
2025年9月に発売された『SILENT HILL f』と、2003年の名作を現代に蘇らせた『零 ~紅い蝶~ REMAKE』。前者は「SILENT HILL」シリーズで初めて日本を舞台に据え、1960年代の山間の町・戎ヶ丘を舞台に、深水雛子の内面と現実が侵食し合う恐怖を描いた。後者は、怨霊がさまよう皆神村へ迷い込んだ双子・天倉澪と繭の悲劇を、「射影機」で霊を撮影して退ける独自のゲームシステムとともにフルリメイクした作品だ。


日本を舞台とし、少女を主人公に据えながら、それぞれ異なる系譜から「和の恐怖」へ到達した二作品は、2026年に相互コラボレーションを実施。『零 ~紅い蝶~ REMAKE』には雛子を思わせる「ネイビーセーラー」と「狐面」が登場し、『SILENT HILL f』には天倉澪をモチーフとした「クリムゾンバタフライ」が実装されることに(ちなみに、期間などは存在しないので、いつプレイしてもこのコラボを愉しむことができるのもうれしいところ)。
いったいなぜこんなJホラーゲームの大作同士のコラボが実現したのだろうか? 今回、その問いに応えるべく、両作品をつないだ二人のクリエイター――『SILENT HILL f』プロデューサーの岡本 基氏と、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』ディレクターの柴田 誠氏による、コラボ記念対談を実施。
そこで語られたのは、PS1~PS2期の日本製ホラーゲームが互いに与えていた影響から、竜騎士07氏と『ひぐらしのなく頃に』、日本家屋とゴシックホラーの関係性、さらには、女性の怨念の伝統とサイコロジカルホラーに至るまでの興味深いお話の数々……。
本稿では、そんな二大Jホラーゲームの現在を入り口に、Jホラーゲームの源流とこれからをたどることになった対談の一部始終をお届けする。
プロフィール
岡本 基(おかもと もとい)
『SILENT HILL f』プロデューサー。「SILENT HILL」シリーズ全体のプロデュースを担い、『SILENT HILL 2』リメイクにもプロデューサーとして参加。『SILENT HILL f』では、竜騎士07氏、kera氏らとともに、シリーズ初となる日本を舞台にした完全新作を送り出し、大ヒットを記録。 「日本ホラーゲーム大賞2026 produced by 百室」でクリエイター審査員を務める。
柴田 誠(しばた まこと)
「零」シリーズを長年手がけるゲームクリエイター。シリーズ屈指の名作のリメイク作品となる『零 ~紅い蝶~ REMAKE』でもディレクターを務める。シリーズの核である「射影機」による霊との対峙や、日本家屋、記憶、夢、心霊体験から立ち上げる独自の恐怖表現に深く関わってきた。「日本ホラーゲーム大賞2026 produced by 百室」でクリエイター審査員を務める。
SILENT HILL f | ローンチトレーラー(4K: JA/CERO) | KONAMI
『SILENT HILL f』とは
2025年9月25日発売。PlayStation 5、XBOX Series X|S、PC向けのサイコロジカルホラー。「美しいがゆえに、おぞましい。」をコンセプトに、1960年代の日本の山間部にある町・戎ヶ丘を舞台とする。
「SILENT HILL」シリーズ初の日本を舞台とした完全新作で、主人公・深水雛子が霧に包まれ異様に変貌していく町を探索し、謎を解き、怪異と対峙していく。物語を竜騎士07氏、クリーチャー&キャラクターデザインをkera氏が担当。2026年4月22日時点で全世界累計出荷本数200万本を突破している。
『零 ~紅い蝶~ REMAKE』ローンチトレーラー
『零 ~紅い蝶~ REMAKE』とは
2026年3月12日発売。Nintendo Switch 2、PlayStation 5、XBOX Series X|S、Steam向けの和風ホラーアドベンチャー。
2003年発売のシリーズ第2作『零 ~紅い蝶~』をフルリメイクした作品で、双子の姉妹・天倉澪と天倉繭が、怨霊のさまよう廃村・皆神村へ迷い込む。霊を写し、封じ込める「射影機」で戦うシリーズ独自のシステムを継承しつつ、グラフィック、サウンド、操作性、探索・戦闘を刷新。新たに「繭と手を繋ぐ」アクションも追加され、姉妹の絆がよりゲームプレイに組み込まれている。
二作品の相互コラボレーション
相互コラボは2026年1月28日に発表。まず3月27日、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』側で無償DLCが配信され、『SILENT HILL f』の主人公・深水雛子が身につける衣装をモチーフにした「ネイビーセーラー」と「狐面」が実装された。「ネイビーセーラー」は天倉澪、「狐面」は澪と繭が着用できる。
続いて6月26日、『SILENT HILL f』のパッチ1.20で『零 ~紅い蝶~ REMAKE』とのコラボコスチューム「クリムゾンバタフライ」が追加された。天倉澪をモチーフに雛子の外見を変更できる無料コスチュームで、『SILENT HILL f』本編の所有者はパッチ1.20以降を適用することで利用できる。Steamでは両作品をまとめたバンドルも展開されている。
「零」と「SILENT HILL」、二つのホラーが交わる
二つの和ホラーが相互コラボするまで

