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2016年11月17日(木)

『逆転裁判』と『ダンガンロンパ』プロデューサー対談。開発秘話や人の育て方を赤裸々に公開【周年連載】

文:kbj

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。

 第49回で掲載するのは、10月12日で15周年を迎えた『逆転裁判』シリーズと、2010年11月25日にスパイク(現スパイク・チュンソフト)からPSP用ソフトとして発売され、人気を博している『ダンガンロンパ』シリーズのプロデューサー対談。

“周年連載”
▲左が寺澤プロデューサーで、右が江城プロデューサー。

 『逆転裁判』シリーズの江城元秀プロデューサーと、『ダンガンロンパ』シリーズの寺澤善徳プロデューサーは、以前から親交があるということで、その出会いやお互いのタイトルについて、どのような意識で開発しているのかなどをお聞きしました。

●江城元秀プロデューサー:プログラマーとして開発に入り、ディレクターを経てプロデューサーに。『逆転』シリーズには、DS『逆転裁判2』からプロデューサーとしてたずさわる。

●寺澤善徳プロデューサー:『ダンガンロンパ』を会社にかけあったシリーズの立役者。『侍道』や『ガチトラ!』、『コンセプション』など、さまざまなタイトルにかかわる。

寺澤さんはカプコンが嫌いだった!? 2人の衝撃的な初対面に迫る

――お二人はかなり親交が深いと伺っていますが、そもそもどちらでお知り合いになられたのですか?

寺澤:まあ、あれですよ……惹かれ合ってしまったんですね(笑)。

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江城:アハハハハ。でも半分は当たっていますね。僕は『ダンガンロンパ』のタイトルは知っていたんですが、遊んでいなかったんです。それを知った弊社の山﨑から「やらなきゃダメですよ!」とすごく勧められて、PS Vitaの『ダンガンロンパ1・2 Reload』をプレイしました。そうしたらすごく刺激を受けまして!

山﨑剛さん。DS『逆転裁判 蘇る逆転』以降、さまざまな『逆転』シリーズにかかわる。『逆転検事』シリーズのディレクター。

――なるほど。実は山﨑さんに『ダンガンロンパ』を勧めたのは、電撃オンラインなんですよ。

江城:そうだったんですね(笑)。クリアして感動していたら、『逆転裁判6』で企画のリーダーをまかせたメンバーが、もともとスパイク・チュンソフトさんに勤めていたことがわかったんですね。

寺澤:醍醐くんだよね。

江城:はい、醍醐頼希ですね。彼を通じて「『逆転裁判』チームと『ダンガンロンパ』チームで飲み会をしよう」とお願いしました。

醍醐頼希さん。『逆転裁判5』、『逆転裁判6』で企画担当としてシリーズにかかわる。

寺澤:実は醍醐くんとは直接の面識はなかったんですが、「『逆転裁判』のプロデューサーが飲みたいと言っているんですが、どうですか?」と連絡が来たので、齊藤と小高に声をかけて行うことになりました。

齊藤祐一郎さん。スパイク・チュンソフトのラインプロデューサー。『ダンガンロンパ』や『コンセプション』、『イグジストアーカイヴ』などを手がける。

小高和剛さん。スパイク・チュンソフトで企画・シナリオを手がける。代表作は『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』や『ダンガンロンパ』シリーズなど。

――それはいつごろのことですか?

江城:『1・2 Reload』をやった後だったので、2013年の年末です。

寺澤:だから長い付き合いのように見えて、実はまだそんなに時間が経っていないんですよ。でも、太く濃い関係ですね。

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江城:ここ数年で一番飲んでいる相手ですね。初めて会った時は、カプコンから僕、山﨑、醍醐、あとアシスタントプロデューサーの濱の4人が参加して、並んで個室で待っていました。

――『ダンガンロンパ』チームはどんな雰囲気でしたか?

江城:アウェイに乗り込んできた敵チームのようでした! 「お前ら、目にもの見せてやるよ!」みたいな、ものすごいバリアを張っている感じで(笑)。

――サイコ・ロックがかかっているような状態だったと。

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江城:冗談ではなくすごかったんですよ! 10個くらいはサイコ・ロックがあったんじゃないですか?

寺澤:確かにそれくらいありました(笑)。

江城:奥から寺澤さん、齊藤さん、小高さんが座られて、いざ会食が始まったんですが……まったく盛り上がらず、序盤はものすごい探り探りでしたね。

寺澤:「1時間くらい飲んだら帰ろうかな」って言った覚えがあります(笑)。

――会食で「早退します」ということがあるんですか?

江城:これが冗談ではなく、ホンマにそんなテンションだったんですよ! でも1時間くらい経った時だったかな、僕と寺澤さんの歳が近いことがきっかけに、少しずつ話が弾みだしたんですよ。

――その時はゲーム開発の話が多かったんですか? それともお互いの話?

寺澤:どっちもしたんですが、ゲームの話はそこまでしなかったと思います。

江城:寺澤さんは趣味のテニスの話をされて、僕はカプコンに来る前にやっていたことなどを話しました。最終的に盛り上がったので、そのまま2軒目に行きました(笑)。

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寺澤:初対面とは思えないくらい江城さんをいじったんですね。でも、それを受け入れてくれる懐の深さに、惹かれたんだと思います。

江城:そういえばその時にお聞きしたのですが、小高さんとは某タイトルで僕とニヤミスしている可能性があるんですよ。

寺澤:まだたぶん新人の時にシナリオを書いていたころですね。

江城:驚きましたね。2次会では、某社のプロデューサーが共通の知人であることがわかり、後日3人で飲むことになったんですね。その飲み会が毎月定例化したんですよ。

寺澤:くだらない話をしているだけで、別に仕事の話をするわけでもないんですけどね。でもテンションが合うみたいで。その飲み会をずっとやっていて、人を少し増やしつつ、今に至ります。

江城:僕は弊社の辻本とちょくちょく飲むんですね。その時にスパイク・チュンソフトの寺澤さんと飲んでいることを伝えたら紹介してほしいと言われて、セッティングしました。そうしたら、今度は僕を外して2人で飲むようになっちゃって、知らない間にゴルフに行っているんですよ!

辻本良三さん。カプコンの執行役員にして、CS第三開発統括。『モンスターハンター』シリーズをてがけるプロデューサー。

寺澤:アハハハハハ。そうですね、辻本さんがこちらに来ている時に飲みますね。

――そもそも寺澤さんは最初の時、なぜカプコンさんを警戒していたのですか?

