女性が土下座した男性の上に座っているボス敵って…狂気の匂い。スクエニ新作『DI』塩野干支郎次&石井Pインタビュー

長雨
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 スクウェア・エニックスの『ディープインサニティ』は人々を覚めない眠りと狂気に導く“ランドルフ症候群”が拡大する世界を、時間軸の異なるTVアニメ、マンガ、ゲームのコンテンツで描くメディアミックスプロジェクトです。

 本作のプロデューサーである石井諒太郎さんと、世界観原案並びにマンガ『Deep Insanity NIRVANA』の作者・塩野干支郎次さんに行ったインタビューを全3回に渡ってお届けします。

 第1回目は独特な世界観が誕生した背景や、塩野さんの描く“スカード”へのこだわりなどをうかがいました。

『ディープインサニティ』誕生の経緯

――お約束の質問ですが、『ディープインサニティ』がメディアミックスプロジェクトとして始まった経緯を教えてください。

石井諒太郎(以下、石井)さん:弊社は出版部門でマンガを連載していたり、アニメに携わる部門があったりするのですが、なかなか一緒に動くことがないので、何か協力して出来ないかということでスタートしました。

 そのなかでどんな方に企画に参加していただくのがいいだろう、という話になり、世界観原案として深見真さん、海法紀光さん、塩野干支郎次さんを紹介していただきました。

――世界観設定の時点で、石井さんから何か提案はあったのでしょうか?

石井さん:いいえ、ゼロからでしたね。そのため、まずは最近何に興味ありますか、という雑談から入りました。

 学生のころ、塩野さんの「ユーベルブラット」を読んで「こんなに容赦のない物語を描く人がいるのか」と衝撃を受けたんです。今回十数年越しで一緒にお仕事をすることになり、そのとき受けた印象からあまり外れないテイストの作品になるだろうなという予感はしました。

 深見さんも海法さんも方向性の近い世界観を持っている方なので、個人的に期待した通りのお話になったなと思っています。

世界観を共有しながらも自由に描かれている『Deep Insanity NIRVANA』

――塩野さんが『ディープインサニティ』のプロジェクトや、世界観を聞いたときのご感想はいかがでしたか?

塩野干支郎次(以下、塩野)さん::まずは担当に口頭で説明され「わからん」と思いましたね。

石井さん:言葉だけで聞いてもわからないですよね(笑)。

塩野さん:僕のところにお話が来たときは、基本的な設定や用語は出来ている状態でした。補足の情報などを見て、クトゥルフ神話系の造形が浮かび、描きやすい世界だなとも思いましたね。

――ある程度、世界観が固まったあとに合流されたんですね。その後、塩野さんから提案した設定などもあるのでしょうか?

石井さん:マンガの世界観は、基本的に塩野さんのオリジナルで作られています。

 マンガが先行しているため、「敵の名前をどうしよう」など、ゲーム・アニメとも共通する部分を決めよう、という話を何度かしたことを覚えています。

塩野さん:敵は最初エネミーと呼ばれていて、何か呼び名があると嬉しいと言う話をしたら、海法さんが「異形と書いて“スカード”でどうですか?」とその場で決めてくれました。

――メディア作品との世界観のすり合わせなど、自分だけで完結できるオリジナル漫画を描くのとは違う苦労や、作業はありましたか?

塩野さん:あんまり苦労したイメージはないですね。世界観やまわりのデザインもゲームで決まっている部分があるので、思ったより楽をしているところも多いです。

――ちなみにアニメやゲームの展開は、どの程度把握されて作業を進めているのでしょうか?

塩野さん:ゲームシナリオはある程度出来ていたので全部読みましたが、今の内容とは違っていますね。また、キャラクターと世界観はわかりますが、全容はわかっていない状態です。

石井さん:変わったところがかなりありますね。定期的に会議に参加していただいているのですが、ここがこう変わります、といった詳細の話はしていません。

 メディアミックスプロジェクトとして共通項はありますが、あまり制限はつけたくないので、マンガはマンガ、として塩野さんには独自に描いていただいています。

塩野さんの“スカード”デザインで世界観がより鮮明に!

――“キョウキ”や恐怖がキーワードになる独特の世界観は、どのように作られていったのでしょうか?

石井さん:話し合いの場を作って、そこで考えていった印象があります。深見さんと海法さんが盛り上がった部分が多いんですけど(笑)。

 皆さん絶対に譲らないというタイプではなく、無理な場合は別なアイデアを出してくださるのでありがたかったですね。スタート地点が決まってからは、難航することもなかったです。

 そのなかでゲームではこういう敵が出てくるだろうということで、エネミーの基本デザインをほぼ塩野さんにお願いしました。かなりいいペースで描いてましたよね?

塩野さん:そうですね。機械系のデザインが決まらないので何かいいデザインはないかという話から始まって、そこからほぼすべてのエネミーをデザインしていきました。

石井さん:機械から始まった魚っぽいのとか鳥っぽいのを描いていただいて、それじゃボスもそのままお願いしようとなりました。かなりの種類をデザインしていただいたので、途中でアイデア出しが大変なんじゃないかとソワソワしました。

塩野さん:デザインしていて、すごく楽しかったです。

石井さん:そう言ってもらえるとよかったです。塩野さんにたくさんデザインしてもらったことで、皆イメージが固まった部分もあります。

――塩野さんが“スカード”をデザインされるときに、意識された部分はありますか?

塩野さん:世界観的にグロテスクになってしまうんですが、あまりグロくなりすぎるのはダメ、という制限があったので、丁度いいところを探していきました。

石井さん:メディアの規制に関わるためなんですが、矛盾したお願いですよね。ゲームでは出来ないけど、マンガでは大丈夫、という表現があることをこのプロジェクトで初めて知りました。

 僕はゲームの“女性が土下座した男性の上に座っているボス”のデザインが好きなんですが、ギリギリを攻めるってこういうラインなんだな……と思いました。

――メディアによって、表現にはかなり差があるんですね。マンガはそのなかでも自由度が高いとのことですが、塩野さんも規制を気にせず描かれているのでしょうか?

塩野さん:グロテスクな表現で、特に描きたいものが描けない、というのはなかったと思います。

石井さん:マンガでヒルデガルド・オルインピアーダ・山田とセルジュ・ソルがシャワーを浴びるサービスシーンで、山田の腕の欠損を初めて見せたのが衝撃的でした。最近は欠損を表現として使わないことも多いので。しかも、戦闘シーンでもなくシャワーシーンで読者に伝えるのかと。

塩野さん:確かに、シャワーシーンではあまりない表現かもしれないですね。

 マンガ『Deep Insanity NIRVANA』について詳しくうかがう第2回目は、近日公開します。

※ゲーム画面は開発中のものです
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(C)Etorouji Shiono/SQUARE ENIX

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