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2010年7月30日(金)

【経営者は語る第8回】脱ゲームポータルを提案するCJインターネット

文:電撃オンライン

■オンラインゲームでより濃密なコミュニティ形成を目指す

――ゲームポータルに限らず、インターネット上のコミュニティシステムの流れを見てみると、確かにここ数年で新しい手法が続々と提案されていますね。SNSが成長して大きな市場になり、いったんの飽和点に向かう。それでもSNSはスマートフォンと結びつくことで新たな活路を見出そうとしていますし、そうした取り組みの一環としてSNSゲームも存在する。いっぽうTwitterのように違った手法でコミュニティを拡大しつつあるメディアもある。それらのさらに先をどうやって目指すか、というお話ですよね。

朴且鎮氏:そのとおりです。個人的な考えを述べると、例えばスマートフォンやSNS、SNSゲームについては、僕自身いろいろ使ってみて興味を持っています。もちろん社内にも、それぞれに可能性を見出しているメンバーもいますから、この手法を使ってこうしたいというアイデアは日常的に出てきます。でも安易に飛びついて、あちこちで同じようなことをやっているという結果にはなりたくないなあと。

 僕自身の関心対象は、そういった個々の仕組みではなく“人”だけなんですよ。人が喜ぶ、楽しむ、悲しむ……、それってどういうことだろうと考えています。私達が提供すべきもののポイントはそこにあって、その伝え方や媒体については、それぞれの強みを活かしていけばよい。中身を差し置いて流行の形だけを追いかけても、あまり実りがないのではないかと。なのでたとえ時間がかかるにしても、本質的なところを追求していかないと、日本で、世界でと言えるようなものにならないと思います。なので今はできる部分をコツコツと形にしていっています。その舞台が『SDガンダム カプセルファイターオンライン』なのです。

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――なるほど、確かに『SDガンダム カプセルファイターオンライン』のアカウントは、NetmarbleのIDとは別立てになっていますよね。

朴且鎮氏:スタッフ達も私も、さまざまな会社で経験を積んでいますから、個々のコミュニティ形成手法についてオンラインゲームで効果があるかないかは、ある程度見当がつきます。そこで複数の手法を重ねたり、アレンジしたりしながら、新しいやり方を作っています。そこで新世代の“種”が育っているのだと考えています。いきなり画期的なものを作れるとは思っていませんが、さまざまな手法を、使う人の気持ちに沿ってアレンジすることで、さらに突き詰めることは可能だろうと。

――高度な試行錯誤の真っ最中であると。

朴且鎮氏:昨年までは、従来の方法を引き継いでNetmarbleを展開していましたが、ずっとこのままではまずいという認識で、どこかで大きな変革、建て直しの機会が必要だと考えました。自分達が持っている技術を活かしつつ、会社の基盤を整えて、先を見据えた事業戦略として“コミュニティ・エンターテイメント”を実現していきたい。現在はまだ、サポートやサイト運営などサービスに必須な部分の建て直しが中心ですが、今後いろいろ仕掛けていきます。その出発点として『SDガンダム カプセルファイターオンライン』での試みがある、ということです。

――Netmarbleが看板を懸け替えるとしたら、それはいつ頃になると考えていますか?

朴且鎮氏:だいたい年内に戦略を固めて、来年中にはデビューさせたいと思っています。考え方さえ固まれば、それを形にするのにそれほど時間はかからないと、楽観的に見ています。

――ハンゲームのような大規模集客サイトとしてのゲームポータル。あるいはパブリッシャさんが個々にやっているような、合理的なユーザーIDと顧客データベースとしてのポータルサイト。どちらの定義にも収まらない部分を、ぜひ教えてください。

朴且鎮氏:サービスの表面的な形は、これまでのものとそれほど大きく変わらないかもしれません。例えば今『SDガンダム カプセルファイターオンライン』で展開しているSNSについても、機能だけ見れば既存の汎用SNSより劣っている部分もあるでしょう。ですが、ゲーム作品自体にSNSが直結していて、そこからblogも読み書きできる。そういった連携部分ではかなり手を入れています。

 題材となっているガンダムは抜群の知名度ですが、各種ゲームあり、アニメあり、作品世代ありでファン層が分かれていて、意外に集まれる場所がない。そこで、場の性格と展開されるであろう話をセットにして考えつつ、そのままゲームのシステムに組み込んでしまおう、というわけです。

――新たに育ってきたコミュニケーション手法を、サービスの内部に取り込んでしまえばいいじゃないか、というわけですね。

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『SDGO』日本プロデューサー 秋山隆利氏:オンラインゲームのプレイヤーは、自分の趣味を周囲と共有することを好む場合が多いですよね。ゲームに限らず広くオタク趣味は、互いの趣向を認めあうことで成り立っています。ただ、単純に掲示板や個人サイトがその舞台になる場合、それ以上に関係性が深まることが少ない……。それに対してSNSだと、内容の薄さ濃さはさておき毎日何かしら話題が出て、それを共有できたりする。この二つを融合しつつ、そこにいること自体、話したりすること自体が遊びになるような仕組みを作れないものか? と考えています。

――ある意味、オンラインゲームが自然に備えている特徴を、さらに伸ばそうということですか。

秋山氏:ゲームの中で、あるいはゲームをめぐってできあがる関係というのは、現状では掲示板での関係と同じく、希薄な性質のものとして機能していると思います。その部分を何らかのシステムで補完し、さらに数珠繋ぎにしていけたらと。それを通じて、そこにいること自体が遊びの基軸になるようなあり方を考えています。

――そうやってサービス作品ごとに、従来よりも緊密なコミュニティが育ったとして、コミュニティ同士を繋げる仕組みは、何か考えていますか?

朴且鎮氏:コミュニティに属すことは、思いを載せることであり、時間をかけることでもあります。サービス全体をどう組み立てるかについてはいろいろな考え方がありますが、かぶらないものを無理に繋げる必要はないと思っています。まずはユーザーさんの思いと時間を投じるに足る、居場所を作ることがベースだと思っています。そうした居場所を作ったうえで、興味関心が重なる部分が出てきたら、そこでシナジーを考えればよいのかなと。

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