2015年4月24日(金)
おもしろいゲームが好きな電撃Appが注目するスマホアプリ。そのアプリがどのようにして生まれたのか、開発者に直接お話を聞きに行くインタビュー企画を連載中です。
今回はグレンジから配信中のiOS/Android用アプリ『ポコロンダンジョンズ』のプロデューサー兼ディレクターの木下慎也氏にインタビューを行いました。
▲プロデューサー兼ディレクターの木下慎也氏。元々モノ作りが好きだということで、最近はディレクター業が中心になっているそうです。 |
本作は、ポコロンと呼ばれるブロックをなぞるようにキャラクターを移動させて戦うパズル&RPG。直感的な操作と本格RPGの育成要素が見事に融合した人気アプリです。
▲床に設置されているポコロンの同じ色をなぞって、敵を攻撃していくのが基本的な流れ。なぞるポコロンの数が多いほど、ダメージもアップしていきます。 |
▲なぞったポコロンの数に応じてスキルゲージがたまっていき、一定数たまるとキャラクターやモンスターごとに設定されたさまざまなスキルを発動できます。 |
――どのような経緯で本作が誕生したのかをお聞かせください。
かつてはブラウザゲームを中心に制作していたのですが、マーケットの環境が変わってきてスマホのようなネイティブアプリが多々登場するようになりました。
今までコンシューマゲームを出されていたメーカーさんも、スマホアプリに力を入れるようになっていた時期で、同じように作っていても注目されるのは難しい……。
そこで、誰でも気軽に楽しめるゲームを作ろうということで始まったのが、『ポコロンダンジョンズ』でした。
――気軽に楽しめるとはいえ、RPG要素などかなり本格的な内容になっていますよね。
カジュアルなゲームといっても、奥行きを持たせて制作したかったんです。気軽に楽しめるゲームの間口はとても広いのですが、長期的に継続して遊んではいただけないかもしれないと考えていました。
そこで、プレイして積み上げるものを提供する必要があると思い、盛り込んだものが育成要素でした。
▲仲間モンスターの強化(育成)だけでなく、主人公が装備できる武具も強化できます。 |
――“なぞる”というシステムはどのようなきっかけで生まれたのでしょう?
なぞるアクションというのは初めから決まっていたわけではなく、スマホらしい簡単に入力して遊べるゲームを模索していきながら、いろいろなシステムを作っていく中で生まれたものです。
その中で「なぞるアクションならば直感的で楽しいものになるのでは?」という意見があり、それをブラッシュアップしていった感じです。
最初はモンスターを連れて歩いたり、なぞった色のポコロンで攻撃したりする要素すらありませんでした(笑)。
▲敵にも属性があり、なるべく弱点属性で攻撃したいところ。でも、うまくポコロンが並んでいるとは限らない……。そんなジレンマも、ゲーム性を盛り上げてくれる要素です。 |
――武器による攻撃パターンの違いも特徴的な要素だと感じました。
そのあたりも最初から決まっていたシステムではなく、開発の中で追加されていった要素です。キャラクターを動かす以上、敵を攻撃する際に物理的な距離感が大きく関係してくると思います。
敵との位置関係を考慮して、さまざまな攻撃方法のアイディアを出し合っていました。その中で、武器ごとに個性を出すことで生み出される戦術を考えてもらったほうがおもしろくなるのではという考えから、現在の形に落ち着きました。
◆5種類の武器の特徴
・剣:近接攻撃用の武器で、攻撃力は普通。チェインスキルで敵を吹き飛ばせるので、敵に囲まれた時などに役立ちます。
・斧:攻撃力が高い近接攻撃用の武器。その分、チェインスキルを含めても攻撃範囲は狭めです。また、一定確率で敵を気絶させることができます。
・双剣:手数が多い近接攻撃用の武器。斜めにいる敵にも攻撃できるため、攻撃回数を増やしやすく、ヒット&アウェイも得意です。
・弓:直接攻撃もできますが、チェインスキルで遠距離の敵を攻撃できることが特徴。敵に近付かずに攻撃できるので便利ですが、やや火力不足の部分があります。
・杖:直接攻撃ができない代わりに、チェインスキルでフロア全体の敵を攻撃できるメリットがあります。弓同様、攻撃力はやや低めです。
――さまざまな要素がからみあったゲームだとは思いますが、バランス面はいかがだったでしょうか?