――同じJホラーゲームのジャンルを歩んできた二作品が、今回こうして直接コラボレーションすることになった経緯を教えてください。
柴田
単純に岡本さんが「SILENT HILL」シリーズをリブートしてくれたのはうれしかったんですが、『SILENT HILL f』は和風の世界観だったから、初めて見たときには、逆に何か味方が増えた感じはしましたね(笑)。
岡本
Jホラーのゲームはメジャータイトルからはほとんど見なくなっていましたからね。
柴田
ええ。それに、竜騎士07さんからはずっと前から、オリジナルのアクション性の高いホラーアドベンチャーを作りたいというお話を伺っていたんです。なので、『SILENT HILL f』はシナリオが竜騎士07先生だと発表されたときに、「あ、ついに来た」というか、「実現したんだな」ってかなり期待をして見ていました。とはいえ……やはり他社だし、ユーザー目線でもお客様の取り合いにはなるので、本来は敵というか好敵手ではあるかなとは思うんですけど、今回は、「味方」として相互にコラボができてよかったなって実感していますね。
岡本
ちょっとサッカーの試合とかの、ユニフォームの交換みたいな感覚かもしれないですよね。
柴田
まさに、あの選手たちが試合後にやるコスチューム交換に近い。
――お互いの衣装の監修作業はとても楽しそうです。
――お互いの衣装の監修作業はとても楽しそうです。
柴田
我々からはコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)さんが作ってくださった雛子の衣装について、ほぼ何も言うことなかったですね。狐面は設定上、厳密に言うと少し違う解釈になるはずなんですけど、シンボリックなアイテムなのでワンポイントで入れさせていただこうと。
岡本
コーエーテクモゲームスさんの作品といえば、衣装が多い印象がありますから。
柴田
「零」シリーズの衣装もいろいろ面白いものがあったりしたんですが、今回のリメイクの雰囲気がありますので、変な衣装はどうかなと思って絞っていたんですよね。なので、ちょうどコラボ衣装が映えてよかったです。
――両作品は、時代設定的にも近しいですよね。
――両作品は、時代設定的にも近しいですよね。
柴田
そこまでがっちり近いわけではないですが、でもまあ合うなと。携帯電話もない時代ですから。
岡本
うちも昭和の時代考証は、けっこう現場でがんばって作りましたから。故にあまり違和感がないっていうか、地続きな世界観でのコラボになったのもいいですよね。
衣装を交換して見えたキャラクターの違い――コラボへの反響


