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『ファイナルファイト』駄菓子屋での連コインは元祖重課金? 小学生のおこづかいをみるみる吸い込んだ名作【メモリの無駄づかい】

染谷 広人
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 三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームを遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。

 何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。

 そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は、1989年にアーケードで稼働したベルトスクロールアクションの金字塔『ファイナルファイト』について紹介します。

『ファイナルファイト』とは

 ハガー、コーディ、ガイの3人が、誘拐されたハガーの娘・ジェシカを救出するために犯罪集団マッドギアと戦うベルトスクロールアクション。

 『ファイナルファイト』以前と以降で、ベルトスクロールアクションの基本構成が変わったと言われるほど、のちのゲーム業界に大きな影響を与えた作品です。

 1989年にアーケードで稼働したあと、さまざまなハードに移植。現在も Nintendo Switch、PS4、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Steam)でダウンロードできる『Capcom Arcade Stadium』のPack 2に収録されているほか、単品での購入も可能で、現在も遊べます。

1990年、僕らはおこづかいをかき集めて戦いに挑んだ

 自分が『ファイナルファイト』にどハマリしたのは、1990年。小学校中学年のときで、スーパーファミコン版の『ファイナルファイト』が発売される前のことでした。

 当時、友だちとよく集まっていた駄菓子屋に『ファイナルファイト』の筐体があり、そこで1日1プレイぐらいの感じで遊んでいました。

 しかし『ファイナルファイト』は小学生がプレイするには難易度が高く、1プレイだけだとステージ2のソドム相手にほぼゲームオーバー。

  • ▲ソドムのマサムネを拾って調子に乗っているところに突進されてやられるのがお約束でした。

 よくても1プレイではステージ3までしかたどり着けない日々。ゲームセンターでプレイしていたわけではないので、うまい人のプレイを見て学ぶこともできず、仲間うちで攻略情報を共有していました。そんなある日のことでした。

「俺たちこのまま『ファイナルファイト』に負けてていいのかよ。来月、みんなのおこづかいを集めてクリアしようぜ!」

 と、ヤンキー漫画が大好きな番長格のAくんが、『ファイナルファイト』に対して勝ち負けとか意味不明なことを言い始めたのです。そもそも小学生のおこづかいは、駄菓子屋でのおやつタイム、ゲームや漫画の購入資金に当てられるため、そんな余裕は……。

「おお! 俺たちの本気ってやつを見せてやろうぜ!」

 これを言ったのは自分。30年前の自分熱いな(笑)。そんなこんなで平成初期の小学生軍団Aくんと自分、そして勢いに巻き込まれたBくんの3人は、月初めにおこづかいをにぎしりめて『ファイナルファイト』との戦いに挑んだわけです。

  • ▲挑んだ時点でステージ3までしか知らない僕たち。無謀な戦いが幕を開けました。

みるみるうちに吸い込まれていくおこづかい。しかし僕らは泣かなかった

 『ファイナルファイト』は全6ステージ構成。当時の自分たちは最高でステージ3までしかたどり着いてない。つまりステージ4以降、難易度の高い後半ステージが未知なる世界だったわけです。

  • ▲ステージ4では床から火が吹くゾーンで、どんどん燃えてコンティニュー祭り。当然ボスのロレントにもボコられた。
  • ▲ステージ5は長いので道中はもちろん、ボスのアビゲイルにもボコボコ。みるみる減っていくおこづかいに、こっちのほうが顔真っ赤にして泣きそうだよ!

 当時のおこづかいですが、自分のまわりはだいたい1日100円か月2000~3000円ぐらいが多かったです。みんなこの戦いのため、それぞれ1000円ぐらい用意して交代制でプレイしていたんですが、まあ減っていく減っていく。

 考えてみてください。1~2時間でおこづかいの3分の1を失う恐怖を。今でいうとソシャゲで目当てのキャラが出ず、ガチャに重課金してしまう感覚に近いものがあります。

  • ▲ステージ6は敵の数が多すぎ! すぐに囲まれてボコボコにされ、コンティニューが止まりません。

 これだけコンティニューしていたせいか、ステージ6でAくんのお金が尽きて、残るはBくんと自分のみ。そんなときAくんが自分たちに言ったことは……。

「俺がついている! だから最後まであきらめるな!」

 いや、そんなこといいから家帰って残りのおこづかいかき集めて来いよと言いたかったですが、そこはグッとこらえました。クソッ! Aくんが番長格じゃなきゃ言ったのに(笑)。

 見た目は子どもたちの熱い友情、プレイを続けている人間は残り少ないおこづかいにハラハラ。まあ、それでもラスボスのベルガーへとたどり着きました。Bくんと自分も残金ゼロでしたが、ここで奇跡を起こせばクリアという少年漫画的な展開です。

  • ▲当然、現実は甘くありません。そもそもラスボス相手に1クレジットでクリアできれば、ここまで20~30回もコンティニューしてない。

「こんなところで俺たちは終わってしまうのか……」

 お前、途中から応援だけだったじゃねえかAくん。しかし、このときまさかのAくんが、そっと200円を差し出してくれたのです。

「俺、今週の週刊少年ジャンプをあきらめるよ! だから勝って!」

 まさかのAくんの隠し財産。番長肌でハガーしか使わないAくんよりも女の子に「勝って」と言われた方がテンション爆上がりだったけど、そんなヒロインは仲間うちにはいなかったなあ……。

 まあ、結果的にその200円のおかげでぎりぎりクリアできたわけですが。

  • ▲クリアして大騒ぎの3人組。日も暮れてきて駄菓子屋のおばちゃんに「うるさいから静かにしなさい。そして店を閉めたいから早く帰れ」と怒られました。

 なんだかんだありましたが、自分の人生のゲーム史上、クリア時に一番声を出して喜んだのは、このときの『ファイナルファイト』です。

 このあと仲よしずっこけ3人組は『天地を喰らうII 赤壁の戦い』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ』など、さまざまなベルトスクロールアクションをクリアしましたが、だいたい思い出話を語るときは、今でも真っ先に『ファイナルファイト』が出てきます。

 おそらくですが、自分のような経験をした人はほかにもいるのではないでしょうか? 今は協力プレイといえばオンラインが基本ですが、やっぱり直接顔を合わせてのプレイ経験に勝るものはないと思います。まあ、おこづかいがみるみる減っていく恐怖は、社会勉強という感じですかね(笑)。

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