2015年3月7日(土)
『ブレイブリーアーカイブ』開発秘話。協力プレイの進捗やタイトルの伏線のヒントも【アプリインタビュー】
おもしろいゲームが好きな電撃Appが注目するスマホアプリ。そのアプリがどのようにして生まれたのか、開発者に直接お話を聞きに行くインタビュー企画を連載中です。
今回クローズアップするのは、スクウェア・エニックスが配信中の本格RPG『BRAVELY ARCHIVE D’s report(ブレイブリーアーカイブ ディーズレポート)』。3DS用ソフト『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』から始まった『ブレイブリー』シリーズのスマホ用RPGとなる本作は、サービス開始から1カ月ほどで早くも200万ダウンロード以上を達成している人気アプリです。
お話をお聞きしたのは、プロジェクトを統括するマネージャーである山中譲児さんと、プロデューサーを担当しつつゲーム開発の現場にも参加している石井諒太郎さん。PCブラウザゲーム『ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ』に引き続き、『ブレイブリー』シリーズに携わることになったお2人から、さまざまな開発秘話をうかがいました。
4月23日の発売が迫ってきたシリーズ最新作の3DS用ソフト『ブレイブリーセカンド エンドレイヤー』とリンクする部分もあるようなので、シリーズファンはぜひ最後までご覧ください!
▲右からマネージャーの山中譲児さん。プロデューサーの石井諒太郎さん。 |
■3DS、PC、スマホと、それぞれ違うユーザーの獲得に成功!
――まずは『ブレイブリーアーカイブ』における、お2人の役どころをお聞かせください。
山中:本作のプロジェクトを統括するマネージャーとして、全般的な部分を見ています。今回は石井がかなり現場寄りの動きをしているので、かなりの部分をまかせている感じですね。
石井:山中には、僕が変なことをしないように見張っていただいています(笑)。自分のポジションはプロデューサーですが、開発から運営まで、ほとんどの部分に携わっています。今回については管理だけでなく、かなり手を動かしていますね。
――お2人とも『ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ』の主要スタッフでもあるので、かなり気心が知れた感じで開発を進められたのでは?
山中:気心が知れすぎていて、石井は僕の意見を全然聞いてくれないんですよ(笑)。
なんて冗談はさておき、石井とはずっと『プレイングブレージュ』で仕事をしてきたので、彼が今回の『ブレイブリーアーカイブ』のプロデューサーになることが決まった時に、その後見人的な意味合いも兼ねてマネージャーになった流れですね。
石井:自分は今回初めてスクウェア・エニックス作品のプロデューサーとなるため、山中にいろいろとバックアップをしていただいた形です。
自分はもともとモバイル系のアプリの開発をしており、入社したタイミングで『プレイングブレージュ』のアシスタントとしてゲームデザインやシナリオ執筆など、幅広い部分を担当してきました。
その後、『ブレイブリーセカンド』の発売に向けて、より『ブレイブリー』シリーズが多方面に展開していくことが決まった時、そういった開発経験を買われてスマホアプリを担当することになったんです。
――そうして開発が決まった後、どのようなコンセプトで作り始めたのでしょうか。
石井:きちんとしたRPGとして作ることは大前提でした。『ブレイブリー』シリーズのファンの皆さんはもちろん、“スクウェア・エニックス作品”と聞くと大作RPGを期待される方も多いので、それらの期待に応えたいと思いました。
もう1つ意識したのは、新たなユーザーさんに遊んでいただくことです。『ブレイブリー』シリーズは3DSで始まり、『プレイングブレージュ』が展開され、今回はスマホという新たなデバイスでの配信となります。せっかくなら今までシリーズを遊んだことがなかった人たちに向けて、広い意味で受け入れられやすいものを作りたいと考えました。
山中:これは『プレイングブレージュ』の時のデータになりますが、意外と3DS用ゲームとPC用ゲームのユーザーさんがかぶっていなかったんですよ。3DSが好きだから初めてPCのブラウザゲームを遊んでみた、逆にPCがおもしろかったから3DSに興味が湧いて遊んでみたといったように、お互いの作品をきっかけにして別の『ブレイブリー』シリーズに手を伸ばす方が多かったんです。
そういう意味でスマホは非常に気軽に遊び始められるデバイスなので、『ブレイブリーアーカイブ』をきっかけにして3DSやPCのシリーズ作品を遊び始める方も多くなると思っています。実際、スマホとPCのユーザーはほとんどかぶっていない状況です。
――『ブレイブリーアーカイブ』と『プレイングブレージュ』を兼任されているスタッフも多いのでしょうか?
