2014年4月1日(火)
カプコンから発売中のニンテンドー3DS用アクションゲーム『モンスターハンター4』。本作の開発を手がけたスタッフへのリレーインタビュー第5回を掲載する。
『MH4』は、人気のハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』の最新作。新たな武器種や新モンスター、カスタマイズ可能なオトモアイルー、これまで以上に多彩な登場キャラクターなどが好評を博し、400万本以上を出荷する大ヒットを記録した。
インタビュー連載第5回の話題は、ステージの構成や描写など、本作の世界を構築するために欠かせない背景について。藤岡要ディレクターと徳田優也プランナーに加えて、ステージのデザインを担当した岩崎克巳さんと川瀬恵美さんの2人に参加していただき、こだわりを感じられるエピソードや、海外取材で体験してきたからこそ描けた背景など、たくさんの開発秘話を伺った。
これまでに掲載したストーリー編、ゲームバランス編、モーション編、デザイン編とあわせて楽しんでほしい。(※インタビュー中は敬称略)
▲左から『MH4』ディレクター・藤岡要さん、『MH4』背景グラフィック・岩崎克巳さん。 | ▲左から『MH4』背景グラフィック・川瀬恵美さん、『MH4』メインプランナー・徳田優也さん。 |
――それでは初めに、『MH4』で担当された役割について、教えていただけますか?
岩崎:背景デザインチームのリーダーとして、全般を担当させてもらいました。
川瀬:私は背景のイメージボードを描くなどのアートワークを担当させていただきました。
藤岡:新しい絵作りに協力してくれた2人です。
――今作では岩肌の上に雪が積っていたり、“氷海”の上空に寒そうな雲が渦巻いていたり、これまで以上にリアルな表現、空気感を感じることができました。
川瀬:ありがとうございます! 本作ではノーマルマップという技術を使い、光を当てることでよりリアルな質感を表現しています。
岩崎:“氷海”の雲はベースキャンプからフィールドの奥までが、すべてつながっていることを意識して作っています。1つのエリアだけにあるのではなく、目指す雪山の山頂を麓(ふもと)にいる時から見えるようにしたかったんです。原生林のマップでも、キャンプや麓から山のてっぺんが見えるような作りにしています。
――ゲームを進めてから改めて原生林に降り立つと違和感を覚えたのですが、フィールドにある巨大な竜骨は後半に出てくる“あるモンスター”の骨なのでしょうか?
徳田:アハハハハ。ちょっと答えにくい質問ですね。
藤岡:ええっと……すごく大きなモンスターがいるかもしれないよ、ということを匂わせておいて、プレイヤーの想像力を掻き立てるのがいいだろうと思い、デザインしてもらいました。
岩崎:マップ全体が骨で構成されているので、中腹はあばらだったり、山頂は頭の骨だったりと、骨をちりばめて作っています。
――この骨のアイデアは、開発初期から意識されてデザインされたのでしょうか?
岩崎:このフィールドのネタは、早い段階で決まっていました。
藤岡:ほとんどのマップは、最初にイメージを上げてもらいます。奥へ進むとこんな風になっているというのは、イメージして描いてもらっておかないと、統一感がなくなってしまうんです。
徳田:何を用いて立体感を出すのか悩んでいた時期に、骨が積み重なって立体的な遊びを構築できたらいいなと思ったんですね。原生林は、それをうまく落とし込んでくれたフィールドですね。
藤岡:エリアの数も限られているので、目的を持って仕込まないと入りきらなくなるんです。ですので、ギミックや仕掛けを強く意識しながら、絵に落とし込んでもらいました。
川瀬にはアートを上げてもらう際、そのステージの目指すべきポイントを必ず入れるようにしてもらっています。さっきも話しに出てきた氷海は、大変だったよね(笑)。
川瀬:そうですね(苦笑)。自然がベースになっているため、ネタが特になかったんです。他のフィールドであれば、骨であったり遺跡であったりとプラスアルファの要素がちゃんとあって、ネタがしっかりしていたんですね。でも、氷海についてはそういったネタがなかなか見つからなかったのですが、最終的に山頂の方は天候が荒れている表現や、剣山のような岩山、氷の中に太古の化石が埋まっているネタを仕込みました。
藤岡:剣山という設定であれば、気圧の差によって起こる上昇気流で、山が削られたために生まれました。よく見ると、氷海のフィールドでは雪が下から上に向けて吹き上がっているんです。現実ではあまり見たことがない景色を入れようと、各フィールドのネタを考えてもらっています。
――本作でフィールドを作るにあたって、新たな技術はふんだんに取り入れられているのですか?
