2018年12月25日(火)
2019年1月12日より公開される劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』に出演する杉山紀彰さん&下屋則子さんのインタビューをお届けします。
▲『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』第1弾キービジュアル。 |
『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』は、ヴィジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』の3つ目のルート“[Heaven’s Feel](通称・桜ルート)”を全3章で映画化する作品です。衛宮士郎を慕う少女・間桐桜を通じて、聖杯戦争の真実に迫るストーリーが展開されます。
特集企画の第1回では杉山さんにさまざまなお話を伺いましたが、第2回からは杉山さんに加えて本作に登場する女性キャラクターを演じる声優陣にもお話を伺っていきたいと思います。第2回では、杉山さんと間桐桜を演じる下屋則子さんによる対談形式でお届けします。
2人から見た桜や士郎の話や、アフレコ中のエピソードなどを話していただいたので、ぜひご一読ください。
▲杉山紀彰さん(写真左)と下屋則子さん(写真右)。 |
――まずは、お互いが演じるキャラクターについての印象をお伺いします。
下屋さん:士郎は正義の味方にあこがれているキャラクターですが、『HF』ルートでは『Fate』ルートや『UBW』ルートよりもさらに深く「どうやって正義の味方になるか?」、「正義の味方とは何か?」について葛藤している印象があります。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
杉山さん:桜は、士郎にとって気になる女の子だけど後輩であり友人の妹でもある、というところで彼の心を揺れ動かしているな、と。『HF』ルートでは士郎が知らなかった桜の過去や、彼女が隠していた一面が明かされるんですけど、それによって桜は士郎にとっての特別な存在へと変わっていく。その結果として、桜は士郎にとって一番に救わなければいけない存在になっていくのかなと思っています。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
――ちなみに、杉山さん個人としては桜のような女の子はどう思いますか?
下屋さん:どう思ってるんですか!?
杉山さん:いや、僕は『Fate』本編から『カーニバル・ファンタズム』まで含めて、いろんな桜を今まで見てきているので……。
下屋さん:お願いですから「怖い」ってだけは言わないでくださいね(一同笑)。
杉山さん:怖いとは言わないです(笑)。でもすごく複雑な子ですよね。ヒロインの中でも特に士郎の存在がキーになっていて、士郎の考え方や決断ひとつで幸せになれる女の子だと思うので、士郎を演じる中で常に幸せになってほしいと思っています。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
下屋さん:桜にとって士郎は、「私と違って純粋でキレイな先輩」っていう部分がすごく大切なところなんだと思うんですよ。だから桜は士郎に救ってもらいたいと思いながらも、同時に士郎には“正義の味方”という夢を追い続けてほしいと思っていて、葛藤してしまうんです。
ただ、杉山さんがお話しされたように桜を救える可能性があるのは士郎だけだと思うので、幸せにしてあげてほしいと願ってしまいます。
――作品やルートによって士郎と桜の関係性が変わっていく中で、やはり演じ方も変化していったのでしょうか?
杉山さん:まずは、関係性について。『第一章』では士郎は桜に惹かれていくんですけど、ストレートな恋愛もののように純粋に“好き!”って気持ちが前面に出ることはありません。どちらかというと“自分が守らなければ不幸になる身近な存在”という気持ちのほうが大きい気がしています。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
下屋さん:そうですね。『第二章』では、桜にしては珍しく自分の気持ちを士郎にぶつけるシーンがあって、今まで内側に秘めていたけれど決して出さなかった思いを前面に出しているんです。
セリフ自体も今までの桜が言わなかったような言葉を口にするので、いかにして彼女がこのセリフを言うに至ったのか、細かく彼女の心情を読み取って演じました。台本を読み込むことはもちろん、須藤友徳監督や原作者の奈須きのこさんとも収録前に色々確認させていただきながら演じていきました。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』特報映像第1弾より。 |
杉山さん:下屋さんが言ってくれたように、『第二章』からは桜の気持ちを知って、彼女を救いたいという気持ちがより明確になります。けれど、士郎からすると、恋愛感情より守りたいという気持ちのほうが強いので、演じるうえでも桜に気持ちを寄せつつ恋愛感情をストレートに出さないようにしています。
――『第一章』を振り返ってのお話もお聞きしたいのですが、とくにインパクトがあったシーンはどこでしたか?
