『ブレイブリー』シリーズ10周年とこれから。“王道RPG”への思いとは?【BDBLインタビュー】
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スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ』。その開発者インタビューをお届けします。
人気RPG『ブレイブリー』シリーズのスマートフォン向け新作であり、シリーズ10周年記念企画でもある『ブリリアントライツ』。事前登録も始まった本作をより盛り上げるべく、電撃オンラインでは開発者インタビューを複数回にわたって掲載していきます。
インタビューのお相手は、本作のプロデューサーを務める小松陽平氏と、家庭用ゲーム機向けの『ブレイブリー』シリーズ作品すべての開発に携わってきた髙橋真志氏。今回は、『ブリリアントライツ』が生み出された経緯や、『ブレイブリーデフォルト』というIPに対する思いなどをうかがいます。
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アプリチームと交互にバトンを託して生まれた『ブリリアントライツ』
――まずは、『ブレイブリー』シリーズや『ブリリアントライツ』におけるお2人の立ち位置から教えてください。
小松陽平氏(以下、敬称略):僕は『ブリリアントライツ』ではメインプロデューサーとして開発全般に携わっています。アプリ版の前作『フェアリーズエフェクト』でも、運営プロデューサーを務めていました。『フェアリーズエフェクト』はかなりMMOチックな作りでバトルシステムもオリジナリティが高いものだったのですが、今作はシリーズ10周年ということも受けて違った方向性の作品を目指しています。
髙橋真志氏(以下、敬称略):自分は直近だと2月に発売された『ブレイブリーデフォルトII』のプロデューサーを担当しています。シリーズ全体としては浅野さん(『ブレイブリー』シリーズ総合プロデューサーである浅野智也氏)と一緒に初代から制作に携わり、その頃はアシスタントプロデューサーという立ち位置でした。
僕がスクウェア・エニックスに入社したのは2009年で、初めて担当したRPG作品が『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』だったんです。それから『ブレイブリー』シリーズの作品や、『オクトパストラベラー』などにプロデューサーとして関わってきました。振り返ると、入社してからの十数年は『ブレイブリー』シリーズと共に歩んできたと言えますね。
『ブリリアントライツ』では、監修というとちょっとおこがましいですが、コンシューマを作ってきた立場からたまに相談相手になりました。あれこれ口出しするわけではなく、「必要なときに声かけてください」みたいな感じです(笑)。
――『ブリリアントライツ』はシリーズにとってどのような位置づけの作品なのでしょうか? 開発経緯なども含め、あらためてお聞かせください。
小松:始まりは2018年の夏頃だったでしょうか。その時期にはすでに『ブレイブリーデフォルトII』の開発が進んでいて、それと並行してモバイルのほうも動き出そうという話が出てきました。
ゲーム性については、当初からシリーズのキャラクターが勢ぞろいするオールスターゲームにしたいという思いがありました。初代『フライングフェアリー』の発売が2012年で、来年には10周年を迎えるというのもあり、今のグラフィック技術を駆使して、ティズなどのキャラクターを見たいよねという気持ちがありましたから。
そういった大まかな開発コンセプトを最初に我々のほうでまとめて、髙橋さんたちに監修してもらいました。その後はストーリーの方向性や、3DSのキャラクターを『ブレイブリーデフォルトII』のグラフィック基準で作り直す過程で、お互いに意見交換をしていったという流れです。
髙橋:3DS版は『フライングフェアリー』『フォーザ・シークウェル』と続いて、『ブレイブリーセカンド』で一旦ひと休みとなりました。それからブラウザ版の『プレイングブレージュ』やスマホ版の『フェアリーズエフェクト』などが配信され、どれも軒並み成功したのがシリーズにとって大きかったですね。
ナンバリング外の作品でもしっかりファンを繋ぎとめてくれたおかげで、会社からも『ブレイブリー』シリーズの新作をコンシューマで作る許可が下り、『ブレイブリーデフォルトII』の誕生に繋がっていきました。
そういう意味でも『フェアリーズエフェクト』などのタイトルには恩義を感じていて、『ブレイブリーデフォルトII』開発中に立ち上がった次のアプリ新作の話を、ちょうど『フェアリーズエフェクト』を運営していた小松さんたちに持ち掛けました。なので、『ブリリアントライツ』は『フェアリーズエフェクト』から『ブレイブリーデフォルトII』に託されたバトンを、再び託し返して生まれたような作品だと思っています。
