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2014年5月28日(水)

『カオスチャイルド』に『カオスヘッド』の“あのキャラ”が登場! 志倉千代丸氏が明かす科学ADV第4弾の最新情報

文:カワチ

 『カオスヘッド ノア』の6年後を舞台にした科学ADVシリーズ第4弾『カオスチャイルド』。シリーズのファンを中心に多くの注目を集める本作が、Xbox Oneで発売されることが先日の発表会で明かされた。

 そこで電撃オンラインでは、科学ADVシリーズの企画・原作を手掛ける志倉千代丸氏に対応ハードの選定理由をはじめ、『カオスチャイルド』の開発経緯や過去作とのつながりについて伺った。

『カオスチャイルド』
▲志倉千代丸氏。株式会社MAGES.代表取締役社長。経営者としてだけではなく、科学ADVシリーズの企画・原作、アーティストへの楽曲提供やアイドルのプロデュースなど、多彩な活動を行っている。

■Xbox Oneを選んだ理由はファンとの親和性

――……という話が浅田さんとのインタビューであったんですが。(※どのような話かは、同日掲載の浅田氏インタビューを参照のこと)

『カオスチャイルド』

 バカじゃねーの!

――まったく予想通りの反応が!(笑)

 つまり、彼の言っていることは地球の物理演算エンジンをアドベンチャーゲームの中に取り入れるということですよね。…………………………そんなことできるわけないじゃないですか!

――ですよね。

 しかし、彼にそんな夢があったとは知りませんでしたよ……。ちなみに今の自分の夢は、東京を舞台にした『GTA』(※『グランド・セフト・オート』)を作ることです。それぞれの地域でモブキャラの会話の内容も異なっていて、秋葉原にいる住人に近づいた場合ならボソボソとオタクな話などをしているんです。

 そういうリアルなゲームが作りたいですね。Rockstar Gamesさんがゲームエンジンと開発陣を一式お貸ししてくれれば実現できるんですけど……。もしくは東京をお貸しするので作ってもらいたいです。いや、勝手に自分が東京を代表して貸してしまっていいのかわからないですけどね(笑)。

――大きさでは浅田さんの夢とあまり変わらない気もしますが、実現できるように願っております。さて、ここからは『カオスチャイルド』についてお聞かせください。まずは開発経緯からお教えいただければと。

『カオスチャイルド』
▲『カオスチャイルド』キービジュアル。

 まず、科学ADVシリーズも第4弾ということで、第1弾や第2弾をプレイしていない新規のユーザーさんも増えているだろうなと考えていました。第4弾と謳うことをやめてしまう選択肢もあったのですが、逆に第1弾に原点回帰することにしました。

――そのアイデアはいつごろからあったのでしょうか?

 『ロボティクス・ノーツ』の開発が50%ぐらいまで進んだ時には、次は渋谷の“その後”を舞台にしたものがやりたいと考えていたんです。ただ、『カオスチャイルド』という名前が決まったのはそれからかなり先になりますけどね。

――頭に“カオス”と付けることは決まっていたのでしょうか?

 構想段階からほぼ決まっていました。でも、『カオスヘッド2』にしてしまうとタイトル的に、やはり『カオスヘッド』を遊んでない人に敬遠されてしまうのでこのタイトルにしました。実際に単体でも遊べるようになっていますのでご安心ください。

――今回はメインのシナリオライターとして梅原英司さんを起用していますが、梅原さんの魅力はどこでしょうか?

 とても真面目な作家さんで、特にシリアスなシーンが得意なんです。ただ、真面目すぎて冗談も本気にしちゃうんですよね……。僕が107の横に巨大な力士を登場させようと言ったら、本当にそのシーンを書き出してしまいましたし……(笑)。

――今回は新たにアニメ監督の若林漢二さんも参加されていますが、若林さんを起用することによって、科学ADVシリーズにどのような新しさが加わったのでしょうか?

『カオスチャイルド』

 海外のゲームはハリウッドなどと組むことで映画的な表現のゲームを増やしていますが、日本のアドベンチャーゲームが組むべきなのは、世界に誇るジャパニーズアニメーションだと思うんです。

 というのも、現在のテキストアドベンチャーは立ち絵を置く手法がテンプレート化してしまっているので、それをなんとかしたいという思いがありました。若林さんに入ってもらうことで、まったく新しいADVになることを期待したんです。今回は初の試みということで、イベントCGなどにしかアニメ的なカメラアングルを取り入れられなかったのですが、今後はこれをステップにして、立ち絵の表現なども変えていきたいですね。

――機種にXbox Oneを選んだ理由をお聞かせください。

 科学ADVシリーズの歴史は、マイクロソフトさんや、そのファンとの取り組みから始まっています。またこれによって世界線も大きく変わっています。今もその世界線の延長上にいるのですから、この選択も当然と言えば当然です。

――確かに科学ADVシリーズのコンシューマ版は毎回マイクロソフトの機種で発表していますね。

 なぜかというと、Xbox 360のユーザーは作品について熱く語り合ってくれるファンが多いんです。2時間の映画を見て、10時間ぐらい語り合うような人たちが集まっています。仮に最初にプレイしてくれる人数は少なかっとしても、彼らのコミュニティは様々な媒体を通じて、何倍にも広げてくれるでしょう。

――志倉さんはXbox Oneにどのような魅力を感じていますか?