寺澤:いろいろなタイトルを作っていて、人気作品も多い。僕らは中堅のメーカーなので、歴史がある大手メーカーに対しては、はっきり言ってひがんでいるんです!(笑)

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江城:それは初対面の時にも直に言われました。「俺、あんまりカプコン好きじゃないだよね」って(笑)。

寺澤:本当は好きなんです! でも正直に表現できずに、ひねくれてそんなことを言っちゃうんですが、そんな反骨心で頑張っていた我々に歩み寄ってくれたのが江城さんであり、辻本さんだった。そこがうれしかったんですよ。

江城:お酒が入ってくると、人となりやその人の考え方がわかるじゃないですか。そこが見えた時に共感できました。最初に見えたサイコ・ロックは1時間後には割れていましたね。お互いに「ダハハハハハ!」って笑っていましたから。

際どいネタをどう判断するのかは、プロデューサーの手腕で決まる

――お互いのタイトルについての印象を教えてください

寺澤:『鬼武者』であれば、僕が『侍道』をやっている時期で、最近の『逆転裁判』であれば『ダンガンロンパ』をやっている時期。そのため、「あんなに予算があっていいなあ~」って思っていました(笑)。

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▲画像はPSP『侍道ポータブル』のもの。

江城:毎回会うたびに「開発費を湯水のように使いやがって」と言われました(笑)。

寺澤:タレントを使って、コマーシャルガンガンやって……いいなぁ~って(笑)。あと『鬼武者』はカメラを固定にして綺麗な絵を見せていたので、「固定にしやがって! うちはカメラをバリバリ動かせるぜ! でも綺麗に見せられていいなあ~」とか思っていましたね。

――ものすごいあこがれているじゃないですか!?

寺澤:いつだって、うらやましく思っていますよ(笑)。『逆転裁判』であればシリーズを重ねて、うまくいろいろな展開をしていると思っていましたし、シリーズを重ねると売り上げが落ちたり、評判がよくなかったりもあるんだけど、ユーザーを見てしっかり展開する。あと廉価版をいいタイミングで出して、アピールしていくイメージです。

江城:僕が『ダンガンロンパ』を遊んで驚いたのは世界観です。下ネタがガンガン飛び出すじゃないですか!? あとは小高さん独特のテンポ感とか、モノクマのキャラ設定とか、ブラックユーモアを含んでいるところとか、『逆転裁判』ではできないですし、そもそも他では見られないテイストが満載。そこがおもしろくて感動しました。

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寺澤:小高は本当に鬼才なので、ああいうテキストが出てくるんですよね。いつも言ってますが、モノクマは小高の中にいる1つの人格だと思ってます。他のキャラもそうですけど。

江城:あのスレスレさがすごいですよね。下ネタにしても、ベタにしないところが好きです。

寺澤:でも上がってきたテキストを女性陣に確認してもらうと、「やりすぎで引きます」というレポートが来ますよ。でもそこを直すか、そのままにするかは小高にまかせています。僕が修正してもらうのは、パクリネタがひどい時くらいかなぁ。

江城:オマージュっぽいものはチョコチョコありますよね(笑)。

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寺澤:ギリギリとアウトの境目の判定はします。でもクロに限りなく近いグレーはセーフにしています(笑)。だから僕をクリアしても、外部機関とか某ハードメーカーさんからツッコミが入ることもありますよ。

江城:その線引き具合が絶妙でおもしろいですよ。恐らく小高さんは狙って書いているんでしょうね。サブカルが好きな人や濃い層に刺さると思います。

――どちらもグッズを含めて、さまざまな展開をされていますよね。

江城:原宿で『ダンガンロンパ』のアパレルグッズが販売されているじゃないですか。ああいうのは、『逆転』シリーズではできていないなと。住み分けではないんですが、ユーザーのターゲットが微妙に違うんでしょうね。もちろんどちらも好きな人はいると思いますが。

寺澤:もちろん共通しているファンはいると思います。捜査して、証拠を集めて、推理するという遊び方が近いタイトルですからね。

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江城:『ダンガンロンパ』は曲やPVの雰囲気がポップというか、オシャレですよね。『逆転裁判』はややベタなんです。

寺澤:『逆転裁判』は、スタイリッシュな映像にしようとはあまり考えていなくて、もっと王道的なものを目指しているのでは?

江城:そうですね。スタイリッシュを目指していたら亜内検事は出ないので!

(一同笑)

江城:巧は、古典的なミステリーへのリスペクトがあるんです。小高さんは映画などの映像を撮られていたそうなので、見せ方やビジョンのセンスがあるんだと思います。

巧舟さん。『逆転裁判』シリーズの生みの親。シナリオやディレクションのみならず、初期の成歩堂龍一の声も担当している。

プロデュースをするうえで重要なのは開発との信頼関係

――個性的なキャラが出てくるという点でも、『逆転裁判』と『ダンガンロンパ』は共通していると思うのですが、キャラクターを作り上げていく過程で開発にお願いすることはありますか?

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江城:僕は『逆転裁判』の世界観にそのキャラクターを出した時に、ユーザーがどう思うのかを考えます。あまり「こうしてほしい」ということを開発に言うことはないですね。

 ディレクターから「こういう物語で、こういうキャラを出したい」というふうに報告があがってきた時に、1人目のユーザーのような目線で、どう映ったのか考えます。そのキャラや設定がユーザーに刺さるのか、そうではないのか。そのうえでわからなければ、どういう意図で作ったのかを聞きます。

寺澤:その辺はスタンスが近いのかなと思います。僕も「自分がこうしたい」というメッセージ性を開発に投げるタイプではないんですね。開発が作りたいものを作るのが一番おもしろいものになると、基本的には信じていますので。ただそれがいろいろな基準的なものを逸脱していないかをジャッジするスタンスです。

 ですから、「こんなキャラクターを出してよ」ということはありません。あくまで小高と小松崎が出してきたキャラクターをジャッジします。『1』の時はキャラのバランスを見て多少意見を言うことはありましたが、『2』以降はキャラについてはほぼ口を出していないです。

小松崎類さん。『ダンガンロンパ』シリーズのキャラクターデザインを手がけている。小高さんと『ダンガンロンパ』の企画を立ち上げた。タイトルは小松崎さんによるアイデア。

江城:『逆転検事』の時は、一番意見を出しました。一部のデザインが過去のシリーズのキャラとネタがかぶっていて、おもしろくなかったんです。驚かないもの、おもしろくないものについては何回か修正してもらいました。ただ『逆転裁判6』については、あまりなかったですね。プロモーションで使うメインキャラクターのデザインについては、多少直してもらいました。

寺澤:『逆転裁判』はわかりやすくキャラクターが立っているものが多い。見て「こういうキャラだろう」と伝わりやすいのはプラスの要素だと思います。そこにギャップを与えると、楽しんでもらえると思うので、どういうキャラを作っていくのかがポイントです。

 もちろんゲームを作る時、開発者はそういう意識で作るんですが、うまくはまらないこともある。『ダンガンロンパ』で言うと、人気が出る出ないというのは僕らも意外と読めていないところです。「このキャラがこんなに人気なんだ!」とか、「え? このキャラは人気ないの?」とか。

――具体的にはどのキャラクターでしょう?