石井:基本的には別ですね。ただ、デザイナーやプランナーの一部は両方にかかわっているので、特に情報共有をしやすい部分はありますね。僕はかなり『ブレイブリーアーカイブ』寄りで動いていますが、逆に山中は『プレイングブレージュ』のプロデューサー業務がメインという形です。
――余談ですが、『ブレイブリーアーカイブ』の画面写真を初めて見た時はまだ情報が少なくて、『プレイングブレージュ』の移植のように感じたのですが、実際に遊んだら完全に別物でした。
山中:『プレイングブレージュ』はPC向けのブラウザゲームなので、前のめりになってカチカチやり込むタイプのゲームを想定しました。だからこそ、かなり歯ごたえがある難易度に設定していますが、これをそのまま移植してもスマホユーザーには受け入れられないだろうと判断しました。
『プレイングブレージュ』はゲームシステム的にもいい意味でマニアックな仕上がりとなっているので、スマホ用はもっと気軽に遊べたほうがよいだろうと開発初期から話していました。なので、移植という発想はまったくなく、最初からスマホ用に新しいものを作るという流れでした。
石井:まだ多少誤解されている方もいらっしゃるようですが移植ではなく、シリーズの一作品として、完全に新規で作りました。
――スタートしてまだ1カ月ほどですが、手応えはいかがでしょうか?
石井:想定していたよりも非常に多くのユーザーさんに遊んでいただいているようで、ダウンロード数も好調です。配信してすぐに100万を突破して、すでに200万ダウンロードを突破しています。
――すごい数ですね。そのわりにはサーバートラブルなどがないので、当初からそれぐらいの数を見込んでいたということでしょうか?
山中:いえ、まったくの想定外でした。ただ、これまでの運営のノウハウがあったので、ユーザーの皆さんにご迷惑をおかけしない形で対応ができた形ですね。
石井:裏では必死で頑張っています。おかげさまでサーバーがすぐ満杯になるので、何回増強したかわからないくらいですね。
200万という数字はもちろんうれしいのですが、何よりうれしいのは遊び始めた方々がすぐにやめずに、ずっと遊び続けてくださっていることです。そういった意味では、“RPGを遊びたい”、“『ブレイブリー』シリーズを遊びたい”といったインストールしてくださった皆さんの期待には応えられているのかなと感じています。
ユーザーさんの層的にも、本当に老若男女と幅広い方々に遊んでいただけているので、これからも皆さんに飽きずに楽しんでいただけるようにゲーム内容の充実を努力していきます。
■ジュエルによる特殊行動や浮かせて落とすコンボが生まれた理由は?
――『ブレイブリー』シリーズの流れをくむ作品ということで“らしさ”を意識した部分はありますか?
石井:何をもって『ブレイブリー』と呼ぶのかは難しいのですが、ちゃんとしたRPGであることなど、ゲーム全体が醸し出す雰囲気が『ブレイブリー』らしさなのかなと思っています。
そういった考え方のもと、バトルについては“ブレイブ(※)でたたみかけ、倒しきれなかったらやられる”という3DSでのシチュエーションをイメージし、先制攻撃をして倒しきれなかったらやられる、といった緊張感が出せるように意識して作っています。
※ブレイブ……シリーズ1作目3DS用ソフト『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』の特徴的なシステムで、ブレイブをしてBPを消費することで、1ターンの行動を増やすことが可能。BPは前借りできるので、バトル開始時に総攻撃をかけることも可能ですが、倒しきれなかった場合はBPが回復するまで行動できないというリスクを伴います。
――『ブレイブリーアーカイブ』ではジュエル(※)のシステムによって戦略性が深まり、遊びの幅も広がったと思います。あれは当初から考えられていたのでしょうか?