 まだ全貌が見えていないのでわからない部分も多いのですが、アドベンチャーゲームを作る人間としては申し分のないスペックだと思います。ただ、Kinectは日本ではそんなに全面に押し出さなくてもいいと思っているんですが(笑)。

――なるほど。ボクはXbox 360で毎日『ラブトレ』をプレイしているので重宝していますが……。

 まぁ、もちろん個人差はありますが、少なくともボタンを押すだけで操作できるアドベンチャーゲームには向いていませんよね。疲れますし(笑)。そもそも日本人やその住宅事情にも合っていないんですよ。だからこそ、マイクロソフトさんは日本をあまりターゲットに入れてくれないって面もありますよねぇ。悲しいです。

――志倉さんの中には、科学ADVシリーズでその現状に風穴を開けたいという思いもあるのではないでしょうか?

 そうですね。日本発のIP(Interllectual Propery)が世界に注目してもらえれば、マイクロソフトさんの方針も変わっていくと思います。日本の“moe”や“kawaii”といった文化も世界に注目されて話題になったりしているわけですし、もう少し日本を意識してくださるとうれしいですね。

――確かに日本におけるXbox 360は美少女ゲームを中心にADVが多くて盛り上がっていましたね。

 マイクロソフトさんがその僅かながらのシェアをXbox Oneでも持ち続けていたいと考えているのであれば、僕らはそれにどこまでもお付き合いしていきたいとい考えています。

――ちなみに“Xbox SmartGlass”に関してはどのようにお考えでしょうか?

 自宅で遊んだ続きを外でプレイするというのは今後のスタンダードになっていくと思います。アドベンチャーゲームはちょっとリッチな読み物なので、バスや電車でのプレイにも適しているんですよね。今後も注目していきたいです。

■妄想が生み出す怖さを突き詰めた『カオスチャイルド』

――改めて『カオスチャイルド』の内容についてお聞かせください。『カオスヘッド ノア』とはどの程度のつながりがあるのでしょうか?

『カオスチャイルド』

 『カオスヘッド ノア』のラストで渋谷が崩壊してから6年後が舞台となりますが、まだまだ街は復興中で、その中には数えきれないドラマがあります。そのストーリーを西條拓巳ではない別の人物の視点で描いた物語が『カオスチャイルド』です。直接的な続編ではないので、本作だけでも楽しめるようにしています。あ、さっきも言いましたね(笑)。

――ただ、“ニュージェネ事件”などの『カオスヘッド ノア』を思い起こさせるキーワードは登場しますよね。

 もちろん世界観は地続きですし、これまでの科学ADVシリーズでも世界観のつながりを描くシーンを導入していましたから、そこは変わらないですね。とはいえ、“ニュージェネ事件”などはゲーム内のTIPSでもしっかり説明しているので、知らなくても大丈夫です。

――『カオスチャイルド』はホラーを押した作品になるとのことですが、かなりショッキングなシーンも多くなるのでしょうか?

 そうですね。でもホラーはグロければいいというわけではないと自分は思っています。『カオスチャイルド』では、どちらかというと心理的な怖さを描いています。“妄想科学アドベンチャー”の“妄想”という部分を突き詰めた内容です。

――『シュタインズ・ゲート』や『ロボティクス・ノーツ』から科学ADVシリーズにハマったユーザーは、『カオスチャイルド』のテイストに驚きそうですね(笑)。

 ふり幅はかなり大きいと思います。特に今回は“妄想トリガー”の仕掛けが怖くなっています。『カオスヘッド ノア』では、ポジティブとネガティブのどちらの妄想を選んでも、すぐに本筋の物語に戻ってくることができましたが、『カオスチャイルド』はそれが不可能なシーンもあります。

――妄想によって未来も大きく変わってくると。

 そうですね。そういえば社内会議でどんな妄想シーンを入れようかとみんなで話し合っていた時に、真面目だと思っていた広報担当がHENTAIであることが分かってビックリしました。「超能力があるとして、その力を使って女子机の消しゴムを落とし、それを拾う時にパンツが見えてしまうようなシーンを入れようか」などと意見を交わしている中、いきなり彼が「じゃぁ女の子のパンツを高速振動させましょうよ!」と言い出してビックリしましたよ(笑)。

『カオスチャイルド』 『カオスチャイルド』
『カオスチャイルド』 『カオスチャイルド』

 ユーザーさんに本作の世界観を説明する序盤のシーンの打ち合わせなのに、いきなり飛ばしすぎだろう! と(笑)。話を戻しますが、今回は妄想トリガーの他にも“マッピングトリガー”という新システムによって、ストーリーが分岐するようになっています。『ロボティクス・ノーツ』の時に採用した“ポケコントリガー”が難しいと言われていたので、今回もどこまでユーザーさんに受け入れてもらえるか不安ではありますね。

――なぜ今回は“マッピングトリガー”を搭載しようと思ったのでしょうか?

