“最悪ほど美しく”――なぜ『魔法少女ノ魔女裁判』は残酷なのに目を離せないのか。30時間超の物語を生んだ制作の舞台裏【電撃インディー#1475】

文:電撃オンライン

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディーでは、5周年企画として“電撃インディー大賞2026”を開催しました。

 その企画でアドベンチャーゲーム部門第1位、総合第1位となった『魔法少女ノ魔女裁判(まのさば)』について、インタビューを実施。本記事にてその内容をお届けします。


 インタビューにお答えいただいたのは、本作を手がけるRe,AER/Acacia代表・畑俊行さん。作品のコンセプトに込めた想いや、30時間を超えるボリュームに至った開発の舞台裏、今後の展開などをお聞きしていますので、ぜひインタビューをご覧ください。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

“電撃インディー大賞2026”総合第1位&アドベンチャーゲーム部門第1位受賞!魔女の魔法と嘘を暴き、処刑せよ。『魔法少女ノ魔女裁判』とは


 主人公・エマは謎めいた牢屋敷に閉じ込められ、“魔女候補”と共同生活を送ります。牢屋敷とはなにか。魔女とはなにか。本当の真犯人は誰なのか。ひとつの真実に触れるたび、物語は新たな姿をあらわします。

 プレイヤーは、個性豊かな少女たちの言葉からヒントを得て、彼女たちの発言の矛盾を暴き出し、嘘つきの“魔女”を探し出さなければいけません。

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初めての自社リリース作品が総合&アドベンチャーゲーム部門第1位に。少女を処刑する手を動かすのはプレイヤー自身【魔法少女ノ魔女裁判インタビュー】


――電撃インディー大賞2026の受賞について、あらためてひとことお願いします。

 初めて自社でリリースした作品が、“電撃インディー大賞2026”でアドベンチャー部門と総合部門の第1位という、身に余る評価をいただきました。本当に光栄です。

 『まのさば』は社内の小さな企画コンペから生まれ、クラウドファンディングで皆さまに見つけていただいた作品です。

 ここまで連れてきてくださったのは、無茶な作り込みに最後まで付き合ってくれたスタッフと、発売からずっと作品を愛し、語り続けてくださったファンの皆さまです。投票してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

――ゲームタイトルにこめた想いを教えてください。

 一目で作品の核が伝わることを最優先しました。

 “魔法少女”と“魔女裁判”。このふたつがぶつかる物語なのだとタイトルだけで伝わること、そして検索したときに迷子にならないこと。どちらも新規IPには死活問題です。

 “ノ”をカタカナにしたのは、文字面にほんの少しだけ異質さを残すためです。きれいなのに、どこか不穏。本作の質感は、タイトルの文字面から始まっていてほしかったんです。

――『魔法少女ノ魔女裁判』の注目点を教えてください。

 入口は、かわいらしくも退廃的な少女たちと、容赦のない魔女裁判のギャップだと思います。

 ただ、本当の魅力はその先にある、少女ひとりひとりの物語です。証言の嘘と矛盾を暴く議論の果てに、少女を疑い、追いつめ、処刑する――その手を動かすのはプレイヤー自身です。

 だからこそ感情の揺さぶられ方が、ほかのゲームとは少し違うはずです。ぜひ最後まで進めて、物語の全体像を見届けてください。

トーンの合言葉は“最悪ほど美しく”。30時間超の物語を生んだ最初の挑戦【魔法少女ノ魔女裁判インタビュー】


――ゲームの開発に携わることになったきっかけについて教えてください。

 小学生の頃から物語を書くことに没頭していて、高校卒業間際に小説の新人賞をいただき、小説家として活動を始めました。

 ゲームに関わる直接のきっかけは、大学在学中、ソーシャルゲーム市場が伸びていた時期にゲームシナリオのお仕事をいただいたことです。

 その後、作家仲間とシナリオ制作会社Re,AERを立ち上げて受託制作を続けるうちに、「自分たちの資本で、自分たちが本当に作りたい物語を作りたい」という想いが強くなっていきました。その第一弾が『まのさば』です。

