『ラストラビリンス』インタビュー。『どこでもいっしょ』開発者が考えるVRとポケステの共通点とは【電撃PS】

電撃PlayStation
公開日時

 あまた株式会社が2019年11月13日に発売するPlayStation 4/PC用VRの脱出アドベンチャー『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』。制作の経緯や見どころなどについて、本作のプロデューサー兼ディレクターを務める高橋宏典氏にお話をうかがいました。

  • ▲あまた株式会社の代表取締役社長、高橋宏典氏。『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』のプロデューサー兼ディレクターを務める。PlayStation用ソフト『どこでもいっしょ』で、プロデューサー兼ディレクターを務めていた。

 『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』は、“VR時代の新しいアドベンチャーゲーム”をコンセプトに開発され、VRだから実現できる世界観と、仮想キャラクターとのコミュニケーションを体感できるVR脱出アドベンチャーゲーム。

 ゲーム性はシンプルながら、高いインタラクティブ性による没入感によって、バディとなるキャラクター“カティア”が非常に魅力的に描かれ、VRの魅力が詰まった一作となっている。ちなみに物語の解釈はプレイヤーに委ねられ、考察がはかどること必至! この冬注目のVR作品となっている。

“VR”と“ポケステ”は似ている

――VRで作品を作ることになった経緯をお聞かせください。

高橋宏典氏(以下、敬称略):まず、あまた株式会社として、オリジナルのIPにチャレンジしていきたいという思いがありました。そして、私自身がVRにとても可能性を感じているというのも理由の1つです。

 これはあまり理解してもらえないかもしれませんが、個人的に“ポケットステーション”(PlayStation用の周辺機器)と“VR”には共通点があると思っているんです。

――どのへんが似ているんでしょうか?

高橋:"プレイヤーが自分自身の視点でキャラクターと相対できる"点ですね。過去に携わった『どこでもいっしょ』ではポケットステーションというデバイスを使って、プレイヤー=自分の図式でゲーム世界にインタラクトすることに挑戦しました。

 画面の中にプレイヤーの分身が出てきて、それを操作するわけではなく、自分の視点、気持ちのままコミュニケーションを取るというのがポイントでした。そういう意味で、同じようにプレイヤー自身がゲーム世界に入り込めるVRには、かなりのポテンシャルがあると思っています。

 VRと仮想キャラクターとのコミュニケーションという要素に加えて、『ICO』や『ワンダと巨像』でパートナーのアニメーションを手掛けた福山敦子が弊社のスタッフにいまして、彼女の描く繊細なアニメーションを生かせる作品を目指したのが『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』です。

 じつは、モーションキャプチャーは補助的にしか使っておらず、ほぼ手付けのアニメ―ションになっています。手付けならではのデフォルメが効いているので、そこで福山の持ち味がしっかりと生かされています。

魅力的な“カティア”という存在

――試遊会を積極的に開催されていますが、反響はいかがですか?

高橋:カティアに対して、「罪悪感がすごい」という声がよく上がります。プレイの様子を見ていると、仕掛けを解くためのトライ&エラーを皆さんが段々やらなくなっていくんです。失敗するとカティアが酷い目にあってしまうので、普段ゲームをやり慣れている方でも、かなり慎重になるようで……。

――実際にプレイしてみると、たしかに慎重になっていきますね。

高橋:これは意図して作ったところになります。インタラクトによるプレイヤー自身の心の変容が狙いで、『どこでもいっしょ』でも取り組んできたことでした。『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』はほんわかしたゲーム性ではないですが、どちらも根っこは同じで、"キャラクターへの愛着"を意識してデザインしています。

 仮想キャラクターのはずなのに、そこに生命を感じるほど感情移入してしまうというのは、僕が作品を通してこだわっているポイントです。

――こちらに向かって微笑みかけてくれるカティアを見ていると、自然と愛着がわいてきます。カティアのデザインコンセプトに関して、教えてください。

高橋:ゲームの構造として、プレイヤーの補助が必要であろうキャラクターとして設定しました。プレイヤーが車いすに乗っているという都合上、背丈も目線が合うくらいを想定した結果、少女の姿に固まっていきました。

