『超探偵事件簿 レインコード』開発者インタビュー。発売後だから話せる裏話や今後のアドベンチャーゲームにかける思いを聞く

カワチ
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 スパイク・チュンソフトより発売中のNintendo Switch用ダークファンタジー推理アクション『超探偵事件簿 レインコード』。

 本作の企画の根幹を担うトゥーキョーゲームスの小高和剛さんと、スパイク・チュンソフトのプロデューサー・榊原昌平さんのインタビューをお届けします。

 なお、インタビューにはゲームに関する軽微なネタバレが含まれますので、ご注意ください。(※インタビュー中は敬称略)

2Dの『ダンガンロンパ』と並ぶ3Dの『レインコード』になってくれたらうれしい

――発売から約2週間が経過しましたが(インタビューは7月中旬に収録)、おふたりの現在のお気持ちからお聞かせください。小高さんはさっそくアニメ・エキスポに出演されていましたね。

小高:そうですね。時差のせいで発売直後の海外SNSはあまり見られなかったのですが、発売日は仲間の開発者がメールやLINEで「発売おめでとう」、「よくチャレンジした」といった労いの言葉を送ってくれてうれしかったです。

――榊原さんはいかがですか? 制作期間も長かったですし、ホッとできたのではないのでしょうか。

榊原:はい。「ようやく発売できた」という安堵が大きいです。

 また、発売後だからようやく明かせますが、第0章の仕掛けはネタバレにならないようにプロモーションに気を使いました。発売後にどんな反応があるのか気になっていましたが、すごく好意的に受け取られていてうれしかったです。

――第0章はインパクトがあっておもしろかったです。発売前は『レインコード』と『ダンガンロンパ』は繋がっているのではないかと予想している方も多かったですが、その読みは予想通りでしたか?

小高:新しいユーザーさんにもプレイしてもらいたいので、繋がっていないと明言してもいいかなと思ったのですが、それだと発売前の考察を潰してしまうことになるので、あえてなにも言わないことにしました。

 気持ち的には言いたかったのですが、その考察も発売前だからこそ楽しめるものなのかなと思いました。

――なるほど。そもそも『レインコード』は『ダンガンロンパ』とはまったく繋がらない新規IPとして企画されたものだったのでしょうか?

小高:はい。『V3』を作り終えたとき、『ダンガンロンパ』のシリーズが続くにしろ続かないにしろ、一区切りは付いたと思っていました。そこで新しい企画として前プロデューサーの寺澤といっしょに『レインコード』を考えたという流れです。

――『レインコード』の第0章について、生放送「(ほぼ)週刊『レインコード』通信」で『ダンガンロンパ』シリーズでやりたかったけどできなかったことだったとおっしゃっていました。詳しく聴かせてもらえますでしょうか。

小高:事前に発表している情報が本編で全部入れ替わるというギミックが作れたらおもしろいんじゃないかなと思いました。ただ、そんなことをすれば当然プロモーションがすべて台なしになるので、できないだろうなと思っていました。

 しかし、全部ではなくて半分程度でもインパクトは作れること、『レインコード』のテイストであれば可能であることがわかり、挑戦してみることにしました。

――半分程度でも十分にインパクトはありました。

小高:『レインコード』は最初の構想だと連作短編推理オムニバスみたいにしたいと思っていて、『ダンガンロンパ』よりも、よりエピソード形式が強い『逆転裁判』のようなものにしたいと思いました。そのため、最初にインパクトがあることがしたいなと思い、このような形になりました。

――アニメ作品ではいくつか同じ仕掛けが思い浮かぶものもありますが、ゲームでは珍しいですね。

小高:ゲームはアニメよりもプロモーションが大きいですし、今回は新規IPの新しいタイトルなので、事前情報から大きく変化するというのは危険な匂いしかしないですね(苦笑)。

――榊原さんはパブリッシャーとして今回の第0章の展開はいかがでしたか?

榊原:シナリオを読んだ段階で覚悟の上で進めていきましたし、社内の人間も「大丈夫」、「これで行こうと」と言ってくれました。そのため、プロモーションでは、後のことを気にせずに展開しました。

――第0章の内容についてもお聞かせください。列車を舞台にしたのはタイトルの元ネタになっている『オリエント急行殺人事件』のほか、西村京太郎さんのトラベルミステリー小説など、列車自体が馴染み深い題材だからでしょうか。

小高:そもそもとして今回の第0章のプロットが、『ダンガンロンパV3』のときに使おうとしたけど、ちょっと大掛かり過ぎてボツになったトリックなんです。そのままだと使えないけど、シチュエーションを列車に置き換えれば再現できると思いました。

 また、本作ならではの要素である“謎迷宮”にプレイヤーを早く行かせたいという気持ちもあり、すぐ事件が起きるようにしたかったんです。カナイ区で事件を起こしてしまうと、まずカナイ区の説明が必要になってしまうので、途中の電車で事件を起こすことにしました。

 ただ、チュートリアルにしては長くなってしまったかなと思っています。

死に神ちゃんはユーザーから嫌われるギリギリ一歩手前を狙った!?