――開発をするうえで、特に気を付けている点などを教えてください。

 コンセプトからブレないことです。プロットもデザインも、「この作品でしか得られない感情につながっているか」をスタッフみんなで見張り続けました。

 トーンの合言葉は“最悪ほど美しく”。残酷なだけの怖さにはせず、静かで、美しくて、それでも目を離せない。そういう質感にこだわっています。

 一枚絵も「キャラの見せ場だから」といった無難な理由では作らず、その一枚でしか見られない絵面があるかどうかで選びました。

――開発で苦労していたところを教えてください。

 シナリオ制作会社が自分たちのゲームを作る、その最初の挑戦だったこと自体が、いちばんの壁でした。

 受託で鍛えてきた効率や進行の力は武器になりましたが、自社作品で本当に問われるのは「自分たちが心から面白いと思うものを、どこまで徹底できるか」でした。

 クリエイティブは自己否定の繰り返しで、一度出した答えを疑っては作り直すことを延々と続けました。

 結果、当初の想定をはるかに超えて、フルボイスで30時間を超えるボリュームになりましたが、この密度はこの作り方でしか出せなかったと思っています。

Acaciaはあくまで“原作屋”。物語体験を広げる次の仕込みもすでに進行中【魔法少女ノ魔女裁判インタビュー】


――ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えてください。

 『都市伝説解体センター』です。

 SNSやオカルト考察の文化を、そのままゲームデザインに翻訳してみせた手つきが見事で、遊びながらずっと唸っていました。

 ドット絵だからこそ“見えない部分”をプレイヤーが想像で埋める。その余白の使い方は、僕たちが一枚絵でやろうとしていることと根っこが同じだと勝手に思っています。

 同世代の国産アドベンチャーがこれだけ愛されている状況そのものにも、勇気をもらいました。

――今後、実現したい野望などありますでしょうか?

 『まのさば』はまだまだ止まりません。すべての少女を大切に、これからも全力で盛り上げていきますので、楽しみにしていてください。

 そのうえで、Acaciaはあくまで“原作屋”です。ゲームはもちろん、それ以外の形でも、物語体験を届ける手段そのものを広げていきたいと考えています。

 『まのさば』を好きになってくださった方の期待は裏切らず、いつも予想の少し外側から驚かせられるように。次の仕込みも、すでに始めています。

――最後にユーザーに一言お願いします。

 ここまで作品を大切に遊び、語ってくださった皆さまのおかげで、『まのさば』はもはや私たちだけではなく、みなさんと一緒に広げていく作品となりました。本当にありがとうございます。

 まだ遊んでいない方は、できるだけ何も知らないまま、牢屋敷の扉を開けてください。

 そして最後まで見届けてくださった皆さま。Acaciaはこれからも挑戦をやめません。

 どうかこの先も一緒に作品をつくる“共犯者”として、一緒に面白がっていただけたら嬉しいです。

『魔法少女ノ魔女裁判』受賞コメント

【電撃インディー大賞2026】第1位について


◆合同会社Re,AER/Acacia 代表 畑俊行氏

 『魔法少女ノ魔女裁判』のはじまりは誇張抜きで「これまで頑張って貯めたお金を使って、自由にゲーム作ろうぜ」でした。まぎれもなくインディーなスタート地点から始まった本作ですが、もはやインディーというには恐れ多いほど多くの人の熱意がこもった作品です。

 私なんかは作品に生かされている歯車の1つにすぎませんが、自分がプロデューサーを務めるプロジェクトで、こんな出来の良い子が生まれてくれたことには、ただただ感謝しかありません。

 私は嘘ばっかりついてめったに自分の本音を語ることはありませんが、自分が生きているのか死んでいるのか、たまに分からなくなるくらい頑張る日々が、2年くらい続いています。じつは全部、今際の際の夢かもしれません。自分なりに最善を尽くした中で終われたということなので、それはそれでよいのかなと思います。

 たいへんな評価をいただいている中で言うのは失礼だと思いますが、実は悔いだってたくさんあります。感動してくれたという人にもっと大きな驚きと面白さを届けられるように、進んでいこうかと思います。

 作品がどこまで行っても挑戦や自由な発想をやめません。

 だからどうかひとつ、まのさばは永遠にインディーということでよろしくお願いします。

 みんな本当にありがとうございます。大変光栄です。

 みんな込みで、まのさばは、本当に素敵な作品だと思っています。

 本当に、ありがとうございます。

【電撃インディー大賞2026】アドベンチャーゲーム部門第1位について


◆合同会社Re,AER/Acacia 代表 畑俊行氏

 ありがとうございます。

 喜びよりは、実のところ肩の荷がひとつ下りた感じのほうが大きいです。

 私たちAcacia(アカシア)は、Re,AER(レ・アエル)という小さな会社が本体です。ずっとシナリオ制作業でこつこつ頑張っています。シナリオ制作会社なんて大それたものを名乗る我々なんだから、そもそも我々が作るシナリオはどこよりも・誰よりも面白いものでなければいけないと思っています。

 調子に乗っているわけではなくて、それくらいの気持ちで作らねば、自分たちが作った作品にも、作品を期待してくれた・楽しんでくれた人にも、顔向けができません。「楽しい」なんて軽はずみなことは言えるはずもありません。そういう「地獄が好きでやめられない」から、この世界にいるんだなと、改めて受賞の連絡を受けて思いました。

 だから肩の荷がひとつ下りた感じがします。さあ、私たちは次の地獄を目指さなければいけません。

 嘘です!!!! 嬉しい!!!!!! やった~~~~~~!!!!!!

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