 海外のサスペンスドラマなどを見ていると、地図の上で現場写真などをピンで留めているシーンがあるんですよ。ピンとピンを糸で繋いだり。あれ一回やってみたいじゃないですか(笑)。あとは、主人公に事件を整理させる理由付けが欲しかったこともありますね。

――事件があった場所に現場写真や手がかりなどをピンで留めて、関係性を推理するシーンは刑事ドラマなどでよくみかけますね。ということは今回の主人公は刑事のほうがしっくりくるような気もしますが、少年にしたのは志倉さんなりのこだわりなのでしょうか?

 刑事でもよかったのですが、それだと主人公に感情移入できないんですよね。事件に巻き込まれるタイプで身近にいそうな人間、というのがこのシリーズの主人公の特徴で、今回もその例に則っています。

『カオスチャイルド』 『カオスチャイルド』 『カオスチャイルド』

――『カオスヘッド ノア』の主人公・西條拓巳は痛々しい性格が話題を呼びましたが、今回の主人公・宮代柘榴はどんなキャラクターになるのでしょうか?

 拓巳ほど痛くはないですね。ただ、知的で“情強”(※情報強者の略)ぶっているのでその部分が痛く見えるかもしれません。

――世界観について詳しく教えてください。まずは『カオスチャイルド』というタイトルとロゴに込められた意味について。

 “渋谷が崩壊したあとの世界で育った子どもたち”という意味です。ロゴの胎児は“その世界で何かが胎動している”ということを示唆しています。

『カオスチャイルド』

――ティザームービーに流れる赤ん坊の声も意味深ですが、こちらも重要な意味があるのでしょうか?

 まだ明かせませんが、“力士シール”と関係しています。

――長く続いている科学ADVシリーズですが、今回のストーリーの構想についてはどこから生まれたのでしょうか?

 そうですね……歴史には世界線の変わる瞬間があると思うんです。例えば2000年問題の時、もしかしたら一度デジタルの世界がリセットされていたかもしれないじゃないですか。でも結局は特に問題は起きなかった。対応パッチも用意していなかったのに、おかしいですよね。

 それは“誰かが何とかしてくれたけど、そのことに気付くことができなかった”というだけだと思うんです。これは『シュタインズ・ゲート』で描いた内容と同じです。

 その一方で世界線の変化に気付くことができたポイントもあり、戦争やテロなどの大事件がそれです。世界線の変動ポイントというのは科学ADVシリーズを語るうえで欠かすことができない要素なのですが、その1つが今回の『カオスチャイルド』の時代にもあります。これまで2009年と2010年、2019年の物語を描いてきたので、その間の物語を描きたくなったんです。『カオスヘッド』の続編の劇場アニメとして作ることも考えたのですが、設定が膨れ上がったのでゲームという形にになりました。

――未来である『ロボティクス・ノーツ』とのつながりも描かれるのでしょうか? 例えばガンヴァレルのアニメはすでに放映されていると思うのですが……。

 見ているかもしれませんが、それどころではないかもしれません。今回の主人公はホームレスなんですよ。

――渋谷はあまり復興していないんですね。

 というよりは、復興しているところとしていないところが分かれているんです。107周辺はかなり復興していますが、あまり復興していないエリアも多くあります。現実世界でも、場所によってそういったばらつきが出てくるはずなので、そこはリアルに描きたかったんです。ちなみに、ノアIIがあった場所に渋谷ヒカリエが建ったのは僕のシナリオ通りです。そのネーミングも含めて(笑)。

――現実世界と交差しているところも科学ADVシリーズの興味深いところですね。ちなみに『カオスヘッド ノア』は300人委員会が暗躍していましたが、本作でもキーとなるのでしょうか?

 『カオスチャイルド』では人々の妄想が生み出す狂気にスポットが当たるので、300人委員会が裏で糸を引いているのかどうかはわからないようになっています。敵がいるとすれば自分自身の妄想かもしれません。

――逆に敵の正体がわからないから怖いと。

 300人委員会の全貌が明らかになるのはまだ先の話ですね。最終的には科学ADVシリーズのキャラクター全員が登場して、300人委員会と戦う話をやりたいとは思っていますが。

――『カオスヘッド ノア』で百瀬が300人委員会とつながっていることが示唆されて以来、その先が描かれていなかったのですごく気になっていたんですよね。

 実はそのモモちゃんが『カオスチャイルド』にも重要なキャラクターとして出てくるんですよ。

――え! そうなんですか!!

 彼女は『カオスチャイルド』でも“フリージア”の社長をしているので、今回もさまざまな情報をくれることになります。モモちゃんのファンはぜひご期待ください!

(C)2014 MAGES./5pb./RED FLAGSHIP/Chiyo St. Inc.
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