――『レインコード』全体の質問になりますが、本作は特殊なカナイ区を舞台にした事件と、特殊な能力を持つ超探偵のキャラクターたちの活躍のどちらを最初に思いついたのでしょうか。

小高:異能力を持った探偵たちが活躍する連作短編をやってみたいと思ったのがスタートです。マンガのようにシリーズ化しやすいですし、『ダンガンロンパ』シリーズは制約が多いので、もっとシンプルにミステリーものを作ってみたいと思ったのがきっかけです。

 ただ、能力を持った探偵だけだとインパクトが足りないと思い、謎迷宮を作ったり、雨が降り続けるカナイ区のような設定も作っていきました。『ダンガンロンパ』を作ったチームなので、最終的には『ダンガンロンパ』っぽさも入ってきてしまい、最初に考えていたシンプルな構造というものはなくなりましたね。

――第0章で超探偵が1000人もいるとサラリと語られていてビックリしました。最初から作品の広がりを考えていたんですね。

小高:そうですね。シリーズ化できるかどうかはまだ分かりませんが、大風呂敷を広げといた方がいいかなと。

――それぞれの超探偵の能力はおもしろいものばかりですが、事件を起こす犯人側に能力を持たせなかったことにはどのような意図があったのでしょうか?

小高:『ライフ イズ ストレンジ』や『MURDERED 魂の呼ぶ声』のように、あの手この手でプレイヤーが事件の調査ができるといいなと考えたのが出発点だからですね。

 また、探偵以外にも能力が使える可能性があると、プレイヤーが考えなければいけないことの幅が広くなりすぎてしまうと思いました。

 今後シリーズが展開できたら、探偵がいないなかで事件が起きてしまうシチュエーションや、犯人が能力を使ったような普通ではありえない事件のシチュエーションもあってもいいかもしれません。ただ、今回は最初ということもあり、ルールを逸脱するようなパターンは使いませんでした。

――個々の事件はそれぞれの探偵がいなければ解決できないようなものになっていましたが、探偵の能力や事件のトリックは決め打ちで作ったのでしょうか?

小高:基本は決め打ちですが、ストーリーが長くなりすぎたので最終的に2章分ぐらい削りました。安楽椅子探偵のキャラクターなどを考えていましたが、章ごと丸ごとカットしてしまいました。ただ、制作に時間がかかりましたし、容量もあるので結果的には大正解だったと思います。

――今の時代のことも考えると、ちょうどいいボリュームだったのではないかと思います。

小高:次々にページをめくるビジュアルノベルのようなゲームではなく、じっくりアニメを見るような感じでやってもらう作品になっているので、集中力が続くのはこれぐらいの時間かなと思っています。

――主人公のユーマとヒロインの死に神ちゃんについてお聞かせください。ユーマは小柄ですが、これは死に神ちゃんとの対比で決まったのでしょうか。

小高:小松崎がプロットを見た段階で、「このキャラクターは背がちっちゃくておかっぱの髪がいい」と言ったんです。

――ユーマは福原かつみさんの芝居が、緒方恵美さんの苗木に寄せているように感じたのですが、小高さんは苗木を意識するようにディレクションしたのでしょうか?

小高:いや、していないですね。オーディションでは完全に声質で選びました。今回は男の子と女の子のコンビなので、男性声優を選ぼうと思ったのですが、なかなか男性であれぐらい高い声が出せる人が多くなかったんです。結果的にはピッタリとハマり、福原さんに演じてもらえてよかったと思っています。

榊原:ユーマのいちばん最初のデザインは目がギョロッとしていて目にクマがついているようなデザインでした。今のデザインにブラッシュアップしていくに連れて、彼の魅力が見えてきた印象があります。

 また、ユーマが物語のなかで成長していく芝居を福原さんが見事に演じてくれました。愛着が持てる声を吹き込んでもらえて、とても感謝しています。

――目にクマがあるというのは死に神ちゃんにとり憑かれているという設定からでしょうか?