下屋さん:演じていてすごく印象的だったシーンは冒頭の士郎との出会いのエピソードです。原作ゲームでは詳しく描かれていなかった、中学生時代のエピソードを演じることができてうれしかったです。
完成した作品を観てインパクトがあったのはランサーと真アサシンのバトルシーンですね。アフレコの時に絵コンテを拝見していて、その段階ですでにスピード感があってすごいバトルになりそうだと思っていたんですけど、実際の映像で観て迫力と美しさに圧倒されました。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
杉山さん:僕も同じです。サーヴァントという“人の形をしているけど特異な存在”が激突する動き、スピードの異質さ、そういったものがダイナミックに表現されていたので、インパクトは強かったです。
下屋さん:あと、サーヴァント同士の戦闘で言うと友だちや知人から「どうしてライダーは最初と最後であんなに強さが違うの?」ってよく聞かれました(笑)。序盤でセイバーにあっさりやられたはずなのに、後半で真アサシンから士郎を守るために割り込んだ時はものすごく強いじゃないですか。
杉山さん:先の展開を知らないからこその、率直で素敵な感想ですよね。
下屋さん:『HF』ルートの設定を知っていると疑問には感じない部分なんですよね。でも、触れたことがなかったら衝撃を受ける部分なんだな、と思いました。
杉山さん:ライダーと真アサシンの戦いは、ライダーがピカイチの機動力を持っていることが表れていたと同時に、「彼女の美しさをどうすれば戦闘の中で描けるか?」というところまで考えて演出されていた気がします。他のサーヴァントの場合はスピード感や力強さ、迫力みたいなものが先に来るんですけど、ライダーの場合はスピード感と同時に色気がガツンと来るのがすごいなと。
下屋さん:確かに、構え方ひとつ取っても色気がありますよね。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] I.presage flower』より。 |
杉山さん:そうなんですよ。あとは真アサシンもキャラクターが濃かったですね。ランサー、セイバーと強力なサーヴァントと戦って勝ち残っていく中で、最初は猿みたいな感じだったのがランサーの心臓を取り込んで以降は段々武人のように変わっていく。その変化する様が大きく印象に残っています。
――ここまで士郎、桜、サーヴァントとそれぞれの印象を語っていただきましたが、主要キャラクター以外の面々ですとどのキャラクターが印象的でしたか?
杉山さん:僕は臓硯です(笑)。というのも、津嘉山正種さんの演じられる臓硯の存在感がすごくて……。
下屋さん:わかります、すごいですよね。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』特報映像第1弾より。 |
杉山さん:怒鳴られているわけでも攻撃されているわけでもないのに、淡々と切々に話されているだけでもう負けているような感じ。「なんだこの圧倒的な力関係の差は……!?」みたいな。しかも臓硯って、見る角度を変えると正しいしベストだと思える提案をしてくるので、まさに言霊を操っているという印象です。
下屋さん:あの臓硯は津嘉山さんにしか演じられないですよ。私は間桐繋がりになっちゃいますけど、お兄様(間桐慎二)ではないかと(笑)。『第一章』に続いて『第二章』でも出番が多いんですけど、単なるやられ役としては描かれていなくて、心情を汲み取った描き方をされているんですね。慎二目線でも観られるような描き方になっています。
▲劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』特報映像第1弾より。 |
杉山さん:こんな環境で育ったら歪んでも仕方ないよな……っていう気持ちになりますよね。
下屋さん:そうなんです、そういう見せ方が上手だなって思います。
――ここからはアフレコ現場でのお話について伺っていきたいのですが、演者としてのお互いへの印象はいかがですか?
下屋さん:杉山さんは、初めてお会いした時「仕事に対して本当に真摯に向き合う方だな」という印象を抱いたんですけど、その印象は今でも変わらないです。
杉山さん:いやいや(苦笑)。でも僕も下屋さんの印象は初めて仕事をご一緒した時から変わらないですね。細かいアドリブひとつ取ってもディレクターの方と打ち合わせを重ねて、すごく丁寧に台本を読み込んできてお芝居を組み立てられているなと。『HF』で言えば「ここの桜の表情はどうなりますか?」だったり、「ここで感情を出してもいいですか?」だったりと、監督の意向を汲み取って最大限反映させるために努力しているところが印象的でした。
下屋さん:恥ずかしい。ありがとうございます。杉山さんは後輩から慕われてたり、先輩からはかわいがられてる姿をよく目撃してました(笑)。
杉山さん:(笑)。『Fate』の現場だとランサー役の神奈延年さんとはよく話していますね(笑)。「○○のシーンってどうしてこうなるんだっけ?」って聞かれて、僕が「そこは△△だからですよ」って答えて、「あー、そっかそっか。そうだったな、ありがと!」みたいな、そんな感じのノリが多いです。
――そう聞くと、杉山さんが神奈さんから頼りにされているような印象がありますね。
杉山さん:神奈さんは現場でもランサー的なノリでいろんな方に気さくに声をかけてくださる方なんですよ。むしろ、こちらの気持ち的にも楽になるところが大きいので、ありがたいですね。
――『第二章』のアフレコ中、印象的なエピソードなどは何がありましたか?
