『アオハルデビル』池田明季哉先生が描きたかった青春小説について

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 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『アオハルデビル』を執筆した池田明季哉先生のインタビューを掲載します。

 本作は、スマホを忘れて夜の学校に忍び込んだ“在原有葉”が、美少女“伊藤衣緒花”の秘密を知ってしまったため、脅されて付き合う羽目になって……!?

 小説が完成するまでに長い時間をかけ悩みながら書いたという本作について、お話を伺いました。

──この作品を書いたキッカケを教えてください。

 王道の青春ストーリーが書きたかったんです。でも、僕にとっての青春って、うまくいかないこととか、思い通りにならないことばっかりなんですよね。

 そういうままならなさと、だからこそ宿るきらめきをどうしたら伝えられるだろう、と考えたときに、自然と「願いを叶える悪魔」というモチーフに辿り着きました。

──作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 『アオハルデビル』は、切なる願いを抱えてもがく、すべての人のために書きました。青空に輝く太陽ではなく、闇夜に光る星のような、そういう青春ストーリーです。

──作品を書くうえで悩んだところは?

 物語に出てくるキャラクターたちと一緒に、いっぱい悩みました。みんな人間だから、そんなに簡単に答えが出ないような問題をいろいろ抱えているんですよね。僕は物語を書くというのは、キャラクターたちが人生にそれぞれの答えを出していけるようにサポートすることだと思っているので。出てくるみんなの悩みが、そのまま僕の悩みです。

──執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 そんなふうに書いているものだから、ほとんどまるまる1年かかってしまいました。大変でした。でも担当さんはもっと大変だったと思います。お疲れ様です。

──本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 一見完璧な美少女に見えて、内面にすごく大きな欲望を抱えたヒロインの衣緒花は、悪魔に憑かれてしまいます。主人公の有葉は、悪魔を祓うべく、そんな彼女の心の奥に向き合っていくことになります。そんな悪魔憑きと悪魔祓いの青春ボーイミーツガールです。ふたりとも大変な目に遭いながらもいっしょうけんめい生きていくので、応援してあげてください。

──特にお気に入りのシーンはどこですか?

 クライマックスですね。衣緒花はファッションモデルなので、デザイナーの作った服が重要な役割で出てくるんです。著者は小説だから言葉で書けばいいと思って、超一流ファッションデザイナーでなければとても実現できないような無理難題デザインを平気で書くんですよ(僕のことですが)。イラストレーターさんがそれを汲んで服からデザインしてくれて、素晴らしいシーンになったと思います。超一流です。

──今後の予定について簡単に教えてください。

 1巻が出た段階で、実は2巻がもう準備できています。2巻のテーマは「人を好きになること」。青春ですね。ご期待ください。

──小説を書く時に、特にこだわっているところは?

 みっつあります。ひとつは、物語に出てくる人たちに、ちゃんと向き合うこと。もうひとつは、読んでくれる人の力になるものを書くこと。そして最後は、かかわってくれる人すべてが、楽しんで全力を出せるようにすることです。

 イラストレーターさんやデザイナーさんのいちばん素敵なところってどこだろう、どうやったらそれがみんなに伝えられるだろう、って考えるのも、著者の仕事だと思うので。だからいただいたイラストとかデザイン優先で内容を変えたりすることもよくあります。

──執筆中のエピソードはありますか?

 そういう気持ちがあったので、ビジュアル関係については、担当さんとイラストレーターさん、デザイナーさんの4人で相談しながら作りました。これはけっこう珍しい形なんじゃないかな?

 僕が役に立ったかはともかく、出来上がったものが素晴らしいことはカバーを見てもらえればすぐわかるでしょう。中身のイラストやデザインも素敵なので、ぜひ楽しみにしていてください。

──アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 映画とか音楽とか絵とかアニメとかゲームとか、あるいは好きなフィギュアとかおもちゃとか、そういう自分が美しいと思うものを愛でるようにしてます。

 誰かが作った美しいものに触れると、自分ってなんて醜いんだろう、がんばらなくちゃ……という気持ちになるんですよね。なにかを作ってるときって、どれだけ自分が嫌いになれるか、自分の不完全さに向き合えるかの勝負だから。少しでもよいものが作りたいですね。道のりは遠いですが……。

──学生時代に影響を受けた人物・作品は?

 僕は音楽が好きだったので、the pillowsというバンドの曲を毎日聞いていました。苦労した遅咲きのバンドで、なにもかもうまくいかないし、どうせ消えていくんだけど、それでも前に進むんだ、というメッセージがある曲が多いんですよね。青春です。

──今現在注目している作家・作品は?

 悪魔祓いとか書くくらいなので、ホラー映画が好きなんです。ホラーって、人間が「怖い!」「嫌だ!」と感じるものを描くことで、逆に人間が大事に思っているものとか、社会の不安を描けるジャンルだと思っていて。M・ナイト・シャマランの復活を見守りながら、ジョーダン・ピールのこれからに期待しています。

──その他に今熱中しているものはありますか

 僕はおもちゃが大好きなんですが、『ダイアクロン』という小さなパイロットが乗り込むロボットのシリーズがありまして、大人向けですごく精巧でかっこいいんですよね。それを机に並べてお話を妄想するのが日課です。先日、何年も待っていた超巨大戦艦がとうとう発売されることが発表されたので、それを楽しみに生きています。

──最近熱中しているゲームはありますか?

 モンハンです! ガンランスしか勝たん!

──それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 これを読んでいるということは、少なくとも生きているということなので、その時点ですごくえらいです。褒め讃えられるべき。きっと思い通りにならないことがたくさんあって、悪魔に願いたくなることもあるだろうけれど、がんばって一緒に生きていきましょうね。よろしくお願いします。

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