2017年9月30日(土)

【ディバインゲート零:前日譚】ルーニ編・2話“天才少女”~互いの夢に向かって

文:電撃ゲームアプリ

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントがサービス中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』の新章『ディバインゲート零』。そのキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。

 今回お届けするのは、ルーニ編・2話“天才少女”。両親を亡くし、突如として覚醒したルーニ。新しい家族と暮らす彼女のもとに、今後の運命を左右する一通の手紙が……。

ルーニ編・2話“天才少女”

テキスト:team yoree
イラスト:藤真拓哉

 近頃、世間を賑わしているニュースだ。若干7歳の少女が世界的に有名な学術賞を受賞したという。しかも、賞の受賞は初めてではなく、小さな規模のものなら既にいくつもその少女は獲得していた。

 少女の名はルーニ。ルーニは父親の書斎にある大量の本を一晩で読み切った後、貪るように勉強を始め、わずか数か月でその才能を発揮し、様々な学術賞を獲得する天才少女となっていた。

「ルーニ、昼食はどうしますか」

 メイド風の格好をした美しい少女がルーニに尋ねた。

「あー、そうだ…。何も食べてないんだった」

「論文を書くのもいいですが、ちゃんとエネルギーを摂取しないと倒れます」

「わかってるんだけど、忘れちゃうの」

「今すぐ簡単なものを用意しますね」

「うん、お願い」

 メイド風の少女はルーニの返事を聞くと、踵を返してキッチンへと向かっていった。

 両親が消失してからも、ルーニは自宅での生活を続けていた。一人暮らしではなく、同居人は、ぬいぐるみのラビィと、このメイド風の少女だ。メルティと呼ばれているその少女は、少し前にルーニ自身が開発したアンドロイドで、メイドとしてルーニの私生活の一切を仕切っていた。

 また、ルーニの様子を窺いに週に何度も訪れる人物もいた。

「ルーニ!お疲れさま!」

「フローネ!」

 やって来たのは幼なじみのフローネだ。ルーニより4歳上の女の子で、隣の家に住んでいる。互いに一人っ子なので、幼馴染というよりも姉妹に近い。家族ぐるみの付き合いをしており、互いの家を行ったり来たりしている。メルティの開発時はフローネの家族も全面的に協力をした。特に機械工学の権威だったフローネの父は、アンドロイドの開発に必要な資材から技術のサポートをしてくれていた。今ではルーニの知識や技術は、アンドロイド開発において、フローネの父を超えている。