下屋さん:いつもスタッフの皆さんが美味しい差し入れを持ってきてくださるんですけど、川澄綾子さんがリアルセイバーのように目を輝かせて差し入れを食べる姿が印象に残っています。
杉山さん:そうなんですよ。「リアルセイバーですね」って、思わず本人に言ってしまいました(笑)。
下屋さん:でも川澄さんの気持ちもわかります! 料理の描写に力が入っているから、アフレコ中にお腹が空いちゃうんですよね。
杉山さん:『第一章』のみんなで和やかにご飯食べているシーンとかも、うっかり『衛宮さんちの今日のごはん』を思い出して「いやいやこれは『HF』のアフレコだぞ」と気を引き締めなおしたり(笑)。
下屋さん:制作会社が同じufotableさんですしね(笑)。
杉山さん:あと、士郎と桜がちょっといい雰囲気になるシーンがあった時に、2人でディレクターさんと話をしてテストテイクをいくつかしたんですよ。雰囲気を作りすぎても作らなさすぎてもダメということでバランスが難しかったんですけど、いい落としどころが見つかって、無事に演じきることができたのはよかったんですけど……。
録り終えた直後にライダー役の浅川悠さんが「物足りなーい!」と後ろから大きな声で言って、ディレクターさんから「そんなこと知りません!」と言葉を返される一幕がありまして(笑)。それがすごく印象に残っていますね。
下屋さん:浅川さんはいつも現場の雰囲気を盛り上げてくださるんですよね(笑)。
――ありがとうございます。こちらのインタビューに際して、電撃オンラインの読者から質問が寄せられています。その中から今回はひとつをお伺いしていきたいと思います。
■現在放送中の『衛宮さんちの今日のごはん』の桜と『HF』の桜は、同じキャラでありながらまったく違うテイストです。演じわけるうえでの苦労などはありますか?(じゅうさん、いせやさん他)
下屋さん:まったく違いすぎて、別人を演じているかのような感覚です。ただ、一度だけ『HF』のリテイクと『衛宮さんちの今日のごはん』の収録が同じ日に重なったことがありまして……。
杉山さん:ありましたね~(笑)。
下屋さん:あれ、大変だったんですよ!(笑) まったく同じスタジオでディレクターさんを除くスタッフ陣だけが入れ替わる形での収録だったんですけど、『衛宮さんちの今日のごはん』のあとに小休憩を挟んですぐに『HF』のリテイクだったので、その時ばかりはいつにも増して気を引き締めなければ、という気持ちでした。
杉山さん:どちらも食卓の場面があるんですけど、あまりにも雰囲気が違いすぎて……(笑)。
下屋さん:ディレクターさんも、「ここからは『衛宮さんちの今日のごはん』のテイストは忘れてください」って言ってましたしね。
杉山さん:そういえば、『衛宮さんちの今日のごはん』のアフレコでも似たようなことがありましたよね。「サーヴァントのみなさん、(『衛宮さんちの今日のごはん』は)普通の和やかな世界観なので、殺伐としないようにお願いします」って(笑)。
下屋さん:(笑)。桜に対しても、『衛宮さんちの今日のごはん』のアフレコだと「作画では嫉妬しているように見えても、演技では嫉妬心を出さないでください」という言われたことがありました。こちらはあくまで平和な世界なんだなって実感しましたね。
――では最後に、『第二章』の公開を待つファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
下屋さん:SNSを始めとしたいろいろなところで、『第一章』を見てくださった方から「本当に素晴らしかったです」というお声をいただいています。そのぶん『第二章』への期待度も高まっていると思いますが、ぜひ期待していただきたいです!
主人公が令呪とサーヴァントを失うというまさかの展開で終わりを迎えた『第一章』ですが、ここからいよいよ『HF』のストーリーが始まります。ぜひ劇場でじっくりご覧になってください。
※杉山さんのメッセージは『Fate/stay night[Heaven’s Feel]II.lost butterfly』特集 第1回後編に掲載されています。
■劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel] II.lost butterfly』公開情報
【公開日】2019年1月12日全国ロードショー
【公開館数】全国131館
【スタッフ】(敬称略)
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
主題歌:Aimer
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス
【キャスト】(敬称略)
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐桜:下屋則子
間桐慎二:神谷浩史
セイバーオルタ:川澄綾子
遠坂凛:植田佳奈
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
ギルガメッシュ:関智一
ライダー:浅川悠
アーチャー:諏訪部順一
真アサシン:稲田徹
(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC