては教えてもらっています。
――今回の『DOD3』には、物語のキーパーソンとして“ウタウタイ”が登場します。彼女たちは戦闘中に興奮すると歌い始めるという設定がありますが、やはり、ボーカル曲も多くなるのでしょうか?
▲戦場で血を浴びるたびに興奮し、絶頂に達するとウタを歌い始めるという“ウタウタイ”たち。いったい、どんな演出になるのかが気になります。 |
岡部:そうですね……ここで答えを言っちゃうのは簡単ですが、今はまだ秘密にしておこうと思います。やっぱり、ゲームを遊んで「おお、こんなことになっているのか!」ってビックリしてほしいですからね。ただ、ボーカル曲を期待されている人は多いと思いますし、ウタウタイが物語の主軸となるわけですから、そこはヨコオさんとしっかり考えながら作っています。
柴:それこそ、もし歌モノがあるとしても、『ニーア』と同じような使われ方ではないかもしれませんしね。
――ユーザーの期待をいい意味で裏切るのが『DOD』シリーズだけに、今の言葉にどんな含みがあるのかドキドキします(笑)。個人的には、『ニーア』の『イニシエノウタ』が、とある2人組のボスとの戦闘で流れた時、かなりグッときたクチなので、すごく楽しみです。
岡部:そうですね。ヨコオさんはユーザーさんをあっと驚かせることにすごくこだわりが強い人ですから。僕も曲を手掛けるにあたり、その意向を大前提として盛り込んでいるつもりなので、ぜひご期待いただければと思います。
柴:音楽的な幅が広いですよね、今回。バリエーションが豊富というか。正直、岡部さんってこういう曲も書けるんだ!? って驚いてる部分はある。ダサかっこいい曲とかね(笑)。
――え? ダサかっこいい?
岡部:うん、柴さんのおっしゃっていること、わかります(笑)。個人的に、ゲームミュージックってロック調の戦闘曲とか、ハデな曲のほうが人気が出やすい印象があるんですよ。その点、『ニーア』はちょっと地味というか、まったりした曲が多いので、あまり受けないかもと思っていたんです。
▲岡部さんの言葉の通り、『ニーア』の楽曲は静謐な印象が強い。聴けば聴くほど味が出るスルメ曲も多かった。 |
――なるほど。
岡部:逆に、今回はすごくゲーム音楽っぽくなっているというか。いわゆる“中二病的なエッセンス”を盛り込んでいるので、ストレートにかっこいい曲からダサかっこいい曲まで、幅広く書かせてもらっています。
――それもヨコオさんのオファーなんですか?
柴:いや、さすがに「中二病的な音楽で!」なんてオファーはないでしょう。
岡部:ええ、ないです。ただ、僕が勝手に「これはヨコオさんの中二病な部分だな」って思うところがちょこちょこあるので。そこを取り入れつつ作曲している部分とか、実は結構ありますね。
――楽しみ。すごく楽しみですね! では、さっきお話に出た『クロイウタ』なんですけれども、こちらを手掛けるにあたって心がけたことや、楽曲に込めた想いなどがありましたら教えてください。
岡部:藍井エイルさんという、今すごく人気のアーティストに歌ってもらった『クロイウタ』ですが、彼女を変に意識しすぎることなく、あくまで『DOD』であることを意識の中心に置いて楽曲を作りました。
――事前に藍井さんの歌を聴いたことはありましたか?
