転移した並行世界に広がる荒廃した街の雰囲気がイイ! 『INDUSTRIA』は濃密な近代SFストーリーで満足感抜群!【電撃インディー#349】

セスタス原川
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はBeep Japanから配信中のPS5//PC用シングルプレイ用FPS『INDUSTRIA』を紹介します。

 時は1989年の東ベルリン。主人公の女性であるノラは、研究施設の同僚を探していると、不思議な世界へと転移。続々と現れるロボットと戦い、人探しを続けます。

 最初は謎ばかりのストーリーが少しずつ解明されていく感覚は、ゲームで物語性を重視する方も満足のいく内容。程よい難しさでプレイし甲斐のあるシングルFPSとなっています。

 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

90年代ベルリンの並行世界へ転移

 本作の時系列は、ベルリンの壁が崩壊した頃。研究施設で働くノラは、同僚の男性からの連絡を受けて、非常事態の職場に向かいます。


 荒れ果てた施設の中、使用した痕跡のある転移装置。彼は同僚の行方を追うため、1人並行世界に転移するのでした。

 そこで待っていたのは、荒廃した街と、徘徊する攻撃的なロボットたち。ここはどこなのか、何が起きているのかもわからないまま、彼女は同僚を探し続けます。

 そして、ロボットに襲われたところを助けてくれた謎の男性。彼は何者なのか、ここは一体どこなのか、少しずつ謎が明らかになっていきます。

 本作のストーリーを一言で表わすならば、近代的な異世界転移作品。SFフィクション的な要素を含んでおり、その系統の物語を好む人にオススメしたい内容です。最初の段階では、ストーリーは謎だらけ。いきなり転移した主人公とプレイヤーは同じ目線で、何もわからない状態から手探りで進んでいきます。

 そこから少しずつ謎が明らかになってくる流れは、まるでパズルのピースがハマっていく感覚に近く、モヤが晴れていくスカっとした気分を味わうことができました。

 ストーリーは4時間程度でクリアできるボリュームとのことですが、濃密な物語となっており、満足感は十分すぎるほどです。

 また、並行世界の世界観は、荒廃して草木などが生えている街中にロボットが徘徊しているという、ミスマッチな組み合わせが何とも風情があり、引き込まれるものがあります。

 ロボットも最新の機械というよりは、ガラクタを組み合わせたかのようなものが多く、それがまた不気味さを際立たせるのに一役買っています。


 そして、チャプターが切り替わる度に通過する謎の世界。ここではロボットが登場したり、襲われたりすることはないのですが、逆に何も起きなすぎる故の恐ろしさがあります。

 何故かコンサートホールのような建物があり、そこでは1人の男が意味深な動作を行います。男が取る行動はこの空間を訪れるたびに変化しており、一体これが何を意味しているのか……。序盤では多くの謎がプレイヤーの周りに存在しています。

少ない弾数で敵を倒すハードなシューティング要素

 本作はシングルFPSということで、立ちはだかるロボットたちは銃を使用して倒しながら先に進まなければなりません。

 銃弾の弾数には限りがあり、無駄撃ちをする余裕はありません。それどころか、全てのロボットを銃で倒す余裕すらなく、数発撃って残りは近接攻撃で仕留める……というエコな立ち回りが必要になります。


  • ▲扉を開いたり、敵に攻撃したり、さまざまな場面で活躍するハンマー。プレイ中はプレイヤーにとって、頼れる相棒となることでしょう。

 近接攻撃をする際には攻撃されるリスクもあり、繰り返していれば被弾も増えて体力も減っていきます。気を抜いているとすぐにゲームオーバーになってしまいました。クリアできないほど難しくはないのですが、考えながら動かなければゲームオーバーになってしまう、程よい難しさです。

 使用できる武器は4種類。それぞれ強さや機能する距離が異なるので、その場面にあった武器を使用することが弾薬節約に繋がります。

 そして、もうワンランク上の難しさを味わいたい人向けにハードコアモードが用意されています。

 通常モードでは、チェックポイントごとにオートセーブが行われますが、ハードコアモードではタイプライター(セーブポイント)を見つけなければデータを保存できません。さらに、敵の数が増えて銃弾の数は減るという、これでもかというほど難易度が高められたモードです。

 元々ゲームオーバーを繰り返すトライ&エラーな要素がある本作で、セーブに制限が加わるのはかなりの難易度アップに繋がります。最初はストーリーなどを楽しむためにノーマルモードでのプレイを推奨しますが、自分の限界に挑戦したい方は、ハードコアモードをプレイしてみるのも良いでしょう。

進むための謎解きも一癖ある難しさ

 攻略にはシューティング要素意外にも、アイテムを集めて道を切り開く謎解き要素もあります。

 扉のパスコードを近くの情報から見つけたり、アイテムを組み合わせて新たなアイテムを生み出したり、謎解きのスタンダードな展開を抑えつつ、本作ではオブジェクトを持ち運ぶという独特なアクションがあります。



 これは、落ちている小物やロボットの残骸を運び、別の場所に置けるというもの。これらを使って足場を生み出すシーンなどもありました。

 ただアイテムを集めるだけでなく、もう1つオブジェクトを運ぶというアクションが加わったことで、意図的にミスリードを発生させているのが本作のポイントです。

 例えば、ただ封鎖されている道を探すだけの場所でも、近くに移動させられるオブジェクトが置いてあるだけで「これは、もしかして運ぶアクションを使うのか?」と思う場面も。キーアイテムを集める以外の進め方が1つ増えただけで、謎解きの難しさと面白さが数倍に跳ね上がっています。

  • ▲ちょっとした高さの壁であれば「箱を足場にして越えられる?」と思わされてしまうのが悩ましいところ。

 謎だらけのストーリーと、歯ごたえのあるシューティングを体験できる『INDUSTRIA』。普通にプレイするだけでも十分な面白さがありますが、先の展開を予想したり、世界観の考察を行ったりしながらプレイすることで、より楽しむことができる作品となっています。

 ぜひ、初見プレイではネタバレなどは見ずに物語を味わうことをオススメします。

 既にsteam版は発売中で、価格は2050円(税込)とかなりリーズナブル。価格以上の面白い体験ができるので、シングルシューティング好きをはじめ、荒廃した世界を探索する世界観が好きな方、近代SFが好きな方など、刺さるポイントが1つでもあった方は手に取ってみてはいかがでしょうか?


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