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寺澤:個人的には田中眼蛇夢(たなかがんだむ)は人気が出そうだと思っていましたが、山田一二三とか弐大猫丸とかがあそこまで人気が出ないのもまったくわかっていませんでしたよ(笑)。この辺もスタッフ間でも当然見解は違うので、いつも発売後が楽しみです。

 『1』だと朝日奈葵は個人的に好きなんだけど、人気はそれほど高くないんですよね。ユーザーからの意見で、「寺澤があまりに朝日奈さんを押すから気持ち悪い」というのがありまして。

(一同爆笑)

寺澤:「そうか、俺のせいか……今後は押しすぎるのはやめよう」と思いましたね(笑)。

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――先ほどのギャップというところでは、サナギ軍曹はそこを意識して作られているように感じました。

江城:軍曹はデザインのチェックをほぼしていません。メインキャラはプロモーションで使うので細かく見るんですが、そうじゃないキャラについてはあまり見ないんですよ。もちろん、ラジコンヘリの仕組みなどは聞いていましたが、そこから先についてはあまり聞いていません。

寺澤:ギャップといえば、『逆転裁判6』で真宵ちゃんに“あるキャラ”が霊媒してすごいことになるじゃないですか? ちょっと不気味だったんですが、なぜあれをしたのか聞きたいですね。

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江城:アハハハハ。あれは僕もプレイした時に「これ、あかんのちゃう?」と思ったんですが、髪型以外が死者の形になるのが倉院流霊媒道なので設定的には間違っていないんですよね。もちろんそれはわかるんですが、「ファンは怒るのでは?」とドキドキしました。

寺澤:それで戻った時に“ウフフな展開”になるのかと思ったら、そうじゃなくてガッカリしました(笑)。

江城:いや、それはないです!(笑) 発売後に物議を醸すことも想定していましたが、『逆転裁判』の舞台を観に来てくれたユーザーから「おもしろかったです!」と言われて。もちろん、快く思っていない人もいると思うのですが、そう言った意見はあまり見ませんでした。むしろ「とうとうここに手を出したか」という流れだったと思います。

寺澤:そこでOKを出すか出さないかがプロデューサーの仕事。ひょっとして別のプロデューサーだったらNGを出したかもしれないわけですからね。

江城:先ほどの話とかぶるのですが、たまに完成間近のデザインなどのチェック依頼があるのですが、「これはあかん。やり直して」と伝えると「いいんですけど、修正に時間がかかりますよ」って。スケジュールという人質をとられることもありますね(笑)。

寺澤:ウチの場合はもう延ばせないタイミングで「もう直せないぞ!」と確信犯的にやってくることはありますね。あと、裏で仕込まれているのが困るんです。

――裏とは?

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寺澤:ギリギリのネタを知らないところに埋め込んでいくことです。最後のテストプレイで見て、「うわっ」となる。もちろんものによっては直させますけどね(苦笑)。致命的なものはなかったんですが、ギリギリのネタは今までにもありました。それは先に言っておいてくれと思うこともあります。

江城:それはプロデューサーとディレクターの関係性ですね。どこまで開発が攻めてくるか……ディレクターが確信犯でやってくる場合もありますし(笑)。

寺澤:ふふふふ……でもそこがおもしろいところでもあるので、難しいですよね。

江城:あまりガチガチにしてもよくないんですよ。現場のモチベーションにも影響するので、いいあんばいでのさじ加減を心がけています。

開発が目指すものを生かしつつ、うまく整えていくことができるか否か……。

――作品を担当された際に、どのようなことを意識されますか?

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寺澤:さっきもあげたのですが、1つには“開発者が作りたいものをできるだけ作れる環境を用意すること”を意識しています。僕らの仕事って答えがないんですよ。選択肢が2つあった時、どちらが正解なのか、どちらも間違いなのか、つねに明確ではない。個人の感覚や好みもある中でどうするのか……。できるだけ開発に選択をさせてあげて、よほど違わない限りは尊重します。

江城:すごい優しいですね。

寺澤:だからこそ成功するパターンと、しないパターンがあります。もちろん確実に間違っていると僕自身が思う時は、ちゃんと話をして方向を変えることもありますが、そうでない時は現場に選択させます。だから失敗した時は、自分の意見を開発に押し付けなかったことを反省しますね。押し付けなかった時点で、僕自身も自信を持てていなかった訳なので仕方ないんですけど。

 だからそれは結果論なんですよ。その時にちゃんと自分の意見を出す選択をしなかったのだから、売れなかったことはやっぱり僕らプロデューサーの責任ですね。

江城:それぞれ立場が違うので難しいうえに、その時に答えは出ていないですからね。

寺澤:迷っている人から意見を求められたら、好き嫌いを含めユーザーの動向を考えて判断します。でもそうではない部分は、開発から「これが絶対におもしろいです」と言われたらそちらをできるようにします。そういうスタイルでやってきました。

江城:僕は「最終的にどこを見て作品を作るか、意識するように」と言っています。あと現場がおもしろいと思っていることでも、少なくとも僕に伝わっていなかったらユーザーにはおそらく伝わらない。そこでもめることもあるのですが、お金を出してくれたユーザーに満足してもらうものを作らないとダメなんです。

 その意識にそって現場が決めてきたことは、伝わらないこと以外は細かく指示を出さないです。そのうえで、伝わらないものをどのように伝えたらいいかを一緒に考えたり、もう一度チームで考えるように指示したりします。

――開発ともめた時はどうするのですか?

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江城:徹底的に話し合います。もめた時に、話をしていくとその人が何をしたいのか、どういうモノづくりをしたいのか、本質が見えてくるんですよ。本質がぶれていなければ返事が返ってきます。

 芯がかたまっていなかったり、ぶれていたりする場合は、返事があやふやになるんですよ。そうやって話し合って、もし向こうが間違っていなければ自分が考え直します。向こうが間違っていたら、指摘して再度動いてもらいます。

寺澤:怒ったりするんですか?

江城:声を荒げることもありますね。開発者によっては委縮するので、僕と合わないと考える人もいると思います。山﨑は物腰は柔らかいのですが、ゲーム作りについては妥協をしないので、よくぶつかりますよ(笑)。

寺澤:でもそれはお互いに信頼があるチームで、シリーズでやっているからこそできることですよね。僕であれば、『ダンガンロンパ』チームへのやり方があって、外部の開発チームへの対応はまったく違います。しっかりこちらの意見を言う時があれば、現場を尊重する時もあります。

江城:初めてチームを組む人にいきなり声を荒げたら「とりつくしまのない人」と思われてしまいますからね(笑)。その場合はしっかり聞きますし、言い方も変えます。当然ですが、TPOですね。

寺澤:あとはユーザーのことを意識するのは、伝統のあるシリーズだからだと思いました。シリーズの場合は購入している層が見えているので、そこにどうアプローチするのか、意味がある。でもオリジナルタイトルの1回目はそこだけを考えては作れないですね。だからこそ、基本的にはクリエイターのエゴで作らせます。もちろんある程度は考えたうえで、「お前がおもしろいと思うものを作れ」と。

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江城:そういう意味だと、僕はオリジナルタイトルはほとんどやっていないですね。『逆転検事』も『逆転』ブランドですし、『DmC Devil May Cry』も『デビル メイ クライ』の世界観があったうえでの作品。数少ないオリジナルタイトルの中で印象深いのは『シャドウ オブ ローマ』で、稲船さんがプロデューサーで僕がディレクターでした。

稲船敬二さん。カプコンでさまざまなタイトルを手がけたプロデューサー。株式会社comceptでさまざまなタイトルにかかわる。

――プロデューサーとのやりとりはうまくいったんですか?

