『オクトラ大陸の覇者』舞台は辺獄へ…前作との濃密なつながりで生まれた世界観の広がり【授けし者編インタビュー:名声・全授編】

タダツグ
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 スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』
が、“全てを授けし者”編の第2部に突入し、大きな話題を呼んでいます。

 ますます加速していくストーリー、その魅力の根源をお聞きするべく、プロデューサーの鈴木裕人さんと、シナリオを執筆されている普津澤画乃新さんにインタビューを実施!

 後編となる今回は、物語が大きく動く“名声を授けし者”と“全てを授けし者”についてお聞きしました。

 まだメインストーリーを進めていない方でもお読みいただけるよう、ネタバレ要素はできるだけ排してお話をお聞きしていますが、微細なネタバレですら気になるという方はご注意ください。

  • ▲プロデューサーの鈴木裕人氏。
  • ▲メインシナリオを担当した普津澤画乃新氏。

◆インタビュー前半:『オクトラ大陸の覇者』“絶頂”ボスやバトルの神演出が生まれたきっかけは?【授けし者編インタビュー:富・権力編】

“名声を授けし者”編:全編を通して最大の難産? “違和感”が散りばめられたミステリテイストの物語

──ここからは“名声を授けし者”編についてお聞きします。こちらでは“権力を極めし者”編で活躍したリンユウにくわえ、聖火教会の人々らが中心となってストーリーが展開しました。物語に盛り込まれたテーマについてお教えください。

メインシナリオ担当・普津澤画乃新さん(以下、普津澤):正直なところ、“名声を授けし者”編は全シナリオ中で一番苦労しました。“富”や“権力”についてはスッとやりたいことが決まったのですが、“名声”編は描くべきテーマやボスキャラのイメージがなかなか出てこなくて。

 どうしようかと悩んでいるとき、鈴木から「ゲームにミステリ的な要素を盛り込みましょう」というアイデアをもらったんです。

プロデューサー・鈴木裕人さん(以下、鈴木):はい。そういったゲームのプレイ感に関わるオーダーは僕から出させていただきました。

普津澤:ミステリ的な要素となると、今までのような味付けの濃いボスを最初から立てるのではなく、逆に誰が本当の敵かわからない状況にするのは面白そうだと思えたんです。

──なるほど。他の章と比べて目線もまた変わりますし、ミステリ小説的なアプローチは斬新でした。

普津澤:そうして“身近に潜むボス”というコンセプトが生まれました。ただ、その方向でいくとボスのキャラで押していく形にはしづらかったので、どういう形であれば物語やキャラクターが魅力的になるかを考えました。

 それで思いついたのが、前作に当たる『オクトパストラベラー』との“繋がり”を物語のテーマにする……というアイデアですね。

──ちょっと待ってください。ということは、あのボスキャラを登場させたいがゆえに物語が構築されたわけではなく、物語を膨らませていった結果として、あの人物たちを登場させようってことになったわけですか? その発想の転換は素直にスゴいと思います。

普津澤:もちろん、あの人物たちを登場させるにあたってはまた紆余曲折がありましたが、制作の順番としてはそうなりますね。

──“名声”編は“全てを授けし者”編との関りも密接ですから、今後どうなっていくかも俄然楽しみになりました。ちなみに“名声”編の序章で、いわゆるミステリ小説の“読者への挑戦状”的な趣向が盛り込まれているじゃないですか。あの演出を盛り込んだ意図はどうだったのでしょうか? あの段階では、正しくすべてを理解したうえで正解できる人は皆無ですよね?

鈴木:そうですね。あまりにも情報が足りませんので、全てを理解したうえで正解出来る方はいないはずです。

──そもそも正解してもらうことを目的とした演出ではないってことでしょうか。間違えたとしてもなんのデメリットもありませんしね。

鈴木:あの演出は“違和感”を感じてもらうことを重視しています。これまでとテイストが異なる物語が展開し、「プレイヤー自身が物語に関与する体験」を提供することが目的でした。

 というのも、“全てを極めし者”編が終わった直後ということもあり、盛り上がってくれているであろうプレイヤーさんからすると、新章はちょっと引いた目線でご覧になるだろうと思ったんです。

 こちらとしては、そこでもう一度プレイヤーさんをグッとストーリーに没入させる必要があるわけで。大きく目線を変えつつ、自分自身で謎を解いて犯人を当てにいく感覚を味わってもらったらどうだろうということで、あの演出が実装されることになりました。

