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2013年8月26日(月)

フランス人ジャーナリストから日本のゲームクリエイターへの支援――想像力にリミットをかけず、日本人らしいゲームを【CEDEC 2013】

文:イトヤン

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■日本のゲームの最大の長所は“クレイジー”なところ!?

・現在の日本製ゲームに対する評価は?

 続いては、いくつかのアンケートの結果によって、現在の日本製のゲームを、フランスのゲーマーたちがどのように評価しているかということが分析された。

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 日本製のゲームと欧米製のゲームを遊んでいる比率に関しては、アンケートの結果を総合すると、以前よりはやや減ったが、それでも日本のゲームを遊んでいるほうが多い、といった様子が読み取れる。ところがゴルジュ氏によると「我々が子どもだった時代には、ゲーム=日本といった状況でした。その頃に比べれば、結果的には減っています」とのこと。

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 また、挙げられた事項に“賛成”かどうかで、現在の日本製ゲームを評価する質問に関しては、やや厳しい結果が見られた。“8/16ビットゲーム機では、西欧諸国製のゲームよりも日本製ゲームのほうが優れている”と答えた人が81.5%もいたのに対して、PS3/Xbox 360/Wiiの時代になると、日本製のゲームのほうが優れているという人は、25.8%まで減少しているのだ。

 だが一方で、“日本製のゲームはグラフィック、アニメーションなどで、技術的な後れをとっている”と答えた人は、27.6%しかいない。つまり、技術的な面以外の“何か”で、現在の日本のゲームは欧米に後れをとっていると見られているのだ。

・日本製ゲームの素晴らしい点は?

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 日本製ゲームのここが素晴らしい、とフランスのゲーマーたちが回答してきた意見の中で、フェレロ氏は“日本のゲームの魅力はクレイジーさである”という意見に注目した。この“クレイジー”という言葉は、映画『バトルロワイヤル』を評する際に、フェレロ氏自身も使っていた言葉だ。

 ここで筆者が補足しておくと、“クレイジー”という言葉は“イカレている”といった意味だけでなく、“突拍子もない”や“素晴らしく変わっている”といった、ポジティブなニュアンスでも使用される。

 フェレロ氏も、『塊魂』 『TOKYO JUNGLE』『NO MORE HEROES』『メイド イン ワリオ』といった具体的なタイトルを挙げて、「これらのゲームは日本人にしか作れない“クレイジー”な作品です。私たちは欧米にはない、新鮮な内容のゲームを経験したいのです」と語った。

 遠藤氏はこの点に関して、「日本の有名なゲームクリエイターは、たいていクレイジーだから」と会場を笑わせた上で、「自分のセンスを信じて貫き通していくのが“クレイジー”ということ。ゲームクリエイターなら周囲を気にすることなく、個性の強い人、自己表現のはっきりした人になってほしい」と、会場のゲーム開発者にエールを送った。

 さらにゴルジュ氏は“日本のゲームを遊んでいると、想像の世界を旅しているように感じる”という意見を採り上げて、「これは自分もまったく同感」と、日本製ゲームが描くファンタジー世界の魅力を高く評価した。

・日本製ゲームの欠点は?

“日本のゲームでもっと遊びたい!”

 まず最初にゴルジュ氏は、「この質問では“日本製ゲームの欠点は?”という聞き方をしているので、欧米製のゲームの欠点について聞いても、同じような意見が返ってくるものもあるはずです」と断わりを入れた上で、アンケート結果の分析に入った。

 ここで壇上の3名から注目を集めたのは“海外市場を意識し過ぎて、個性が失われている”という意見だ。ゴルジュ氏は「海外のゲームに似たものを作ってしまっては、日本で作る意味がありません。逆に世界のゲーム市場全体から見れば、どこで作っても似たようなゲームばかりになって、市場が停滞してしまいます」と語った。

 また遠藤氏は“日本の同人ソフトには、海外に挑戦するという意欲が感じられない”という意見に注目。「日本には“同人ゲーム”はたくさんあるけど、海外で言われるような“インディーズゲーム”は少ない。外に出ようとする意識が低いのでは」と語った。

 これについてゴルジュ氏も「海外にも日本の同人ゲームのファンは大勢いますが、コミケに行かないと入手できないし、情報もほとんど得られません。海外のインディーズゲームは今、Steamのようなダウンロード配信によって、マーケットが圧倒的に広がっています。日本の同人ゲームもぜひ、そういったものを活用してほしい」とコメントした。

■日本人が作った洋ゲーではなく、“ジャパン・ゲーム”が遊びたい!

 アンケートのまとめとして、日本製ゲームの将来性に関する回答が紹介された。

“日本のゲームでもっと遊びたい!” “日本のゲームでもっと遊びたい!”

 フランスのゲーマーのうち、日本製のゲームの将来性は明るいと考えている人は、回答者の58%に上った。ゴルジュ氏は「海外でも、匿名の掲示板などでは厳しい意見も多いが、直接聞いてみれば、多くの人が日本のゲームに期待している」と分析した。

 ちなみに遠藤氏が、会場のゲーム開発者たちに同じ質問を挙手で聞いてみたところ、ほとんど手が挙がらず、日本人のほうが将来を悲観しているという結果になってしまった。これに対してゴルジュ氏は、フランスのゲーマーが“日本の若きゲームクリエイターを応援したい”という声が回答者の84%から寄せられた点を採り上げて、「みんな期待しているんだから、がんばってくださいよ!」とエールを送っていた。

 そして最後に、フランスのゲーマーから日本の若きゲームクリエイターに対して送られた4つの応援メッセージが、遠藤氏によって朗読された。

 フェレロ氏は“文化の差を恐れずに、日本人らしいゲームを作ってほしい”というメッセージについて、「私たちは日本のアニメと日本のゲームで育ってきました。そういう意味では日本のいろいろな感覚は、みなさんが思っている以上に理解できます」と語った。さらにゴルジュ氏は「たとえ理解できなくても、クリエイターのみなさんが本当に伝えたいと思っているものなら、私たちは尊重します。“海外では理解できない”と考えることは、絶対にしないでください」と語った。

 また遠藤氏は「“想像力にリミットをかけないでください”とフランスの人たちに言われるのは、ある意味で悔しいこと」と語った上で、「今は若い人ほど、リミットをかけたがる傾向がある。自分がおもしろいと思うことを信じて、新しいものを作れば、こうやって世界の人々が応援してくれる」と、このセッションを締めくくった。

“日本のゲームでもっと遊びたい!” “日本のゲームでもっと遊びたい!”
“日本のゲームでもっと遊びたい!” “日本のゲームでもっと遊びたい!”

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