※ジュエル……バトル中の行動力を示すもので、その個数だけ行動が可能。ジュエルによって“行動が全体化”、“同じ行動を2回行う”など、特殊な効果が付与されることもポイントです。
石井:行動力としてのジュエルシステムは、かなり早い段階からありました。ジュエルの数だけ、好きなキャラを好きな順番で行動できるようにしようと。その際、本作にはMPの概念がない=魔法や必殺技を無限に使えるのはおもしろくないということで、一度使ったコマンドは使用不可にするという制限が決まりました。
ただ、これでは何をどのような順番で行っても最大効率が変わらないので、考える楽しみがないんですよね。もっとユーザーに考える余地を持ってもらうにはどうしたらいいかというところで、ジュエルに特殊効果を付与することにしました。
――なるほど。もう1つの大きな要素である、浮かせて叩きつけるシステムはいかがですか?
石井:その要素は一番最初から考えていました。というのも、ただ攻撃をするだけだとバトルが単調になりがちなので、何かアクセントを盛り込みたかったんです。
当初はもっとリアルタイムで浮かせてコンボを決める形も考えたのですが、そうすると難易度が上がりすぎてしまいまして。タイミング重視のゲームではなく、コマンド入力という部分を意識した結果、現在の仕様に落ち着きました。
――浮かせまくって倍率を跳ね上げてから叩き落とすのが気持ちいいですよね!
石井:マンネリ化を避けるためにも戦闘シーンは毎回変化させて、状況に応じてユーザーが考えてコマンドを選択することを目指しました。
――こういった仕様面を考える時も、山中さんと意見を重ねたりしたのでしょうか?
山中:たまに意見を出すこともありましたが、基本的には石井にまかせた形ですね。自分がバトルについて口を出したのは、とにかくオートバトルを入れてほしいという点だけです。
石井:オートバトルを実装することは初期から考えていたのですが、顔を合わせるたびに「まだ入ってないの?」と催促されて大変でした(笑)。
――オートバトルはとても便利ですが、火属性無効の敵に火属性の攻撃をすることも……。もっとAIの頭がよくなるとうれしいのですが。
山中:現状のオートバトルはちょっとおバカですよね。でも、これを改良していく予定はありません。
石井:もちろん、技術的には非常にハードルが低いのですが、あまりオートバトルを賢くしてしまうとゲーム性を壊してしまうこともありますので。
特に今回はジュエルシステムや空中コンボなど、より有利な戦い方を模索することが醍醐味となっていて、経験値アップなどのリザルトボーナスも用意しています。オートバトルのボタンを押すだけのゲームになってしまうと、『ブレイブリーアーカイブ』本来の楽しみ方から離れてしまうので、これ以上賢くすることは考えていません。
■タイトル名やゴルージュに関する伏線のヒントを公開!
――『ブレイブリー』シリーズはタイトルに仕掛けがあることが多いので、ファンが深読みをする土壌があります。そんな中で本作のタイトルはスムーズに決まったのでしょうか?
山中:まったくスムーズには決まりませんでしたね(苦笑)。
石井:本当にシリーズファンの方は深い考察をしますからね。とにかく悩んでいるうちにリリース直前となり、「さすがにもう決めないとまずい!」と話していたところ、シナリオを担当したなめこ印さんから提案をいただいて、今の形に決まりました。
山中:ちなみに、自分は“イデアとゆかいな仲間たち”という提案をしたのですが……。
石井:「ふざけないでください!」と全力で拒否しました。
――なんだかこう、お2人の距離感がわかるようなやりとりですね(笑)。ちなみにタイトル内の“ディーズレポート”という部分は、3DS用『ブレイブリーデフォルト』の“Dの手帳”を思わせますが?