 VRならではの要望では、ヒラヒラしたものを身に着けていた方が見栄えがいいということで、赤いリボンを着けています。ゲーム的には、とある物の象徴ではありますが、解釈はプレイヤーの皆さんに委ねています。

 キャラクターのアニメーションはもちろんですが、カティアの声には『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のクワイエット役などをやられていた、ステファニー・ヨーステンさんを起用したことも大きいですね。カティアは謎の言語を話す難役なのですが、見事に演じてくださいました。

――カティアとは言語の意思疎通ができないという、“非言語のコミュニケーション”にこだわった理由はありますか?

高橋:極限状況でのシチュエーションを想定した際に、言葉でコミュニケーションが取れすぎてしまうのは適切ではないのかなと。

 言語を使ったコミュニケーションは『どこでもいっしょ』ですでに取り組んだテーマだったので、今回目指すのは、言葉の通じない海外にいるような落ち着かない感じです。言葉が通じないなりのコミュニケーションのあり方を再現したいと思いました。

今までにないプレイ体験

――クリアまでの全体のボリュームはどれくらいになりますか?

高橋:最初のエンディングまで4~5時間ほどでしょうか。マルチエンディングなので、すべてをクリアする場合は、パズルが得意な人でもノーヒントだと15~16時間ぐらいかかるでしょう。

――先ほど40分間ほどプレイさせてもらいましたが、体感時間が違いましたね。もっと長い時間入り込んでいた気がしました。

高橋:プレイ時間とは別に、体感時間をすごく長く感じる人と、短く感じる人がいますね。VRのゴーグルを付けていると時間の感覚が変わってくるようです。ゲームの世界で味わう“緊張感”によって、プレイ体験はかなり濃密なものになっています。

――流血などの直接的な表現はないにもかかわらず、非常に恐怖心をあおられました。

高橋:ドッキリさせるのではなく、徐々にボルテージが上がっていくような感じで仕掛けを用意することで、想像力が働くような仕組みになっています。こういった不安感、緊張感が続くようなデザインは、VRの没入感が可能にしてくれています。

――本作に限らず、VRは"触らないとわからない"ところが難しいですよね。

高橋:そこに関しては、いまもまだすごく悩んでいるところです。自分の狙いどおりのゲーム性になっている反面、外から見ている人には伝わりづらい。ゲーム自体の仕組みとしては、パズルを解くというシンプルなものですが、そこから想像されるゲーム内容と、実際の体験が全然違うんです。

 パズルそのものよりはカティアとのコミュニケーションへの比重が大きいですし。説明しにくい結果、「カティアかわいい」という感想に集約されてしまうことも多くて……(笑)。

 また、VRというと「酔うから無理」というイメージを持たれている方も多いと思います。『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』はゲームデザインとして、酔わないように配慮しています。試遊会でもプレイして酔ったという方はいませんでしたね。

――これからの展開として、何か考えていらっしゃることはありますか?

高橋:“VRにおけるキャラクターとのコミュニケーション”みたいなものは他社さんもあまりやられていない分野です。普通に考えると、もっとあってもいい気がするのですが、今回『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』を作ってみて、とても大変だということがあらためてわかりました(笑)。

 自然で魅力的なキャラクターを作ろうとすると、それなりにアニメーションを増やさないといけません。キャラクター表現にコストを掛ける必要があるので、あまりそういった企画が出てこないのかなと思います。

 インタラクションがベースになっている作品はあまり多くないので、もう少し違った形でのパートナーとコミュニケーションできるようなものは、もっとやれることがあると思っています。

 とはいえ、まずは『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』をしっかりとアピールしていきたいと思います。カティアがすごくかわいいので、ぜひ皆さんにプレイしてもらいたいです。

(C)2016 AMATA K.K. / LL Project