江城:それはもう、とにかくもめました(笑)。

寺澤:ワハハハハ。でもそれがあって、今の自分の仕事に生きているなら、意味はあるよね。

――寺澤さんと小高さんは“CEDEC 2011”でメールのやりとりを公開されていましたが、あのような相談は以前からあったのでしょうか?

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寺澤:DS『爆走デコトラ伝説 BLACK』を部下のプロデューサーがやっていたのですが、外部発注したシナリオがイマイチだったんです。その時に小高に手直しを頼んだところ、劇的によくなったことがあったので、小高のシナリオならおもしろくなるだろうなという前提が僕の中にありました。

 それからしばらく経ってからですが、『ダンガンロンパ』の原型について相談を受けました。世界観や設定が気に入ったのと、小高だからきっとシナリオはイカしたのを考えるだろうと信じられたので、動ける体制を作ることにしました。

――『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』は『デコトラBLACK』の後だったんですね。

寺澤:あとですね。実は『名探偵コナン&金田一少年の事件簿』は発売当時にプレイしていなかったんですよ。だから遊んだのは『ダンガンロンパ』の開発が始まってからでした。遊んでみたらものすごくよくできていたので、小高に対する信頼がさらに確信に変わりましたね。

 IPを使ったタイトルの中には、そこまで手がかかっていないものもあるのですが、あの作品はとにかくシナリオが秀逸で、本当に楽しめますので、小高ファンにはぜひ遊んでみてもらいたいですね。もう手に入りにくいんですが……。

――チャレンジを成功させた名作タイトルですね。

寺澤:カプコンは、大手メーカーの中でいろいろなチャレンジができる数少ないメーカーだと思っています。だから今後も、もっともっと新しいことにチャレンジしてもらいたいですね!

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江城:そういう意味では『バイオハザード7』はチャレンジだと思います。あと、カプコンはさまざまなIPがあるので、それをどうやって活用するか、模索しています。IPをしっかり使わないと、逆にタイトルを殺すことになるので。

寺澤:期待にこたえるために開発費を上げると、それがリスクになってしまうので、そこは難しいところです。シリーズモノを続けていく中にも当然チャレンジはありますが、ぜひブランニューもやってほしいですね。そうしないと業界的にもさらに厳しくなってしまいますし。

江城:さっきも言いましたが、寺澤さんにはいつも叱られるんですよ。「アドベンチャーゲームにお金をかけすぎ!」って(笑)。

寺澤:アハハハ。でもそうは言うんですが、しっかりコストをかけたものを出すことも重要なんですね。映画でもそうじゃないですか? 王道のAAAタイトルがあったうえで、とがったよさを持っているものもあるべき。いろいろなものがあって初めてマーケットが成立するので、数が減っていくと先細りになってしまうんです。

賛成6:反対4ではダメ。厳しい意見についてプロデューサー目線でコメント

寺澤:さっきの話しだけを見ると、読者的には「ユーザーが見えているからシリーズのほうが楽だよね」と感じそうですが……そうではないんですよね。

江城:そうなんですよ。ファンにはいろいろな考えがあり、全員を満足させることは難しい。どうすれば多くの人に満足してもらえるのかを考えて作るのですが……でも絶対に不満は出てきます。

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寺澤:選挙だったら6:4で支持されれば勝ちなんですが、商業的にはダメなんですよね。4の反対意見は倍以上に大きくなるため、6の支持が負けてしまうんですね。統計を見たら6割がいいと思ってくれているのに、世間的な評価、特にネット上の評価はマイナスになってしまう。

 だから感覚的ではありますが、7:3の支持をもらってやっとイーブンなのかなと思いますが、その辺はしんどいところですね。

江城:最近はプレイしていなくても、ネット上の評価だけを見てマイナス評価が拡散されるという嫌な流れもありますね。

――シリーズだと、「この作品はこうあるべき」という考えの人も出てきますからね。

江城:ファンにはそれぞれ思い入れがあるので当然です。映画やドラマでも、シリーズでこれまでにない切り口をすると「こんな作品、違う」となってしまうことがあるじゃないですか。

 そういったファンのイメージとの齟齬が広がると叩かれて、あえばあうほど傑作と言われます。今は、国内と海外でも評価が違うのがさらに難しいですね。

――『逆転裁判』は海外を意識して作られているのでしょうか?

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江城:ゲームの中身は海外を意識せずに開発しています。それでも、海外ユーザーで支持してくれる人はいます。欧米とアジアのコアなユーザーは熱心に追いかけてくれますね。

――アメリカで行われるComic-Conなどでもコスプレが多いと聞きました。

江城:今年、ロサンゼルスで行われたAnime Expoに初めて出展して、パネルディスカッションをしたんですね。朝9時から700人ほど入る会場での開催だったので、「朝早くからそんなに人は来ないでしょ」と思っていたら9割以上埋まっていました。すごく感動しましたね。

寺澤:海外のファンはすごいですね。アニメの時に、キャラクターが死んだ週の小高へのTwitterのリプの多くは海外からでした。読める英語だけでなく、読めないような文字ですごい来ていましたね。

江城:それだけキャラの掘り下げとバックボーンがしっかりしているということですよね。あと、登場キャラの歳が若いので、自分の多感な時期とかぶるんだと思いますよ。

寺澤:人生は、どれだけ吸収して生きていくかだと思うんですよ。最近はすぐに結果を求めて、教えてもらいたがる、もやもやした終わり方に耐えられない人が増えているように思います。

 僕らの年代はモヤモヤから想像して、自分なりの解釈をして、納得できないまでも無理やりでも腑に落とすのを楽しんでたのですが、今はインターネットがあって調べればすぐに、合ってるかどうかは分からずとも、一応は何かしらの答えを得ることができちゃう。

 僕らの時代はそれがないから、延々と「どういうことだろう?」って考える癖がついてたし、そうせざるを得なかったから、モヤモヤの後を創造すること自体がエンターテイメントだったんだけど……もう考えが古いのかなぁ……いや、そんなことないと信じたい!(笑)

 だからこれからも、モヤモヤさせることを恐れずにやっていきたいなと思っていますよ!

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江城:僕もそれは思います。それで違う意見のコミュニティとの議論があって、新しい交流ができればいいと思います。うちらが業界に入った時は、ゲームに物語がないとか当たり前でしたからね。

 あとは、今だとインディーズのクリエイティブが強いと感じます。自分が考えるおもしろいものを軸に戦っている、勢いを感じます。独創的な作品も多いので刺激を受けますね。

――プロデュースするに際して、何に影響を受けましたか?

