2013年8月16日(金)
なんと言っても、この『送り雛は瑠璃色の』という作品の魅力は、その設定とストーリー展開にあります――なんて言い切ってしまうと、なんだかゲームブックを否定しているみたいに聞こえてしまうかもしれませんが、純粋に小説単体でリリースしても売れるのでは……と思えるほど、ストーリー部分がおもしろく秀逸な作品なんです。
青年期だからこそ体感できる異性への淡いあこがれ、好奇心ゆえの冒険など――三十路すぎの私ならば、もう二度と味わうことのできない若かりしころを思い出して、そして若いプレイヤーさんならば、今、もしくはこれからの自分と重ね合わせて、本作の主人公・瞬が体験する物語を楽しめるんじゃないかと思いました。
▲登場キャラクターは片手で数えるほどながら、その誰もが重要な役割を担っています。選択によっては人外の存在に遭遇することも……。 |
また、上記のような青春ストーリーと並行して、作中では天狗や竜の伝承、人形にまつわる不思議な風習など、オカルトめいた要素をはじめ、謎かけを含んだ短歌やちょっとした推理が必要な選択肢などが随所に登場。それらの場面では、主人公の霊感体質という特殊な設定を生かした、ゲームブックならではの選択肢や遊び心が盛り込まれています。小説やゲームブックファンだけでなく、探偵ものやオカルト・ホラーものが好きな方なら結構すんなりと楽しめると思うので、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
▲短歌なんて習ったの何十年も前だよウヒョーと思っていたのですが、前ページで紹介した霊観があればその辺りの解読はわりと容易なうえ、ゲームを一度クリアすればメニュー画面に“解説”というモードが増えて、短歌の詳しい解読法が見られる親切設計となっています。 |
さらに、あんまり書いてしまうとネタバレになってしまうのでサックリとお伝えしますが、単なる学園ホラーものと思いきや、人々の思いや魂の存在、何気ない日常のそばにある非日常の世界など、想像していた以上に奥深く、心に残る作品なのでありました。あと後半のほうには、友人の言葉にホロリとさせられる場面もあったりして……その辺りは実際に見ていただければと思います。
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(C) Shio Yuuji / Soudasha Inc. / Faith Wonderworks, Inc.
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