藤岡:基本的には今まである技術を使っています。新しいものだけでなく、昔からある技術を効果的に使えれば質感は上げられると思うんです。
岩崎:今までの作品では背景にライトを当てていなかったのですが、今作ではライトを当てて質感をより出しています。加工するフィルターもリッチに使って、作業しました。
藤岡:今回は発色の強いステージが多かったと思います。光がパッと差し込む表現をやりたいと思い、光を膨張させるフィルターやコントラストを強くするフィルターなどいろいろ使って絵作りをしてもらいました。そのため、影がパキっと落ちているのもフィルターの効果です。昨今のCG技術では当たり前なのですが、『MH4』では携帯ゲームでありながらもきっちりと使って、空気感を表現しています。
――モンスターハンターフェスタで少し説明されていましたが、ステージを作るにあたり、どちらに取材行かれたのか、改めてご説明いただけますか?
岩崎:今回はベトナム、カンボジア、チリ、アルゼンチンです。ベトナムとカンボジアの取材では、観光化されていない発見された状態が維持されている遺跡へ行きました。
藤岡:実際に取材の写真を見たんですが、岩がちょっと支えているくらいで、ちょっと揺れたら今にも崩れそうな遺跡なんです。
岩崎:観光客がいなかったり、暗かったりでかなり怖かったです(笑)。ガイドさんに案内をお願いしました。
藤岡:当たり前ですが、安全を確保してから行っています。
岩崎:チリとアルゼンチンは氷河や広い草原、山の風景が目的でした。
藤岡:アルゼンチンはいろいろな絵を見られるんです。日本ではめったに見られないワイドな景色が広がっているので、それを見てもらいました。
岩崎:実は、個人的に昔から行きたかった場所だったんです。
(一同笑)
藤岡:岩崎は帰りたくないって言うんですよ、普通に。
徳田:羊の丸焼きが本当においしいんですよ! ノリで「岩崎さんを2~3年修行させて日本で店を開こう」という話になったら、まんざらでもなくって(笑)。
岩崎:だって、日本ではなかなか食べられないですから。
藤岡:いいな~、食べたかったわぁ。
――取材には何人くらいで行かれたのですか?
