人材コレクター曹操の登用基準とは?【三国志 英傑群像出張版#6-2】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 今回も曹操の民間伝承です。

 今回の話は正史の三国志にある話と一部共通するのですが、あんまり知られてないでしょうし、なかなか良い話なのであえて紹介します。

曹操のかたき討ち

 曹操が20歳で出仕したとき、洛陽県令の話があったが、大臣の梁鵠(りょうこく)が反対し、洛陽北部尉にした。(ランクが下の官位にされたのである)このことを知った曹操は、非常に動揺し怒った。

 その後、董卓(とうたく)が都に入り、少帝(しょうてい)を廃して9歳の劉協(りゅうきょう)を皇帝(献帝(けんてい))に据え宮廷の権力を掌握した。梁鵠はやむなく荊州の劉表(りゅうひょう)のもとに逃げ込み避難した。

 曹操が権力を握り「赤壁の戦い」直前、荊州(けいしゅう)を平定する際に、梁鵠の捕獲に懸賞を出すと発表した。

 これには梁鵠も恐れた。「曹操は自分を探すために人を送り込み、懸賞をだすというのだから、きっと自分に仇をとろうとしているのだろう。捕らわれたら死ぬしかない」と。

 曹操は褒美を出した後、昼夜を問わず知らせを待っていた。ある日、部下が梁鵠を見つけ引き連れてきた。梁鵠を見たとき、彼は嬉しくて笑った。この笑い声に梁鵠は身動きがとれずに扉の前に立ちつくしていた。

 曹操は彼を出迎え、自ら彼の縄を解いた。梁鵠は困惑し、他の者たちも目を見開いて曹操を見た。

 曹操は梁鵠に座るように言うと「梁公、なぜ懸賞をかけたか解りますかな?」と言った。梁鵠は頭を下げて、「自分の罪は自覚しています。曹丞相の将来を台無しにしてしまいましたから。」と返す。その後のやりとりはこうだ。

 曹操「それはすべて過去のことです。古人が言うように、“過去の過ちは誰も責めることはできない”のです!」

 梁鵠「私の罪は死に値するので、処罰してください」

 曹操「あなたは私に罰せられると確信しているのですか?」

 梁鵠「そうです、納得しております!」

 曹操「それではあなたを罰し、我が軍の役人に任命します、いかがですかな?」

 梁鵠は曹操の言葉が本当なのか冗談なのかわからず、信じられない思いで曹操を見ていたが、何も言えなかった。

 曹操は梁鵠がまだ自分の意味を理解していないのを見て、こう続けた。「梁公、私が求めたのはあなたの書の腕であり、あなたを招待できなくなることを恐れたからこそ、懸賞を出したのだ。」と笑った。

 曹操は梁鵠を有罪にしないばかりか、官吏になれというので、あまりの意外性に梁鵠は感涙した。それ以来、梁鵠は曹操のために忠実に働き、多くの素晴らしい書を書き残した。

 曹操は梁鵠の書を書斎や執務室、さらには寝殿に飾り、いつでも勉強や鑑賞ができるようにした。

曹操と神の弓矢

 曹操はしばらく訓練台で兵士を訓練していたが、兵士が強くなり、いくつかの戦いで勝利を収めた。この時点で、曹操は少し満足し、兵士たちは訓練を続けるのを嫌がるようになった。

 ある日の早朝、曹操が起床したところ、衛兵から誰かが謁見を求めているとの報告があった。曹操は彼を見ると、農民の格好をしているが、堂々とした風格があったので、「何か御用ですか?」と尋ねた。

 訪問者は両手でお辞儀をしながら、「これは私の家の先祖代々の家宝です、曹操さまに受け取っていただきたい」と言って弓を差し出した。その後、彼は突然姿を消した。曹操はそれを拾って笑った。「ばかなやつだ、私はたくさんの弓を見てきた! 大したことない弓だ」と。

 そして、弓をテーブルの上に放り投げた。その時、当番の将校がその日の練習時間を尋ねると、曹操は弓を指差して、「この弓の弦が切れるまでだ」と言った。

 当番の将校が密かに喜んだ。普通の弓の弦ならすぐに切れるので、今日は早く兵隊を休ませることができるからだ。しかし、2日経っても弓の弦は切れない。

 将校は、曹操に訓練を続けるかどうか尋ねた。曹操は、「弓の弦が切れるまで練習する」と繰り返した。さらに3日間、夜通し練習した結果、弓の弦は相変わらずの強度を保っていた。

 曹操は兵士たちの疲れを目の当たりにして、ふとこう思った。“弓を捧げた者は神であり、修行を怠るなと戒めなのではないか?”

 そこで彼は慌てて、「神よ、ご助言ありがとうございました」と空に頭を下げた。すると弓は空へ飛んでいって、虹となった!

 いかがだったでしょうか?

 最初の梁鵠の話。人材コレクター曹操が過去のしがらみにもこだわらず、有能と思えば登用した良い話ですね。

 なかなかできるようでできません。しかしながら、能力をひけらかして曹操に恥をかかせるような人は曹操に処罰されてしまいます。これまた怖い人でもあります。

 2つ目は神の弓矢。この話もそうなのですが、曹操の逸話には”慢心して、失敗して、反省する”という話が多い気がします。

 曹操の人間的で魅力的なところはここにあるのかもしれないですね。共に努力の大切さを学ばせてもらえます。

 次回も曹操の民間伝承を続けます。

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開催日時:6/18(土)16時半~
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場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー
料金:1,000円(お茶付)


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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