小高:そうですね。『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎のようなイメージでしたが、「やっぱりこれは可愛いほうがいい」ということで、今のデザインに落ち着いた感じですね。

――続いてマスコットでもあり、ヒロインでもある死に神ちゃんについてお聞かせください。人を食ったような性格など『ダンガンロンパ』のモノクマを彷彿とさせる部分もありましたが、どういうヒロインにしようと思ったのでしょうか?

小高:モノクマは“人を食った性格”が8で“怖い”が2ぐらいで、セリフ上にもかわいさなんてほとんどないですが、外見や声のおかげでかわいらしさがカバーできていると思っています。

 一方の死に神ちゃんは“人を食った性格”は3ぐらいで毒舌もそんなに吐いていないかなと思っています。

 人間ではない独特な価値観を持っているのが死に神ちゃんの個性で、どのぐらいギリギリを攻められるかと考えながら作っていきました。かわいすぎても厳しすぎてもダメで、ユーザーから嫌われるギリギリ一歩手前を狙いました。

――ユーザー的には、謎迷宮の最後の、死に神ちゃんの犯人への仕打ちが心に来ますが、なぜこのような形にしたのでしょうか。

小高:死に神ちゃんが“死神”だからという理由が大きいですね。価値観が違うことで、ユーマとの差が出ればいいかなと思いました。必ずしも、ずっと仲よしこよしのバディというよりは、デコボココンビの2人の絆が少しずつ深まっていく様子を描きたかったんです。

――第2章でクルミと仲よくなるユーマに嫉妬する死に神ちゃんが可愛かったです。

榊原:そうですね。小高さんがすごいと思うのは、死に神ちゃんのウザい成分をもうちょっと入れちゃうと、本当に鬱陶しいキャラクターになってしまっていたであろうバランスで作られているところですね。

 鈴代紗弓さんのキャスティングもすごくよくて、魅力的なキャラクターに仕上がったかなと思っています。

――今では『ぼっち・ざ・ろっく!』の伊地知虹夏役でブレイクした鈴代さんですが、当時はどのような基準で採用されたのでしょうか。

小高:いちばんは声質ですね。死に神ちゃんは声を張るシーンも多いので、あまりハスキーになりすぎない声を選びました。

 シーンによって態度がコロコロ変わっちゃうような無邪気な感じにしたかったので、「こういうセリフには、この芝居で応えてくれそう」という予想ができる方よりも、新人の方のほうがいいなと思いました。

各章の気になるポイントについて質問!

――各章についてもお聞かせください。まずは第1章から、密室の謎を題材にしたことと、最初のパートナーがハララだった理由をお聞かせください。

小高:ミステリーの入り口として、ちょっと怖い感じもあったほうがいいなと思いました。

 また、街を歩き回る必要があるので、連続殺人になりました。ハララがパートナーになったのは、ユーマが探偵として自分から立ち向かうはじめての事件なので、頼れる人物にしたほうがいいと思ったからです。

――性別不詳にしたのはどのような意図が?

小高:ミステリアスでおもしろいかなと思ったんです。ここに深い社会性メッセージを特別に込めようと思ったわけではないですね。

――トリックに関してもいきなり凝っていて驚きました。

小高:途中までの展開だと犯人がわかりやすすぎるかなと思って、ひねりを加えました。ただ、1章にしては長かったので、殺人事件はひとつぐらい少なくてもよかったかもしれません。

――続いて、2章について教えてください。

小高:『ダンガンロンパ』はその場で出会った人間たちがコロシアイをする作品なので、今回は生活に根付いた事件を描いてみたかったんです。変装をして聞き込みをする要素も入れたかったので、女子校を舞台にしました。

――デスヒコについてお聞かせください。彼はハララとは逆に頼りないところもある愛すべきキャラクターですね。

小高:第1章のハララが頼りがいのある人物なので、第2章はユーマに突っかかってくる感じにしようかなと思いました。ただ、話を考えていくうちに対立というよりは友だちのような関係に落ち着きました。

 また、死に神ちゃんと探偵たちとの関係も章によって変えたいと思い、第1章は対等ぐらいだったので、第2章は死に神ちゃんにデレデレするぐらいにしようと思いました。

――3章はいかがでしょうか? ネタバレになるのでぼかしますが、予想外の展開で驚きました。どういった発想でこのような展開になったのでしょうか?

小高:これまでのストーリーが長くなったので、3章はコンパクトにまとめようと思っていたんです。過去に訪れた場所にもういちど行くような流れにすれば、制作のコストも抑えられるかなと。ただ、結果的には壮大になってしまいました(苦笑)。

 第3章はカナイ区がどういう街なのか、住人はどういうことを考えているのかを掘り下げたいなと。パートナーとなるフブキの能力は推理の調査だと活躍させづらいので、公安の追跡を振り切るために使うような形になりました。

――時を戻すという能力はとても強力だと思うのですが、シナリオを書く上で苦労はされましたか?

