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2013年9月25日(水)

小島秀夫監督インタビューの模様を全編掲載! 『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』はどのような作品に?【TGS2013】

文:皐月誠

――オープンワールドでいろいろなことができるようになりましたが、自由度の高いゲームはゲームに不慣れな人にとって難しく思われがちです。その点への配慮はありますか?

 『メタル』のような“潜入して見つかったら敵を倒すしかないゲーム”は、普通の人はやらないのではないかと思います。やるのは特殊な人だと思うので(笑)。

 今回、どちらかと言うとゲームデザインを排除しているんです。海外の人からはいろいろ言われてもいますが、「どこぞのゲームのシステムがいっぱい入ってる。『メタル』は『メタル』らしさがあったのに、弾に当たると赤くなるやつとかマーキングするやつとか、もともと『メタル』を倣ったゲームの倣うのか!」と。

 そういうのじゃなくて、今までは“できなかったこと”をゲームデザインとして提供していた。トランプとかそうじゃないですか。キングとクイーンのどちらが強い、大なり小なりで勝ち負けが決まるって、あんなの記号化ですよね。

 今回はオープンワールドなので、自分が現実世界で実際にサバイバルゲームをやっているとして、“どうやったらいいか”は、頭で考えて直感的に行動したら結論が出ますよね。そういうゲーム作りをしているので、すごいシンプルなんですよ。

 例えば、「あるところに誰かがいるから助けに行きなさい」って言われて、ヘリで降りて、それを探して、見つけて、どこでもいいからヘリを呼んで帰ってくるというだけの話なんです。だから、「こういう時はこうしなさい、ああしなさい」というのは、なるべくなくしています。

 とはいえ、360度に敵がいて、上からも下からも見られていたら、突然どこかで見つかります。すると「誰に見つかった?」という話になりますが……アルファワンをやっていると、みんな「何なんですかこれ!?」って怒り出しましたね。

※アルファワン……開発段階における動作検証の試作バージョンのうち、ごく初期のもの。

 仕方がないので、見つかった時はハイスピードになって、トリガーを引いたらそっちに向く。その間に倒すことができたら見つからずに済む……みたいな感じにしました。

 それと、タグ付けはしたくなかったんですが、やはりタグがあると便利なんです。僕の中では、リアルな世界にないものはあまり入れたくないんです。ゲームデザイナーがプレイヤーに取扱説明書を読ませて「こういうライフがあって、ゲージがゼロになったらゲームオーバーになります」というのは言いたくないんですよ。

 『MGSV』に関しては、基本の操作は覚えないといけないですけど、自分がその場に行ったらどうするかを考えて、車があったらエンジンをかけてという感じにしています。軍事基地にある車なので、キーは挿しっぱなしなんですよ。車に乗ったら運転ができる、というだけの話です。「こうしなさい、ああしなさい」はまったく言いません。

――現実を再現しているんですね。

 ええ、その車で人をひいたら当然死んでしまいますよ。今までのゲームデザインでは「ここから上は死にます」みたいな、飛び降りたら死ぬところの色が変わっていたりするじゃないですか。ですが、そういうのは今回はなしにしています。

 よく引き合いに出される『GTA(グランド・セフト・オート)』とちょっと違うのは、『GTA』は何でもできるから、いろいろとしている間に何をしていたかを忘れてしまいがちですが、『メタル』の場合は目的がミッションです。中にはタイムリミットのあるミッションもあります。

 敵地に潜入して、何かを破壊するか、誰かを助けるか、諜報活動するかなど。それをどういう手段で、どういうルートで行くかというのを考えて行動すると、ゲームに反映されていきます。

 ミッションでは脱出しないと死んでしまいますから。ヘリを呼ぶ場所も、敵地の真ん中だと撃墜されてしまう。安全に帰りたい人は、誰もいないところまで走って逃げて、そこで呼べば絶対に安全というわけです。

 そこまでやるというのが今回の『メタル』なんですよ。だから人によっては、「すぐ人を助けた」という人も、「何時間やっても死んでます」という人も当然いるでしょうし、そこの自由度は高いです。

『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』
▲任務を達成したら、現地から脱出する必要がある。帰投するまでがミッションだ。

――別のタイトルの開発者に、「自由度の高いゲームを作っていると頭がおかしくなる」と言っていた人がいるのですが、実際はいかがでしょう。

 どんなゲームでも作ってたら頭おかしくなると言うか(笑)、とにかく大変ですね。ただ、その自由度はやっぱり今回のTGSのステージでのプレゼンテーションでは十分に伝わらなかったと思うんです。

 むしろ、自由度の高さを「『メタル』じゃない」と言われるのがすごく怖くて心配していました。本編はものすごく広大です。天気も変わるし、時間も変わります。目標地点に行こうとして走っていったら、夜になったりもします。僕らは、夜は真っ暗で見えないというのは当たり前に知っているじゃないですか。

 そこはルールじゃなくてリアルに近い部分なんですが、それをいきなりやってもらうと「『GTA』みたいで『メタル』じゃない」と言われてしまうので、とりあえず遊んでもらうためのプロローグがあります。それが今回のTGSのステージでお見せした“GROUND ZEROES”です。これはオープンワールドなんですが、本編に比べるとものすごく小さい……何百分の一みたいな規模なんです。

 E3で発表した時に、「オープンワールドに期待!」という人の他に、「オープンワールドの『メタル』なんて考えられない!」あるいは「オープンワールドとステルスは相性が悪い」という人がいました。実際に潜入任務している人は(現実世界という)オープンワールドで活動しているわけですよ。例えば、現実世界で遊ぶサバイバルゲームだってオープンワールドですよね。狭い四畳半でやってるわけではありません。

→オープンワールドでさらにリアルさとゲーム性が増した『MGSV』(3ページ目へ)

(C)Konami Digital Entertainment
※編注:一部表記の誤りを修正しました(2013/09/26)

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