石井:そこはシリーズ全体にかかわる話になってしまうので、詳しいことはご想像におまかせします。ただ、ちゃんとネタは仕込んでいるので、いつか皆さんに気付いていただけるといいなと思っています。
――公式Twitterでも、まだタイトルの本当の意味に気付いている方はいないとコメントがありましたが、かなり難しい伏線になっているのでしょうか。
山中:シリーズ全体にかかわるものなので、『ブレイブリーアーカイブ』だけを遊んでいると正解は見えてこないでしょうね。もっと言いますと、4月23日に発売される『ブレイブリーセカンド』を遊んでいただかないと、本当の意味はわからないかもしれません。
石井:『ブレイブリーセカンド』のストーリーはとても深いものになっていますからね。その発売後には、本作のタイトルの意味に気付く人が増えるのかなと思っています。
現時点で少しだけヒントを出すと、実は謎解きの鍵を持ったキャラクターはすでに登場しています。しっかりと調べていただければ、察するところはあるかもしれませんね。
――うーん、ゴルージュが怪しいけれど、ドットノーヴァ兄妹なんかも秘密が多そうだし……悩みますね。さておき、キャラクターのプロフィールは『プレイングブレージュ』と共通しているものもありますが、世界設定的に近しい部分はあるのでしょうか?
石井:かなり意識して作っています。これまでにも「別の世界のお話ですが、つながりはあります」とお伝えしている通り、本作には『プレイングブレージュ』や『フライングフェアリー』など、シリーズ作品のキャラクターが数多く登場しています。
詳しくは言えませんが、普通に遊んでいると、実は登場しているのに見過ごしている存在なんかもあるかもしれません。
――なかなか意味深な言葉ですね。現状では、館長のゴルージュが『プレイングブレージュ』の賢者のゴルージュと同一人物なのかどうかも気になるところですが……。
石井:『ブレイブリー』シリーズの世界観的に複数の世界が存在するので、完全に同一の人物かと言われれば、どうでしょうね。ただ、まったく関係がない別人ということではありません。
――『プレイングブレージュ』のストーリーも佳境に入ってきていますが、『ブレイブリーアーカイブ』とリンクすることもありえるのでしょうか?
石井:メインのストーリーは作品単位で単独でも楽しめるという前提ですが、お互いに補完する部分があってもおもしろいかなとは思っています。
例えば『アーカイブ』でのゴルージュは図書館の館長を務めていますが、『プレイングブレージュ』では“深淵の三賢者”と呼ばれる人物です。では、彼はいつからその二つ名で呼ばれるようになったのか? そういった部分を『アーカイブ』の中でのエピソードとして描くことはありえます。
――シリーズ作品を遊んでいると、思わずニヤリとできるネタを詰め込んでいくというわけですね。
石井:そこはいろいろと用意しています。特に『ブレイブリーセカンド』をプレイしていただくと、ニヤリとできるところが増えると思いますよ。
――そういった『ブレイブリー』シリーズのストーリー設定や世界観は、スタッフ間でどのような形で共有されているのでしょうか?
山中:『ブレイブリーセカンド』を例にすると、必要な情報はお互いにいつでも見られるようにサーバーで共有管理していて、毎週ペースで定例会を開いて状況確認をしています。
石井:ちゃんと情報共有をしないと、やりたいネタがかぶることもありますからね。実際にいくつか、『ブレイブリーアーカイブ』でやろうと思ったネタがすでに『ブレイブリーセカンド』に盛り込まれていて、調整をした部分もありました。
そういった面でもすり合わせが必要で、最終的にどのような形で関係性を持たせるかという部分は打ち合わせを密に重ねています。
――キャラクターについては、2月上旬に『フライングフェアリー』の人気キャラが多数追加されましたが、どのような基準や理由で選んだのでしょうか。
石井:ちょうどその時期『ブレイブリーセカンド』の体験版のアップデートがありまして、連動キャンペーンを行いました。そんなタイミングなので、コンシューマの『フライングフェアリー』のキャラクターを出すとユーザーさんに喜んでいただけるのではと考えて実施しました。
もう1つの理由として、もっと男性キャラクターがほしいというご意見に対して男性キャラをメインとしたのですが、意外と反応が薄くて残念でした。
山中:ちゃんとアルテミアがいるのに「おっさんばかりか」と言われていました(笑)。どのキャラもかなり強力で、特にバルバロッサの実力はトップクラスなので、ぜひ注目してほしいですね。
石井:ヴァルキリーのエインフェリア、狩人のアルテミアときて、召喚士のメフィリアはいつ実装されるのか? というご意見もいただいておりますが、召喚士を実装するとなると新ジョブとして調整をしないといけないので、もう少し時間がかかりそうです。
――ティズやアニエスなど、いわゆるメインキャラクターたちの登場も期待してよいでしょうか?