こちらもプレイしながら感覚で調整していった感じです(笑)。配信してからは、ユーザーさんの声や反応を参考にして調整しています。
▲武器ごとに攻撃範囲が異なるなど、クエストや敵に合わせて武器を持ち替えることもクエストクリアのポイントです。 |
――ちなみに、タイトルにもある“ポコロン”というのはどういう意味なのでしょうか?
実は、深い意味はないんですよ(笑)。プログラマーに床のようなパネルは何かと聞いたところ「これはポコロンです」という答えが返ってきたことが始まりです。
実際、“ポコロン”は他のゲームにはない要素なので、それを前面に押し出していきたいと思いタイトルも『ポコロンダンジョンズ』となりました。
――タイトルは『ポコロンダンジョンズ』の他に何か悩まれましたか?
ポコロンを知らない人にはどうなのだろうという懸念はありましたが、個性を強く出したいとスタッフ同士の考えが一致したので、このタイトルでいくことにしました。
――キャラクターやサウンドなどかなりクオリティの高いものだと感じました。これらはすべて社内のスタッフで制作されているのでしょうか?
そうなんです! うちのスタッフは有名なタイトルに携わった人はいませんが、とても優秀でイラストもサウンドもすべて社内で制作しています。すべて社内で制作することで情報の共有もとりやすく、制作しやすい環境になっていると思います。
そのうち、ゲーム内にクレジットなどの項目を作って、スタッフの名前も売り出していきたいと考えています。
――キャラクターイラストも自社で制作しているとのことですが、木下さんが特に気に入っているモンスターはなんでしょうか?
性能的には、やっぱり“ポコロンチェンジ”を持っているモンスターは外せませんよね。“バアル”あたりは自分もほしくて何度もガチャにチャレンジしたのですが、なかなか出ないもんですね(笑)。
※ポコロンチェンジはキャラクターの持つスキルのうちの1つ。特定のポコロンを別のポコロンに変化できるとても有効なスキルです。
見た目では、個性的なモンスターが好きです。特に“バステト”や“ブリュンヒルデ”は攻撃のエフェクトが気に入っていて、よくパーティに入れています。
――“ポコロンチェンジ”はかなり強力なスキルかと思いますが、実装予定、または実装できなかったスキルなどあるのでしょうか?
現状、入れられていないスキルが多くあります。例えば、モンスター同士が攻撃しあう“混乱”や、“フロアにある○色のポコロンの数分のダメージを与える”みたいなスキルなどいろいろ考えています。
ただ、それを実装すると他のスキルなどに影響を与えることもあったりして、まだ実装できていないんですよね(笑)。
――ここから少し木下さん自身についてもお聞きしようと思います。そもそも、どのような経緯でゲーム業界に入られたのでしょうか?
王道のゲームには触れてきましたが、私はそれほどゲーマーというわけではありません。元々は、インターネット業界で世界中の人にサービスを提供したいという想いがあり、その中でモノ作りができればいいと考えていました。
初めはハードウェアを意識していたのですが、インターネットの環境の変化やスマホの普及などで、ソフトウェアでも多くの人にサービスを提供できると考え始めたのがきっかけです。
携帯電話はほとんどの人が持っているデバイスなので、ハードゲーマーではない人でも楽しめるような新しいゲームを提供したいと思いました。そこで、ゲームならではの新しい体験を提供することが大きな目標です。
そういった目標ができたこともあり、最近はいろいろなゲームで遊んでいます。ゲームそのものというより、こういう遊ばせ方もあるのかといった仕事目線にはなっていますが(笑)。
――では、木下さんが考えるゲームのおもしろさとは、どんなところにあると思われますか?
