【電撃シンクロ日記#10】第1章は誰の物語だったのか。クリア後にギュンターとアンネに思いを馳せる

キャナ☆メン
公開日時
最終更新

 セガのiOS/Android用RPG『シン・クロニクル(シンクロ)』のプレイ日記をお届けします。

※本記事には第1章の最終話までのネタバレを含みます。第1章が未クリアの方は、日を改めてクリア後に読んでください。

やはりボイスはいい。セリフに込められた感情が想像力を広げてくれる

 ゲーム配信後、初の週末で筆者も第1章を終えました。運命の選択で選んだ人物はギュンターです。理由はいろいろとありますが、一生記憶から消せないほどの、自分が犯した過ちへの後悔……その想いに対する共感が決め手でしょうか。

 無論ギュンターの場合は、他者から見れば為す術のない状況で本人に責任はなく、彼に対して理解のある人たちもそう考えてくれています。それはリーハンの言葉からも窺えるところです。

 けれどギュンター自身はずっと“過ち”と考えて譲らず、だからこそ死神の名を正面から受け止めていますよね。まるで自分の罪を忘れないためとでも言うように。

 きっと彼の中では、命を賭けるか否かの選択ができた筈だと強く思っていて、前者を選べなかった悔いが頭にこびりついて離れないのだと思います。

  • ▲カルロとの会話。セリフはカルロに対してのものですが、おそらく過去のギュンター自身にも向けられているのでしょう。

 そんな風に第1章を遊ぶのは都合3度目なのですが、にも関わらず運命の選択は道中からずっと考え続けて、いざ決断を下す段階ではゲーム画面を前に唸っていました。

 と言うのも、重要シーンにしっかりとボイスがあったのは正式サービス版が初めてで、ギュンターとアンネのドラマから受ける印象が、過去のプレイとまた違ったものに感じられたんですよね。

 セリフの一言一言に込められた感情が、テキストの伝えるドラマに抑揚をつけ、登場人物の想いに対して想像力を広げさせてくれるというか。当然ですが、やはりボイスがあると物語が豊かになります。

  • ▲第1章は、シナリオの大きな局面である鍵の言葉に紐付いた“運命の物語”や、キャンプで見られる会話の一部、それと最終話がボイスのある状態で楽しめます。

 レビューの記事で、ゲームデザインと相まってキャラの心理描写がすごく丁寧だという話は書きましたが、ボイスのお陰でキャラの言葉が心の奥底まで届き、より一層その思いを強めました。

 そんな理由で、ギュンターとアンネに対してさまざまな想像を広げ、第1章の物語について改めて考えを巡らせることができたので、その感想を語っていきたいと思います。

選択で決まるのは結末であり、選ばなかった人物の物語が消えるわけではない

 2人について改めて紹介する必要はないかもしれませんが、順を追って話を進めていく意味も含めて、まずはどんな人物か触れておきます。

 ギュンターは、若さゆえの蛮勇を見込まれて“暁の大隊”に配属されたものの……大隊を全滅に追い込んだ“死喰らい”を前に期待された蛮勇を発揮できず、襲撃から逃げて1人生き残った過去を持ちます。その後も彼が所属する隊は全滅を繰り返し、ついたあだ名は死神。

 対してアンネは、女手ひとつで彼女を育て一流の狩人でもある母アーニャと一緒に住んでいた村が黒の軍勢に襲われ、その際に母を失っています。

 本当は、アーニャはアンネを守るため命を賭して戦ったのですが、別れ際にその本心を言葉で伝えることはなかった。それゆえアンネは自分より村を選んだ母に対して複雑な想いを抱き、村を守った英雄だと誇る気持ちを心の奥底に押し込めて目を背けてきました。

 2人は無力な自分への怒りや失ったものの悲しみから葛藤や苦悩を抱え、そのドラマは運命の物語で丁寧に描かれていきます。

 一連のシーンはいずれも胸を締め付けるような切ない話で、声優さんの演技が本当に強く心に響きました。葛藤にせよ、それと向き合う意志にせよ、2人には強い想いがあるのだと痛いほど感じましたね。