 結果的に、僕も普津澤も新たな闇の中に放り込まれたというか、とても大変な物語の旅路を歩むことになるわけですけど……(苦笑)。

──これまでにないアプローチの演出でしたし、色々と悩まれたであろうことは予想がつきます。

鈴木:犯人が判明するまでは、情報として不足していた設定を随所で補強しています。例えば、アトラスダムに居るNPCにはいろいろな情報や仕掛けが盛り込まれていますね。まだ回収されていない伏線もあるのではないでしょうか。

──えっ、本当ですか。それは気になる……。普段、なかなかNPCのセリフや設定にまで目が及ばないので、ちょっと今度覗いてみたいと思います。

鈴木:普津澤も言っていたとおり、“授けし者”編のなかではこの“名声”編の物語がダントツで大変でしたね。前作の設定にまで深く踏み込むこともあって、確認しておくべきことも多かったので。

──前作は隠しボスを倒して真エンドまで見ている自分としても、“名声”編のシナリオは胸アツでしたよ。むしろ、前作を遊んでいるからこそのカタルシスがありました。

鈴木:プレイした方にそう言っていただけると、苦労した甲斐があったと思えます。まあ、ネタバレの関係上、今回はボスの名前さえ書けないと思いますけど(苦笑)。

──伏せ字にするとか……うーん。個人的にはあの名前を出したほうが、少なくとも前作をプレイした人へのフックにはなると思うんですけどね。そこはぜひプレイして、自分の目で確かめてみてほしいというのもわかります。

 ベルケインでのエピソードとか絶対に見てほしい。普津澤さんのシナリオは本当にスゴイって世界にアピールしたいです(笑)。

普津澤:ありがとうございます!(笑)。

──そういえば、主要人物の1人であるリンユウは“極めし者”編では“権力”編のキャラでしたけど、今回は“名声”編に登場するんですね。

鈴木:“権力を極めし者”編に登場するキャラがすべて権力を求めていたわけではありませんし、あえて“混線”させた側面はあります。

 先ほども申し上げましたが、このシナリオでのコンセプトの1つに“違和感”がありますので、「なんでリンユウが“名声”編に?」という展開がノイズになること自体が、物語のスパイスになるという狙いでした。

──なるほど。

鈴木:ほかにも“名声”編のラストバトルは他のボスとは異なる展開になるとか、いつもと違う体験を意図して盛り込んでいます。これらの違和感や驚きとともに、物語を楽しんでいただけると嬉しいです。

──しかもその違和感は“全てを授けし者”編にまで纏わりついてきますし……。ここらへんの仕掛けも、またたまらないんですよね……。

“全てを授けし者”編:戦いの場は辺獄へと移り、物語は1つのクライマックスへ動き出す

──ということで、そんな三授ボスとの戦いを経て、ついに“全てを授けし者”編がスタートしたわけですが。このエピソードでは、これまで群像劇的に描かれてきた各編のメインキャラクターたちが一堂に介し、物語を盛り上げていきます。この“オールスター感”にはどのような狙いが?

鈴木:『オクトラ大陸の覇者』は群像劇なので、これまでは各自の物語が個々に展開してきました。

 そして群像劇の一番の盛り上がりは、すべての物語やキャラクターが収束していくカタルシスの部分だと考えていて。これは前作の『オクトパストラベラー』でも、プレイヤーさんが感じられた部分だと思うんですよ。

──まさに。一見バラバラだと思っていた8人の物語が、ラストで一気に収束していく描写には引き付けられました。

鈴木:前作ではテキスト主体での表現で、シックな驚きがある素敵な体験でした。しかし、運営タイトルである本作ではしっかりと物語としてお見せできるというのは強みです。各キャラクターが集結し、どんな結末へ向けて旅をしていくのかをぜひ見守っていただきたいです。

──鈴木さんから各キャラクターを出してほしいというオーダーが出るのは納得です。しかし、書き上げる普津澤さんとしては、相当大変だったんじゃないですか?