――実際に衣装を交換する形でコラボが実現して、あらためてお互いのキャラクターを見て感じたことや、ユーザーからの反響はいかがでしたか?
岡本
やってよかったなと思いましたね。ユーザーさんがよろこんでくださったので。あとは、雛子もゲーム中の衣装はセーラー服ばっかりだったので、違う可愛い感じの衣装を着せられたのもよかったかなと。
柴田
こちらは逆にコラボ衣装がセーラー服でしたが、まるで違和感がなかったですね。評判も良かったです、似合ってるっていう。でも『SILENT HILL f』っていうよりは、シンプルにセーラー服として見られそうだったので、狐面のワンポイントがやっぱりよかったんですよね。雛子の場合は、設定上では学生の年齢ではないのに、セーラー服を着ているのかもしれなくて。あくまでも「あの世界ではこの制服姿」っていうことだと思うんですよね。
岡本
そうですね。でも「零」の衣装を雛子が着ると、より大人に見えるのが不思議でした。
柴田
彼女は体育会系の陸上部だったらしいので、骨は太い感じ。
岡本
『紅い蝶』の澪と繭の二人は反対で、すごく細いですよね。
柴田
腰とか細いんですよ、異様に。多分うちのゲームの中でも群を抜いているんじゃないでしょうか。背筋もほぼないので……コラボ衣装を作りながら、あらためて「細っ」と思いました。二人は逆にコスプレ感が出ちゃっている感じもありますね(笑)。
――まさに衣装交換の面白さですね。
――まさに衣装交換の面白さですね。
岡本
そうですね(笑)。こちらも、雛子を演じた加藤小夏さんの事務所にもちゃんとコラボ衣装の確認はご案内しましたから。なので、勝手に着せているわけではなく、事前に「こういう服なんですけど」と許可を取っているので安心してください。
柴田
フォトリアルなので、コスプレ感がやばくないかなと思っていたものの、似合っていてさすが安心でした(笑)。
岡本基氏が見た「零」――少女、惨劇、射影機、日本家屋

――そうした時代の中で、岡本さんは「零」シリーズをどのように見ていたのでしょう。
岡本
やはりまずは「零」シリーズは、少女が惨劇の渦中にあるというフォーマットはすごく綺麗だなという思いがありました。あと、ゲームデザインが射影器の持つリスクとリターンがはっきりしていて、明確なところが素晴らしいですよね。

――射影器は発明ですよね。
岡本
ええ。そして、「零」は日本家屋が怖いんですよね(笑)。
――めちゃくちゃ怖いです。
――めちゃくちゃ怖いです。
柴田
「零」の日本家屋は、基本的にはうちの親戚のお家なんです。あとは、実家もいつも少しだけ入ってますね。
岡本
思い出がそのまま。
柴田
うちの祖父が大工だったんですよね。それで勝手に増築したりとかして。そもそも家の間取りとして、繋がりがおかしい実家や親戚の家で子どものころから生活していたので、それが反映されています。たとえばトイレの横に階段があって、上がると2階の押し入れの外に出る、みたいな。変な作りだったんですよ。
――風水や奇門遁甲じゃないですが、変な形の間取りは良くないともいいますよね。
――風水や奇門遁甲じゃないですが、変な形の間取りは良くないともいいますよね。
柴田
ドアが塞がれていて、裏側を見たら「ここにどうも廊下があったらしい」とか、謎の空間があるような。
岡本
雨穴さんの『変な家』みたいですね。
一同 (笑)
一同 (笑)
岡本
怖いですね。やっぱりそういうリアリティが「零」にはあるというか、伝統を感じますよね。
柴田
洋風の建築にはない間取りの怖さがありますね。ほかには、夢で見た怖い屋敷や村をそのままゲームで表現したのが『紅い蝶』でしたから。
柴田
スタッフにも、「この道の左側はどうなっているんですか?」とか聞かれるんですが、わたしが「夢だといつも右に曲がってしまい、左にはいかないので、まだ左側はわからないので作れない」とか言ったりしてました。
岡本
そんなことディレクターに言われたらどうしようもない(笑)。
柴田
夢を見るまで待ってくれって(笑)。
――そういえば、一方の『SILENT HILL f』 では、和の迷宮がリミナルスペース的に描かれていて印象的でした。映画の『バックルームズ』も世界を席巻していますが、西洋と東洋での、間取りの怖さの違いといいますか。
――そういえば、一方の『SILENT HILL f』 では、和の迷宮がリミナルスペース的に描かれていて印象的でした。映画の『バックルームズ』も世界を席巻していますが、西洋と東洋での、間取りの怖さの違いといいますか。
岡本
そうなんですよね。シリーズにはパズルや謎解きの要素が大きいので、より心理的な迷宮感覚と結びつきやすいのかもしれません。でも『SILENT HILL f』の和の作り方は、取材した筋骨地区のロケーションがそのまま取り入れられているので、「零」の夢とは真逆なのも面白いですね。
柴田
聖地巡礼化していますよね。
岡本
Jホラーであっても、異なる作りから生まれる魅力がそれぞれの作品にあるのかもしれません。
携帯電話のない時代を選ぶ――昭和を“ゴシック”として描く