 けれど2人は、家族や仲間を犠牲にして生き残った後悔をバネにして“自分が他者を守る”という強い意志を胸に秘め、そのために努力を重ねます。つまり似て非なる過去を持った2人は、本質的に同じ答えを求めたのです。

  • ▲もう2度と隊の仲間を失いたくはないと、自らを犠牲にしても仲間の命を守ることを己に課しているギュンター。
  • ▲「みんな救って、わたしも死なない」という想いを胸に騎士を目指したアンネ。騎士になってもその意志を貫き戦います。

 一方で、2人の鏡合わせのような関係性も興味深いです。隊長となったギュンターは、身体を張ってでも仲間の命を守り、アンネはそんな彼の背中を見て母の姿を重ねていますよね。

 対してギュンターは、アンネが向こう見ずな行いで仲間を危険にさらしても彼女の性格や信念に理解を示し、彼女の中に自分が持ち得なかった蛮勇を見出しているように思えます。

 ギュンターのようになりたいアンネ。彼女のようになれなかったギュンター。彼はそれを言葉にしませんが、ギュンターのほうもアンネに対して憧れに近い感情を抱いているのではないでしょうか。

  • ▲ギュンターを母と重ねて見るアンネ。
  • ▲アンネの必死な訴えに迷いなく理解を示すギュンター。

 そんな風に2人対してさまざまな思いを馳せながら第1章を終えた時、実は運命の選択は、2人のうち1人を選ぶだけではなく、選ばなかった側の物語を完成させる意味合いも持つのではないか、と思えました。

 なぜなら、筆者は前述の通りギュンターを選んだわけですが、結末ではむしろアンネのほうに大きなドラマを感じたのです。

 選択を終えた後のラストシーンで、アンネは母のように命を賭して戦い、仲間たちを守ります。彼女が目指す“みんなも助けて自分も助ける騎士”には届かなかったけれど、母と重ねて見ていたギュンターを救ったことで“お母さんよりすごい人”になれたのではないか。そんな風に思えてなりませんでした。

 そして、母のように戦ったアンネに守られて生き残ったギュンターは、アンネの過去を彷彿とさせる経験をしたことになります。大切な人を犠牲にして生き残った後悔と重荷も含めて、2人ぶんの想いを背負って生きていくことになるのでしょう。

 彼にとって非常に辛い話ではありますが、けれどそれはギュンターがアンネと同じ経験をしたことで、2人の物語が1つになり、生き残ったギュンターがそれを受け継いでいくことなのではないかとも思えます。

  • ▲1人では立ち直れないほどの悲しみを背負うギュンターですが……。
  • ▲物語は第2章に続きます。彼はアンネとどう向き合うのか? 新たな決意を抱くまでのドラマが絆の物語で描かれます。

 また、アンネがここで命を落とすことで彼女の物語は幕を閉じます。すると第1章は、理想には届かずとも騎士として大きな成長を遂げ、悲壮な最期を遂げたアンネの物語として見れば、完成した物語になっているのではないでしょうか。筆者の中で、そういう思いも生まれてきたのです。

 第1章は、ギュンターの物語なのか、それともアンネの物語なのか。主人公の物語の第1章であることはもちろんですが、ゲストキャラクターを中心に考えた時は、どちらにも取れるように思えます。

 それぞれの解釈について、1つに絞る必要はないと考えています。『シンクロ』の主人公は、ゲーム中の大きな物語の主人公であると同時に、群像劇の受け皿でもあるのかなと。

 そう考えれば、仮に運命の選択でどちらを選んでも、果たして第1章は誰の物語だったのか、各々の好きな解釈で受け止めていいのではないでしょうか。

 もちろん、ここで書いたことは筆者の個人的な見解に過ぎず、プレイを通じて人それぞれに違う感想を抱くでしょう。けれど『シンクロ』は自分で結末を選ぶからこそ、なおのこと解釈と想像が広がりますし、いろいろな切り口で物語に対して想像を膨らませるのもおもしろいのではないかと思います。

『シンクロ』企画記事


©SEGA

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

シン・クロニクル

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2022年3月23日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

シン・クロニクル

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2022年3月23日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

関連する記事一覧はこちら