チームくまさん・はせPが新会社設立。『ミストレ』の運営は? DMM GAMES美少女ゲームの今後は? 気になる経緯や未来を聞いてみた

カワチ
公開日時

 『ミストトレインガールズ ~霧の世界の車窓から~』や『モンスター娘TD~ボクは絶海の孤島でモン娘たちに溺愛されて困っています~』を手掛ける“クリエイティブチーム くまさん”。その団長として、はせPの愛称で親しまれる長谷川雄大さんがDMMグループの戦略的子会社“Studio KUMASAN”の設立を発表。

 そこで電撃オンラインでは、はせPにインタビューを実施。独立した経緯や、どのようなことを手掛けていく会社なのか、気になることを直接お聞きしました。

長谷川 雄大(Hasegawa Yuta)さん

 専門学校在学中、コンシューマーゲーム会社へ入社。その後、大手出版社にて出版営業や雑誌制作など幅広い業務に従事。2014年にDMM.comラボ(現EXNOA)に入社。現在は企画制作部部長 兼“クリエイティブチーム くまさん”の団長を務める。通称“はせP”。

美少女ゲームが大好きすぎてDMMへ

――新会社設立おめでとうございます。インタビューでは長谷川さんの経歴から順番にお話をお聞きしています。前職はKADOKAWAだったんですよね。

はせP:そうです。もともとはKADOKAWAで出版の営業やECサイトなどを担当していました。今、僕は37歳なのですが28歳のときにDMMに転職しましたね。KADOKAWA系のサイトのインタビューで答えるのも申し訳ないのですが、当時はとても不真面目で社会をちょっと舐めていました(笑)。

 退職するタイミングで人生を振り返ったとき、もっと真面目に社会で働こうと思ったんです。本当に人間を入れ替えたつもりでやってみようと、DMMに入りました。

――10年前ということはDMM GAMESが出来て、すぐのころですね。

はせP:はい。本当に出来たてのころで、EXNOAの現COOの東條(東條寛氏)を指揮に、その下に部長と何名かプロデューサーがいるという状態でした。入社して下っ端からスタートし、その後は1年に1回くらい部署が変わったりしつつ、プロデュース部門で『FLOWER KNIGHT GIRL(フラワーナイトガール)』というタイトルを作ったりしていました。

 その後も何本か自分発信のタイトルも少数ながらチャレンジさせていただいていたのですが、どちらかというとトップから降りてくるミッションに対応することが多かったです。

――発表している作品以外の部分にも携わられていたと。

はせP:そうなんです。ただ、僕自身はクリエイティブに自分の強みがあると思っていたので、そのクリエイティブにフィーチャーしたチームを作ろうと“クリエイティブチーム くまさん”というブランドを立ち上げたんです。“クリエイティブチーム くまさん”では、まず第1弾の『ミストトレインガールズ』を発表し、続いて第2弾の『モンスター娘TD』を2021年の春に発表させていただきました。


――その後、新会社を設立するわけですね。

はせP:はい。発表は2023年の1月6日ですが、会社自体は2022年の時点で設立しています。株式会社“Studio KUMASAN”という会社で、DMMグループ100%子会社として2022年の9月には立ち上がっています。さらに、僕はEXNOA側では執行役員という形で今までどおり携わります。EXNOAには長谷川スタジオという直下のチームがあり、執行役員としてそこを統括しているという形ですね。

――長谷川さんのことをもう少し詳しくお聞かせください。KADOKAWA時代は営業を担当されていたんですね。DMMに入社してゲームを手掛けようと思ったのはなぜでしょうか?

はせP:僕は専門学校卒ですが、その専門学校の2年目からコンシューマー会社で1年ぐらいは働いていました。また、それとは別に中学生ぐらいのころから自分でダウンロードのゲームは作っていましたし、KADOKAWA時代もツクール系のインディゲームを手掛けていました。そのため、ずっとゲームには触れてきているんです。

 また、DMMに入るときはこれからソーシャルゲームが盛り上がっていくという時期で、僕としてもソーシャルゲームに取り組んでみたいという気持ちがありました。

 僕がKADOKAWAにいたときも、紙の出版から時代が変わって電子に移っていくタイミングで、今後は電書が伸びていくのは分かっていたのですが、僕は電書以上にゲーム方面にも可能性を感じていたので、ソーシャルゲームの世界に飛び込むことにしました。

 そのなかでもなぜDMMを選んだかというと“美少女ゲームが好きだから”というシンプルな理由です(笑)。転職活動をしたとき、ほかにも何社か採用はいただいたのですが、アダルト要素もある美少女ゲームのソーシャルゲームを作れるのは、この会社しかなかったんです。

――清々しいまでの情熱です(笑)。

はせP:僕は疑似恋愛的なゲームじゃなくて最後までいきたいという派閥だったので、もうここしかないでしょうと即決しました。ほかの最終面接なども全部取りやめて、この会社に入社しました。

――美少女ゲームを作りたかったと。

はせP:そうです。『ミストトレインガールズ』や『FLOWER KNIGHT GIRL(フラワーナイトガール)』、『モンスター娘TD』もそうですが、次世代の美少女ゲームという意識で制作させてもらっています。

――影響を受けた美少女ゲームはありますか?