江城:僕がディレクター時代にプロデューサーだった稲船さんの影響が大きいです。プロデューサーの仕事の仕方や、プロモーションの仕方、スケジュールの考え方や、コストの意識、売るためのポイントの仕掛け方など、お手本になりました。

 一方で開発にプロモーションの意図を伝えてくれなかったこともあったので、狙いがわからないこともありました。そういったこともあり、「こういう意図があって、こういう方向性にしたいから協力してほしい」と現場には言うようにしています。

――なるほど。

江城:あとは、コラボという点では『龍が如く』シリーズの名越さんはすごいですね。あれだけの数のコラボをこなすのは、自分では難しいと思います。

 『ダンガンロンパ』だと、新宿マルイワン1階での展開は覚えています。あれ、見に行ったんですよ。『逆転裁判』はああいう展開をできてなかったので、すごくうらやましかったです。帰り道にずっと「いいな~」と言っていました。

名越稔洋さん。セガゲームスの取締役兼開発統括本部統括本部長に加えて、セガ・インタラクティブ取締役CCO兼開発生産統括本部統括本部長を担当する。

寺澤:あれはアニメをやる前のイベント施策だったんですが、その時からアニメに近い展開や仕組みを心がけて仕掛けていきました。

センスが時代にあっているのか……ゲームを扱うセンスについて

――最近どんなゲームを遊ばれましたか?

江城:今は引退してしまったのですが、『Destiny』を一時期ものすごくやっていました。こっそりクランにも入っていましたし、協力プレイに参加していまだにフレンド登録しているプレイヤーさんもいます(笑)。

寺澤:いろいろなゲームをやっているのですが、3DのFPSはすぐに酔ってしまいまして……。スパイク・チュンソフトは海外タイトルのローカライズもやっていて、すごくおもしろいタイトルばかりなんですが、プレイはできないんですよ。

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江城『ウィッチャー3 ワイルドハント』はいいゲームですね。あのタイトルはローカライズが大変だったのでは?

寺澤:担当の本間は、3カ月ほどポーランドにあるCD PROJEKT REDさんに行って一緒に開発していました。戻ってからもメールでずっとやり取りしていたからこそ、成し遂げた偉業ですね。

本間覚ローカライズプロデューサー。“世界で最初に『ウィッチャー3』を終えた男”として世界に1枚のTシャツを持っている。『ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション』なども担当した。

江城:そこまでやらないとダメなんでしょうね。ただ日本語にしているだけでなく、世界観を作り込んでいる。あそこまでやったからこそ、日本のユーザーがのめり込んだのだと思います。そこはスケジュールとコストとの兼ね合いになるんでしょうね。

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寺澤:あとは担当の熱意でしょうね。本間は『テラリア』や『クリプト・オブ・ネクロダンサー』を持ってくるなど、自分がおもしろいものを担当するタイプ。だからこそできたんだと思います。ちなみに『クリプト・オブ・ネクロダンサー』はiOS版が好評ですよ。

江城:ゲームにかかわってプロデュースする人は、おもしろいか、そうでないかがわからなくなったらダメだと思っています。

寺澤:おもしろい、おもしろくないは個人の考えで絶対に皆が持っています。その人がおもしろいと思っていたものが売れるのか、売れないのか……売れないものをおもしろいと思う人はプロデューサーには、向いてはいませんね。別にダメではないんだけど、続けていくのは難しいです。まあこれも結果論でしか語れませんけど。

 プロデューサーは能力があるというより、自分のセンスが時代にあっている人がうまくいっている気はします。時代が変われば、うまくいかないことも起こり得る。あとは多少の運でしょうね。

江城:ゲームだけにかかわらず、アンテナは大事だと思います。ちょっとしたことに、反応できるかどうか。好きなモノを仕事にしているのは幸せなことです。趣味と実益を兼ねているわけですからね。

 自分が業界を離れる時は、ゲームやアニメなどのコンテンツを見ても感動しなくなったり、おもしろさがわからなくなったりした時だと思っています。

寺澤:感覚を磨いていくのは、センスでもあり、勉強でもあります。

江城:「どうせ仕事だし」と思ってコンテンツを扱うのはしんどいと思います。もしそれでヒットを出し続けている人がいたら、すごいと思います(笑)。

寺澤:例えばですけど、違う業界から来たオッサンが、1回だけ当たることはあっても、連続してヒットを出す、量産していくのは難しいと思いますね。やるなら若いうちに。

印象的な推理ゲームは? 『ダンガンロンパ』のルーツが判明!?

――推理ゲームで印象的なタイトル、シリーズはありますか?

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寺澤:『御神楽少女探偵団』です。個人的に『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』のルーツは、あそこにあると思っています。発売当時、僕はヒューマンにいました。発言に対して選んだものが間違っていたらゲージが減るシステムは、それまで知りませんでした。

 もしかすると、それ以前にもあったのかもしれないけど、僕の中では最初で画期的でした。当時のヒューマンとしても丁寧に作ったタイトルで、とてもいいゲームでしたから。

――『御神楽少女探偵団』は業界内にファンが多いタイトルですね。

寺澤:多いですね。別に『ダンガンロンパ』を作っていた時に意識なんてしなかったのですが、後から考えると『御神楽少女探偵団』がルーツだったのかなと思いました。ウチのスタッフがやったことあるかどうかも知りませんけど(笑)。

江城:推理ゲームは昔のPC98の時からやっています。コマンドを自分で入力するのが印象的でした。『サラダの国のトマト姫』や『ミステリーハウス』ですね。そこからハードが進化して、クリック式の『MYST(ミスト)』が出ました。

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寺澤:『MYST』はすごかった。あれは僕も衝撃を受けたすごいゲームでしたね。

江城:『逆転裁判』はカプコンに入って、『鬼武者2』を開発している時に知りました。うちのタイトルなので遊んでみたところ、「なんやこれ、めっちゃおもしろいやん!」と。それまでアドベンチャーというと、アイテムとアイテムを組み合わせて謎を解くものが多かったと思うのですが、証言と証拠品から矛盾を見つけるゲーム性は新しかったです。

 アクションアドベンチャーではなく、テキストタイプのアドベンチャーにも引きつけられました。『弟切草』や『かまいたちの夜』などは、キャラを前面に出さず、テキストと背景でユーザーに想像させる手法。あれはすごいですね。

寺澤:アドベンチャーという広い定義だと、『バイオハザード』も『鬼武者』も当てはまりますから。一方、『ダンガンロンパ』や『逆転裁判』のようなタイプは推理アドベンチャーになる。まあ『ダンガンロンパ』はハイスピード推理アクションなので、アドベンチャーとは言っていないのですが(笑)。

江城:それを言ったら、『逆転裁判』も“法廷バトル”ですね(笑)。あっ、『逆転検事』は推理アドベンチャーです。

寺澤:ジャンルを言いだしたら、RPGだってたいていアドベンチャーですし、ほとんどのゲームはロールプレイ(役割を演じる)ものなんですよね(笑)。『逆転検事』はこれまでのファンからの評判はどうだったんですか?