岩崎:両方とも4~5人くらいです。
藤岡:現地の装飾品や空気感をゲームのインターフェイスにも生かしてもらおうと、インターフェイスの担当者にも参加してもらいました。
岩崎:素材用の写真を撮ることがメインになるのですが、テクスチャーの素材を撮るというよりも、空気感を感じるほうが取材の意味合いは強かったです。
徳田:そういえば、アルゼンチンの取材は初夏だったんです。準備する際に岩崎さんに「普通の格好で平気です」と言われて現地に着いたら、かなり寒かったんですね。周りを見たら、他の人はちゃんと準備をしていたのを覚えています(笑)。
藤岡:体験できないものを見ることが大事だと思います。風速90メートル近い上昇気流の風圧は、実際に体験してみないと理解できないと思うんですよね。
川瀬:その風によって、硬くて背が低い草が生えているんです。
徳田:風と昔の氷河があらゆるものを削って地形が作られているんですが、それには必ず理由があるんです。その理由を突き詰めていくことでリアリティが生まれています。現地で見聞きしないとわからないことばかりでした。
藤岡:上がってきた絵が嘘っぽかったのでダメ出しをしたら、「実際にこうでした!」と返ってくるんです。すると、「ああ、そうなんだ」と納得できますよね。
徳田:実際に目の前に広がっている現実の風景に、リアリティがなかったですからね(笑)。
――実際、プレイしていて風の印象は強く受けました。特に遺跡平原のベースキャンプを出たエリアはすごく印象に残っています。
藤岡:草が揺れることを始め、風の表現は絶対に入れたかったんです。さまざまなエリアで空気の流れを感じてもらえると思います。そういった“風”もそうですけど、必ず印象的なネタを入れ込むようにしてもらいました。
ただ、天空山は今までのフィールドにはない何か大きなネタがほしくて、かなり悩みました。
川瀬:“山”では、地底火山が別途あったのですが、天空山もテンションの高い山にしなきゃいけないので悩みましたね。
藤岡:いろいろとアイデアを出してもらったんですが、なかなか納得いくものが出てこなくって、「どうする?」と。
(一同笑)
藤岡:そのうちに、ツタが絡まった遺跡群のような絵が上がり始めて、雰囲気が出てきました。天空山は今までの『モンスターハンター』になかったようなステージにしたいと思っていたので、非常におもしろい絵が上がってきてよかったと思っています。
――各フィールドをデザインするにあたり、コンセプトは設けられていたのですか?
川瀬:遺跡平原は鮮やかな色味の広がりのある草原で、「冒険に行くぞ!」という高揚感を出したかったです。開発初期のいろいろなことをやりたいという欲求が詰まっている場所でもあるので、地形の遊びが一番複雑で、おもしろく仕上がっていると思います。
藤岡:遺跡は崩して使えるので地形を組みやすいんです。色味も赤と黄色が印象的に映えるようにデザインしてもらいました。
――『モンスターハンター』シリーズの最初のフィールドにお約束である、さまざまな要素が詰め込まれた場所ですね。
徳田:はい。遺跡平原にはすべての要素を詰め込んで、他のフィールドではその一部をフォーカスしてマップを形づくっています。
――エリアによって色合いの印象が異なりますね。
徳田:巣(エリア5)では急にモノトーンなエリアになりますが(笑)。
藤岡:あそこは、いろいろな人たちから「間違っていないのか?」と確認がきました。「だってモンスターの巣だよ!? 怖い場所に決まっているからいいんだよ!」とゴリ押しました。
(一同笑)
藤岡:最初の鮮やかで抜けが強い感じから、緊張感のある場所というコントラストの違いを感じてもらえたらと思っています。
――他のマップについてもお願いします。
川瀬:地底洞窟なんですが、今まで洞窟だけのフィールドはシリーズを通してなかったんです。奥へ進むほど、下に下がっていくマップになるとおもしろいのではと思いデザインしました。また、洞窟であれば、今回の遊びである段差や崖登りといった要素を生かした地形が生まれると思い、デザインしています。
藤岡:光の演出を効果的に入れられるマップでもありましたね。いろいろな表情が見える洞窟にしようと、思いきって作ってみました。
――奥へ行くほど光が届かないから緑がなくなっていく変化を感じられるデザインだと感じました。続いて原生林について教えてください。
川瀬:南アメリカにパンタナールという土地があるのですが、そこの沼地と太古の骨を組み合わせてデザインしています。色味が豊かで美しい場所があれば、ドロっとした雰囲気を持っている場所もあり、生き物の気配がする場所になっています。ストーリー仕立てで楽しい場所になったと思います。
藤岡:“沼地”と聞くとうっそうとした感じを思い浮かべるんですが、それとは違うアプローチにしたかったんです。最初に目に入るのがスパーンと広がった気持ちいい場所で、ピンク色の生物が飛んでいる。全体として、気持ちいい演出の場所に仕上がりました。
徳田:僕は一番好きですね。生き物の気配が一番感じられる場所だと思います。
――綺麗な水辺の感覚がいいですね。
藤岡:そういった空気感を表現するのは結構難しいんですが、今回は今までのシリーズとは異なりフォグ感を少なくし、光を強くして表現しています。そういう空気感を作ってくれたので、すごく新鮮でよかったです。ちょっと暗がりに行くと、印象的な赤い花があって綺麗な絵に仕上げてくれました。キャンプの青い蝶もそうですね。
――赤い花はすごく印象的でした。少し話は変わるのですが、ベースキャンプからショートカットできるフィールドがいくつかあります。マップには描かないけど、ちゃんと用意する要素になっているのですか?