石井:もちろんです。時期について明確なお約束はできませんが、ご期待ください。『フライングフェアリー』に限らず『ブレイブリーセカンド』のキャラクターを期待している方も多いと思いますが、そういったキャラクターも間違いなく出していきます。
これから4月23日の『ブレイブリーセカンド』の発売日に向けて、より盛り上げていければと思っています。
■なぜあえて2Dなのか? デザイナーが見せたグラフィックへのこだわり
――本作はグラフィック面、特にバトル中のアニメーションにものすごく力が入っていますよね。初めて画面写真を見た時は『プレイングブレージュ』の流用かと感じたのですが、実際はすべて完全新規ですよね?
石井:はい。バトル中などで登場するキャラのグラフィックはもちろん、モーションもすべて作り直しています。クオリティの高さに関してはもう、開発を手掛けるデザイナーの力ですね。
――技術的に何か特殊なことはしているのですか?
石井:ボーンアニメのような感じで、描いたパーツに関節をつけて動かしているだけなので、特別なことはやっていません。ただ、2Dとはいえ1シーンずつ撮影するアニメではなく、3Dグラフィックの作り方に近いですね。
――既存の作品と比べても、かなり滑らかだと感じますが、そこも個人の頑張りですか?
石井:そうですね。完全にデザイナー個人のこだわりやセンスです。
山中:冗談交じりで「ちょっとこの女性キャラの胸を揺らせないかな?」とお願いしたら「そんなものに使うメモリはない!」と怒られたことがあります(苦笑)。
石井:そんなことが原因でアプリが落ちやすくなったらどうしてくれるんですか(笑)。
――とはいえ、とにかくモーションが細かいですよね。武器を構えるモーションの出来も素晴らしくて、びっくりしました。
石井:最近は3Dのゲームが増えてきて、いわゆるHD系のものがメジャーになってきている中で、あえてスーパーファミコンな作品を作りたかったんですよ。だからこそ、動きにはこだわりを見せないとショボイと思われてしまうので、細かな部分まで作り込んでいます。
――むしろ、スマホアプリでここまで描き込むのかと驚かされたくらいです。
石井:スマホ自体のスペックは非常に高いです。ただ残念ながら、ゲームに集中して使うわけではなく、いろいろなアプリを並行して動かすことも多いので、理論値よりも下ブレする形で動作が重くなることもあります。だから、あえてフル性能で作らないことがありますね。
――2Dのグラフィックでこれほどこだわって描きこまれているタイトルも少ないですよね。
石井:自分にとってなじみ深いゲーム機は、やっぱり昔遊んだスーパーファミコンなんです。なので、そういった気持ちも少なからず影響していると思います。
――敵のやられモーションもいいですよね。個人的にはサキュバスがひざを折って崩れるところとかグッときました。
山中:それはもう、デザイナーがかわいい女の子好きなので(笑)。
石井:ユーザーさんからのご意見では、むしろ敵キャラのほうがよくできているなんて声もいただきました。敵は何度も戦う分、目にする頻度が高いので、そこで手を抜きたくなかったという部分もあります。
山中:今回のグラフィックを担当しているデザイナーは『プレイングブレージュ』も担当していました。その開発中に感じた“この仕様をこうしていたら、もっとキャラを動かせていたかもしれない”という欲求を全部本作にぶつけた感じですね。
■キャラクターに関する裏話が続出。クリスマスなどの期間限定衣装も検討中!
