ゾンビだらけでも怖くない!? ポップなノリで撃って撃ってぶん殴る、爽快で手ごわいゾンビシューター『ゾンビスープ』を先行レビュー!

まさん
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 マレーシアの小規模チーム・AeonSparx Interactiveが開発、Astrolabe Gamesがコンシューマ及びPC(Steam)で6月18日に発売を予定している『ゾンビスープ』。本作は、町中の人間がゾンビと化した町でバットや拳銃を片手に戦うトップダウン(斜め上から見下ろした視点)形式の全方位シューティングです。

 背筋も凍る恐ろしいホラーではなく、あくまでも爽快感重視の内容。明るいノリで、どことなくコミカルなストーリーが楽しめます。通常の戦闘はサクサクと気持ちよく、ボス戦は相手の動きを観察してじっくりと戦う手ごわいものとなっており、このジャンルが初めての人でも勝てるまでリトライしたくなる絶妙なバランスです。今回は先行プレイでわかったゲームの詳細と、担当ライターによる感想をお届けします。

町にはびこるゾンビに立ち向かう大学生・リッキーは、見た目よりもタフで頼れる男!

 高校を卒業したばかりのバックパッカー・リッキー。旅の途中で寝過ごした彼は、途中下車したエルプロスペローの町でアシュリーという女性と出会います。しかし、そこに現れたのはゾンビと化した人々でした。アシュリーを守るため、ゾンビだらけの町で戦うリッキー。危険がいっぱいのエルプロスペローで、ゾンビたちとの戦いが始まります。

 というホラーゾンビ映画あるあるな感じで始まる本作。訪れるロケーションも、いかにもな病院や地下鉄など、ホラーあるあるなシチュエーション。ゾンビがいっぱいのゲームと言うことで恐ろしいホラーを連想しそうですが、ご安心ください。全然怖くないです。なぜなら、本作の主人公・リッキーは頼れる男だから。

 彼はバットや斧などの近接攻撃でゾンビをボッコボコに殴り倒し、リロードはあるものの無限に撃てる銃で遠距離からハチの巣にしてしまうほど。いざという時のためのグレネードも持っていますし、基礎能力も対応力も高い!

 ゾンビを倒すとガトリングガンや火炎放射器といった弾数制限付きの特殊武器を落とすこともあり、それらを使うことでさらに無双できます。特殊武器は一度に1つしか持てないので、ガンガン使い捨てていけるのも最高です。ザコゾンビ相手に使いまくったあと、ボス戦前にセーブ。復活したザコゾンビを狩りまくり、効きそうな特殊武器を取り直してから挑む……なんて遊び方もアリ。とにかく主人公が前向きですし、武器も強い。だから、怖さよりも爽快感が勝るんですよ。来るなら来いって感じ!

 あと、ゾンビのデザイン自体もコミカルで子供向けのクレイアニメっぽさがあるのも、怖いと言うよりカワイらしさが勝って安心感がありますね。

 ボスの紹介テキストですらコミカル。臭いマグロで顔をひっぱたくよりも書くことがあるでしょ! いや、臭いマグロいやだけど……と心の中でツッコミを入れるようなノリが楽しい。ヒロインの名前も“アシュリー”ですし、なんとなく某有名ゾンビゲーくらいの頼れるタフさを感じるんですよね、主人公のリッキー。

 しかも、最初はオーソドックスなピストルを使う“初心者”クラスのみですが、ゲームを進めていくと、“ライフル”、“ショットガン”、“サブマシンガン”、“スナイパー”という新たなクラスも解放されてどんどん戦い方のバリエーションが増えていきます。このクラスを変えると、遠距離武器だけではなく近距離武器も変わり、相手に与えるダメージやリロード速度にも変化が。

