2015年12月25日(金)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。
第36回で扱うのは、1995年4月にカプコンからアーケード用格闘ゲームとしてリリースされた『サイバーボッツ』。今年で20年を迎えた本作について、電撃オンラインのkbjとフロアの片隅でひっそりと過ごす元プレイヤーのでっけいおがお届けします。
なお、画像は1997年3月28日に発売されたセガサターン版になります。
メカらしいさまざまな攻撃と、ブーストによる軽快な移動で、一目見た時から→+A入力で心をわしづかみにされたのが対戦格闘ゲーム『サイバーボッツ』です。
学校近くのアミューズメント施設は教師の見回りが多くリスクがあったのですが、このタイトルがあるために、ちょくちょく行っていました。見つかって竹刀で殴られそうになったのですが、コインがもったいなかったので遊び続けている自分を見て、教師もあきれていましたね。
本作を語るうえで欠かせないのは、先ほども挙げたブースト移動です。ブーストボタンを押すとダッシュが発動。地上だけでなく空中でも発動でき、その効果によって、空中でのダッシュや浮遊、多段ジャンプすることが可能。操作は難しくないのですが、これを使った攻撃や回避の駆け引きが熱いうえに爽快感がすごく、のめり込みました。
あと一撃で倒せる敵に対して遠距離からウェポンを撃ち、その瞬間にブーストで近寄られて、コンボから超必殺技のサイバーEXまで決められて逆転負け……「あそこでウェポンを撃ったのは甘えだったか!」と後悔したものです。
▲威力が高いけど、当たりにくいサイバーEX。たまったゲージはギガクラッシュとして消費されることが多いです。 |
逆に、地上で待ちかまえていた相手の攻撃を空中浮遊でかわしてドヤ顔を決めた時には、脳内でアドレナリン出まくりでしたね。
●油のにおいがしそうな無骨なロボによる熱戦
本作に登場するメカはスマートでカッコいいというより、やや無骨であることが特徴の1つ。重機を改良したような、現実にありそうなデザインだからこそ、使いこんでいくうちに愛着を覚えたのだと思います。
あと、パイロットと兵器のヴァリアント・アーマー(V.A.)を自由に組み替えられるのも特徴です。もし、パイロットとメカがセットになっていると、機体は好きだがパイロットが好みではないとか、パイロットの物語は気になるが、機体の性能が苦手だからプレイできないということになることがあるのですが、本作では気にしなくて結構。ノープロブレムです。
二足、四足、キャラピラ、逆間接、浮遊など下半身だけでもさまざまなタイプが存在。特徴が異なるので移動速度や武器、見た目などからとりあえずプレイする機体を決めて、いろいろとさわりながら判断していくのがいいかと。
ただし、ワーロックにはくれぐれも注意! 他のV.A.とは比べものにならないほど強いので、使っても問題ないかを“対戦前に”確認しましょう。ちなみに自分がよく行っていたゲームセンターでは、『ストリートファイターII’(ダッシュ)』のベガ以来となる“店長による使用禁止命令”が出ていました。
ちょっと解説しておくと、高い攻撃力に加えて、驚くほど強力な判定の飛び道具と無限のウェポンゲージ&アームダメージゲージ、そしてブーストタイプが空中浮遊と、いろいろと兼ね備えすぎている機体です。
格闘ゲームにおいて「CPUが使うとハンパなく強いけど、人が使うとそこそこのキャラ」というのはよくある話ですが、この機体はそんな生易しいものではありません。人が使っても“G.O.D.”級に強い、性能を持っています。
記事のために対戦してみて思い出したのですが、分身も持っていました。攻撃時の当たり判定はあるのに、ダメージを受けるためのやられ判定がない技なのですが……説明のためにテキストを書いていても、「いや、これはないでしょ」と思えるほどすごい(ひどい?)性能ですね。
ちなみにワーロックのようなインパクトこそないのですが、ヘリオンもしっかり凶悪です。個人的には、ミサイルをガードしたあとにコマンド投げがくるヴァイスも苦手でした。
▲機体は撃破しても、コクピットをつぶさないのは紳士協定でしょうか? 設定だけでなく、描写の細かさも光ります。 |
●家庭用ならではの要素、対戦に燃える!