江城:よかったですね。今では、巧の『逆転』が好きな人と、山﨑の『逆転』が好きな人に分かれています。これは作家性なのでそういうものだと思います。

寺澤:なるほど。『ダンガンロンパ』は、無印発売時期から応援してくれてるファンがいて、その人たちに布教されてファンになってくれた人たちがいて、あとはアニメから入ってきてくれたファンの方たちと、何となくではあるのですが、3層くらいファン層がある感じがしています。

お互いに聞いてみたいことは?

――お互いに聞いてみたいことはありますか?

江城:『ダンガンロンパ3 ‐The End of 希望ヶ峰学園‐』で1週間に2作品のアニメを放送するのは驚きました。聞いた時に「寺澤さん、すごいな」と思いました。

“周年連載” “周年連載”

寺澤:僕がすごいわけではないんですよ。あのようにテレコでやっていく構成を小高が考えたんですが、普通に考えたら放送の期間が開いてしまうわけですよ。それを聞いたアニメの比嘉勇二プロデューサーが「それなら、ギュッとまとめて一緒にやりましょう」と言ってきたんです。

 以前にそういう構想を考えていたようなんですね。でも現実的に難しいからやらなかったネタを今回出してきてくれて、皆が乗り気になってやることになりました。先方から提案してくれたので、こちらとしては願ったり叶ったりでしたね。NBCの上田さんが腹をくくってくれたので実現したんです。

江城:でも、普通に考えて大変じゃないですか?

寺澤:そうですね(笑)。大変なのは誰もがわかっているんですが、大変になる人たちがやるって言っているんだから、止めることもないよなって(笑)。その代わりいろいろな問題が起こるだろうなとは覚悟してましたので、お助けプロデューサーだったんです。

江城:同じ世界観で、2つの視点であればわかるんですが、世界観からしてまったくの別ものを描くというのは、すごい手法だと思いました。

寺澤:実験的なこともしているので、実際いろいろな問題もあったし、現場のスタッフの中には結果的には心残りもあったとは思うのですが、これだけのチャレンジとしてはよくまとめてもらって、いいラストになったと個人的には思っています。なので、スタッフには本当に感謝しています。

――アニメ化する際、ゲームとは異なるところで苦労した点はどこでしょう?

寺澤:『ダンガンロンパ3 ‐The End of 希望ヶ峰学園‐』はストーリーがオリジナルなので、原作がないうえに、希望ヶ峰学園シリーズの完結ということで、そのプレッシャーはかなりありました。まずはアニメの原作を作るというところからスタートでしたから。

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 『1』のアニメ化の時は、立ち上げに苦労しました。もっと早くやりたくて、ゲーム発売前から動いていたんですよ。でも「おもしろそうだけど……結果が出ていないので……」と手を上げてもらえませんでした。当たり前ですが、成功していないタイトルに手を上げてくれる人は少ないですよね。

――最初に手を上げてくれたのが、Lerche(ラルケ)さんだったと。

寺澤:そうですね。ただ、その後続けて2社くらいから話が来ました。当たり前ですが、売れてからはいろいろなメーカーからドンドン話が舞い込んできました。急に楽になりましたね(笑)。でも売れないところで動くのは本当に大変です。今、いろいろな展開をやれているのは、皆さまが乗っかってくれたからです。

 それこそ電撃オンラインさんも1作目『ダンガンロンパ』の時に、どこよりも早く手を上げてくれて、いろいろな企画をして盛り上げてくれた。あれはうれしかったですよ。

江城:最初に手を上げてくれた方々を無下にはできませんよね。それはすごくわかります。

――寺澤さんから、江城さんに聞いてみたいことは?

寺澤:15年展開している『逆転裁判』が初のアニメ化というのは意外でしたね。なぜやれなかったのですか?

江城:以前は深夜アニメを考えていたのですが、ビジネスモデルとしてアニメを見た人がBDやDVDを購入してくれるような見せ方をしなければならない。でも『逆転裁判』でそれをするのが難しかったんです。

 そのため各社さんからは「おもしろい作品だし魅力的なIPだけど、アニメ化した時のターゲットが難しい」という結論になりました。何度か話は出たのですが、そのたびに立ち消えとなっていました。

――今回のアニメは放送枠からして、かなりハマっていましたね。

江城:そうですね。土曜の夕方に放送できたのですが、あそこ以外の枠だったら無理だったと思います。タイミングや縁などいろいろな奇跡が重なって理想的な枠で放送できたので、本当に感謝しています。

 僕と巧は原作監修として、キャラクターデザインとシナリオ監修、アフレコ立ち会いをさせてもらいましたが、たくさんの方々のご協力があったからこそ実現したプロジェクトですね。

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寺澤:『逆転裁判』はどういうユーザー層がプレイしているのか、知りたいですね。

江城:20代後半から30代の方が多いですね。10代後半から20代前半の方もいるんですが、飛び抜けてはいません。ただ、今回アニメをやったことで中高生が少し増えてきた印象がありますね。

寺澤:意外ですね。僕の『逆転裁判』のイメージはオールレンジで下の層にもユーザーがいるというイメージでした。実際にアニメで下の層が入ってきたということで、いい流れになるといいですね。

江城:年齢層が上がっていくと、どうしてもゲームから離れてしまいます。そのため、ファンの年代が上がっていくとIPとしてドンドン縮小していってしまうんです。若い年齢層が遊んでくれて、ファンになってくれると世代交代がうまくいくんですよね。

――あとは長いシリーズだからこそ、ユーザーの年齢層が上がっているのかもしれませんね。

江城:そうかもしれませんが、シリーズとして若い層にもアピールしていかなければと思っています。今はオシャレな10代が多いじゃないですか。そこには『ダンガンロンパ』のスタイリッシュな世界観が刺さるんだと思います。

寺澤:確かに『ダンガンロンパ』の展開で意識しているのは、“オシャレさ”ですね。『1』の時は若い子に受けるような演出や見せ方をするように、かなり何度も言いました。でも僕もスタッフもオシャレではないので、苦労しましたよ(笑)。

――カメラの使い方やインターフェイスはオシャレなタイトルですね。

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寺澤5周年のコメントでも言ったんですが、初報でタイトルを発表した後には「『逆転裁判』のパクリだ」と多くの人から言われました。

江城:遊ぶと全然違うんですけどね。

寺澤:画像と少ない情報から判断すると、そう思われるのは仕方ないのですが、だからこそ違うところを一生懸命に伝えようとしました。結局は無駄な努力に終わりましたけど(苦笑)。

江城:テーマはミステリーで、調査して真相を暴くというゲーム性は似ているんですが違いますよね。『ダンガンロンパ』は昼や夜の概念があって、生活していますしね。キャラクターたちとコミュニケーションして関係が深くなると、事件が起こる。そこで疑心暗鬼になるので、どんどんストーリーにのめりこんでいくんですよ。

