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2013年12月20日(金)

『World of Tanks』に登場するガルパン戦車を解説! 今回はサンダース&プラウダ編!! 【めざせ! 戦車道免許皆伝 第12回】

文:田中尚道

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■重砲を積んだギガント(巨人)【KV-2】(Tier VI)

『World of Tanks』

 【T-34】と並び称されるソビエトの傑作戦車の1つが、“怪物”の異名を持つ重戦車の【KV-1】。開発当時は、ドイツ軍のあらゆる戦車がその装甲を抜けないという分厚い装甲を誇り、イギリス軍のMatildaとも違って敵戦車を撃破できる76.2mm砲を装備していました。反面、重すぎる重量は機械部分の故障を誘発し、ギアも硬くて、ドライバーが操縦するだけで疲労困憊してしまうという有様。これではいかんと、後に軽量型の【KV-1S】が作られることになります。

 ちなみにKVとは、当時の国防相に相当する最高会議幹部会議長だったクリメント・ヴォロシーロフのイニシャルです。軍事的にはそれなりに優秀だったヴォロシーロフですが、ソビエトのフィンランド侵攻戦争である冬戦争でフィンランドに撃退され、対ドイツ戦ではスターリングラード包囲を招くなど、失敗するたびに解任されるという憂き目にあいます。それでも、スターリンの古なじみのために粛清は免れ、スターリンの死後、国家元首である最高会議幹部会議長に選出されました。その後、ニキータ・フルシチョフが権力を掌握すると、罷免される前に引退を表明して隠居。裏切りとだまし討ちで権力を掌握した、あまり尊敬できないタイプの人物だったようです。

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▲『ガールズ&パンツァー』の劇中で、プラウダ高校のテーマとして使われている楽曲『ポーリュシカ・ポーレ』。その7番には、ヴォロシーロフの名前が出てきます。当時の兵士にはそれなりに愛着があった名前のようです。

 余談ですが、ソビエトでは過去に、ブレジネフという重航空巡洋艦が計画されていました。名前のもとになったレオニード・ブレジネフは、フルシチョフの後ろ盾で地位を得たものの、その後にフルシチョフの追放計画に加担して、その追放後は権力を掌握して最高指導者になりました。重航空巡洋艦ブレジネフは、もともとリガという名前だったものが、彼に媚びる形で名前がブレジネフに変更されましたが、彼の権威が失墜するとトビリシに名前が再び変更。当時はソビエトからの分離独立が盛んで、ラトビアとグルジアが独立すると、その首都となるリガやトビリシといった名前が使えなくなり、最終的にはアドミラル・クズネツォフという名前に落ち着きました。社会主義、マジ怖いわ。

 話が逸れましたが、正面90mmと側面75mmの装甲は、出現当時はドイツに対する脅威となっていましたが、その後に【Panther】や【Pz.IV】の長砲身型が投入されると、厚い装甲の優位性も失われ、重戦車の【IS】に道を譲ります。ここら辺は、イギリスの【Matilda】と似たり寄ったりです。

 この【KV-1】の車体に、152mm重榴弾砲という巨砲を載せた重戦車が、【KV-2】です。『ガールズ&パンツァー』では、プラウダ高校のフラッグ車を護衛するボディーガード的な役割で登場しました。

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 第二次世界大戦でのフィンランド侵攻に際し、その強固な防衛戦にてこずったソビエト軍は、強力な陣地突破力を持った支援戦車を要求します。これにこたえる形で作られたのが【KV-2】。ソビエトのすごいところは、これだけの巨砲を回転砲塔に搭載したこと。おかげで、背の高い独特なフォルムを有することになりました。

 車体は専用設計だったわけでなく、【KV-1】にそのまま載せた巨大砲塔の重さのために、車体が水平状態でないと砲塔を回転させることができなかったそうで……。投入当初は【KV-1】と同様、厚い装甲で敵の攻撃を寄せつけず、かつ152mm砲の強力な攻撃力で、敵対するものを圧倒しました。独ソ戦にも投入されましたが、これに対するドイツ軍第6装甲師団は、軽戦車の【Pz.35 (t)】が主力。それはムリだろ……。まぁ、鈍足重戦車の常で、その後に火力が強化されたドイツ戦車に損耗を重ね、同様のコンセプトを持った戦車は、これ以降作られることはなかったそうです。

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▲【KV-2】の後継となる火力支援車として、『ガールズ&パンツァー』でもちょっとだけ登場した、ロケットランチャー装備のBM-13 カチューシャが知られています。諸説ありますが、一説にはカチューシャとノンナが歌っていた『カチューシャ』が当時の兵士の間で流行し、誰ともなくこの車両をカチューシャと呼ぶようになったとか。

●『WoT』での【KV-2】

★開発ルート:【MS-1】→【T-46】→【T-28】→【KV-1】→【KV-2】

 【KV-2】はその威容な外見から、真っ先に攻撃目標とされる、ある種不幸な戦車です。まぁ目立ちますし。開発当初、搭載している122mm砲は【KV-1』と同じ122mm U-11で、背が高くなった分だけ被弾しやすく、苦戦してしまいます。【KV-2】の真の力が発揮されるのは、152mm M-10を積んでから。この砲、大口径なのに、徹甲弾も撃てるという優れもの。貫徹力110mmでダメージ700は、破格の威力と言えるでしょう。さらに、榴弾なら960ものダメージを叩き出します。むろん、相手の装甲を抜ければ、ですが。

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 砲が大きくなったということは、それだけ装填時間が長くなりますから、射撃した直後の行動に注意してください。もちろん、装填速度をアップする“装填棒”は必須。基本的に、前線より離れた場所から射撃する戦車と、自走砲の間の距離での戦闘になります。【KV-1】と同じ車体装甲を持つので、【KV-1】で戦える相手ならなんとかなるとも言えますが、軽戦車に当てるのは難しく、敵に見つかると自走砲を含めた集中攻撃を浴びてしまいます。とにかく、相手に見つからないように!

