2015年10月20日(火)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。
▲画像はSFC版のもの。 |
第27回は、1995年9月14日にSFCタイトルとしてヒューマンから発売され、1997年にはPlayStationへ移植、2011年にはPS3・PSP対応のアーカイブスとして発売されたホラーゲーム『CLOCK TOWER(クロックタワー)』の発売20周年を記念する思い出コラムを、ライターMがお届けします。
▲時代を感じさせるレトロなグラフィックが、ゴシックホラーの雰囲気を後押しします。画像はSFC版のもの。 |
なお、以降の画像はすべてゲームアーカイブスのものです。
ド派手な3Dも臨場感あふれる一人称視点もなかった当時、独特の世界観演出と難解な謎解きで多くのファミコン少年を魅了した名作が『クロックタワー』です。
突然放り込まれる惨劇の空間、次々と襲いくる理不尽なデストラップ、不意をついて現れる殺人鬼、そして……殺人鬼よりも恐ろしく見える、ヒロイン・ジェニファーの恐怖に歪んだ表情など見どころ満載!
シリーズ作品の中ではホラーよりも謎解きの要素が強いタイトル。一枚絵の中からコマンド総あたりで謎を見つけるレトロ様式のアドベンチャーと、広大な館を探索するアクションを足して割ったような、当時としては斬新なスタイルの作品でした。
『クロックタワー』の名を冠する作品は4作品発売されています。生みの親である河野一二三さん(現、ヌードメーカー代表)が開発に携わった1~2作目の他、開発スタッフやメーカーが異なる3作目と、Jホラー風味に大胆な路線変更を行った『CLOCK TOWER GHOST HEAD』の計4本。
ノルウェーを舞台に、薄幸の美少女ジェニファーと、呪われた家系であるバロウズ一家との因縁が描かれるのは2作目までで、他2作品は世界観&内容ともに別物となっています。
さて、この作品について書くと避けては通れないのが、モチーフとなったホラー映画の存在です。あまりにも有名なので軽く流しますが、イタリアの巨匠ダリオ・アルジェント監督が手掛けたホラー映画『フェノミナ』へのオマージュが込められていたりします。
ヒロインの名前や見た目も主演女優にちなんだものなので、気になる方は“ジェニファー・コネリー”で検索してみましょう。
▲『フェノミナ』出演時のジェニファー・コネリーと瓜二つ。ピュアな美少女とホラーはなんとも相性がいいようで……。 |
ホラー作品、とりわけスプラッタに傾倒した作品には、強烈な個性を持つ殺人鬼が欠かせません。ホッケーマスクのジェイソン・ボーヒーズや、カギ爪のフレディ・クルーガー、人皮マスクのレザーフェイスなどがおなじみですよね。
本作でのダークヒーローは、ムダに巨大なハサミを振り回す猫背の少年・シザーマン。「シャキーン、シャキーン……」と律儀に音を鳴らして近寄ったり、獲物を仕留めて小躍りしたりと、殺人鬼にしてはどこか憎めません。
舞台が日本なら問答無用で銃刀法違反といった体の彼、じつは1作目での出現頻度はかなり低めです。筆者も2作目での神出鬼没っぷりがあまりにも印象的で忘れていたのですが、“時間経過では出現しないシステム”のため、ゲーム内でもやや影が薄くなっています。
今回の記事を書くにあたって改めてプレイしたところ、死因の8割がデストラップという有様でした。ちなみに最短記録は、開始5分で鏡から出てきた手に絞められての窒息死。
▲数少ないシザーマンのアップと、相手が見えているからこそ恐怖を感じる1シーン。安全と分かっていても、心の中で「気づくなよ~、こっち見るなよ~……だからこっち見んな!」と念じてしまいます。 |
【ネタバレ注意】
余談ですが、2作目で登場するシザーマンは1作目と同一人物で、クロックタワー事件の数少ない生存者を装ってジェニファーに近づきます。この2作目の彼こそシザーマンの真骨頂です。
時間経過でランダムに出現するシステムを採用しているため、お茶を飲んでくつろぐ暇もありません。移動の仕方にも節操がなく、右にいたかと思えば左から現れ、密室に閉じ込めたかと思えばドアの外からコンニチワ。