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 『逆転裁判』は事件が起きて困っている被告人を助けるため、証拠を集めて無罪を勝ち取るゲーム性。だからユーザーの目線が違うんですね。

――確かにそうかもしれません。

江城:遊んだ際にちょっと思ったのは、弊社から出た『Killer7』のような雰囲気だということです。『Killer7』はぶっとんだストーリーで、スタイリッシュな演出をやっていて個人的に大好きなタイトルですね。

寺澤:小高にしても、メインディレクターの菅原にしても、須田剛一さんのタイトルが好きで、『Killer7』とかが好きなんですよね。そのため、何か感じる点があったのだと思います。

 根本的に、他の推理ゲームと違うのは、『ダンガンロンパ』は法があって裁判官がいるわけではないので、犯罪の証明は正しくなくてもいいんですよ。例え間違っていたとしても、その場の人たちが納得すればいいんです。結果として、『ダンガンロンパ』の中の判断は正しいということになっていますけど。

 学級裁判に参加している人間性や心情的なところに比重を置けるのも、真実じゃなくても全員が納得すればいい、というベースだからで、そこが他の作品とは違う特殊な部分かもしれません。

菅原隆行さん。『ダンガンロンパ』では企画やゲームデザイン、ディレクションを行った。

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江城:表面的にはわからないバックボーンが各キャラにあるんですが、それが必ずしもハッピーなものではないのも特徴かと思います。『逆転裁判』は基本的には大団円になって、誰が見てもよかったというところに落ちるんです。でも『ダンガンロンパ』は映画的というか、ユーザーに感想をゆだねるようなところがありますね。

寺澤:それはありますね。『逆転裁判』は章ごとに物語の区切りがあってスッキリするけど、『ダンガンロンパ』は章が終わっても、事件が解決したわけでないし、また次の事件があるからスッキリしない。モヤモヤしたまま進んでいきます。

江城:そのモヤモヤを抱えたまま進んでいくのがおもしろいですよね。例えばいい映画やドラマ、マンガは見た後に印象に残る何かがあるんですよね。ファンはそこについて議論をしたくなって、コミュニティが活性化してふくらんでいく。そういったファンの声が、作り手のエネルギーになります。

人をまとめるのはコミュニケーション能力

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江城舞台『ダンガンロンパ』の再演を見させていただいたのですが、すごかったです。特に神田沙也加さんのお芝居がすごかった。舞台を見ていた人は、皆そう感じると思うんですが、神田さんがゲーム『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』に出演するのが楽しみですね。

寺澤:舞台をご覧になられた方には、そう言っていただいています。でも全員が舞台を見ているわけではないので、賛否両論なのが本当のところです。

江城:神田さんは物語やキャラクターを研究し、自分の演技にして完成させていますよね。なかなかできないことですよ。

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寺澤:実は神田さんには、最初は霧切響子でお願いしていたんですよ。でも、神田さんから「江ノ島盾子をやらせてほしい」と逆オファーされまして。それくらい思い入れが強かったんだと思います。そういえば『ダンガンロンパ』の舞台の後に江城さんから『逆転検事』の舞台に招待されたので観に行きましたけど、あれもかなりおもしろかったですよ。

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江城:『逆転』シリーズの舞台は、キャストがゲームを理解してくれているメンバーなので、助かっていますね。演じる前に知らなくても、選ばれたらちゃんと勉強してくれる。

 成歩堂龍一役の渡辺大輔さんや、御剣怜侍役の和田琢磨さんも、役をしっかり理解して演じてくれています。演出家から監修の依頼があるのですが、そもそも原作をしっかり理解していただいているので、問題が少ないんです。

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寺澤:オバチャン(大場カオル)役の役者さん、あの人はすごいですよね。本当にゲームから出てきたかのような存在感がありました。

江城:スーパー・エキセントリック・シアター所属の女優・久下恵美(くげ めぐみ)さんですね。オバチャンや矢張、糸鋸が出てくると、皆の視線が集まります。繰り返しになるんですが、演出を含めて役者の皆さんも原作への愛がすごいんです。あとは、演出していただいた大関真さんや斎藤栄作さんのチームをまとめる力、コミュニケーション能力も秘訣ですね。

江城:プロデューサーもそうですが、コミュニケーション能力は重要ですよね。そういう意味では、御社の齊藤さんはコミュ力の固まりじゃないですか。弊社でいえば、小嶋も似ているかなと思います。何かをお願いする時に、「初めまして」からなのか、「こないだはどうも」から始まるのかでまったく違いますからね。

小嶋慎太郎プロデューサー。『モンスターハンター』シリーズやさまざまなタイトルにかかわる。2017年3月には『モンスターハンターダブルクロス』が発売される。

寺澤:あとは、それをどう自分の仕事に結びつけるのかが大事ですね。それができて初めて“意味のあるコミュニケーション”になるので。でも僕は好き嫌いが激しいから、そのスタイルは無理ですね(笑)。

江城:僕も合う、合わないはありますよ。もし合わないなと思ったら、こちらからはアプローチしません(笑)。

寺澤:ノリが合わないのはもう仕方ないですからね。気の合う仲間でコミュニティを作ればいいだけなので。そのうえで、仕事はしっかりしますよ!

江城:もちろんです(笑)。

自分のやり方を見たうえでどうするのか……後進の育成について語る

江城:聞いてみたいことなんですが、後進の育成はどうされていますか?

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寺澤:現状は「齊藤を見ておいてください」としか言えないですね。個人的には放任主義なんですよ(笑)。プロデューサーは育てるものじゃない、自分でなるものだ、というのが僕自身は信念として持っていて。

江城:難しいですね。自分の動き方を見てもらい、あとは自分のスタイルを考えてとしか言えないんですよね。

寺澤:スキルも性格も違う人が同じことをやるのは無理。さっきのコミュ力の問題もあるし、考え方や信念もそれぞれある。自分のやり方を見せるのが育てることで、見てもらったうえで取捨選択をしてもらうしかないと思います。

 あうやり方は拾ってもらって、あわないものは捨ててもらう。そういう意味では江城さんはいろいろなプロデューサーを見ているのでは?