藤岡:マップの設計者が「ここがつながったらいいな」と思ったら急に増えるんです(笑)。
徳田:いろいろと動線は考えるんですが、つながっていないと不便な場所はどうしても出てきてしまうんですね。初期設定でわかっている時もあるのですが、作りながら増やすケースが多いです。
藤岡:隠しでもなんでもない隠し要素になっています(笑)。
岩崎:マップの形を組み換えることもあります。特に遺跡平原はいろいろやりましたね。
――先ほども少しお伺いしましたが、氷海についてお願いします。
川瀬:今までのタイトルでは、山と雪の組み合わせが多かったので、今回はチャレンジとして海にしました。動く地面や流氷のような表現を入れられたら楽しいと思いながら作っていましたね。突然、波と海が凍ってしまったようなデザインにしています。
藤岡:氷というと青白い表現が多いんですが、今回は底が見えない暗い氷を表現して、緊張感を出したかったんです。氷の表現はすごく難しいので、非常に苦労したフィールドだと思います。ただ、実際に取材で氷山を見て来てくれたので岩肌や氷の表現がすごくいいものになっていると思います。
川瀬:アイルーの巣(エリア8)は突風が吹いています。木が倒れているのは、アルゼンチンの取材の影響が出ています。
藤岡:あそこは、実際に見てもらった感じがそのまま表現できていると思います。
徳田:実は、遺跡平原と同時進行で作っていたフィールドです。段差の遊びがどうなるかわからない状態だったのでかなり手さぐりでしたね。今思うともう少し段差を足してもよかったかなと(笑)。
――確かに控えめな段差ですね(笑)。ただ、ツララという楽しいギミックがあると思います。
藤岡:フルフルを追いかけていける設計にしたかったんです。うまいことフルフルに攻撃を当てられるとゾクっとしますよね。一生懸命登った苦労が報われたなって。ツララを使ったミラクルは起こりやすいんですよ(笑)。壁とツララを行き来できるのはおもしろいです。
――強制的に使わなければいけないギミックでもないですしね。
徳田:その点はすべてにおいて気を付けました。段差を使わないとクリアできないようにはしたくはなかったんです。
――地底洞窟とも関係するフィールド・地底火山についてお願いします。
川瀬:最終局面で登場するモンスターを考慮して、火山を出したいという必要性でスタートしました。ストーリーラインに乗せて「地底洞窟を火山にしたらおもしろいのでは?」というアイデアからデザインしていきました。もともと洞窟自体に火山の火口を設定していたので、それをうまく生かせたかと思います。
藤岡:いつもステージ設計には、昼と夜の二面性を持たせているんです。今回、昼夜がないので、地底洞窟の裏の顔として火山があるのはいいと思い、用意しました。
――火山が活性化することで、地底洞窟に二面性を持たせたわけですね。では、物語の終盤で足を運ぶ天空山についてお聞かせください。
川瀬:「なんだかすごいところに来てしまったぞ」とハンターに思わせるマップにしたかったんです。そのために足場が不安定で上から岩が落ちてくるという、今までにないマップデザインにしています。ストーリーラインとして、この先に禁足地があるので神聖で荘厳な色味を出すために、チベットやインドといった国が持つカラーイメージを持ってきて、紫や赤茶といった深い色で表現しています。
藤岡:最初は遺跡を見せようとは考えていなくて、人工物を排除して、アクセントとして遺跡を使おうと思っていました。本作は遺跡平原からスタートして、人の手が入っている場所が風化して自然に帰っている表現から始めていたので、どう差別化するか悩みました。途中で原生林のように無垢な自然を出しつつ、最後の最後でもう一度遺跡で表現してみようと。最終的には遺跡が長い年月を経て、ツルに絡まり、地面に押し上げられたようなデザインにしようとなりました。
――他にもアイデアはあったのでしょうか?
