『FFオリジン』インタビュー! 残虐アクション主人公は“光の戦士”と呼ぶべきか社内でも議論に!?

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 スクウェア・エニックスから3月18日に発売予定のPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Epic Games Store用ソフト『STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN(ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン)(以下、SOPFFO)』。その開発者インタビューを掲載します。


 本作は、スクウェア・エニックスとTeam NINJA(コーエーテクモゲームス)が制作するアクションRPG。主人公のジャックを操作し、混沌の闇に覆われるコーネリアの大地で、闇の根源たるカオスを討伐する旅に出ます。

 インタビューのお相手は、スクウェア・エニックスの藤原仁プロデューサーと井上大輔ディレクター、コーエーテクモゲームスの安田文彦プロデューサーの3名。発売まで2カ月を切り、盛り上がっていく本作の魅力をうかがいます!

  • ▲藤原 仁:2007年にスクウェア・エニックスに入社。『THEATRHYTHM FINAL FANTASY CURTAIN CALL』(プロジェクトマネージャー)、『DISSIDIA FINAL FANTASY OPERA OMNIA』(プロデューサー)など、複数のプロジェクトに携わる。本作ではプロデューサーとして、プロジェクト全体を統括し、チームのマネジメント、コンテンツの企画、予算、スタッフの配置、進捗管理など、幅広い業務を担当している。

  • ▲井上 大輔:2005年にスクウェア・エニックスに入社し、複数のプロジェクトに様々な役割で参加。本作ではディレクターとして、ゲーム全体のディレクションを担当している。

  • ▲安田 文彦:コーエーテクモゲームス執行役員、Team NINJAブランド長、仁王/NINJA GAIDEN IP(シリーズ)プロデューサー。2006年テクモ入社(2010年コーエーテクモゲームスに合併)。『NINJA GAIDEN』シリーズの企画/ディレクターを務めた後、『仁王』ディレクター、『仁王2』プロデューサー/ディレクターを経て、現職。本作ではプロデューサーとして、Team NINJAスタジオ開発統括を担当している。

『ディシディアFF』のガーランドとはデザインもアクションも別方向に

――新たに公開されたトレーラーにはストーリーで気になる描写が多く、本作がアクションだけでなくストーリーも作り込まれているのが感じられました。

藤原仁氏(以下、敬称略):今回のトレーラーはストーリーに焦点を当てていて、これまでヴェールに包まれていた部分を押し出していますので、本編が気になる映像になっていたかと。アクション中心のゲームではありますが、『ファイナルファンタジー』の名を冠していますので、ストーリーもそれにふさわしいクオリティに仕上がっています。

――トレーラー後半にはテーマソングも流れましたね。

藤原:はい。本作はフランク・シナトラの名曲“My Way”がテーマソングでして、今回はその発表も兼ねたトレーラーとなっています。

――本作はガーランドという存在がひとつのキーワードだと思うのですが、『SOPFFO』におけるガーランドの見どころを教えてください。

藤原:物語はジャックたち一行が光の戦士となってカオスを討伐しに行く展開ですが、すでに公開しているとおり主人公のジャックはガーランドでもあります。『FFI』の印象的なキャラクターであるガーランドが、いかにしてあのようなヴィランになったのか。そこを『FFI』の異説として解釈したストーリーが見どころですね。

――ジャック=ガーランドという事実は昨年の発売日発表トレーラーで早々に明かされ、驚いたのを覚えています。

藤原:当初は、ジャックの素性を謎にしたままプロモーションしていく予定でした。光の戦士といわれる主人公のジャックだけど、どこか違和感があって、物語を進めていくとじつは正体が……という予定だったんです。

 ですが、本作にはそのほかにも多くの設定がある影響で、E3で初報を出したときにユーザーが注目したポイントが分散してしまったのを感じました。なので、主人公の本名はジャック・ガーランドであり、このゲームはヴィランの話だということを早めに明かし、そこに注目してもらおうと。そのほうが今後出る新情報に対してユーザーも混乱しにくいと思い、あのタイミングで公開することを決めました。

――本作のガーランド(鎧姿)のデザイン的な特徴は?