江城:そうですね。会社内では見ています。

寺澤:僕はヒューマン時代からプロデューサーをやっていますが、自分で自分のスタイルを作ってきました。ヒューマンにはあんまり参考になるプロデューサーがいなかったので。だからなおさら、下に自分のやり方を教える意識はないんです。もちろんやり方は見せるのですが、実は見せていない部分も結構あります。

――そうなんですね。

寺澤:正直、汚い部分はカッコ悪いので見せたくないんですよ。それを見せたら、先輩として尊敬されないですしね。それもあってか齊藤が失敗することもありました。だから、それは育てるという意味では、僕のやり方が間違っていたのかもしれないなと。

 なのでその時は後から「あのような失敗は昔俺もしていて、今はそうならないように、実はこんなこと(カッコ悪いこと)を裏ではやっているんだよ」と伝えましたね。そこで初めて、下を育てたような気がしましたね。

 あとは教えてもらおうと待っている人とはうまくいかないですね。齊藤は自分からガツガツ動くし、貪欲に自分に合ういいところを取り入れようとしているので、きっといいプロデューサーになると思いますよ。

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江城:育てるのは本当に難しいですね。自分も他の人の様子を見て、自分なりに解釈したり、怒られたりして学んでいきました。

寺澤:おそらく、僕より江城さんのほうが下にいろいろと教えてあげているんだと思います。叱ることで伝えてるんじゃないかなと。

江城:僕は叱るというか、どちらかという理詰めで追い込んでいくタイプかもしれません(笑)。

寺澤:アハハハハハ。一番嫌なタイプじゃん!(爆笑)

江城:まずは小さいタイトルを任せてみたうえで、失敗した所を指摘しつつ、徐々に大きいタイトルを担当してもらえるよう、成長してほしいと思っています。

寺澤:何か問題があったことは?

江城:一番ダメなのは、報告を受けた段階ですでに炎上しているパターンですね。早く言ってくれれば手を打てるんですが、黙っているとわからない。そこは稲船さんに度々言われました。

寺澤:手を打てない状況まで来ていると、どうしようもないですからね。

想像の上を行く展開ができるか、どうか

――『逆転裁判』は15周年、『ダンガンロンパ』は5周年。ここまで継続してこられた理由・秘訣はどこにあると思われますか?

江城:最終的には支えてくれたユーザーがいるからですね。「おもしろい」や「次が欲しい」という反応があるからこそ、次にどのような展開していくかを決めて進めてくることができました。

 振り返ると早かったですね。ついこの間、10周年特別イベントで『逆転裁判5』を発表したと思ったら、もう15周年ですからね。

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寺澤:なんだろう……ファンの予想をいい意味で裏切るというか、驚きを与えるような展開をしてきたら、ここまで来ていました。

 あと、「無駄にした」や「損をしたな」とは思わせないように、できる限りあこぎなことはしないように(笑)、誠実な態度で接してきたつもりです。「そんなことない!」というツッコミの声も聞こえそうですけど。

江城:同じようなことになるんですが、ユーザーが想像することの上を行く展開をすることですよね。ただし、それをするといいことだけでなく、ネガティブなこともありますが……。

寺澤:そうですね。ユーザーが求めていることはある程度見えているつもりなので、それをやることはできるんです。ただ、それをやって「想像通りだったね」と思われた瞬間に、結局あまりプラスに捕らえてもらえなかったりしますよね。

 そこをいかに裏切ったうえで「思っていた以上によかった」と感じてもらえるかがポイント。今はそれができているから、受けいれられているんだと思います。

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江城:想像通りでよかったとか、想像していたものと違うけどお金を払った価値があったと思ってもらえれば作った意味があります。その割合をどれだけ増やせるか、それがプロデューサーの仕事だと。

寺澤:開発を含めて、僕は「想像通りでよかった」という意見より、「想像とは違ったけどよかった」と思ってもらえるほうがうれしいですし、そこが狙っている着地点かもしれませんね。

江城:なるほど。確かに多くの作り手はそれを考えていますよね。

寺澤:もちろん結果的に間違うこともあるんです。でもそれを狙って開発していくほうがおもしろいし、やりがいはあるんです。そういう意識ですね。

――それぞれが手がけるタイトルについて、告知があればお願いします。

江城:今年は東京ゲームショウの場で、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の制作決定を発表させていただきました。現在も開発チームは、皆さんのご期待に応えられるようにチーム一丸となって開発を進めておりますので、今後の情報にご注目ください!

寺澤:よっぽど大きなトラブルがなければ、1月12日に『ニューダンガンロンパV3』が発売されるはずです! シリーズユーザーはもちろんですが、今まで『ダンガンロンパ』シリーズをやったことがないユーザーさんにもぜひやってもらいたいです! ナンバリングですが、キャラも一新してますので、過去作やってなくても大丈夫ですので!!

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江城:『ニューダンガンロンパV3』の開発進捗はどうですか?

寺澤:いつものように苦労しています(笑)。今回は初のPS4とPS Vitaというマルチなので、その面でもやっぱり大変ですね。でも今までで一番ボリュームがありますし、サイドメニューも充実していて、遊び応えのあるものになる自信がありますので、期待してください!

――ニンテンドースイッチやPS VRについてはどのようにとらえていますか?

寺澤:ニンテンドースイッチが発表されて、どんなゲームを出すのか、各社考えているでしょうね。江城さんはスイッチをどう見てますか?

江城:個人的にカギになるのはハードの価格だと思います。どの層に狙って、どの段階で普及させていくか、どのような戦略を立てていくのか。いちゲームユーザーとしても楽しみですよ!

寺澤:PS VRは発売日には買ったのですが、まだ箱を開けられていないんです。『バイオハザード7』はすべてをPS VRで遊べるんですよね?

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江城:本編すべてをPS VRで楽しめます。あの恐さを家でも味わいたいので、なんとかして買いたかったんですが……僕は発売日には買えませんでした。

寺澤:いろいろと遊びは変わっていくと思います。ただ、VRの普及にはもう少し時間がかかるでしょうね。

――今後の展望を含め、ファンへのメッセージをお願いします。

江城:『逆転』シリーズを15年も続けてこられたのは、このゲームを遊んでくれているすべてのユーザーのおかげだと感じています。いつも本当にありがとうございます。

 来年1月22日に開催される“逆転裁判15周年 特別法廷”をはじめ、皆さんと一緒に楽しめるようなイベントを考えたいと思っておりますので、末永く『逆転』シリーズの応援を、何卒よろしくお願いします。

寺澤:1月に『V3』が発売になりますが、その後もまた舞台やその他イベントなどもやっていきます。まだしばらく『ダンガンロンパ』というIPを楽しんでもらえるように頑張っていきますので、ぜひ応援を続けていただければと思います。そして平行して裏でまた新しいものを生み出すチャレンジもしていますので、そちらも楽しみにしていただければ。

――最後に立ちで写真を撮影しましょう。「異議あり!」と「それは違うよ」のポーズでお願いします。

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寺澤:実はこの手を伸ばしているポーズは「それは違うよ」の印象があるんですが、このポーズではやってないんですよ。江ノ島ポーズと言った方が正しいのかもしれません。だからその勘違いには「異議あり!」なんですよね(笑)。

江城:ワハハハ。なんでうまいことを言っているんですか! でも僕も、「それは違うよ」とポーズが一緒だと思っていました。

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寺澤:でもユーザーさんの中にそういう印象があるのは確かですし、わかりやすいので、僕もイベントとかでは積極的に使っていますよ。たまに「意義あり!」って言いながら。……って、記事の最後がこんなまとめでいいんですか?(笑)

――大丈夫です。本日はありがとうございました!

江城:ゆるいなあ(笑)。

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