はせP:かなり前の作品になりますが、かんなぎれいさんがゲームデザインとイラストを担当している『ティンクル☆くるせいだーす』ですね。僕のなかで美少女ゲームといえばアドベンチャーゲームが基本だと思っていたので、ゲームらしいゲーム要素があることに驚きました。新卒のとき、最終的にコンシューマー会社に入ったものの、美少女ゲーム会社もいっぱい受けていました。

――それが今ではかんなぎさんもチームくまさんに合流して一緒に仕事しているんですよね。

はせP:そうですね。この業界に飛び込もうと思ったのは、今一緒に仕事しているかんなぎれいさんの影響が大きいのですが、『FLOWER KNIGHT GIRL(フラワーナイトガール)』を運営しているときに同じ花がテーマということで、かんなぎさんの『ハナヒメ*アブソリュート!』からコラボの打診をいただいたんです。僕からすると、いちばん最初の憧れの人だったので、この時は感動しましたね。

 かんなぎさんとは、その後も何度かコミュニケーションを取らせてもらって、物作りに関する考え方が同じであることが分かり、先方の社長さんにも快諾いただいて、ジョインしてもらうことになりました。

――かんなぎさん以外にもチームくまさんに合流しているクリエイターもいるのでしょうか?

はせP:そうですね。直近ですと作曲家として著名な浅野隼人さん(作曲家としてはアサノハヤト)にサウンドディレクターとしてジョインしてもらったり、有名なイラストレーターさんなどが次々に参加してくれています。

――メンバーは募集する形ではなく、お声がけするのが基本でしょうか?

はせP:新会社Studio KUMASANは人数を絞っているので、プロ・アマ問わずすごいクリエイターを見つけたときなどに「一緒に仕事しませんか?」と連絡することはありますが、スピード感を大事にしたいので大きな募集はしていません。

 逆にEXNOAの長谷川スタジオは、内製開発ラインの体制を強化しているところなので積極的に募集しています。

――流れに沿って質問しますと、長谷川さんは2019年9月13日に“クリエイティブチーム くまさん”を設立しましたが、改めてこちらの設立の経緯をお聞かせください。

はせP:アダルト要素のあるタイトルだと、いっしょに仕事がしたいと思うイラストレーターさんでも断られてしまうことが多いんです。

 これはアダルトが嫌だというより、ブランディング的なことでお断りされてしまうことが多いのですが、それであれば内部でクリエイティブチームを作るのがいいのではないかと判断しました。

 美少女ゲーム界隈でも、有名な原画家さんがジョインしてくれており、『真剣で私に恋しなさい!』の原画家さんや、先ほど話したように『ティンクル☆くるせいだーす』を手掛けたかんなぎれいさんなどが参加しています。また、若いイラストレーターさんなどの採用も積極的に行っています。前向きな人たちを集めて、外に頼らなくても、クリエイティブなものがちゃんと作れるチームを作りたかったんです。

――メンバーを集めてから、クリエイティブチームの設立を会社の承認をもらうという形だったのでしょうか?

はせP:承認をもらうためにクリエイターを集めたので同時進行で進めていたような感覚ですね。うちの会社は事業の会社という側面が強く、クリエイティブ面について特化している人は少ないんです。そのため、会社から止められるということは無かったですが、もしかしたら僕がやろうとしていることにあまりピンと来ていなかったかもしれません(笑)。

 ただ、クリエイティブの部分を切り拓いていくのは僕の役目ですし、任せてもらえているのは信頼されているということだと思います。そこについては感謝しかないですね。

――チームで最初に作った作品は『ミストトレインガールズ』ですね。

はせP:はい。『ミストトレインガールズ』が第1弾で、その前の『FLOWER KNIGHT GIRL(フラワーナイトガール)』はひとりでディレクションをしていました。ただ、『ミストトレインガールズ』の企画をスタートしたときも、まだ3名のチームでしたね。

――『ミストトレインガールズ』より以前の『ガールズシンフォニー』や『ReBless(リブレス)』のときは自社開発ではなく、別の関わり方をしていたのでしょうか? それともチームくまさんの前身となるようなチームがあったのでしょうか?