――どちらも昭和がキーワードですよね。
柴田
「零」は、単純に80年代の携帯電話がない時代っていうところなんですけど、『SILENT HILL f』の場合、もう少し意図的に一世代前というか、ファンタジーとしての昭和ですよね。咀嚼できるくらいの昔というか。
岡本
そうですね。まだ妖怪がいたとしても、おかしくはない……ギリギリ妖怪などの民間伝承や伝説が途切れてしまうような時代の片鱗といったイメージでした。60年代あたりですね。
柴田
いまからすると結構ファンタジーの時代感覚ですよね。Jホラーブームって 90年代後半からなのですが、あれってちょうど携帯が出始めたかどうかくらいの時期だった。なので、ちょうど携帯のない Jホラーの映画と、携帯が出てくる Jホラーの映画との分岐点もあったりして。
岡本
2000年代前半ですが、『着信アリ』とか、携帯電話そのものがテーマに据えられた作品もありましたね。
柴田
むしろ携帯電話のない時代のJホラーって、いわゆる日本における“ゴシックホラー”なのではないか、と思うんですよね。
岡本
トランシルヴァニアのドラキュラ城に馬車で行くように、日本の因習村に迷い込む……なるほど。まさにゴシックかもしれないですね。 『SILENT HILL f』 については、竜騎士07先生から上がってきたテーマが“結婚”だったので、「え? 結婚!?」とかなり驚きました。しかし結婚の価値観となれば、ある程度古い時代のほうが舞台としては合っていた。お見合い婚などがむしろ当たり前だった時代に設定しないと、全然話がわからなくなってしまうので。80年代になってくると、トレンディードラマとかで自由恋愛が出てくる。
柴田
それこそ『犬神家の一族』みたいな時代でなくては。ゴシックミステリー的な世界……少女漫画には、自由恋愛を謳った作品はわりと多かったんですけど、女性のステレオタイプな見方っていうのを初めてホラー文脈で見せた山岸凉子先生の漫画が出てきたのが、70年代後半ぐらいなんですよね。 そこまでは、モヤモヤしていても、ちゃんと可視化できていなかった印象がありました。
岡本
時代的にも、60年代ぐらいから女性の社会的権利についての運動が活発化していたりするので、東京オリンピックのあった 60年代みたいなところが……文明開化する前の時代、近代国家として現代的な国になる前の日本、みたいな世界観としてギリギリのラインかもしれません。
柴田
万博がある前ですからね。
岡本
そんな舞台イメージなので、海外のファンに伝わるかはドキドキしていました。試行錯誤というか、やるしかないだろうみたいなところでやって作りましたけど。「本当はわかってないんじゃないかな」みたいな気持ちも、じつはリリース前までは少し残っていたりしたくらいです。いまは受け入れて理解してもらえたので、ホッとしているんですが。
柴田
切断表現とかは海外に伝わりそうですよね。
岡本
ホラーとしても「ゾンビにかみ殺される」など、わかりやすい表現も入れておかないと、婚姻の恐怖といっても海外の人には伝わらないんじゃないか、みたいなところでの顔削ぎ=アイデンティティーの喪失を描いたりしたんですよね。ホラーって独特の殺し方、殺され方みたいなものは欠かせないので、顔削ぎのアイデアが出てきた時に、これだ、顔削ぎが本作なんだ、というぐらいにフックとして設計していました。
柴田
顔がなくなることが、自分のアイデンティティをなくすという。痛みもつらいですし。
岡本
いいなと思って。だからやっぱり初動のあのトレーラーで顔が。
――あれは衝撃でしたけどね。
――あれは衝撃でしたけどね。
なぜ和ホラーでは女性が恐怖の中心になるのか