普津澤:はい。登場キャラクターが増えると、そのぶん考えなければならないことも増えるのでキツかったです。各自の行動理念やそれが生きる展開、複数キャラの掛け合いなど、けっこう考えた記憶があります。

鈴木:バトル前のイベントなんかも悩みどころで。何せみんな強いものですから、配置などもきちんと考えないと仲間のピンチには当然割り込んでくるだろうな、とか(笑)。

──“権力”編のキャラが“富”編のキャラのことを気に入って行動を共にするとか、キャラ同士が絡み合っていく描写が面白いんですよね。先が気になって仕方ないです。ものすごい“集大成感”が出てきている。

鈴木:クライマックスに向けて動いている、という意味ではそのとおりですね。

普津澤:物語としては、“極めし者”編からプレイヤーさんと多くのキャラクターたちがずっと積み上げてきたものに区切りがつくよう、1つのフィナーレとなるよう盛り上げたいと思っていました。

 新たに明かされる設定から各キャラの見せ場まで、あらゆるものを注いで盛り上げたいなと。“全てを授けし者”編は、僕としてはそういう気持ちで臨んだシナリオです。

──期待感しかないです……。もっと色々お聞きしたいところですが、ネタバレはできるだけ避けるということで、ここでちょっと視点を変えたご質問を。今、ドミトリって何をしてるんですかね。

普津澤:ここでドミトリですか(笑)。

──普津澤さんとお話していて、ふっと彼のことを思い出してしまいまして(笑)。“名声”編の序盤でちょっと出番があったくらいで、しばらく登場していない気がするのですが。

鈴木:ドミトリですが、実は色々なところに出没していますよ。たとえばエドラスで行われたアラウネ、リシャール、ソロンによる調印式の場にシレッと立っていたりとか。

──えっ! 気が付きませんでした!

鈴木:彼はそういう色々な場所に配置されるキャラクターとして、開発チーム、主に僕の中で人気です。彼がこの先メインストーリーで活躍することはあるのかないのか? ぜひご注目ください!

  • ▲画面左上の群衆の中に見慣れた姿が……!?

──うーん、なさそうな気もしつつ(笑)。なんにせよ“授けし者”編で一気に前作との絡みも増えたというか、前作ファンにとっても見逃せない作品になったなという側面はありますよね。

普津澤:ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことは、“授けし者”編でかなり意識したところです。

 そもそも“極めし者”編では、本作全体のテーマである“人間の欲”というものを全力で書かせてもらいました。人間の汚い部分、ドロドロとした醜い部分にたくさん触れることになり、僕自身も消耗してしまったところがありまして。これを繰り返し描くのはしんどいなって思ったんです。

 これは僕だけじゃなく、おそらくプレイヤーさんも同様ではないかな……と。そこで新章をやることになり、新しい方向性を自分のなかで考えていって、“世界の広がり”をコンセプトにしようと決めました。

──“世界の広がり”ですか……。

普津澤:はい。オルステラの“外の世界”から侵略者が現れることで、フィールドとしての物理的な幅を広げたり。前作との“繋がり”をより濃密に描き、過去と現在という時間軸的な幅を広げたり。

 『オクトラ大陸の覇者』という作品の世界観を拡張しようというのを、“授けし者”編全体のコンセプトにしたんです。

──なるほど。そうして一気に広がった世界が、クライマックスに向けて収束していく……。自分も含め、早く遊びたくて仕方ないというプレイヤーさんが多数かと。ちなみにこの“授けし者”編は、年内に完結する想定ということでよろしいですか?

鈴木:はい。直近では6月末に5章を配信しますが、年内に“授けし者”編を完結させることが目標です。シナリオ自体はずいぶん前に普津澤さんが書き上げてくれていて、僕らとしても早く皆さんにお届けしたいところなのですが。急速に広がっていく世界をゲーム体験にしっかりと落とし込むために、グラフィックやテキストなど、多くの要素に気を配っています。
 
──そこに関しては全然待ちますよ! 開発スタッフが納得のいく形に仕上げていただいてから世に出していただくのが、ファンにとっても一番いいような気がします。

鈴木:ありがとうございます。メインストーリーは大陸の覇者として最も力を入れているコンテンツです。普津澤さんが書きあげてくれた素晴らしいシナリオをプレイヤーの皆さんにお届けできるよう、クオリティアップに努めます。

──それは時間がかかるのも仕方がないですね。

鈴木:設定説明を補強したり、逆に想像の余地が残るようにあえて絞ったりと、時間をかけて試行錯誤しています。マップなどはもう最後の方まで出来上がってきていて、かなりクオリティが高い自信作です。楽しみにお待ちください。

──考えてみれば、新章が実装された当日に即クリアしてしまう猛者もたくさんおられますから、調整はたいへんですよね。あまりにもあっけなさすぎると、それはそれで手ごたえがないって意見も出てくるでしょうし、今くらいのボリュームはあって然るべきかもしれません。

鈴木:メインストーリーは、とても熱量の高いファンの皆さんが待ち望んでくれているものですから。いざ遊んでみたらボリュームがなさすぎて拍子抜けさせてしまう……なんてことがないよう、バランスを考えた設計を心がけています。

──ギミックを解くことに快感を覚えるプレイヤーさんもおられるでしょうし、キャラ同士の会話が見られなくなったら寂しいと思う人も少なくないでしょうね。なんにせよ、メインストーリーについては引き続き楽しみにしております。

鈴木さんと普津澤さんのお気に入りキャラは誰?