小高:1回戻した時間より、さらに前には戻せないという設定にしたので、それほど難しくなかったですね。あと、能力がとても強力なので本人は少し抜けたところのあるキャラクターにしました。そのため、そこまで頼りがいのある感じではなくなっています。

――フブキの天然という設定は能力を考えてから生まれたものなのでしょうか?

小高:天然のキャラクターで時戻しの能力を持つというのは最初から考えていたのですが、ここまで常識を逸した天然になるとは思いませんでした。『ダンガンロンパ』でも出せないキャラクターですね(苦笑)。

――第4章はいかがでしょうか? この章で心をえぐられた人は多かったと思うのですが。

小高:第4章では気合いを入れたトリックをやりたいという気持ちがありました。

 ただ、マップの広さや形状について、3Dで描いたからこそ「こういう方法もできてしまうのではないか」、「これは無理なのではないか」といった矛盾点なども見つかり、何度も作り直したりしましたね。

榊原:確かに事件の舞台となる部屋や廊下の大きさや長さなど小高さんと突き詰めながら制作していきました。

――ヴィヴィアは小高さんから見てどのようなキャラクターなのでしょうか?

小高:気だるくやる気のない感じを出したかったんですよ。『ダンガンロンパ』は議論しないといけないので、無口なキャラクターが作れません。『レインコード』だからこそ作れたキャラクターでした。

 4章に入るまで影が薄いですが、それはやはりつねに死と紙一重で生きているからで、彼に生きている感覚が薄いからですね。

 ボイスはもうちょっと元気がないものになるかと思っていましたが、梅原裕一郎さんが重低音な声なので、逆に幅が広がってよかったかなと思っています。

――続く第5章もとにかく驚いたのですが、話せる範囲で制作秘話をお聞かせ願えますでしょうか。

小高:連作短編で毎回の雰囲気を大きく変えたいというテーマがあったので、物語のはじまりとは異なる雰囲気になったらおもしろいと考えたのがスタートです。もちろん、全体の謎がありきの展開ですが、ああいった形にしたのは、ガラリと雰囲気を変えたいなと思ったからです。

――おふたりのなかでとくにお気に入りの章を教えてください。

小高:やっぱり第5章ですね。クライマックスのユーマと死に神ちゃんのやり取りやラストの展開など、『ダンガンロンパ』シリーズとは違う結末を描けて満足しています。

――結末の描き方がすごくよかったです。

小高:人はひとりではなにもできないということと、では、どうすればいいのか、どういう解決の方法があるのかということが描きたかったんです。テーマとしては愛だと思っています。

榊原:自分は第4章がすごい好きですね。ユーマの葛藤がしっかり描かれていて胸が痛くなりました。

――各章のキャラクターの名前はヨシコやワルナなどアイコン的でわかりやすいものになっていますが、これはミステリーを楽しんでもらうために、名前はわかりやすくしたのでしょうか?

小高:そうです。自分自身が推理小説を読んでいるときに、登場人物の名前を忘れてしまうことがあるのでわかりやすいものにしました。

――サブキャラクターのなかでとくにお気に入りのキャラクターはいますか?

小高:シスターは好きですね。「神に代わってぶっ殺すぞ」というセリフは気に入っています。小松崎はロボット研究員が気に入っているようですが。

――発売記念のイラストでも描いていましたね。第4章で登場したときはようやく会えたと思いました。

小高:キャラデザに異常に力が入っていますね。

榊原:自分はマーグローです。年齢を重ねたキャラクターは基本的に『ダンガンロンパ』では登場させることができないので、『レインコード』ならではかなと思っています。

――保安部のメンバーについてもお聞かせください。ヨミーは松岡さんの声もあり、印象的な人物でした。

小高:あそこまでゲスなキャラクターは『ダンガンロンパ』でも登場させられないと思います。自分の作った嫌なヤツのランキングでもトップになるぐらい嫌なヤツです。よく保安部部長になれたなと思います。

――徹底的に嫌な人間で描かれたのは続編に登場させる可能性なども考えてのことでしょうか?

小高:続編のことはあまり考えていないですね。敵側ということで出番がある程度は限られてくるので、そのなかで最大限に魅力を発揮するには、立ち位置をハッキリさせることが大事だと思いました。「こいつをなんとかしないとヤバい」と登場するたびに感じるキャラクターにしました。

――スワロがヨミーに付き従っていたのはどんな理由があったのでしょうか?

