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2013年7月30日(火)

【ほぼ毎日特集#26】時がゆっくり流れていた子ども時代『ゼビウス』は神聖なものだった――ファミコン世代のおっさんが思い出を語る(まっつ)

文:まっつ

 こんにちは。レトロゲーム専門ライター(?)のまっつです。正直なところ、自分が何者かすらよく把握しておりません。“ほぼ毎日特集”でレトロゲームについて何かを書くことになったので、ファミコン版の『ゼビウス』について書いてみたいと思います。

ほぼ毎日特集『ゼビウス』

【『ゼビウス』とは】

 1983年1月にナムコ(現:バンダイナムコゲームス)からアーケードで発売された縦スクロール型のシューティングゲーム。

 プレイヤーは、自機であるソルバルウを操り、ザッパー(対空)とブラスター(対地上)という2つの攻撃を使い分けながら進む。全16エリアで構成されており、自分の行動によって敵機の出現パターンが変化する独特なシステムを搭載。

 また、当時では珍しかった“隠しキャラ”というギミックを取り入れていることにも注目。後に発売されていくSTGに多大な影響を与えたタイトルと言える。

 ちなみに『ゼビウス』の世界観の時代設定は、なんと2012年とのことらしい。当時の人たちが30年後の未来にどんな幻想を抱いていたのかを、なんとなく感じることができますなあ。この分だと、今から30年後も大して世界は変わってないのかも? ファミコン版は、約2年後の1984年11月に発売。

ほぼ毎日特集『ゼビウス』
▲細かく設定された世界観、無機質でインパクトのあるグラフィック、隠しキャラの存在など、それまでのSTGにはなかったさまざまな要素が話題となり大ヒットした(写真はファミコン版)。

■『ゼビウス』との出会い

 俺が初めて『ゼビウス』を見たのは、小学4年生くらいのころだったと思う。当時よく通っていたゲーセンに、ある日突然入荷された。

 それまで聴いたこともない不思議な旋律とSE。緑と青と黄色の美しいコントラストが織り成す空気感。金属色の綺麗なグラデーションで描かれた無機質でゴツゴツとした敵キャラの存在感。何かコインを入れるのも躊躇してしまうようなすごい世界観にとにかく圧倒されたのを覚えている。

 中でも当時のゲーム雑誌『BEEP』で見たナスカの地上絵のインパクトは強烈だった。この時に俺の脳みそに浮かんだ言葉は、

 「これはきっと高尚なゲームに違いない。俺みたいな子どもが遊んじゃいけないんだッ!」

 “高尚”などというムツカシイ言葉を当時の俺が知っているわけがないのだが、とにかくそう感じたのである。この感覚は、後にも先にもこの『ゼビウス』と『スペースハリアー』を目撃した時だけだ。

 今見るとただのゲーム画面なのだが、当時の子どものころの俺には、山や海がある綺麗なジオラマの中で戦うという、とてつもないシューティングゲームに見えた。

ほぼ毎日特集『ゼビウス』
▲『ゼビウス』を通じてナスカの地上絵の存在を知った子どもたちは多いのではないだろうか。(写真はPS3用ソフト『ナムコミュージアム.comm』)

 プレイ料金が100円と高かったこともあるが、俺や周りにいる同年代のガキたちはほとんどプレイもせず、見知らぬお兄さんのプレイを後ろの肩越しから覗くように見つめていたっけなあ。

 ちなみにお兄さんのソルバルウが撃墜されたらすぐに視線を逸らし、スッとその場から離れるのは基本中の基本だ。そうしないと「お前が見ていたから死んだんだぞ!」と理不尽な因縁をつけられ、リアルで泣かされる可能性があるからだ。逆にコミュニケーション能力が高いヤツだと、意気投合して友だちになることもあるのが、おもしろいところ。

 なお、この手のギャラリーで最強なのは、ズバリ幼児である。横に座って「何してるの?」と言わんばかりに人の顔を覗き込んできたり、「これ何?」と言わんばかりにボタンを勝手に押してくる。

 ここで邪険に扱うと、予想以上の大きな声で泣かれてしまい、その子の親が飛んできたりする。『ポールポジション』など、ハンドル付きのレースゲームなどでは、爆笑しながらギアを勝手に変えられまくったりするので始末が悪い。地方の健康ランドのゲームコーナーでは、いまだに出現することがあるので要注意である。

 ゲームセンターの楽しさは、ゲームそのものだけでなく、ゲームという共通の目的でたくさんの人が集まるところにあるのかもしれない。家の中で遊ぶファミコンとはまた1つ違った魅力だと思う。

→ファミコン版『ゼビウス』との出会い(2ページ目)

(C)NBGI

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