 個人的には、オーソドックスな“初心者”クラスが安定して使いやすいと思いますが、どうしても勝てないならショットガンの火力に賭けたり、スナイパーで遠距離から狙ったりと、相手や状況に合わせて切り替えましょう。ただし、装備自体はセーブポイントとなるフリッジ(冷蔵庫)で切り替えられません。フリッジを見つけると別のフリッジにファストトラベルができる(ゲーム中でもツッコミが入るけど原理は謎)ようになるので、見つけたら積極的に開いてセーブするべし。

 もちろん、あくまでもこの手のジャンルのなかでは主人公が強めというだけで簡単なゲームではありません。そこは、やはり周囲のすべてに気を配る全方位シューティングです。移動しながら相手の方向に合わせて右スティックで照準を合わせる。回避ボタンでしっかり攻撃を避けるといったことが重要。こちらを眠らせるトラップなどもあり、油断はできません。

 ですが、理不尽ではないんですよ。こちらの体力も多めで余裕がありますし、ちょっとだけ室内に入ったあとすぐ後ろに下がって銃を乱射。扉を通ろうとするゾンビを一網打尽にするなど、地形や武器を使って一方的に倒せることも多め。即死トラップのうえに箱を置いて通れるようにするパズル要素もありますが、見ただけでわかるレベルです。適度な緊張感を保ちつつ、ゴリゴリ攻撃できる気持ちよいゲームですね。

 主人公が捕まえたゾンビの親玉・MCスカルの頭と、いつの間にか相棒ポジションで掛け合いしていたり、いかにもな悪の博士っぽい敵が出てきたりと、ストーリー全体に漂うB級ホラー映画なノリの良さも好み。ゲームとしてのバランスと、ストーリーのコミカルさがうまくマッチしています。ただただ突き進むだけではなく、生き残った町の人を護衛するミッションなどもあるので、ゲーム自体にも緩急が効いていますね。護衛といっても特定の地点に連れていくだけで、ゾンビが護衛対象を狙わないのも初心者向け。町の人がゾンビに混じって歩いているときもあります。そっちじゃない、こっち!

 ほかにもミッションには一般人がなにかを要求してくるものなどもありますが、最初は持っていくものがわからなくてももう一度話しかければヒントを教えてくれます。キーアイテムも、わかりやすく光っているので迷うことはないでしょう。「次へ」とか「こっちだ!」と道に書いてあるのでルートもわかりやすい。ゾンビがひしめく階下で探し物をしてこいと言われて「こいつ、ゾンビに食われてしまえ!」と思ったりもしましたが、ホラーだとこういう人騒がせなキャラって多いんですよね。ここら辺は、開発しているマレーシアのチームのセンスなのでしょうか。

 登場する回復アイテムも、普段聞いたことがない食べ物が出てきて文化の違いが感じられるのも興味深いです。ワインやビールなどを飲むと、回復はするけどしばらく画面がふらふらになるのは笑っちゃいました。よくよく考えるとシビアな状況ですが、シリアスになりきれない軽いノリでクスっときます。

 こいつ、ゾンビに食われてしまえ!

硬い、強い、あとひと押しの暴走がやっかいなボス戦は、手に汗握るガチな戦い!

 通常のステージ自体は、無心に銃を撃っていくことでガリガリと進めていけます。中盤以降でも、位置取りを考えながら戦えば、そうそう苦戦することもないでしょう。しかし、ボス戦はそうも言っていられません。たぶん、初見だと「強い! 手ごわい!」と思うかも。いわゆる全方位シューティングのような弾幕攻撃をしてきたり、即死に近い大ダメージの技を放ってきたりと、ヌルゲーではなくボスらしい難易度となっています。

 体力が残り少なくなると本気モードに入り、即死級の攻撃を放ってくるボスも。広範囲の攻撃は赤く表示されるので、相手の攻撃を見極めて適切なタイミングで回避していくことを心がけましょう。無理に攻めるよりも確実に攻撃を当てつつ、危険な技は早めに回避していくことが大切です。なんて言われなくてもわかっているとは思いますが、雑に回避ばかりしているとスタミナが減ってしまいますし、かといって攻撃もしっかり当てなくちゃいけない。この手のシューティングが苦手だと、かなり焦るかもしれません。