井上大輔氏(以下、敬称略):デザインするうえでいくつかパターンを考え、最初は『ディシディアFF』のような姿をベースにしようかという案もありましたが、野村(本作のクリエイティブプロデューサーである野村哲也氏)から「(『ディシディアFF』のイメージからは)変えてほしい」と注文がありました。

 兜まわりなど、ガーランドのシルエット的なデザインは過去作を踏襲しつつ、ディテールは本作用にアレンジしています。よく見ると、どことなく有機的なデザインになっているのが特徴です。

――『SOPFFO』のアクションを制作する際、『ディシディアFF』のガーランドのモーションも参考にしたのでしょうか?

井上:技のイメージを参考にした部分はありますが、目指したのはあくまで『SOPFFO』のガーランドとしての気持ちいいアクションです。腕の振り方ひとつをとっても異なるので、『ディシディアFF』を遊んだ方が『SOPFFO』をプレイして、「ガーランドの動きがまったく一緒じゃん」と感じることはないと思います。

――ゲーム中にはリッチやティアマット、海底神殿やアースの洞窟など『FFI』でなじみ深いものが多く登場します。こうした『FFI』の要素を最新グラフィックで再現するにあたり、苦労した点はありますか?

安田文彦氏(以下、敬称略):どちらかというとグラフィック面より、アクションゲームとしてどう落とし込むかがたいへんでした。もともとRPGとして登場したロケーションやボス敵を、アイデンティティを保ったままアクションゲームで再現するにはどうすればいいか。遊んだ人それぞれで解釈も違いますから、そのあたりの擦り合わせは一番たいへんだったし楽しかったところでもあります。

――まさかあの“アストス”が、あんなに美麗になって生まれ変わるとは思いませんでした。

安田:『FFI』をプレイした方は今回のトレーラーを見てビックリしたんじゃないかと(笑)。さすがに当時のアストスのまま出すわけにもいかないので、スクウェア・エニックスさんにがっつり監修してもらってあのような高い頭身のアストスが生まれました。

井上:最新トレーラーを見るとわかりますが、彼は物語的にもけっこう役割があるキャラクターです。

――『FFI』にはほかにもマトーヤなど個性的なキャラクターがいましたが、本作では……?

井上:マトーヤに関しては登場しません。これはあらかじめ明言しておきます。

藤原:あのあたりのキャラクターは、あくまで『FFI』の光の戦士たちが旅で出会った存在であり、ジャックの冒険ではたまたま出会わなかったと解釈しています。マトーヤのほかに、エルフの王子とかもそうですね。

『ファイナルファンタジー』として受け入れてもらえたよろこび

――これまで2回に渡って期間限定の体験版が配信されましたが、製品版ではどのような点がブラッシュアップされたのでしょうか?

安田:たとえばマルチプレイのマッチングのしづらさや同行するNPCのAI、グラフィックの向上など手を入れた箇所は多岐に渡ります。体験版を遊んでアンケートを送っていただいた方には、製品版に触れたら変化をしっかり感じていただけると思います。

――体験版を通じて、ユーザーの反応のなかでとくに印象深かったものはありますか?