小高:打算かな(笑)。その後の展開で、初めて自分の愚かさに気がついたという流れです。

榊原:自分は仮面の男に注目してほしいです。ネタバレなので詳細は言えませんが、種﨑敦美さんの芝居がとてもいい味を出していて、どう考えても怪しい見た目なのに信頼して好きになってしまう魅力を持っています。

またカナイ区を物語の舞台として使いたい

――謎迷宮についてお聞かせください。『ダンガンロンパ』はサイコポップでしたが、謎迷宮はサイケデリックでキッチュな独特なイメージがあったのですが、どのようにイメージをスタッフと共有しましたか?

小高:背景デザインを担当しているしまどりるのイメージボードをスパチュン側に見せ、3Dにしてもらいました。

 最初は全体的にダークで灰色のイメージからスタートして、もっとコラージュっぽいものを取り入れていこうとか、古代文明みたいなものを入れてもいいんじゃないとか、ああでもないこうでもないと何度も作り直しました。

――謎迷宮を3Dで作るのは大変でしたか?

榊原:そうですね。3Dで立体にする作業もトライ&エラーの連続でした。発売の1年前にようやく完成したので、けっこうギリギリまでクオリティを追求しましたね。

――カナイ区もかなり大きいですが、こちらも作るのは大変でしたか?

小高:カナイ区は順調に制作することができ、かなり初期のころから2章まで完成していました。謎迷宮のほうがずっと手探りの状態で終盤までできていなくて、最後の1年はほぼその制作でした。

――謎迷宮のアクションに関して、難易度が易しめだと感じました。最初からこの難易度を想定されていたのでしょうか?

小高:そうですね。演出は派手そうに見えて操作は簡単なものを目指しました。『ダンガンロンパ』は難しいという声もあったので、謎解きに集中してもらえるようなバランスを考えました。今回は難易度設定もないので、より易しくしています。

――スキルを入手しなくてもクリアできるぐらい簡単だと思いましたが、スキルの要素を入れたのはユーザーに楽しんでもらうためでしょうか?

小高:それもありますし、やはり誰でもクリアできるものを作りたいという気持ちが強かったです。『絶対絶望少女』を作ったとき、無敵になる“ジェノサイダーモード”というイージーモードを実装したのですが、それでもクリアできないという声があったので、なるべく簡単にしたいと思いました。

――続編の構想についてお聞かせください。ゲームをクリアさせていただいて、いろいろなパターンの続編が展開できそうだと感じたのですがいかがでしょうか?

小高:続編に対してはいろいろな思いがあります。今回は手探りで作った部分が非常に多かったので。次はもっと効果的にスムーズに作れると思っています。

 せっかくカナイ区を作ったので1回だけでは終わらず、また物語の舞台として使うことができればうれしいです。

――なるほど。

小高:『ダンガンロンパ』のシリーズのIPも自分は別に終わったとは考えていないですし、自分以外の誰かが『ダンガンロンパ』を作る可能性もあるので、2Dの『ダンガンロンパ』と3Dの『レインコード』がスパイク・チュンソフトのアドベンチャーゲームの2本の柱になってくれたらいいかなと思います。

 現在の日本はコンシューマのアドベンチャーゲームの企画が通りづらく、インディーで作っている人が多いと思いますが、予算をかけたアドベンチャーゲームが人気になり、市場全体が盛り上がってくれるとうれしいいです。

 『ライフ イズ ストレンジ』や『デトロイト ビカム ヒューマン』のようなゲームが日本で出ないのは悲しいですし、作られるべきだと思います。そのためにも、「アドベンチャーゲームは儲かるじゃん」という結果をきちんと残さなければいけないなと。

――これまでアドベンチャーゲームを牽引してきたスパイク・チュンソフトも同じ思いでしょうか?

榊原:はい。仰るとおり、スパイク・チュンソフトはアドベンチャーゲームに強い会社で、国産のアドベンチャーゲームを世界に発信できる会社ではないかと自負しています。

 『レインコード』も手応えを感じていますので、ぜひ次に繋げていきたいなと思っています。まだ本作をプレイしていない人は、ぜひ致命的なネタバレを見てしまう前に、お手に取っていただき、一緒にこの感動の輪に入ってもらえるとうれしいです。

小高:『レインコード』はメジャータイトルのような全方向に完成度の高いゲームではないけど、刺さる人には刺さる、このゲームにしか味わえない楽しみは絶対的にあると思います。たまにはこういうクセの強い作品に触れてみるのもいいかもしれませんよ、と言いたいですね。

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