日常とは切り離された世界に没入できるってところではないでしょうか? 日常では、ゲームのように何度失敗しても再チャレンジするなんてこと、なかなかないじゃないですか(笑)。
それでもゲームだと、そんなことすらできてしまう。そうして得られる体験や達成感こそが、ゲームのおもしろさなんだと思います。
――話をゲームに戻させていただきますが、3月に行われた大型バージョンアップの反響はいかがでしたか?
遊んでくださっている方には、より遊びやすくなった点が好評ですし、新しいユーザーさんからは、“ブレイブリーチャージ”や“ポコロンチェンジ”といった要素が好評でした。
あとは、ポコロンの配置などでどうしても運に左右される部分が多いところもあるので、“運気”をパラメータ化したことが好評でしたね。
――“共闘”も大きな要素でした。
“共闘”は、どうやって実現させるか苦労しました。他のユーザーの“なぞる”軌跡が見えるというシステムにしたので、技術的にもかなり大変でした。
ただ、そのぶん1人ではできない体験を味わえると思いますし、生身の人間と一緒にゲームをプレイしている楽しさを感じていただける内容になっていると思います。
【共闘プレイの基本情報】
・全ノーマルクエストに共闘で挑戦可能
・最大4人同時プレイ。マルチプレイの主催者のみが体力を消費
・連れていけるリーダーモンスターは1体
・仲間がいるポコロンをなぞって攻撃すると友情チェインが発動
・パーティ全員で合計3回ダウンするとクエスト失敗
・共闘専用のクエストが出現。4体の新ボスを倒すと、亜種が登場
・自分以外に友だちが獲得した運気ボーナスも手に入る。最大10個のボスドロップアイテムが入手可能
――“共闘”が入って完成度が大きく上がったかと思いますが、木下さんが考える『ポコダン』の完成度は現状何%くらいなのでしょうか。
私が想定している完成度は、現状で75%くらいですね。スキルやギミックなど、まだまだ入れ込みたいアイデアはたくさん残っています。
大きな要素としては、村の左側にある湖の要素を解放しなければというところですね。ここはミニゲームを想定しているので、今後のアップデート情報を楽しみにしていてください! あとは、全体的により遊びやすく調整していくことも大切だと考えています。
▲村の左側にある湖は画面を右にスライドさせると表示されます。ここに実装されるというミニゲームとはなんなのか……。今後の情報が気になりますね! |
――ちなみに今後はどのようなバージョンアップを予定されていますか?
バトル中にフロア内をワープするワープホールなど新しい仕掛けを入れていきたいと思っています。また、武器に制限をつけたイベントを実施して、パーティを組み替える楽しみを味わえるようなものも考えています。
――『ポコダン』をこれから遊ぼうというユーザーさんもいるかと思いますが、初心者に向けた攻略のポイントなどもお聞きできればと思います。
“共闘”の要素が入ったことで、同レベル帯のユーザーさんや高レベルな知人と共闘して、効率よくクエストに挑むとスムーズに進められると思います。
序盤は装備をある程度決めて、その装備品を集中的に強化していけば、苦労せずクエストを進められると思います。武器はどれも特徴的なのですが、個人的には遠距離も近距離も攻撃できる弓がオススメです。バランスで考えると剣も使いやすいと思います。
――最後に『ポコダン』を遊んでいる方、これから始めようとしている方に向けて、メッセージをお願いします。
ずっと遊んでくれている方には、感謝の気持ちでいっぱいです。楽しいと感じていただけている部分を、これからも注力してアップデートしていきたいと思います。また、いい意味で期待を裏切る新しい仕掛けをたくさん提供し続けたいと思います。
新しくゲームを遊び始めてくれる方には、“共闘”などオリジナリティのあるシステムが入って、他のゲームでは味わえない楽しさを体験していただければと思います。
友だちなどと一緒に楽しむとそのおもしろさは倍増する作品だと思うので、身近な友だちと一緒に楽しんでください!
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