 ボスの登場演出も楽し気で見た目と相まってコミカル。そういった意味でホラーが苦手な人でも楽しめますが、ボスの強さ自体は別の意味で怖いですね。とはいえ、ものすごい弾幕のような攻撃も、画面中に飛び交うボムのような技であっても、よく見れば回避できるように作られています。弾幕の攻撃もそこまで早くないので、落ち付いていけば避けられるでしょう。

 あまりにも強くて挫折してしまうバランスではなく、何度も戦っていくうちに「初見だと強そうに見えていた」と思えるのがポイント。戦闘中にグレネードの補充アイテムや体力回復アイテムが出ることもあり、戦ってみると「あと少しで勝てる!」というところまで行きやすいので、リベンジしたくなります。

 それでも勝てないときは、道中にある“チャレンジ”をクリアして、新たな武器を開発するといいかも。チャレンジは、いわゆる条件付きのタイムアタック。条件さえ満たしていればどんな状況で挑んでもいいので、強い特殊武器を持ち込んでもいいですし、強力な近接武器でゴリ押すのも手です。よりダメージを与えられる武器を作り、ボスにリベンジしましょう。え、まだ、それでも勝てない? しっかり観察しましょう。チャレンジをクリアできる腕前なら、きっと大丈夫です。

すべての人を助ける必要はないようだけど、やっぱり見捨ててはいけない……?

 メインとなるストーリーは、いわゆる一本道。画面の指示に従って進んでいけば、迷うこともありません。道中では助けを求める生存者とのイベントが発生することもあり、メインの進行で必須になる人物もいれば、助けるかどうかで結果が変わる生存者も。

 人間の心理としては助けてあげたくなりますが、出口まで護衛するのが大変なこともあって、ときには無視したくなることも……。とはいえ、助けてあげれば良いことがあるかもしれません。なかには、助けてあげたのに態度が悪いような人物もいるかもしれませんが、いつか恩返ししてくれるかもしれませんし、見捨てることなんてできませんよね。

 お前、ほんとふざけるなよプランキー! 何やってんじゃい!! とホラー映画でやっちゃいけないような行動を取る人がいるのもお約束、お約束。生存者のために戻って戦うのも損ばかりではないですからね。武器の開発やクラスごとのアビリティを取得するのに必要なポイントもたまりますし、できる限り頼みは聞いてあげましょう。

 ストーリーを進めるうえで(おそらく)必須となるミッションもあり、生存者は助ければ助けるだけ良いことがあります。また、それらとは関係ない収集物も存在。集める必要はないのですが、やり込み要素として用意されているので、見つけたらゲットしておきましょう。もちろん、ゲームに慣れてないうちは最短で出口へ向かっても問題なし。ガッツリ遊びたい人は、道中にあるすべてのドアを明けて探索していける自由度もあります。

 見た目から入りやすくてカジュアルに遊べるゲームではありますが、中身は骨太。とくに、ボス戦のバランスは難しめに取られているのでやりがいがありますし、道中の探索も飽きさせない工夫があります。

 さらに、物語自体も気になるところです。すべての元凶と思われる怪しい男・セルゲイ博士のインパクトもスゴイ。彼が出た途端に世界観がゾンビ物から一気に変わっちゃうくらいにヘンテコです。そうした部分も含めて、雰囲気が明るめなんですよ。怖くなくて、楽しいゾンビゲー。こういうのもアリですね。

 見た目もポップですし、ゲームの中身も理不尽過ぎるほどの難しさではない。だからと言って簡単すぎない。基本はカジュアルに楽しめますが、締めるべきところはしっかりと締めるバランスです。ホラーが苦手な人でも、子供向けのアニメ映画をみる感覚で気軽に楽しめます。

 探索自体も迷わないつくりで、誘導もていねい。手に入る武器の種類も多く、群がるゾンビを相手に四方八方でたらめに撃ちまくるだけでも気持ちいい! スカッとするアクションシューティングを遊びたい人にオススメの1本です。

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