──それでは最後に、鈴木さんと普津澤さんのお気に入りトラベラーについてもお聞かせいただければ。

鈴木:僕はドミトリ……ではなく、ドロテアやセシリーが好きですね。戦闘中のボイスも明るくて、「私がやってやるわよ」みたいな前向きな人たちがパーティにいてくれると、なんだか元気をもらえるんですよ。辺獄のように暗い雰囲気の場所を歩いていても、この子たちなら頑張れそうって安心できるところが気に入っています。

──メインストーリーのキャラに関してはいかがですか?

鈴木:正直みんな思い入れはありますけど、お気に入りとなるとリシャールとピエロですかね。

──なるほど。やっぱり明るい性格のキャラがお好きなんでしょうか。

鈴木:それはありますね。基本的に、本作のストーリーは重たいわけですけど、彼らのように明るいキャラがいるとバランスが保たれるというか、やっぱり「ああ、大丈夫そうだな」って思えるもので。

──納得です。では、普津澤さんはいかがでしょうか?

普津澤:僕は、アーフェン一筋です。

──ちなみにメインストーリーでいえば、やはりバルジェロになりますか?

普津澤:はい。『オクトラ大陸の覇者』では、バルジェロが一番好きです。ファミリーに入りたいですね。

鈴木:僕もバルジェロは大好きですが、普津澤さんがきっと彼の名前を挙げられるだろうと思い、被らないほうがいいかなって自重しました(笑)。

普津澤:さすが鈴木さん……お気遣いありがとうございます(笑)。

──バルジェロはプレイヤー人気も高そうですし、お2人が名前を挙げられるのも納得ですよ。ちなみに僕も大好きです。……それではまとめとして、お2人からファンの皆さんにひと言ずついただいてもよろしいですか? このインタビューはネタバレ抑えめということで、まだ“授けし者”編を遊んでいない方へ向けたメッセージをお願いできればと思います。

鈴木:はい。先ほどから何度かお話しさせてもらっていますが、物語が“授けし者”編に突入し、前作『オクトパストラベラー』とのつながりがどんどん色濃くなってきました。キャラクターや設定の新たな側面が見えるなど、前作を知っているからこそ楽しめる要素も盛りだくさんになっています。

 まだ遊んでいただけていない前作ファンの方や、途中で止まってしまっている方にも、ぜひプレイして体験していただきたいなと思います。

──辺獄まで進んだら、前作では訪れることが出来なかった某国に行けたりもしますからね。あの美しい街並みを初めて見たときは、不覚にもグッときましたよ。音楽も本当に素晴らしくて……前作を遊んでいるかどうかで、あの街並みを歩いたときの衝撃は大きく変わってくるように思えます。

鈴木:そうですね。あの国の街並みはコンセプトアートからしっかりと作り、かなり力を入れて作ったところなので、ぜひ多くの方に訪れてほしいです。

 バトルに関しても相変わらず歯ごたえがあるのですが、“遊技盤”で“ソウル武器”というシステムが多くのプレイヤーに展開されたことで、今までよりも攻略はしやすくなっています。途中でお休みしてしまった方も、まずは気軽に遊んでみてください。どうぞよろしくお願いいたします。

──鈴木さん、ありがとうございます。普津澤さんもお願いできますか?

普津澤:僕はシナリオを書き終えたことで、今は皆さんと同じ『オクトパストラベラー』ファンとして物語の続きを楽しみにしています。

 シナリオは少しずつ追加されますが、プレイヤーさんのなかには一気に最後までやりたい方もいらっしゃるかと思うので、ぜひご自分のペースで遊んでいただければと思います。

──本作は“シングルプレイRPG”ということで、自分のペースで自由に旅を進めていけるというのが大きなコンセプトですね。

普津澤:はい。ただ1つ言わせていただきたいのですが、“全てを極めし者”編までは本作の序章に過ぎません。これから配信される、真のフィナーレをぜひ見届けていただきたいです。


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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