アーケード版が稼働したのが1995年で、家庭用に移植されたのは1997年。家庭用が発売される時には、熱はやや冷めていたのですが、サターンの拡張ラムカートリッジを使ったなめらかな動きと追加キャラである零豪鬼を見た時に、心のA1+A2ボタンを長押し。パワーゲージをためて再びプレイしました。
ゲームセンターでは使いやすい機体や強い機体を操作しがちですが、家庭用ということでいろいろな機体で対戦。新たな発見があって、改めて奥深さや楽しさを感じながらコントローラを握りしめていましたね。
ストーリーをじっくり見れたのもコンシューマならではと言えます。マジメなキャラもいれば、デビロットのように完全にギャグに寄ったキャラもいて、じっくり見てしまいました。
▲父の屍を乗り越えて、姫は旅立ちます。デビロットの物語にはネタバレが多く含まれるので、他のキャラをクリアしてからやるのがオススメです。 |
ちなみに、『MARVEL VS. CAPCOM』シリーズや『超鋼戦紀キカイオー』に登場しているジン・サオトメの原点は本作になります。2015年現在、セガサターンのプレイ環境を作るのは骨が折れる……本作流に言えば“アームが外れる”ですが(笑)、ゲームアーカイブスでダウンロードすれば、PS3、PS Vita、PSPですぐにプレイ可能です。もしくはアーケードで稼働しているところに通う!?
▲アームが外れたシーン。 |
当時を知っている人も、知らない人もぜひプレイしてほしいタイトルです! ああ、書いていたら『超鋼戦紀キカイオー』も遊びたくなってきましたよ!
カプコンが1995年にアーケード版を発表し、その後1997年に家庭用に移植されたロボット対戦格闘ゲーム『サイバーボッツ』。マジメな解説はkbjが書いているので、こちらではソフトにまつわる思い出を語っていきたいと思います。
ゲーセンであまりやり込めなかったぶん、家庭用で……ということで、発売日に後述するサターン版の超限定版をゲット!
あまりプレイできなかった他のV.A.と、家庭用に追加された新シナリオをじっくり楽しむぜ!! と思っていたわけです。……が! 実際遊んでみたら、超限定版の遊び心1200%な内容と、フリーダムすぎるデビロット編のシナリオだけでも値段の元をとれたと思えるぐらい濃かったんですよ!!
●キャラが崩壊気味!? だからこそおもしろいデビロット編!
本作の世界観は21世紀の宇宙で、スペースコロニーや謎の最終兵器が登場するなど、正統派なロボットSFアニメの雰囲気。他のキャラのシナリオもシリアスなものが多いのですが、デビロット編はスタッフが積極的にその世界観を壊しにかかっているのが最高です。
まずデビロット一味のキャラの濃さ! 非合法コロニーサイド666こと“ヘルドラド”のプリンセス・デビロット。サラッと家臣を火あぶり宣言したりと我がままかつ悪い姫様なんですが、イベントシーンでは泡風呂に入浴する姿を見せてくれるので油断ができません。
そんな姫様に付き従うのが地獄大師とDr.シュタイン。地獄大師の声優が八奈見乗児さんで、「では……ポチっとな!」と某名作アニメのあのキャラを彷彿とさせるノリノリの演技で悪い魔術師ポジションを好演! Dr.シュタインは……ほとんどしゃべらないんですけど、姫様の命令で同僚である地獄大師をあっさり火あぶりにかけるあたり、忠義に厚いと思われます。
▲デビロット姫はドレス、水着、泡風呂&全裸仁王立ちと、サービスカット連発。このシーンは名言っぽいことを言い放ってますが、「誰か泡とって泡!」と叫びたくなるのでセリフが頭に入ってきません。 |
デビロット編のストーリーは、片思いの相手・老雄ガウェインを追って旅に出た彼女たち3人の道中を描いているのですが、途中で出てくるキャラの扱いがひどい(笑)。ジンは正義の味方のバッタもん扱いされてるわ、バオ&マオ兄妹は負けたら●●●にされるわで、既存のキャラのシナリオを笑い飛ばすようなイベントシーンがめじろ押し!
先に他のキャラクターをクリアしておくほどにおもしろさがアップするので、最後にデビロット編を遊ぶのが断然オススメです。
▲シリアスな雰囲気のマリーですが、このあと脱力ものの展開が(笑)。スタッフがブーストゲージを使い切る勢いでパロディ調の演出をしているので、ホントに楽しいですよ! |
ちなみにデビロット編は、Dr.シュタインが開発したスーパー8というタコ型のV.A.を操作することになります。見た目がイロモノっぽいですが、ミサイル型のウェポンやリーチの長い通常アタックなど、使い勝手のいい技がそろっていて戦いやすいので、シナリオだけでなくCPU戦も楽しいですね。
●超限定版の名に恥じない作り込まれたブックレット&外箱!