井上:正直に言わせていただくと、最初はもっとユーザーに叩かれると思っていました。「このゲームは『ファイナルファンタジー』と呼べるのか」みたいな意味で。ですが、体験版配信後に「これは『ファイナルファンタジー』としてアリだと思う」といったポジティブな反応がたくさん返ってきました。僕が想像していた以上に受け入れてもらえたのが実感できて、とてもうれしかったのを覚えています。

――体験版配信前はそんな不安を抱えていたんですね。

井上:もちろんアクション部分はTeam NINJAさんが手掛けていますので、触れば楽しんでもらえる自信はありました。それとは別に、血まみれになった敵を踏みつけて笑う主人公の存在が、『ファイナルファンタジー』として受け入れてもらえるかという心配はありました。

 社内からも「光の戦士がこんな残虐なことしていいの?」という声が挙がっていたくらいなので、体験版の反応を見るのは本当にドキドキしましたね……。

――残虐なアクションといえばジャックのソウルバーストですが、予想以上に攻撃のパターンが豊富で驚きました。

井上:登場するモンスターごとにソウルバーストの攻撃アクションも用意されています。ソウルバーストは単に残虐なアクションにしたかったわけではなく、散り際の美しさのようなものも表現したいと考えて制作してもらったので、ぜひさまざまなパターンに注目してください。

安田:ザコ敵だけでなく、ボスにも専用のソウルバーストがありますので、モーションの総数はかなりのものです。当初はある程度汎用的なモーションを使う案もあったのですが、やはりアクションゲームの力の入れどころはこういうポイントだろうと思い、モーション制作チームにもがんばってもらって、こだわって作り上げました。

――ちなみに、ソウルバーストのなかでみなさんのお気に入りを挙げるとしたら?

井上:個人的にはサハギンへのソウルバーストが好きですね。バックブリーカーで砕くのが爽快感あります。

安田:私は以前、『FFXI』で1年半くらいクロウラーの巣にこもっていたことがありまして。そんな経験があるので、クロウラーを気持ちよく殺せるあのソウルバーストがお気に入りです(笑)。

藤原:自分はサボテンダーに対するアクションですね。過去のトレーラーのなかでサボテンダーへのソウルバーストが映っていますが、最初はあれよりもっとダイレクトに粉砕するアクションでした。でも、それを見た野村から「いやいや、マスコットキャラクターなんだからそんな扱いしないでよ」と言われて、マイルドな演出に収まったという経緯があります。

――バトルシステムではジョブも大きな要素ですが、登場するジョブの数はどれくらいなのでしょうか?

井上:ジョブには基礎、上位、最上位の3カテゴリがあって、総数は27種類となっています。単純に基礎ジョブより上位ジョブのほうが強いという分類ではなく、一番オーソドックスな動きができるのが基礎ジョブで、上位になるほどピーキーな性能になっていくというイメージです。基本的にはどのジョブを選んでもクリアできるよう、バトルバランスを調整しています。


――本作のメインコンポーザーは水田直志さんが務めていますが、曲作りで何か特別なやり取りはありましたか?

井上:1つ印象的なエピソードがあります。水田さんと何度かやり取りをするなかで、僕からこうしてほしいと要望を出すと水田さんが「僕のアレンジを信じてください」と強く主張することがありました。それを信じた結果生まれたのが、プレリュードの曲になります。水田さんのなかにあるプレリュードのニュアンスを残しつつ、『SOPFFO』ならではの雰囲気が味わえると思います。

――発売を心待ちにするユーザーにメッセージをお願いします。

安田:Team NINJAはこれまでもアクションゲームを多数作ってきましたが、『SOPFFO』はまた新しい形のアクションゲームとなっています。特に『ファイナルファンタジー』の特徴であるジョブを生かした新しい手触りになっていますので、ぜひみなさん味わってください!

井上:『SOPFFO』はストーリーにしてもシステムにしても、いろいろと挑戦しているタイトルになっています。体験版をプレイした方もそうでない方も、実際に手に取って遊んでいただければうれしいです。

藤原:『ファイナルファンタジー』が好きな人にはアクションが得意な人もそうでない人もいると思いますが、本作はどちらの方でも楽しめる内容になっています。シリーズファンが見ても「これは間違いなく『ファイナルファンタジー』シリーズの作品だ」と納得してもらえる一本に仕上がっていますので、3月18日の発売を楽しみにお待ちください。

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