藤岡:雲海に大きな仏像が立っていて、実は遺跡平原に転がっている頭の遺跡が、その仏像の頭であるっていうアイデアもありました(笑)。
禁足地は、とにかく印象的なステージにしたかったんです。なので、シャガルマガラのデザインと合わせて現在の雰囲気になっています。
徳田:「羽がメチャクチャ舞っている場所にしたい!」というオーダーを聞いて、「それは大変だな……」と。
(一同笑)
藤岡:暗い場所で、白いものが動きますからね。地面に生えている草も最初はひざ上くらいまであったんですけど、遊びにくいと言われどんどん刈り込みました(笑)。ただ、すごく印象的なステージになっていると思います。オーダーによく応えてくれたと本当に思います。
――先ほどもありましたが、今作ではストーリーラインとマップが非常にマッチしていると感じました。
藤岡:普通に設計しているとなかなか出てこないアイデアもありました。
徳田:今までであれば、完全な別マップとして作っていたと思います。ですが、禁足地はあくまで天空山の一部として存在するというストーリーがあったからこそ、生まれたと考えています。
――先ほどからも少し話題に出ていますが、『MH4』で高低差の要素や乗りの攻防が加わったことで、フィールドの設計に大きな影響を与えたと思うのですが、いかがでしょうか?
徳田:とにかくいろいろな実験をしました。遺跡平原がおもしろくなるまでに紆余曲折ありましたね。段差が多く存在する遺跡平原のエリア8がおもしろくなる確証を得られてからは、割とスムーズに進みました。それを軸にして、尖ったエリアをどう配置していくのか、どれくらいまで高低差をつけるのかを設計しています。ただ、確信を持てるまでの序盤は大変でしたね。
藤岡:こういうことやってはダメというマップ作りのルールを見極めるのは、意外と大変なんです。
徳田:大変ですね(笑)。モンスターは5メートルや10メートルなど、決められた高さに対してリアクションします。5メートルだと思ってたけど実は7メートルでした、ということがあると、モンスターは10メートル用のリアクションをしてしまって、ものすごくテンポが悪くなる。そのため、「高さを7メートルではなくて、5メートルにしてよ!」と交渉することもありました(笑)。
岩崎:ただ、そんなまっすぐに地形はできてないんですよ。
(一同笑)
藤岡:遺跡平原はルールが定まっていない状態で一気に作ったので特に大変でした。絵としては、高低差が絡まりあって複雑なほうがいい絵になるので、よい絵を作ろうとした結果ですね(笑)。
徳田:遺跡のエリア4は、「どこに行ったらいいのか、わからない」という声がテスト当時に多数ありました。
川瀬:遊びやすさと見栄えのよさとのせめぎ合いは何度もありましたね。
藤岡:プレイヤー視点だと、いろいろな方向からアプローチできたほうが楽しいと思うのですが、モンスターを制御しているほうからすると……。
徳田:もしも今「高低差のあるマップを作れ!」と言われたら、苦労を知ってしまったので躊躇(ちゅうちょ)するくらいに大変でした(笑)。
――ルールのお話が出ましたが、何かわかりやすい具体例があったらお願いします。
藤岡:段差でいうと、小段差と言われるものは何メートルまでとか、壁に張り付くのは何メートルからとか、絵として段差があるけどスロープで動けるのは何センチまでといった細かいルールをたくさん作りました。作っているうちに、小刻みにルールが増えていきましたね。二重床も何メートル以上の高さを用意するというルールを設定しています。
岩崎:確か、8~11メートルでしたね。ぶら下がっているモンスターが地面にめり込まなくて、下からは攻撃が届きにくい距離です。