――ちょっと答えにくいかと思いますが、お気に入りのキャラクターについて教えてください。
石井:最強キャラの定義は状況によって変わるので、あくまで個人的な感触ですが、ガーナやガトーが性能的にもいいですね。ガーナはディスペルが優秀で、敵のバフを解除しながらダメージも与えてコンボも切らさないところがお気に入りです。
意外と入手しやすいキャラクターなので、皆さんにももっと使ってほしいなと思います。期間限定イベントは難易度を高く設定してあるので、つねにこのキャラを連れていかないと落ち着かないというか、私の中ではほぼ必須レベルですね。個人的には星6だったらよかったなと思っています(笑)。
――単純に星の数だけでは強さを推し量れないところがありますね。
石井:そうですね。特定の状況で真価を発揮するキャラクターが多いので、いろいろと試してみてほしいです。
山中:ガーナとガトー以外だと、リンファかな。
石井:物理に寄せるか魔法に寄せるでもだいぶ変わりますね。あとはアースブレイカーのおかげで実は斧がものすごく強いのですが、ユーザーさんにはずっと弓が人気なんですよ。
――弓キャラの中でも星6のキューリの人気が高い印象がありますね。
石井:レアリティが高いキャラはもちろん強いのですが、ちゃんとスキルなどを含めて考えると、実はキューリよりも強いキャラはけっこういます。ヘビーなゲーマーの方は、ぜひ他のキャラにも目を向けてもらえると発見があると思いますよ。
――でも、やっぱり巫女さんとか、かわいい子が手に入るとうれしくてついつい使っちゃうんですよね。性能とか関係なしに。
山中:その気持ちはわかります(笑)。
――『プレイングブレージュ』からの登場キャラも多いですが、お気に入りはいますか?
石井:個人的にはアカネが好きなので、もう少し星が多くなるようにして、強くしてもよかったかなと思っています。そんなことを言うと職権乱用っぽいですけど(笑)。
――今は星の数が低いキャラクターでも、上限が引き上げられる可能性はあるのでしょうか?
石井:ちょっと特殊な成長システムを検討しているので、今よりも能力の上限が引き上げられる可能性はあるのですが、基本的に既存のキャラの星の数が増えることはありませんね。
ただ、例えばアカネの別バージョンとして星6まで進化できるものは出るかもしれません。かなり前向きに検討しているものとして、ハロウィンやクリスマスといった季節限定の衣装を着た別バージョンのキャラを登場させることはありえます。そういった形を含めて、人気があるのに不遇といわれているキャラクターたちを救えたらいいなとは思っています。
――期間限定衣装は楽しみです! もし実現したら、当然バトル中のグラフィックも変化するんですよね?
石井:モーションまで作り直すかはわかりませんが、グラフィックは変えるつもりです。
山中:でも、本作はキャラクターが進化すると衣装が変わるんですよね。そのバリエーションを考えるのが大変かもしれません。
石井:確かにハロウィン衣装くらいならどうとでもなりそうですが、水着だとけっこう難しいですね……。
本作では進化をするたびに少し露出度が上がることが多いのですが、水着はもう脱げないじゃないですか。ちょっと悩ましいところではあります。
山中:いっそスクール水着からスタートするとか?
石井:うーん。それはそれでなんだか変な気が(苦笑)。なんにせよ、まだ具体的には何も決まっていないので、あくまで個人的な希望のレベルです。
▲『プレイングブレージュ』ではさまざまな衣装のキャラが登場しました。『ブレイブリーアーカイブ』でも期待! |
――どちらかというと既存のキャラクターをいじるよりも、新たなキャラクターを追加していく方向になるのでしょうか?
石井:現時点でキャラクターが足りているとは思っていないので、新規キャラクターはどんどん追加していきます。現状のキャラクターに関しては、先ほど少しお話したように特殊な成長システムを練っている最中です。バトルマンガでいうところの“まだ変身を残している状態”なので、まだ強くなる余地は残しています。
――個人的には、キャラクターのスキルの付け替えができるようになると遊びの幅が広がるかと思います。そういったことは可能なのでしょうか?