「ルーニ。今日はルーニにプレゼントがあるの」

「えっ。なあに?」

「じゃーん!新しいぬいぐるみだよ!」

 そう言ってフローネが取り出したのは、ラビィと似たようなうさぎのぬいぐるみだった。サイズはラビィより少し小さい。

「えっ。どうしたの、この子」

「えへへ。実はね、わたしが作ったんだ」

「えっ!?フローネが!?」

「うん!ルーニってぬいぐるみ好きでしょ?ラビィと一緒にいる時いつも楽しそうだし。だからプレゼントしようと思って。結構頑張ったんだから」

「すごい!フローネ。裁縫が得意なのは知ってたけど、こんな可愛いぬいぐるみまで作れるなんて……!」

「ルーニがメルティを開発してた時ね、わたしもルーニの家族になれる何かをプレゼントできないかなって思ってたんだ」

「嬉しい……。ありがとね、フローネ!」

 ルーニはぬいぐるみを抱えたままフローネに飛びついた。

 軽く音を立てながらふたりとぬいぐるみが床に転がる。

「もー。ルーニったら」

「だって~」

 くすくすと笑いあうふたり。

「でもね、フローネ。ルーニはフローネがこうやっていつも来てくれることもすごく嬉しいんだからね?」

「うん。わかってる!ルーニはいつも笑顔で迎えてくれるもん」

「この子にも名前を付けなきゃ。そうだなあ……ルリィ!」

 ぬいぐるみを見つめながらルーニが言った。

「ラビィの妹のルリィだよ!」

 そう言ってルーニはラビィとルリィを並べて座らせた。

「かわいい名前をありがとう!」

 フローネも嬉しそうに微笑んだ。

「ルーニ、お食事の用意が済みました。フローネも一緒にどうぞ」

【ディバインゲート零:前日譚】

 メルティが食事を運びながらやって来た。ルーニとフローネ、ラビィ、ルリィ、そしてメルティの5人がリビングのテーブルを囲む。

「よかったね、ラビィ。今日から家族が増えたね」

 ルーニは満面の笑みで両脇にラビィとルリィを抱えた。そんな嬉しそうなルーニを見て、フローネも微笑む。

「ねぇ、ルーニ。わたし、もっとたくさんの人を笑顔にしたいな」

「できるよ!だって、ルリィに会えてルーニ、すっごく嬉しいもん」

「そっか……わたしも嬉しいよ、ルーニ」

 フローネは胸の内にある思いを語り始めた。

「わたしね、今回ルリィを作って、思ったことがあるの。……ぬいぐるみ作家になりたい。ルーニが喜んでくれたみたいに、わたしのぬいぐるみでたくさんの人を喜ばせることができるなら、もっともっと頑張りたい。……こんな夢、変かな?」

「ううん!素敵!とってもいいと思う!ルリィがこんなにかわいいんだもん。フローネの作るぬいぐるみはきっといろんな人に喜んでもらえるよ!」

「ありがとう。わたし頑張るね、ルーニ」

 そう言ったフローネの笑顔を見て、ルーニはフローネの夢が叶う日もそう遠くはないと感じていた。


 そして、ある晩のこと。

「ルーニ宛に手紙が届いていました」

「ルーニに?」

「こちらです」

 メルティに渡され、封を切るルーニ。文面を見て目を丸くする。

「えーっ!マグダネル財団から、研究所に来ないかって言われた……!」

「それは良い知らせですね」

 マグダネル財団とは、理力学全般の研究で世界的に有名な総合研究施設のことである。ルーニが数々の賞を受賞したことで、研究所へスカウトしようと手紙を送ってきたのだった。

「でも……研究所に行くってことは、家を空けることになっちゃうんだよね?」

 ルーニが不安そうに言った。

「心配には及びません。ルーニが留守の間は私が保守管理を徹底しておきます」

「うーん……でも……」

「ルーニの才能は適切な場所で役立てるべきと考えます。せっかくのお誘いを無駄にするべきではありません」

「メルティ……。そっか。ちょっと考えるね」

 ルーニは数日悩んだ後、財団へ行けばさらに多くの研究に触れられると思い、研究所に入所することにした。


「え?フローネ、今、なんて?」

「うん。だから、わたしが留守番するって言ったの。ルーニはメルティと一緒にいる方がいいんだから」

 ルーニがフローネに研究所へ行くことを伝えると、すぐさまフローネから申し出があった。

「だって……。迷惑じゃないの?」

「そんなことないよ。ルーニには隣にいてくれる人が必要なの。だから、お家のことはわたしに任せて、メルティと一緒に頑張っておいで」

「フローネ……。そんな……。いいのかな」

「いいんだってば。どんと構えて行ってきてよ」

「フローネ……。ありがとう。本当に、いつもいつもルーニのこと思ってくれて本当にありがとう。ルーニの家、見てくれてる間、アトリエに使っていいからね。たくさんのぬいぐるみでいっぱいにしちゃって……!」

 手と手を取り合うルーニとフローネ。

「ルーニ、わたし応援してる。あなたの道がずっと明るく照らされていますように……」

「ルーニも応援してる!フローネの夢が叶いますようにって」

 こうしてフローネと別れたルーニはメルティとともに研究所へと入所した。

 ルーニの活躍はめざましく、一年もしないうちに様々な論文を発表していった。

 以前にもましてルーニの評判は上がり、本物の天才少女だと言われるようになった。しかしルーニは世間での評判と反比例するかのように、論文を書くことに疑問を持ち始めた。これまで知識欲のためにやみくもに論文を書き続けてきたが、もっと未来に繋がるものを研究した方がいいのではないだろうか……と。

 そんな中、研究所にてルーニはある言葉を聞いた。

「『対魔影蝕』の研究が最近活発で……」

 聞こえてきた瞬間、ルーニは手に持っていた本を床に落としてしまった。

「魔影蝕……」

 いつ以来ぶりかに聞いたその言葉のせいで、ルーニの脳裏に悲しい出来事がよみがえる。ルーニはこれまで無意識にその言葉を避けてきた。そのため、抑えこんできた両親への思いが堰を切ったように溢れ出す。

「忘れてたわけじゃない。思い出したくなかっただけなの……」

 だから今まで貪るように研究に没頭してきた。しかし、今のルーニは当時のルーニよりも少し成長していた。ここで聞いたこの言葉のお陰でルーニの心に灯がともったのだった。

「そう、魔影蝕……。どうして今まで気づかなかったんだろう……。ルーニがやるべき本当の研究は、そこにある……!」

カズシ編・第一章

日常編

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