藤岡:ただ、高すぎると圧迫感がなくなってしまうので、絵としては低いほうがいいんです。そのため二重床の高さで何度も話し合いました。「いいじゃん、ちょっと低くしてめり込んでも」って(笑)。譲歩してもらって9メートルくらいに決まったんですが、岩崎がそれをすぐ破るという(笑)。“傾斜は何度まで”というルールも、破って怒られていましたよね。
岩崎:自然にはそんなにまっすぐな地形はないんです!(笑)
(一同笑)
徳田:その度に、他のセクションのスタッフから「モーションがおかしくなるだろ!」って突っ込まれていました。
――たださまざまなルールがあるからこそ、他のセクションとも足並みをそろえて作っていける訳ですね。
藤岡:無制限に対応できるものが本当は素晴らしいと思うのですが、立体的な地形というものに対して自分たちの経験がそこまで積み上がっていないのでルールは細やかにあります。この先、もっとシームレスに設計できれば本当におもしろいものができそうだと思っています。現在は、第一歩としてできてよかったと思っています。
――ちなみに、エリア番号を付けるルールはあるのですか?
岩崎:単純にキャンプから近い順に付けています。ただ、入れ替わることや、後から途中にエリアが追加されて順番がくずれることがあります(笑)。
――エリア9はいいものが取れることが多いので、何かあるだろうという説があったのでお聞きしたのです。
徳田:奥へ行くといいものが手に入る設計にしていますが、エリア9だから特別にいい素材を配置するという設計にはしていませんよ。
――ずっと気になっていた謎に答えが出ました。さて、発売されてさまざまな意見が出ていると思いますが、それを受けてどう思われたのか、お聞かせ願えますか。
岩崎:今作は新規要素がてんこもりにもかかわらず、従来通り楽しく遊べるといった意見がすごく多いんです。それはすごくうれしいのが正直な感想ですね。
川瀬:私は地形の遊びを受け入れてもらえたことがすごくうれしかったです。それだけ遊んでいただけるのならば、もっと段差を増やしておけばよかったなとまで思いました(笑)。例えば、地底洞窟から地底火山に変化した際に、多少地形を変えているんですが、もっとダイナミックに変えても遊び心地が変わってよかったのかなと思います。
――それでは、最後にこれを見たらちょっとうれしいという小ネタがありましたら教えてください。
藤岡:原生林の山頂のほう(エリア8)に大きな卵のカラを設置しているんですが、あまりにも大きすぎるので、あんまり気づかれてないかもしれませんね。
岩崎:実は、そこの奥に大きな食虫植物を置いているんですけど……。
藤岡:え? 気づかなかった!(笑)
岩崎:ブナハブラがバシっとされるんです。
藤岡:……ホントに!? 知らなかった……よかったら見てあげてください。
川瀬:遺跡平原のエリア6を見上げると、山と山の間に岩が引っかかっているのですが、実はモンスターの巣(エリア5)が見えているんです。あとはカブトムシなんですが……。
藤岡:えっ!? そのネタ、谷口さんだけちゃうん(笑)!?
(一同爆笑)
岩崎:原生林にあるアイルーの巣に仕込んでいます。ちょっと奥にある、猫キノコのところにいますよ。
藤岡:谷口さん、本当にいろいろなところに仕込むな!
岩崎:テツカブラは知りませんでしたね(笑)。
藤岡:フィールドの話なら、僕からも1つ。未知の樹海ですが、実は仏像の手の平からスタートしているんです。
岩崎:そうですね。僕も忘れかけていましたけど(笑)。
――マップでもカブトムシに注目することになるんですね。ありがとうございました。
⇒第4回でデザインについて迫る!
⇒第3回でモーションについて迫る!
⇒第2回でゲームバランスについて迫る!
⇒第1回でストーリーについて迫る!
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