はせP:当時はぜんぶひとりで、プロデュースとクリエイティブを兼任してやっていました。途中から部長になったため事務的なアシスタントをしてくれる人ができましたが、チームくまさんを立ち上げるまでは基本はぜんぶひとりでしたね。

――長谷川さんがプロデューサー兼ディレクターで、あとは外部の人にお願いするという形だったと。

はせP:そうですね、外部の会社さんや、外部のイラストレーターなど、繋がりがあるところに協力してもらってやっていました。会社で部はついていましたが、ひとりなので部署ではないなと思っていました(笑)。

――DMMではほかの部署も同じような形だったのでしょうか? それとも長谷川さんだけが特別な立ち位置だったのでしょうか?

はせP:当時はすでに周りは部署とかの形になっているなか、僕のところだけがひとりで、特殊ではありました。当時、僕自身が自分でできる範囲のなかでいいタイトルを作れるように頑張っていこうという自己完結の考えでした。

 ほかのところは部署として機能するために、いろいろなスタッフを入れたり、組織として形になっていましたが、僕は全部自己完結できる範囲でしかやらなかったです。

 とはいえ、『FLOWER KNIGHT GIRL(フラワーナイトガール)』は僕の企画ですが、そのかたわら、『ガールズシンフォニー』や『ReBles(リブレス)』といったタイトルについてもアート面でサポートするなかで、ひとりで対応していくのはかなり辛い状況でもありました。

――ひとりでやっていくことに限界を感じたと。

はせP:その頃は本当に無理していて、深夜に両鼻から鼻血が出たりもしてました。やっぱり、ひとりでやることには限界があり、当時は生産性が乏しかったですね。

――その後、チームくまさんが発足し、長谷川さんがひとりでできることだけではなくチームとしてできることへと広がっていったと思うのですが、今回の新会社設立も、その延長線みたいな考え方でしょうか?

はせP:そうですね。新会社で独立するとなると少しネガティブに思われてしまうかもしれませんが、ポジティブで前向きな話になります。新会社の社長になりますが、EXNOAの執行役員として残りますしね。

――現在、チームくまさんは何名ぐらい在籍しているのでしょうか?

はせP:“クリエイティブチーム くまさん”が約20名ぐらいです。そのほかに僕のプロデュース作業をサポートするディレクションチームというのがありますが、こちらは約10名。また、EXNOAから合流したいと言ってくれた人たちもいて、そういう人も何名か連れてきているので、新会社Studio KUMASANとしては約40名くらいですね。

――新会社の所在地はDMMのオフィスとは別なのでしょうか?

はせP:分けるという案も少しあったのですが、僕がEXNOAの執行役員もやっていることもあり、同じ場所にしました。今回の独立は独立して終わりという話ではなくて、独立してブランディングとユーザーさんとの連携を強めて、DMM GAMES全体を盛り上げていくというのがベースにあります。なので、完全に独立企業としてやっていくこととは前提が違いますね。

――チームくまさんは『ミストトレインガールズ』や『モンスター娘TD』など、ユーザーからの評価が高い作品を作っていますが、このチームの強みや魅力はどこにあるとお考えですか?

はせP:ひとつ言えるのはチームの空気がすごくいいということです。僕自体があまり忖度をしない文化を作りたかったというのもありますが、僕の役職が代わっても今までと変わらず、現場で毎日仕事をしていますし、チームのみんなからの呼び方もまったく変わっていません。

 チームのみんなはいいものを作ることを最優先にしていますし、ユーザーさんと向き合うことしか考えてないです。僕の顔色を伺ったりすることがないので、変なふうに歪んだりしないのがチームの強みかなと思っています。

 僕がブレインとして、その手足のチームではあるのですが、その手足もちゃんと判断をしていて、「こっちのほうがいいでしょう」と思ったときには、しっかり軌道修正してくれます。クリエイター組織はぶつかり合って空気が悪いチームになってしまうことがありますが、そうすると意識が外向きのユーザーさんではなくて、内向きのベクトルに変わってしまうので、よくないと考えています。

 そこはチームのリーダーとして僕自身が意識しているところですし、メンバーも僕の想いや目指しているところを理解してくれて、お互いにコミュニケーションを取って、信頼しあうということを実践してくれています。

 フリーランスだった人がジョインしてくれることも多いですが、このクリエイティブチームの雰囲気がいいとか、長く働いていきたいと言ってくれたりするのでうれしいですね。

――ユーザーファーストであることがいい方向に向いているんですね。

はせP:そうですね。みんなユーザーさんのほうを向いて動いているので、チーム内のゴタゴタは本当にないですね。変なことに力を向けずにクリエイティブに集中できます。

インタビュー後編に続く(近日公開予定)

関連する記事一覧はこちら