石井:仕組みとしては可能ですが、スキルのカスタマイズについては予定していません。理由の1つは、自由度が高くなると仕組みが複雑になって敷居が高くなるからです。だから、過度なカスタマイズは避けようと考えています。
もう1つの理由は、カスタマイズができるとどんどん効率化が求められて、結果的に一択の最強キャラを作る作業になりがちという部分です。本作はキャラごとに個性を持たせており、戦う敵にあわせて正解が変わるようなゲームデザインにしています。自由なカスタマイズは個性を殺すことにもなりうるので、今のところは考えていませんね。
――確かに難易度が高いダンジョンは、ちゃんと敵の攻撃力を下げたり、仲間の防御力を上げたりできるキャラがいないと攻略が困難です。
石井:ゲームデザイン的に同じキャラを使い続けてほしいわけではないので、複数のパーティを編成して使い分けてもらえるとうれしいですね。
ただ、本作では進化することでスキルが変わる要素があるので、それと同じような形で特定の装備を身に着けることでスキルが変化する要素などはありえます。
――ちなみに性格によってステータスの上がり方が変わりますよね。アイテムなどで後天的に変えることができると便利なのですが……。
石井:スキルと同じでキャラの個性を重視したいので、性格を変更する要素の予定もありませんね。こちらも、特定の性格じゃないと装備できない特殊装備というのは、おもしろいかもしれません。
■3周年に向けて『プレイングブレージュ』も“Ver3.0”へ大幅進化!
――せっかくですので、『プレイングブレージュ』についてもお聞かせください。『ブレイブリーアーカイブ』が発表された時には、サービスが終わるというウワサもありましたが?
山中:それはデマですね(笑)。PCの『プレイングブレージュ』が終わるからスマホ用の新作が出るのだと、ちょっと早とちりをしてしまった方もいたようです。
もうすぐ『ブレイブリーセカンド』が発売されますし、自分がプロデューサーを務める『プレイングブレージュ』でもしっかりと盛り上げていきます。少し先にはなると思いますが、何か新しい遊びを盛り込んでいければと鋭意企んでいるところです。
3周年に向けて“Ver3.0”へと大幅バージョンアップを行う予定がありまして、いろいろと準備しています。内容についても近いうちにお伝えできると思いますので、もう少々お待ちいただければと思います。
――『プレイングブレージュ』はグランプリなど、プレイヤー同士の対戦にも力が入っているので、『ブレイブリーアーカイブ』とはまた別の路線で楽しめますね。
石井:そうですね、『プレイングブレージュ』が対戦に重点を置いているのに対して、『ブレイブリーアーカイブ』では協力プレイを重視しているので、そういう意味では立ち位置が違うと思います。
――ストーリーについては、そろそろクライマックスへ向けて終着していくのでしょうか。
山中:教皇派と大司教派の対立については決着していく部分があると思いますが、まだいろいろと伏線は残っているので、今後のストーリー展開にもご期待ください。
■新ジョブはどうなる? 今後の展開や新システム・協力プレイの話題も!
――ここからは『ブレイブリーアーカイブ』の今後の展開についてお聞きします。まずはストーリーですが、今後もどんどんと追加されていくのでしょうか。
石井:そろそろ30章近くになり、これまではキャラクター紹介という感じでしたが、ようやく本格的なストーリーが動き始めました。なめこ印さんの執筆のペースも上がりそうなので、より順調に追加していけると思います。
それにともないキャラクターダンジョンも増やしていきます。間隔的には、毎月1つ以上はキャラクターダンジョンを増やせるくらいのペースで、メインストーリー=ノーマルダンジョンを増やしていきたいと思っています。
――公式Twitterでは協力プレイを匂わせるコメントがありましたが、具体的な形は見えているのでしょうか?
石井:複数のプレイヤーで同時にダンジョンを攻略していくようなイメージです。例えば目の前の扉を開くためには、どこかで誰かがスイッチを押さなければいけないとか、このボスとこのボスを両方倒さないと扉が開かないのでみんなで倒しに行こうとか、ユーザー間で協力しながら楽しめるようなダンジョンを鋭意開発中です。
――リアルタイムに同期を取りながら進める感じですか?