――2月に『ブレイブリーデフォルトII』が発売されてから半年も経たずに『ブリリアントライツ』が発表され、ファンにとっては嬉しい展開だったと思います。
髙橋:コンシューマとアプリで並行開発していたおかげですね。ただ、『ブレイブリーデフォルトII』のシナリオがまだ完全に固まっていないタイミングで『ブリリアントライツ』のストーリーも決めていかないといけなかったので、そこは苦労しました。
『ブレイブリーデフォルトII』はこれまでの世界観から一新し、過去作を遊んでいない人でも楽しめるようにするのが狙いでした。その結果、過去作のキャラクターをまったく出さなかったので、それはそれでファンの方にとっては寂しかったかもしれません。『ブリリアントライツ』はそんなシリーズファンにも刺さるゲームになってほしかったので、オールスター要素は大歓迎でした。
“海外で売れなくてもいい”スタイルで作ったら、結果として海外でも大ヒットするタイトルに!!
――『ブレイブリー』シリーズはこの10年で大きなコンテンツに成長しましたが、お2人は『ブレイブリーデフォルト』というIPに対してどのような思い入れがありますか?
髙橋:先ほども言ったように『ブレイブリーデフォルト』は僕にとって初めて担当したRPGだったのですが、当時は浅野さんと一緒にがむしゃらに突っ走って作った記憶があります。
過去のインタビューでも話したと思うのですが、1作目を作った当時、ウチの会社には「海外でも売れるタイトルを作ろう」というムーブメントがありました。それに合わせた開発方針や施策がドンドン打ち出されていたのですが、僕と浅野さんのチームは「まず、日本のお客さんがスクウェア・エニックスに求めているゲームを出すことも大切じゃないか」と考えました。
僕や浅野さんが感じる“おもしろいRPG”の要素をギュッと詰め込んで作った『ブレイブリーデフォルト』は、僕らと同じ年代の方々にちゃんと届いて、「こういうゲームが遊びたかった」という嬉しい感想も目にしました。こういった声は国内だけでなく海外の方からも挙がっていて、それに気づいた任天堂さんが海外向けにも売りましょうと提案してくれました。結果、最初から海外想定で作ったゲームよりもしっかり海外ユーザーの心に響いて、『ブレイブリーデフォルト』は世界でも売れるタイトルとなったんです。
「お客さんが何を求めているのか想像し、ターゲット層にちゃんと刺さるゲームにする」。このコンセプトのみに絞って制作した『ブレイブリーデフォルト』が、今ではこんなに大きなIPに成長してくれて感慨深いです。最初に携わったタイトルというのもあって、僕のなかでは一番思い入れがありますね。
小松:僕は『フライングフェアリー』を当時ユーザーとして発売日に買って遊びましたが、久々にスクウェア・エニックスらしい王道なRPGが出たなと強烈に覚えています。
シリーズを俯瞰して見ると、これほど王道で昔懐かしいRPGが当時スクウェア・エニックスから発売され、かつ海外でも人気を得ているというのがとても珍しい事例だと思っています。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などに比べるとまだまだ若いIPですが、すごく可能性を秘めたタイトルだと感じているので、そんなシリーズの10周年に『ブリリアントライツ』で関われることが光栄です。
髙橋:僕自身、子どもの頃に遊んだ『FFIII』や『FFV』が大好きで、これらの作品がRPGの原体験となっています。そういう人間が作ったゲームが『ブレイブリーデフォルト』なので、同じような世代の方ほど王道らしさを感じられるかと。
――当時『フライングフェアリー』に関しては、シナリオや音楽面でのチャレンジ精神にも驚かされました。
髙橋:そのあたりも、僕と浅野さんの“好き”を詰め込んだ結果ですね。シナリオは僕が大好きだったという一点だけで、当時5pb.所属の林直孝(『シュタインズゲート』などを担当するシナリオライター。現MAGES.所属)さんにお願いし、音楽は浅野さんのほうからRevoさんにオファーをかけました。向こうからしたら突然のお願いで驚かれたと思いますが、あれよあれよとあるうちに、どちらも引き受けていただけることになりまして。
たしかあの頃、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』ではできないようなフットワークの軽さで動こうと浅野さんと話していた気がします。自分たちが好きなものを作っている人たちに積極的にアプローチして生み出したのが初代で、シナリオや音楽だけでなく、絵もいろいろなイラストレーターの方に担当していただきましたね。
――『ブレイブリー』シリーズのひとつのテーマとして“従わない勇気”がありますが、このあたりは『ブリリアントライツ』にも?
