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2013年8月26日(月)

フランス人ジャーナリストから日本のゲームクリエイターへの支援――想像力にリミットをかけず、日本人らしいゲームを【CEDEC 2013】

文:イトヤン

 パシフィコ横浜・会議センターで8月21日~23日にかけて開催されたゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC2013”。ここでは8月21日に行われた“「日本のゲームが海外に通用しない」なんてウソだ!~大人気の日本コンテンツの実態~”と、“日本のゲームでもっと遊びたい!~ヨーロッパから日本のゲームクリエイターへのエール~”と題された、2つのセッションの模様を紹介する。

“日本のゲームでもっと遊びたい!” “日本のゲームでもっと遊びたい!”

 これらのセッションは、日本のゲーム事情に詳しい2人のフランス人ジャーナリストが、日本のコンテンツがフランスでどのように受け入れられているのかを、フランス人ゲーマーへのアンケート結果を元に語ったものだ。2つのセッションは講師が共通しているだけでなく、その内容も密接に関係しているため、ここではまとめてお伝えする。

 まず最初に、講師の2人を紹介しよう。フロラン・ゴルジュ氏は、日本のゲーム事情を海外に伝えているジャーナリストだ。日本のゲーム雑誌でも連載記事を執筆しているので、読んだことのある人もいるだろう。

 アン・フェレロ氏は、フランスの“オタク”カルチャー専門ケーブルTV局“NO LIFE”で、番組を制作しているTVディレクターだ。また同時に、日本のゲームなどをフランス語に翻訳する仕事も行っているという。

“日本のゲームでもっと遊びたい!” “日本のゲームでもっと遊びたい!”
▲ゲーム関係の著作で知られる、ジャーナリストのフロラン・ゴルジュ氏。▲日本の“オタク”カルチャーを採り上げた番組を制作している、TVディレクターのアン・フェレロ氏。

 後述するが、講師の2人は少年少女の頃に日本のゲームから大いに影響を受けた、いわばフランスの“ファミコン世代”だという。ちなみに2人とも日本語が堪能なため、セッションはすべて日本語で行われた。

■1978年、日本のロボットアニメがフランスで大ヒット!

 前半のセッションとなる“「日本のゲームが海外に通用しない」なんてウソだ!~大人気の日本コンテンツの実態~”では、ゲームだけでなくマンガやアニメも含めた日本製のコンテンツが、フランスで高い人気を集めている事実が紹介された。

 フェレロ氏によると、現在のフランスで日本製コンテンツが注目を集めるようになった直接のきっかけは、1978年にフランスのTVで放映された、1本のロボットアニメにあるという。それは永井豪氏原作の『UFOロボ グレンダイザー』だ。

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 この作品が『ゴールドラック』というタイトルで放送されると、フランス全土で大ブームを巻き起こす人気を集めたという。当時のフランス製アニメは非常にマイルドな内容であり、そこに巨大ロボットが毎週激しいバトルを繰り広げる作品が登場したため、男の子を中心に大きな衝撃を与えたのだそうだ。

 日本のアニメファンの間でも、この人気は“視聴率100%”といった伝説とともに知られているが、フェレロ氏によると、当時はフランスのTV局の数自体が少なかったこともあり、実際にその視聴率は非常に高いものだったそうだ。

 『ゴールドラック』が大人気を集めたことがきっかけとなり、フランスには日本製のアニメが続々と輸入されるようになる。フェレロ氏によると、これには経済的な理由もあるそうだ。当時、フランスでアニメを制作してTVで放送すると、1分につき3万フランの経費が必要だったのに対して、日本のアニメを購入してフランス語に吹き替えて放映しても、30分のエピソード1本につき2万フランで済んだという。

■1人の女性によって、大量の日本アニメがフランスのTVで放映される

 『ゴールドラック』で火がついた日本アニメの人気を、1980年代から1990年代にかけてフランスで牽引し続けた存在が、“ドロテ”という名の女性だ。

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 ドロテ氏はアナウンサーや歌手、女優などさまざまな方面で活躍する一方、フランスの国営TVで子ども番組をプロデュースし、自らホストとして出演していた。この番組の中では前述の『ゴールドラック』など、さまざまな日本のアニメが放送されていたが、何を放送するかはプロデューサーであるドロテ氏自身が決定していたという。

 1987年、ドロテ氏はフランス最大の民放局で、自らの名を冠した“クリュブ・ドロテ”という番組をスタートさせた。毎週30~40時間というから、1日に換算すると4~6時間も放送されていたこの番組は、55~65%は当たり前という高視聴率を獲得していたそうだ。そしてこの番組の中で、『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』、『美少女戦士セーラームーン』といった日本のアニメの他、戦隊シリーズなどの特撮ドラマがオンエアされた。

 ちなみに講師の2人は“ジェネラシオン・ドロテ”と呼ばれる、この番組に大いに影響を受けた世代だ。そして“ジェネラシオン・ドロテ”は同時に、ファミコンやメガドライブといった日本製ゲームハードと、そのゲームソフトに影響を受けた世代でもあるという。

 なお、日本アニメのフランス進出に大きな貢献を果たしたドロテ氏は、1988年に来日した際、『仮面ライダーBLACK RX』、『超獣戦隊ライブマン』、『世界忍者戦ジライヤ』という、日本の特撮ドラマ3作品にゲスト出演しているそうだ。

→1990年代、社会的な批判で日本アニメの放映が激減(2ページ目へ)

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