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2012年7月24日(火)

Xbox 360『ルートダブル』超絶ネタバレ全開ロングインタビュー後編――メッセージウィンドウに隠された真実とは?

文:ごえモン

インタビューには、『ルートダブル』に関する致命的なネタバレが数多く含まれています。絶対にグランドエンディングを見てから読んでください。

■悠里とましろの裏話、『びよビヨ』に隠された意味は?

――インタビューもそろそろ終盤ですが、まだ語っていない裏話はありますか?

 悠里とましろについての裏話があります。まずは悠里からお話すると、Bルートで悠里が幻覚という設定は、企画初期(BCの設定が定まり始めた段階)で決めていました。当初はBルートではただの幻覚で、夏彦が“シャルル・ボネ症候群”を発症したために見ている設定でした。そのうえで、悠里はラボに捕らわれていて、“初期情報:悠里は生きている→Bルートラスト:悠里は死んでいた! →Aルート:じゃあこの悠里は何者? →最終ルート:悠里はラボの地下で生きていた”と二転三転する構造はこのころから決まっていました。

『ルートダブル』

 ですが、この設定を弊社のスタッフと打ち合わせしている時に説明したら、「幻覚を見ている夏彦が痛々しすぎるので、なんとかならないか?」と指摘されました。それに、本当の悠里と再会した時に幻との大きなギャップが発生して再会のうれしさが半減してしまうのではないか、と。

 そこで、「じゃあBルートの悠里は、本当の悠里がBCで見せている幻にしよう」と再設定しました。これなら夏彦はBCのせいで幻を見ているので、多少は解消されるかな、と。ただ、制作が進んでいくにつれて、そのままの設定だと“ラボの地下深くから夏彦の自宅までBCが使えてしまう”という問題が致命的になってきました。ようするに、悠里は夏彦にも誰にも容易にSOSを発信できてしまうのはマズイし、そこまで遠距離のBCが使えてしまうとシナリオ上で不都合だし、ラボの外までBCが届くのは、そもそも困るのです。

 そこで考え直したあげく、幻の悠里は、本当の悠里が記憶を書き換えた副作用で見えてしまったもので、年に1回、夏彦の記憶を悠里が調整してあげることで、本体とのギャップを取り除いてあげる、という設定に改めました。この時、夏彦は9年前の事故の後遺症がないか調べるために病院で検査すると認識しています。さらに、夏彦と悠里は、七夕伝説の彦星と織姫の関係に当てはめているので、7月7日の七夕の日にその記憶調整処理を行う=年に1回再会できる、ということにしました。美しい設定になったなあ、と思います。この7月7日の再会が悠里にはうれしい出来事なので、悠里は“病院の検査が好き”という設定になっているのです。ヘンテコな設定だなあ、と思った人も納得できますよね?

――続いて、ましろに関する裏話を教えてください。

 幻の悠里の“実在感”を出すためのギミックとして、ましろの使えるエンパシーを活用しているわけですが、当初は、ましろのエンパシーは“接触した対象まで使用できる”という設定でした。なので、ましろは“ボディタッチ魔”という設定で、ことあるごとにベタベタと夏彦に触ってくる女の子でした。

 そうして夏彦の心の声を聞いて、幻の悠里との会話を成立させているというわけで。ましろの動き方が個性的になるし、フェアな伏線(注意深く読み込む人は、十分気づけるレベル)になるかなと思っていたのですが、月島さんと打ち合わせをしていたら「ちょっと露骨すぎるのでは?」という懸念が生じまして。一旦はエンパシー設定そのものをカットして、ましろは空気を感じ取って会話したり、そもそも悠里と直接会話させない――つまりサリュと同じ扱いに変更したのですが、それだと会話が成り立たなすぎて、逆に露骨になってしまうということで、ましろの能力レベルを上げて、接触しなくてもエンパシーが届く設定に再変更されました。二転三転していい感じに落ち着いたと思っていますが、あのまま“ボディタッチ魔”のましろだったらどうなっていたかなあと、たまに妄想したりします。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

――“ボディタッチ魔”のましろも見てみたかったです(笑)。ましろと言えば『超能力少女びよんど☆ビヨンド(以下、びよビヨ)』ですが、ドラマCD『びよビヨ』に隠された意味を教えてください。

 TIPSの中でズバリ書いたのですが、『びよビヨ』は政府から発信されたコミュニケーターを管理するための情操教育です。『びよビヨ』で描かれるのは、超能力というすごい能力があるけど、それはきっちりと管理しなければならないものだと。管理しないと能力が暴走して悪者が生まれてしまうので、超能力のことを正しく勉強しましょうね、というメッセージが込められています。

 『びよビヨ』の中では、ノーバディという悪者が出てきます。このノーバディ(Nobody)って、“N”なんですよねN化したコミュニケーターは、悪意を増幅して悪事を働く。こうなったら困るでしょ? と。ドラマCDの最後でなぞなぞが出されて、締めのひと言が「超能力は正しく使おうね」的なのはそのためです。「みんな暴走しないでね!」というメッセージですね(笑)。

 TIPSの中で、夏彦は今回の事件を振り返って『びよビヨ』の世界を疑似体験していたんだと感じた、と記述されています。『びよビヨ』は本編で起こる悲劇が寓話化された話なので、本編をクリアした後に聴くとおもしろいと思います。

『ルートダブル』 『ルートダブル』 『ルートダブル』

■『ルートダブル』の入口をどんどん広げていきたい

――講演会で、“ルートダブルは大事に育てていくコンテンツ”というお話がありました。具体的に、今後どのように展開していくのか教えていただいてもよろしいでしょうか?

 現状、呼びかけているのが、まずゲーム以外のメディアでの表現ですね。ゲームでしか表現できない物語、というのが作品の根底にあるのですが、切り口を変えることで他のメディアでも表現できる物語にもなっていると思います。とてもおもしろい話ができたので、小説やコミック、そして映像と入口を広げていきたいです。原作はゲームですが、出発点はどこからでもいいと思うんです。それが横にどんどん広がるようにしていきたいですね。

――その施策はすでに動き始めているんですか?

 ノベライズはゲームが発売される前から、月島さんと、月島さんのマネージャーでもある伊佐さんという方が主導で動いてくださいました。他のものは具体的なところまでは到達していませんが、今後もいろいろなところに提案していきながら、やっていきたいと思います。

――ノベライズの新情報を教えていただいてもいいですか?

 この段階ではまだ言えないですね(笑)。小説ならではの切り口について、月島さんが頑張ってトライしているところです。気になる人は、発売日の8月2日をお楽しみに!

――メディアミックスとは違いますが、ゲーマーズアイコンなどのDLCのご予定はありますか?

 現状では予定が立っていませんが、ご要望がたくさん届いたら検討します。

→グランドエンディング後の物語は描かれる?(6ページ目)

(C)イエティ/Regista

データ

▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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