山中:そうですね。お互いに空気を読みあいながら動くと、みんなが幸せになれると思います。プレイ人数はまだ具体的にお答えできないのですが、『プレイングブレージュ』のような大規模ではありませんね。
石井:現在、バトル中にアプリが落ちてスタミナが失われたという不具合も確認しているので、これを解消すべく復帰機能の開発を優先しています。ですので、新コンテンツに関しては少々遅れてしまうかもしれません。
――ストーリーも追加しつつ、ジョブなども随時追加されるのでしょうか?
石井:そうですね。オリジナルの新ジョブはもちろんですが、『ブレイブリーセカンド』で初登場となるジョブについても、積極的に実装していくつもりです。ただ、『ブレイブリーセカンド』には大変そうなジョブが多いんですよね……。
――パティシエとかねこ使いとかエクソシストとか(笑)。
石井:どんな性能にすればいいんだろうというのが本音ですね。本作では進化に応じてジョブ名が変わるので、パティシエから派生するジョブ名もたくさん考えないといけませんし。ねこ使いとか、もはやどう派生させるべきかわからないですよね。
――猫だとやっぱり、虎使いとかライオン使いとか?
石井:ネコ科つながりとはいえ、もはや猫が関係なくなっちゃいます(笑)。
――続いて、属性のバランスに関する質問です。闇属性に比べて光属性の魔法が優遇されている印象があるのですが、いかがでしょう?
石井:それはおそらく、まだ序盤だからか、期間限定のイベントダンジョンなどをプレイしていないからだと思います。ダンジョンによって敵属性のバランスを変えているので、光属性の魔法メインのパーティで進むと、逆に苦戦する場所が出てくるはずです。
ゲームが進むと物理攻撃や魔法攻撃を反射する敵も増えてくるので、オートバトルに頼りすぎると苦戦することも増えてきます。もしも苦戦しているようであれば、パーティを固定せずにいろいろと試してみるのがよいと思います。
――なるほど。あと、これは個人的な質問なのですが、進化素材キャラで所持枠が圧迫されてしまうことが多いんですよ。低ランクの素材はどの程度確保しておくのがおすすめですか?
石井:ゲームをデザインした立場の観点では、使わない進化素材は売却してよいと考えています。進化ダンジョンは曜日ダンジョンを使えば比較的簡単にもらえるので、必要な素材が出てきたら、その時に集めるくらいの感覚ですね。
さすがに高ランクの進化素材はキープしておくと便利ですが、星2~3くらいならスタミナ消費も少なくてすぐ稼げるので、そこまで温存しなくても大丈夫だと思います。
――もう1つ、これも個人的な質問というか要望に近いのですが、長くパーティに入れているキャラクターと仲よくなれるようなシステムはいかがですか。特に女の子キャラクターと仲よくなりたいのですが!
石井:親密度や好感度が上がってイチャイチャできるみたいな感じですか(笑)。
山中:RPGではなく、別のゲームになっちゃう気がしますね。
石井:例えば、一緒に冒険した分だけ親密度が上がって、ある程度親密度がないと別軸の成長ができないといった考え方はアリかもしれません。ただ、今からその仕組みを追加するのは厳しいところです。
――最後に、本作を遊んでいる方と、これから遊んでみようという方へメッセージをお願いします。
石井:そもそも体験版をたっぷり遊べるというのも『ブレイブリー』シリーズの特徴ですが、『ブレイブリーアーカイブ』は基本無料ゲームとしてかなり遊び尽くせる作品になっています。もし興味を持たれましたら、ぜひ遊んでみていただけるとうれしいです。
山中:『ブレイブリーアーカイブ』はシリーズの中でも特に間口が広くて気軽に遊べるゲームになっています。まずは本作に触れていただいて、より深い背景やストーリーが知りたいと思った方は『プレイングブレージュ』のほうも遊んでみてください。
さらに本格的なRPGをお求めの方は、ぜひ3DSの『フライングフェアリー』や『ブレイブリーセカンド』のほうも遊んでほしいですね。どちらもかなり遊びごたえがある無料体験版がありますので、ぜひ気軽に触れてみてもらえればと思います。
【アプリインタビュー バックナンバー】
→『ログレス』開発者が語るオンラインRPGの未来。対人戦や新武器の構想は?
→新要素か遊びやすさか。円熟した『ブレイブ フロンティア』の選択とは?
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