岡本
「零」シリーズは伝統的に女性の主人公ですが、『SILENT HILL f』も竜騎士07先生が女性を主人公に選んできたので、やはり和風のJホラーゲームの伝統を感じたんですよね。『SILENT HILL 3』のヘザーも出産をテーマのひとつにした作品ではありましたが、ほとんどが男性主人公だったので。
柴田
そうですよね。幽霊って虐げられてきた無垢なものが殺された……フィジカルに弱い分、精神や霊性が強いっていうイメージがあります。だから、それが非力な女性の霊ならば、やっぱり怖い。それと戦うためには武器もないので『零』だと写真を撮るんですけど、自分もラスボスと同じ境遇の人間じゃないと、哀しみが共感できにくい。幽霊をわかって、理解して、一番近づくことで初めて浄化できる……毎回シリーズ作品はそういう構造なんです。
岡本
だから主人公も怨霊も女性で、同じ境遇、もしくは理解しうる立場で設定されてきたんですね。

柴田
男だと違う立場なので、ともすれば倒すとか封印するみたいな抑え込む方向に行っちゃいがちです。女性の方が怖い要素の描かれ方が多彩なように感じていて。謎めいていて怖くて、可哀想だけど魅力的なものっていう風にも表現されている。虐げられてきたからこそ、殺されてもその怨念だけは残っているという怖さも。
岡本
『四谷怪談』のお岩さんなどもそうですよね。フィクションなのに、実際に祟りも起きているのは本当に怖いところですが……女性が男権社会の中で押し殺されてきた、その怨念パワーみたいなものは、日本のホラーの伝統ではあるかなと思います。
柴田
ゾンビは話が通じないですが、幽霊は半端にコミュニケーションが取れてしまうところも、怖いんですよね。
岡本
そうですね。確かに。
柴田
幽霊って、自分も見ることがあるのですが、なんとなく言ってることはわかるから意思はあるんだろうなって。言いたいことはあるようだけど、何言っているかはよくわからない、みたいな。見た目もぼやけているし、言葉もエコーがかかっているかのようによく聞こえないので……ゲームハードが高性能になり、高解像度になるのですが、はっきりと描けないんです(笑)。
幽霊をどう見せるか――アイコン、実体験、そして「見える」世界

柴田
わたしは幽霊がはっきり見えないタイプの人間なのですが、ちゃんとはっきり見えている人もいるらしくて。
岡本
パキッと見えている人がいるんですか。
柴田
パキッと見えている人からすると、立って話しかけてくる人が、喋っていたらパッと消えるんですって。
岡本
人間と区別がつかない。日本のホラーでもありますよね、5人だったはずが6人になる、とか。
柴田
水が1個多い・少ない、というような怪談の話型ですよね。
岡本
そういえば、じつはわたしの祖母が亡くなる晩なんですけど、そのタイミングでは確かにもう亡くなっていたはずなんですけど、私が夜起きたときに、廊下に祖母がいたんですよね。すごい真っ白な顔をした祖母がトイレの前に立っていて、あの……すごい怖かったんです。そうしたら、次の晩に亡くなっていた。
柴田
怖いと思ったのはどうしてなんですか?
岡本
いや、すごい白かったんですよ。あと、わたしも3歳くらいのときで、まだ小さかったので顔が怖く見えたのかもしれません。でも、不思議でしたね。おばあちゃん子だったので、結びつきが強かったのかも、と今は思ったりするんですけどね。
柴田
なんと……ものすごい奇遇ですけど、わたしもおばあちゃんが、夜布団で目を開けたら、少し上空の目の前に浮かんでいたことがありました。
岡本
え!? 空中ですか(笑)。
柴田
でも、自分は怖かった感じではなかったんです。おばあちゃんの姿だし、もう死んでるのがわかってるからか、順番に挨拶してるというか回ってきている感覚で。
柴田誠氏はなぜ幽霊をゲームにしたのか

岡本
そういえば、柴田さんが「零」で幽霊のJホラーゲームを企画されたきっかけはどんなことだったんですか?
柴田
たまたまホラーゲーム企画を作るっていうことになって、怖い方が売れるかなと思い、考えた末に幽霊が一番怖いと考えたことがきっかけでしたね。幽霊屋敷で幽霊と戦うゲームなら、見たこともあったし、ビジュアル的にも再現できるかなと思って。幽霊は、あんまりはっきり見たことがある人がいないジャンルだったので。
――お化けが好きだった、というわけではなく。
――お化けが好きだった、というわけではなく。
柴田
逆に怖かったですね。ホラー映画とか大学生になるまで全然見たことなかった。でも、大学の先輩がすごいホラー映画好きで、その熱心にB級ホラー映画を勧めてくる人がいて。観てみたら面白かったんですよ(笑)。
岡本
ちょうどその後くらいにJホラーブームですか。
柴田
そうなんですよ。幽霊が、意味や脈絡もなく出てきたりして……遠くの方にいるだけ、とか。
岡本
はいはい。
柴田
何もしてこない。襲ってくるわけでもない。こういうのはリアルだなと感じたというか。見た体験に似ていたんです。「ほんとうにあった怖い話」の鶴田(法男)監督とかの影響かもしれません。
内面を怪物にする――『SILENT HILL f』のクリーチャーデザイン