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▲とにかく、あらゆる点で遅いのが【KV-2】の特徴! 移動も遅ければ、砲塔旋回も遅い。さらに照準も遅くて、装填も遅い!! イギリス戦車のクセをさらに強くした感じです。使いこなすには、かなりのコツが必要かと。敵戦車の履帯を切ったのに、次弾の装填が間に合わないもどかしさ……。

■KVの後継となったスターリン戦車【IS】(Tier VII)

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 KVシリーズの後継となる【IS】(JS)シリーズは、ヨシフ・スターリンの頭文字を名前に冠する重戦車。ヨシフはジョゼフと同じなので(Iossif=Joseph)で、英語やドイツ語ではJSと記されることがあります。KVの名前のもとになったヴォロシーロフが失脚したため、新しい戦車にスターリンの名前を付けたという経緯です。

 【T-34】や【KV-1】で反抗を開始したソビエトでしたが、ドイツに【Tiger】を投入されると、劣勢に回ります。そこで新たに開発されたのが【IS】(IS-1)。【T-34】が【Panther】を生んだように、【Tiger】が【IS】を生んだという話です。重すぎて故障を頻発した【KV-1】の反省を生かし、重装甲、強火力を維持しつつも、車重が45t以内に収まるように設計されています。

 【IS】は当初、85mm砲を搭載していましたが、【T-34】にも85mm砲を積むことになったことと、【Tiger】の88mm砲の射程外から相手の装甲を抜くには、85mm砲では力不足であることが判明して、より大きな122mm砲を積むように改装されました、これが、『ガールズ&パンツァー』でノンナが乗り換えて大洗女子学園のフラッグ車を追い詰めたIS-2です。要は、IS-1のマイナーチェンジバージョンですね。『WoT』でも、【IS】の砲や砲塔を変更することでIS-2を再現できます。

 ちなみに【IS】は、生産開始から15日後には火力の増強が決まったそうで、もうちょっと待てなかったんでしょうか? なお、122mm砲の威力は強力で、対戦車戦闘においても十分な成果が見込めたものの、122mm榴弾の陣地攻撃力を買われて、ドイツ陣地突破作戦に多くが投入されました。車体の損害の6割は、敵の戦車からの攻撃ではなく、歩兵の携行対戦車火器(パンツァーファウスト)によるものだったそうです。

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▲プラウダ高校の隠し玉として登場した【IS】(IS-2)。これに【Pz.38(t)】で立ち向かうとか、『WoT』ではマッチング以前にありえないシチュエーション。ゲームでも絶望的な状況なのに、角谷杏会長はマジ、肝が太いわ。なお、【IS】は車体前方下部が弱点のため、予備履帯が増加装甲として貼り付けられているのが確認できます。

●『WoT』での【IS-2】

 『WoT』では、残念ながらIS-2という戦車は登場しません。もっと言うと、IS-1もありません。そこら辺をひっくるめて、【IS】という戦車に集約されています。開発当初の85mm砲の貫徹力は120mm相当なので、ドイツの【Tiger】はギリギリ相手にできますが、【Tiger(P)】の正面装甲(200mm)は貫通できないのが残念。なお、【Tiger】の最終砲である8.8cm KwK.43 L/71は、最大で203mmの装甲をぶち抜きます。しか、も装填時間も122mmより速い9秒弱。正面からの撃ち合いは避けましょう。

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 【IS】は【Tiger】のライバル的存在なので比較してみましたが、砲の威力以外は走攻守に優れた優良戦車です。ただし122mm砲は装填に10秒以上掛かるので、撃ったらその場にとどまらずに、すぐ移動しましょう。『WoT』は“疑似ターン性”のゲームだと言われることがあります。相手の攻撃の後、装填中は攻撃できないため、交互に打ち合うケースが多いからですが、上位Tierの大口径砲になればなるほど、その傾向が顕著に表れます。10秒という数字は、『WoT』ではかなり長い時間であることは、プレイした人なら実感しているハズ。撃った後、敵に近づかれないようにしてください。

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▲【IS】の最終砲である122mm D-25T。貫通力、ダメージともに高い数値ですが、1分間に4.88発しか撃てません。つまり装填に12秒以上掛かるということ。この待ち時間は永遠に等しい……。

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(C) GIRLS und PANZER Projekt

データ

▼『World of Tanks(ワールド オブ タンクス)』
■メーカー:ウォーゲーミングジャパン
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月5日
■価格:無料(アイテム課金)

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