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2013年8月24日(土)

サイバーコネクトツー流の『NARUTO』シリーズ&『ジョジョの奇妙な冒険』の作り方――必要なのは作品に対する世界一の愛【CEDEC 2013】

文:イトヤン

 パシフィコ横浜・会議センターで8月21日~23日にかけて、ゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2013”が開催された。ここでは、株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏と、同社のリードゲームデザイナーである中舎健永氏によるセッション“キャラクター版権タイトルにおけるゲームデザイン論”が行われた。

サイバーコネクトツー
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▲株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏。▲株式会社サイバーコネクトツーのリードゲームデザイナーである中舎健永氏(写真右)。同社の最新作『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』では、ディレクターを務めている。

 このセッションは、サイバーコネクトツーが開発を担当したバンダイナムコゲームスの『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズと、同社の最新開発タイトルである『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』を題材として、原作となるマンガやアニメの魅力をゲームでどのように再現するかという点について語ったものだ。

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▲セッションでは、ゲーム開発における3つのポイントについて、それぞれ2作品の解説が行われた。この記事ではその内容を、ゲームタイトルごとに整理してお伝えしている。

■バトルを通じてキャラクターを再現する『ナルティメット』シリーズ

 『ナルティメット』シリーズは、コミック『NARUTO-ナルト-』とそのTVアニメを、対戦アクションゲームの形で再現した作品だ。このシリーズは日本以上に海外で人気が高く、全体の売り上げのうちアメリカが50%、ヨーロッパが40%を占めているという。

 コミックの連載もTVアニメの放映も現在進行中の作品だけに、ゲーム化にあたってはまず、原作のどこまでの範囲を描くかが大きな問題となる。松山氏によると、『NARUTO-ナルト-』のゲーム化には独自のルールがあり、ゲームの発売時期にTVアニメで放映される展開を、1カ月以上追い越してはいけないのだそうだ。ただし、2013年4月に発売された『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム3』には、TVアニメでは半年ほど先となる内容が含まれているが、これは特例中の特例だという。

●キャラクターの設計図を作成する

 次に、登場する各キャラクターの個性を、どのようにしてゲームの形にしていくかを考えることになる。『ナルティメット』シリーズでは大きく分けて、コンボ、忍術、奥義、覚醒という4つのシステムでキャラの個性が表現されるそうだが、この際、サイバーコネクトツー社内で“コンセプトシート”と呼ばれている図面を作成するという。

 これは、どういったコンセプトでそのキャラを作成するかという設計図で、各キャラごとに1枚作成される。『ナルティメットストーム3』では80名以上のキャラが登場するため、このコンセプトシートも80枚以上作成されることになる。

 コンセプトシートが作られると、それを元にして、モーション班が絵コンテを作成し、“ゲームデザイナー”“アートディレクター”“バトルディレクター”の3人が、それぞれ異なる視点から意見を出し合って、キャラクターを作り上げていく。

●原作側からの監修を元にキャラクターを修正していく

 キャラクター版権タイトルならではの行程として“監修”が存在している。『NARUTO-ナルト-』の場合は原作者の岸本斉史氏(及び版元の集英社)と、TVアニメの監督である伊達勇登氏(及び制作会社のぴえろ)の双方からチェックを受けているという。

 岸本氏からは設定面の監修が入る他、ゲームオリジナルで盛り込んだ要素がたまたま原作の今後の展開を先取りしていたため、NGとなったこともあったそうだ。一方、アニメの伊達監督は、キャラの必殺技である奥義の表現に至るまで、演出面を細かくチェックする。

 こうした原作サイドの監修によって修正を求められた場合は、必ずそれに応じると松山氏は語った。このように綿密なやり取りを12年間に渡って続けてきた結果、『ナルティメット』シリーズに関しては原作サイドと一定の信頼関係が構築できているそうだ。

 また、『NARUTO-ナルト-』のTVアニメはゴールデンタイムに放送されており、その主な視聴者は小学生だ。そのためゲームでも流血などの描写は控えられている。ところが前述したように、『ナルティメット』シリーズは欧米でも人気が高いが、欧米のファンは年齢層が高いため、流血などのよりリアルな表現を求められるという。それに伴い海外版のみ、そうした描写が採り入れられている(オプションで日本版と同様の表現も可能)とのことだ。

次のページで『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』の開発秘話を掲載!

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