柴田
「SILENT HILL」では人間の内面がクリーチャーとして形を持っている点が秀逸ですよね。今回は和風で、しかも女性って考えると、かなり変わったことをやらなきゃいけなくなる。そんな中で、白無垢は一番わかりやすいんですけど、とくにカシマシとアヤカカシというカカシのようなクリーチャーは、女性をモチーフにしつつ、シルエットでも日本的だとわかるデザインであるなど、非常に完成度が高いと思いましたね。
岡本
ありがとうございます。日本感ということはかなり意識しましたが、今回は近接戦闘のみに絞ったので、コンバットのデザインも加味しなくてはいけなかったんですよね。銃がないので。じつは、空飛ぶ首のクリーチャーは没案にはあったりしたんですが。
――えっ、そうなんですか。
――えっ、そうなんですか。
岡本
ありましたね。日本のろくろ首の元型ともされる飛頭蛮という怪異が、中国などでも有名ですし、警官からニューナンブを入手して、銃撃戦もできるようにしようと検討していた中で、そういったクリーチャーイメージもありました。でも、弾丸がなくなった状態で、近接武器だけで空飛ぶ敵と戦うのはストレスだからやめましょうって話になって没に。
――実現していたら、まさにJホラーを代表するマンガ家、伊藤潤二先生の『首吊り気球』のような恐怖になったかもしれませんね。
――実現していたら、まさにJホラーを代表するマンガ家、伊藤潤二先生の『首吊り気球』のような恐怖になったかもしれませんね。
柴田
日本は銃に馴染みもないですしね。
岡本
そうなんですよね。そういうところもあって外したんですけど、ディレクターはやってみたかったようで、次回作があるんだったら銃は入れてみたいかも、みたいなこと言ってましたよ(笑)。
Jホラーゲームが再び盛り上がるまで

――いま日本のアクションホラーそのものが再び盛り上がっているように感じます。
柴田
アクションアドベンチャーのホラーゲームという括りでいうと、ここしばらく新作は、あんまりなかったですね。でも、「零」シリーズはちょうどいま25周年ですが、その中でも、何年かに一回来るなっていう感覚はずっとありました。Jホラーというか、ホラーブームが。
岡本
「日本ホラーゲーム大賞」というホラーゲーム専門アワードも立ち上がりましたし、モキュメンタリーホラーやホラー展示会も盛り上がっていますよね。映画の『8番出口』とか『変な家』も大ヒットして、Jホラー自体、この2年ぐらいは日本で人気も上がってきている気はします。
柴田
コントロールできるものでもないので、新作を出せた時に、たまたま火種が大きかったというのはありがたいです。それに、岡本さんもわたしも、やっぱり「あれもう一回見たいよね」っていう創作の原動力のひとつにJホラーがあるのかなとも思って。
岡本
まさに2002年とか 2004年とかのホラーユーザーの方が、いまもう一回来ているなっていう感じがしていますね。
次はもっと深いコラボを――二人が語るこれから
岡本
「零」シリーズさんとのコラボは、また機会があればぜひご一緒したい気持ちなんです。今回は 『SILENT HILL f』 の発売後にご縁で機会があって、お声掛けしたことで実現できたのですが、作るのに精一杯だったので。もし発売前からご相談できていたら、さらに他にもやれることがたくさんあったと思うんですよね。