岡部:もちろんです。歌唱力が高くて声のレンジが広いことはわかっていたので、メロディ的な制約はまったくありませんでしたね。今回、いわゆる“ウィスパー”にも挑戦してくれていますが、あれって聞く分には簡単そうに思えるかもしれないけど、実際はものすごく難しい高等技術なんですよ。藍井さんだからこそ、ここまで表現してもらえたって部分はあります。
――以前、藍井さんご本人にインタビューした時、ウィスパーはご自身の意思で盛り込んだ演出だとお聞きしました。
岡部:そうですね。軽くお伝えこそしていたんですけど、彼女と直接やり取りしたわけではまったくないです。でも、実は心の中で、ここはウィスパーで歌ってほしいな……と考えていた部分だったので、それを受け取ってくれた藍井さんはやっぱりすごいなと思いました。
――なるほど。
岡部:多くのファンの方がそうだと思うんですけど、僕の中で『DOD』の歌というと、『尽きる』の印象がものすごく強くて。イントロなどの、オーケストラサウンドを切り貼りした繰り返し感や、ぼそぼそとしゃべるような歌のイメージこそが『DOD』らしさである、って思いがあったんです。
ただ、『尽きる』のメロディはやっぱり佐野さんの持ち味なので、僕なんかじゃ真似はできませんし、だったらそこは僕らしいメロディを打ち出しつつ『DOD』らしさを出したいと思いまして。特に冒頭の出だしにそのイメージが強かったんですが……。
柴:いざ収録してもらったら、「ここはこうでしょ?」ってものが、ズバッとあがってきたんでしょ?
岡部:その通りです。みなまで言うなって感じで、こちらの意図をバッチリ理解していただけていました。藍井さんの『DOD』愛を感じましたよ。フルバージョンはつい先日完成したばかりですが、お陰様でかなり手ごたえのある楽曲に仕上がっています。
柴:あの曲はね。具体的なことは言えないけど、2番がいいんだよね。ゆっくりと昇っていく感じというか、正直ぞくっときた。
岡部:2番いいですよね。実は、2番のために1番があるといっても過言じゃないくらい。
――ウィスパーですら、その布石ってことですか?
岡部:そこはもう、ゲームを遊んで聴いていただければ。ある意味、『DOD3』全体の音楽演出を凝縮した1曲だと思っています。
柴:うん。本当に、それくらい素敵な楽曲に仕上げていただけました。
▲藍井エイルさんが歌う『クロイウタ』は、物語中のどんな局面で流れるのか、気になるファンの方も多いのでは? |
岡部:ファンの皆さんにPVで聞いていただいているところは、実は楽曲のほんの一部でしかありません。曲全体の魅力は、フルで聞いていただいた際に初めてご理解いただけるのではと思っていますので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。
柴:PVは前戯でしかないですね。言い方は悪いけど、まだ前戯でしかないです。ここからすごい本番行為が……。
――わかりやすいし、ある意味すごく『DOD3』的な表現ですけど、どうなんですかそれは(苦笑)。
岡部:ちなみにこの楽曲ですが、最後に柴さんに聴いてもらったバージョンから、さらに修正を入れさせてもらいました。
柴:そうなんですか? あそこからもっとよくなっているのなら、それは素晴らしいことですよ。
岡部:変えた部分は本当にちょこっとなんですけどね。自分的にはすごくよくなったと思ってます。
――やっぱり、それだけこだわりが強い曲ってことですかね?
岡部:そうですね。ある意味、『DOD3』の看板になり得る曲だと思うので。そこは限界まで頑張りたいなと思いまして。
――ゲームの映像とともに『クロイウタ』を聴くのが、ものすごく楽しみです! ちなみに、岡部さんが『ニーア』の音楽と『DOD3』の音楽をそれぞれ一言で表すとすると、どんな言葉になりますか?
岡部:これはまた、思ってもいなかった質問ですね。
――どんなリリックが出てくるのかなって(笑)。
柴:めんどくさいなぁ(笑)。
岡部:そうですね……音楽的なところの切り口だけでいうと、『ニーア』はスキ間を楽しめる楽曲をイメージしていました。エコー感というか、実音に対する残響音だったりとか、そういう音楽的なスキ間がキレイに聞こえるように意識したんです。
それに対して『DOD3』は、実音自体がすごく訴えかけてくるというか、印象がパキッと出てくるような音作りをしているつもりです。
柴:うまいこと言いますね。
岡部:一言で表すと、『ニーア』の音楽はエアリーな音楽。ふわっと柔らかく広がるイメージです。『DOD3』はパキッと芯が通っているというか、しっかりとした核が存在する音楽。メロディなど、共通している部分もあるんですけど、音楽的な演出としてはだいぶ違っていると思うので。そこを聴き比べていただくのもおもしろいかもしれません。
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