そしてこの超限定版! 2冊の冊子付録とゲームソフトが入っていて、55,555本の限定生産です。外箱にはシリアルナンバーも入っています。外箱を開けようと思ったら、開ける部分に他のカプコンタイトルのキャラクターが描かれていてビックリ。『ストリートファイター』シリーズのザンギエフ、さくら、『ザ・キングオブドラゴンズ』のエルフなど、合計8キャラが描かれています。
▲買った当時はこのイラストをじっくり眺めていたせいで、中身をなかなか出さなかった思い出があります。『ザ・キングオブドラゴンズ』のエルフが吐血しているのは、作品内で防御力が低かったからでしょうか?(笑) |
超限定版に付いてくる冊子付録の1つが“オリジナルパノラマシート”。いわゆる“飛び出す絵本”で、家庭用版に追加されたV.A.・零豪鬼とスーパー8が大阪湾で戦っているシーンが描かれています。塗りのタッチやテキストのルビのふり方が昔の絵本風になっていて、非常に凝った作りになっています。
▲パノラマシートのタイトルは“総天然色 パノラマ大図解 ゼロゴウキ対スーパー8 大阪湾大決戦!!”。零豪鬼とスーパー8の戦いに巻き込まれた遊覧船・しらなみの運命は……!? という内容なんですが、よく見ると鮫が寄ってきていて、かなり絶望的な状況なのがシュールです(笑)。 |
そしてもう1つの冊子付録が“サイバーボッツ デラックスシークレットファイル”! オールカラー・48ページで、カバー周りがハードカバーになっている豪華仕様です。中身は2体の零豪鬼が対峙する撮り下ろしのジオラマや設定資料、書き下ろしのコミックやイラストストーリーなど、全ページに特濃のネタが散りばめられた内容です。
ちなみに欄外に「当初、デビロット人形を付録にしたかった」というスタッフコメントが載っていて、今さらながら「それはそれで欲しかったなぁ……」と思いました。
▲デビロットファンにはたまらない描き下ろしの“スーパー8 大仮眠室”のイラスト。窓の外やカレンダーにまでネタが仕込まれています(笑)。そして姫が足で押そうとしているスイッチは……。 |
▲ボークス製のレジンキット・零豪鬼の作例と設定資料。各部解説のテキストは、「ニホンカモシカ一億匹分に匹敵する瞬発力!」などコミカルなものが多く、細かいテキストにもスタッフのこだわりが詰まっています。 |
▲“非公開版キャラ設定資料集”では、女性キャラクターの相関図やデビロット姫の入浴シーンのラフなど貴重な設定画が数多く収録されています。“軍人女”、“姫”など、設定当時のキャラの仮称がわかるのも、こういった資料の魅力ですね。 |
ここまでお伝えしてきたらやっぱりプレイしたくなったので、PSのゲームアーカイブス版をPS Vitaにダウンロードしてプレイしてみました。各V.A.のロボットモノのツボを押さえたアクションやステージ背景の細かい演出など、今なお色あせないロボット対戦格闘ゲームであることを再確認できました。
興味のある方はぜひプレイしてみてください。もちろんデビロット編を含めてですよ!!!
▲最後はデビロット姫のさまざまな表情と名言でお別れしたいと思います。 |
記事公開に際してカプコンさんから、当時の貴重な画像をご提供いただきましたので、以下に掲載いたします。当時プレイしていた人だけでなく、美麗なイラストに興味がある人もチェックしてください。
【周年連載 バックナンバー】
→第35回:初代『電脳戦機バーチャロン』稼働から20周年。当時の攻略法や用語集を改めて掲載
→第34回:『キングダム ハーツII』ディズニーとスクウェア・エニックス夢の共演。『KHIII』発売前にもう1度
→第33回:生まれた意味を知る『テイルズ オブ ジ アビス』10周年。魅力的なキャラや爽快なバトルが充実
→第32回:業界に衝撃を与えた『龍が如く』から10年。重厚な人間ドラマと遊びの幅の広さは初代から健在
→第31回:『風来のシレン』20周年。お竜にドーーン!! ガイバラにイッカァーーン!! ペケジに倒される!?
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