小松:シリーズのお約束みたいなものを厳格に定めているわけではありませんが、“従わない勇気”は大切なテーマだと認識しています。
『ブリリアントライツ』のシナリオは『フェアリーズエフェクト』から引き続き網代恵一さんにお願いしていて、“従わない勇気”についても網代さんと相談して今までと違う形で描こうと考えています。
――髙橋さんといえば『オクトパストラベラー』にも携わっていますが、王道的なRPGを作るなかで『ブレイブリーデフォルト』と『オクトパストラベラー』で差別化をしている部分はありますか?
髙橋:『ブレイブリーデフォルト』と『オクトパストラベラー』はまったく異なる作品ではありますが、モノ作りをするうえでのフィードバックはずっと生かされています。『フライングフェアリー』の反省を生かして作られたのが『ブレイブリーセカンド』で、その反省をさらにフィードバックしたのが『オクトパストラベラー』になります。
『フライングフェアリー』制作後、その喜ばれた点をもっと伸ばさなきゃと意識して制作したのが『ブレイブリーセカンド』だったのですが、なかなか思うような結果にはなりませんでした。世界観や物語が続いているというのもあって、前作でやったことはできないし、かといって前作を完全に知っている前提で作るのもよくないしで難しかったですね。
そのときの反省をもとに、『オクトパストラベラー』では大人向けの地に足のついたドラマを描こうと舵を切りました。『ブレイブリーデフォルト』は僕と浅野さんの好きなものをとにかく入れ込んだ作品ですが、『オクトパストラベラー』はそれよりももうちょっとユーザー寄りでお話を作り、僕らのような世代が落ち着いて楽しめる大人の世界観にしています。
差別化という意味では、『ブレイブリーデフォルト』はSFファンタジーで『オクトパストラベラー』は中世ファンタジーだと個人的にイメージしています。『オクトパストラベラー』はモチーフにしている時代もある程度規定しているので、その時代にあったものや文化などで世界観が構築されています。一方の『ブレイブリーデフォルト』はどちらかというとキャラクター寄りで、おもしろいキャラクターがどんどん出てきて物語を引っ張っていく作り方です。
――2022年の10月にはシリーズ10周年を迎えるわけですが、この10年を振り返ってみてたいへんな時期や楽しかった時期というのは?
髙橋:“たいへん”と“楽しい”の感情って、別々ではなく同時にやって来るんですよね。制作過程はいつでも苦労の連続ですが、同時に楽しい時間でもあります。
『フライングフェアリー』が予想以上に売れたときも、手放しで楽しかったわけではなく、次の出荷やより売るための戦略を考えていて頭がグルグルしていました(笑)。純粋に楽しかったというか嬉しかった瞬間は、やはりゲームがおもしろかったという意見をいただいたり、イベントなどで実際に会って生の感想をもらったりしたときでしたね。
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