「いや、キミ、さっきまで部屋にいt……げふっ」と突っ込みながら切り刻まれたのはよい思い出です。
▲画像はゲームアーカイブス『CLOCK TOWER 2(クロックタワーセカンド)』。 |
名称を聞いた当時「ぅわぁ……」と引き気味だったのが、緊急回避のためのシステム“R(連打)S(せずには)I(いられない)”。その名のとおり、いざというときにボタンを連打することで危機を脱するためのシステムです。
もっとも、デストラップによる致死率の高い本作では、RSIを使う場面は数えるほどしかありません。
変死体や謎の肉塊を見ても正気を保つジェニファーですが、一方でオウムにつつき殺されたり、ピエロのオモチャに突き飛ばされてショック死したり、豪胆なのかか弱いのか、いまだに謎です。
本作ではジェニファーの行動に応じてエンディングの評価が変わります。ノーヒントで最高評価を取るのは至難の業ですが、攻略情報を参考にプレイしても、なかなかに難しかったりします。それというのも、アイテムの入手場所どころか、一部の部屋の配置までランダムで変わるというまさかの仕様に原因が。
手書きマップを作りながら再トライしていて、「なんということでしょう! 匠の仕業か、部屋の位置が変わっているじゃないですか!!」と叫んだ方も少なくないのでは? 確かにチャートどおりにプレイしてどうにかなってしまうゲームよりはいいのですが、なんとも複雑な気分になりますよね。
ホラーを定義づける要件といえば、恐怖や絶望、死に関する描写の他、虚を突かれたり、常識が覆ったり、日常が失われたりといったところでしょうか。
グロ描写の多い本作は、ややスプラッタ寄りのホラーとなっていて、超常的な仕掛けも多めです。ゆえに、じわじわと込み上げてくる恐怖や、湿り気を帯びた恐怖は望めません。もっとストレートに、お化け屋敷的な驚きと恐怖を味わいたいという人にこそオススメしたい、懐かしの一本です。
今でしたら、初代PSゲームアーカイブスの『CLOCK TOWER ~The First Fear~』をプレイするのがオススメです。おもしろかったらぜひ『CLOCK TOWER 2』もプレイしてみてください。
▲最後に厳選グロ画像をペタリとお届け。最後の一枚を“G”にしたのはすみません、ちょっぴりだけ反省してます(後悔はしていない)。 |
シリーズのファンなら見逃せない、“クロックタワーの魂を受け継ぐ新作”として発表された『プロジェクトシザーズ:NightCry(ナイトクライ)』の動向も気になるところです。
河野一二三さんと『呪怨』を手がけた映画監督・清水崇さんが贈る、マルチプラットフォーム対応のホラーゲームとなっていて、公式サイトもあるのですが、今年の3月で更新が滞っているようです。いちファンとしては一日も早いリリースを心待ちにしています。
【周年連載 バックナンバー】
→第27回:『クロックタワー』20周年。名作ホラーの思い出をややネタバレありで掲載【本記事】
→第26回:初代PlayStation(プレイステーション)20周年。おすすめゲームを編集/ライター25人が選出
→第25回:『ぼくのなつやすみ』シリーズ15周年。ボクくんとの夏休みを振り返り、新作への思いを馳せる
→第24回:『アイドルマスター』10周年を記念してガミP、ディレ1を直撃!
→第23回:『アイドルマスター』サウンドチームに聞く楽曲制作の狙い。765と346の曲作りで意識したこと
→第22回:『クロノ・トリガー』20周年。今なお新作が望まれる傑作RPGのストーリーを振り返る
→第21回:アニメ『アイマス シンデレラガールズ』1stシーズンを振り返る。フィルムに隠された伏線と緻密な設定とは
→第20回:『ランブルローズ』10周年。屈辱システムが画期的なセクシー系対戦ゲームの歴史的名作
→第19回:『パルフェ』が10周年だからって祝わなくていいんだからね! でも、祝ってくれたら私……
→第18回:『ゴッドイーター』5周年。リンドウやアリサの過去に胸打たれたシリーズ処女作の思い出
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