柴田
そうか、そうですよね。
岡本
はい。なので、今後はもしかするともっと準備期間をかけてやると、もっともっといろんなことができるようになるかもしれない。たとえば、もうちょっとセーブデータを使った遊びとか。
柴田
より深いコラボができるかもしれないですね。
岡本
『SILENT HILL f』では、今回のコラボを皮切りに、『ひぐらしのなく頃に』のコラボや、集英社ゲームズさん、墓場文庫さんとの『都市伝説解体センター』コラボをやらせていただいたりして、今年はコラボをがんばろう、という気持ちでもありました。なので、これからは少し、点ではなくて、線とか面でご一緒できれば、Jホラーゲームという領域を全体的に盛り上げられると思っているんですよね。ただ、『SILENT HILL f』 は、毎年出るわけじゃないんですけど(笑)。


柴田
がっつり、これからJホラーゲーム同士、タイミングを計りつつ、深いコラボをしかけていきたいですよね。
岡本
本当に、次は時間をさらにかけてご一緒できるようにしたいです。
岡本氏・柴田氏がいま薦めるホラー作品
――最後に、いまお二人が面白いと思っているホラー作品を、これを読んでいる読者にお勧めしていただけませんでしょうか。
岡本
わたしは『夢食み探偵と眠れない小説家』という、綾里けいし先生の小説です。『ドグラ・マグラ』など含めた文芸作品をオマージュしながら、夢と現実を彷徨いながら進むホラーなんですけど、おもしろいです。怪奇・幻想というか、ホラーファンタジーとしても非常に良くできている作品なので、Jホラーゲーム好きの方にもぜひ読んでいただきたいです。

柴田
『ドグラ・マグラ』という時点で気になりますね(笑)。わたしからは、『1999展 ―存在しないあの日の記憶―』ですね。体験型展示で、六本木で開催されていて、いまは各地を巡業しています。制作にかかわっているバミューダ3の佐藤(直子)さんからお声がけいただいて体験させていただいたんですが……よく考えたら、「起きなかったことの集合知」って、あんまりやってないアプローチだなと思って。

柴田
みんな知ってることっていう取っ掛かりは、すごくホラーの入り口になるなと思って。
岡本
1999展はわたしも行きましたけど、非常に空間演出と物語表現が印象的でしたよ。
柴田
別に知り合いが作っているから、ということではなくて、単純にすごいアイデアですよね。これ、次はどうなるんだろうと楽しみです。ぜひ。
取材・寄稿:百室 100 Room(全領域百鬼夜行観測室)
取材・寄稿:百室 100 Room(全領域百鬼夜行観測室)
関連情報
「零」25周年記念『零 ~紅い蝶~』射影機プロップレプリカ スペシャルセット
シリーズ25周年を記念し、『零 ~紅い蝶~』のキーアイテム「射影機」を再現した完全受注生産の限定セット。精巧な射影機本体に加え、“麻生博士による射影機説明書”や“アンティーク写真風カードセット”が付属する豪華仕様です。
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価格:79,800円(税込)
受注期間:2026年9月11日(金)~11月23日(月・祝)23:59まで
SILENT HILL: Townfall

シリーズ最新作では、静謐なスコットランドの“セントアメリア島”に霧が立ちこめる――プレイヤーは、記憶を失い島に流れ着いたサイモン・オーデルの視点を中心に、誰もいなくなった島で起きたとある事件にまつわる、重厚かつシリーズ屈指の社会派なシナリオを体感することに。
開発はスコットランドのScreen Burnが手がけ、CRTVというポケットTVでクリーチャーの位置を探りながら息を潜めて進む主人公の心情は、一人称視点のプレイフィールと渾然一体となり、唯一無二のナラティブな物語体験を描き出す。発売日:2026年9月24日
日本ホラーゲーム大賞2026と「東京ホラー特区!!2026」

岡本基氏と柴田誠氏は、ホラーゲーム“だけ”を対象とした大規模アワード、“日本ホラーゲーム大賞2026 produced by 百室”に、クリエイター審査員として参加している(クリエイター審査員は自身が関わったタイトルには投票できないというルールで審査を実施)。
ユーザー、クリエイター、メディアによる投票と百室による審査を通じ、2025年3月1日から2026年3月31日までに発売されたホラー表現を含むゲーム作品から、大賞および各部門賞が選出され、東京ドームシティで開催されたホラー総合イベント“東京ホラー特区‼︎”にて発表及び授賞式が開催された。『サイレントヒル f』は大賞を、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』は部門賞をそれぞれ受賞している。
●“東京ホラー特区!!”公式サイト