三顧の礼は魯粛版もあった!? 呉の四大都督の逸話まとめ【三国志 英傑群像出張版#7-3】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 今回もテーマは【呉】の人物。呉の四大都督(よんだいととく)の二番手「魯粛(ろしゅく)」を紹介していきたいと思います。

 魯粛といえば、劉備・孫権連合を画策し、“赤壁の戦い”で曹操に勝利する一番の立役者といってもいい人物です。

 その魯粛、物語の三国志演義では孔明と周瑜の間を行ったり来たりする道化師役ですが、正史三国志では、関羽に一歩も引かないところを見せ、優秀な一端が垣間見れたりします。

 そんな彼の一端を知ることができる民間伝承をご紹介したいと思います。

魯粛の三顧の礼

 孫権は魯粛に命じて、さまざまな武器の製造を監督させた。魯粛は部下を率いて太平都城の西北の高台に工房を作り、他方で鍛冶の名人を探した。この辺りには、特に腕のいい鍛冶屋・陳さんがいて“鉄炉墩(てつろとん)”というあだ名で呼ばれていた。

 彼の妻は金持ちの息子に襲われ、首つり自殺をした。しかし、その息子は賄賂で捕まることはなかった。政府が悪党を囲っている以上、彼の不満を解消するのは難しい。そこで“鉄炉墩”は、役人とは一切関わりを持たないことを誓った。

 魯粛は“鉄炉墩”を連れ出そうと決意した。

 この日、お供を連れて“鉄炉墩”の家に行き、「陳様はご在宅でしょうか?」と尋ねた。子供は答えた。「ご主人様はご家族の元へお戻り中です。」と。仕方なく戻った魯粛。

 そして2日目。部下たちは“鉄炉墩”が帰ってきたと報告した。魯粛は再び彼を訪ねようとすると、途中で老婆を抱いた中年の屈強な男に出会った。

 魯粛は馬を降り、敬礼して尋ねた。「失礼ですが“鉄炉墩”さんが家にいるかどうかご存知ですか?」。老女は答えようとしたが、中年の男が先に言った。「私は“鉄炉墩”のことは何も知らない。“鉄炉墩”とか“銅炉墩”とか全然知らない。」。そして老女に向かい「お母さん、遅くならないうちに、行きましょう」と言い行ってしまった。

 魯粛は馬に乗って“鉄炉墩”の家にたどり行き、若い弟子に尋ねた。すると「ご主人は今、お母さんと一緒に帰りましたよ」と答える。魯粛は、道中で出会った強者が“鉄炉墩”であることに気づいた。

 そして、持ってきた百両の銀を封印して、弟子に“鉄炉墩”に渡すようにと渡した。翌朝、若い弟子が魯粛を訪ねてきて、“鉄炉墩”からの返事を手渡した。

 そこにはこう書かれていた。「鍛冶屋として働くつもりはありません。百両の銀をお返しします。」と。

 3日目、魯粛は特別に早起きし、たった2人の付き添いと共に3度目の“鉄炉墩”宅を訪れ、出かける前の彼に会おうとした。村に入ると、まだ夜明け前だった。

 突然、黒い影が現れ、“鉄炉墩”の家の裏窓をこじ開けるのが見えた。魯粛はこの男は泥棒だと確信したので、彼を押さえつけ、次いで2人の従者が手を後ろに回して彼をねじ伏せた。

 “鉄炉墩”は目を覚まし、出てきてみると妻子を殺した裕福な家の息子であることに気付く。魯粛はすぐに彼を尋問したところ、誰かに“鉄炉墩”が百両を手にしたと聞き、それを盗んで賭博に使おうとしていることが分かった。魯粛は侍従に命じて、彼を牢屋に入れ、重い刑を科した。

 魯粛が礼儀正しく徳のある正しい官吏であり、仇を討てたことを知ると彼は魯粛とともに武器を作るために出むく事を決めた。

 高炉を建てたこの場所の名はこの鍛冶屋・陳さんの愛称から名付けられた。“鉄炉墩”という呼び名は現在も使われているのだとか。

魯粛が曹操の兵士を罠にかける巧妙な計画

 ある年、小麦の収穫期に曹操が軍を派遣して沙楊城(現・嘉峪県)一帯の穀物を強奪し、民衆は悲鳴を上げた。

 民衆を守るため、魯粛は自ら前線に出て地勢を視察した。広い野原の真ん中に大きな湖があるのを見たが、水はほぼなく泥だらけだったので、暗闇の中、兵士に命じて草や麦藁を持ち込ませ、泥の上にまかせた。

 その後、魯粛は全軍に命じて穀物を奪いに来た曹兵を迎え撃ったが、すぐに敗れ戦いながら退却し始めた。曹操の部隊は、その後ろをぴったりと追った。

 走っていると、道の終わりまで来たが、魯粛の部隊は姿を消していた。気付くと曹軍は逃げ場を失っており、前方に黄色い藁が敷き詰められた平地を見つけた。

 ちょうど小藁の道の向こうの村にいるに違いないと思い、曹軍は旋風のごとく突進していった。その道とは魯粛が用意していた泥の沼である。

 曹軍が引き返そうとした時、突然大砲が鳴り、魯粛の部隊が駆け出して囲み、足場が悪い中、矢の雨が撃たれてあっという間に全滅させたのだった。

 いかがだったでしょうか?

 最初は「三顧の礼」的なお話、優秀な人をスカウトするには三度は訪れるようにという教訓かもしれません。

 2つ目は魯粛の計略が登場しました。切れ者であることがわかります。

 優秀な魯粛、新たに見直してみてもらえるとうれしいです。

 来月も呉の人物を紹介していきますので、お楽しみに!

第十六回三国志祭の日程決定!

 16年続いている三国志のお祭りの日程が決まりました!

 たくさんのご参加お待ちしております。

日程 :2022年11月6日(日)
場所 :神戸市KOBE鉄人三国志ギャラリー周辺


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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