コーエーテクモゲームスの歴史SLG初の大規模リメイク! 『三國志8 Remake』の志を越後谷プロデューサーと石川開発プロデューサーにインタビュー

うどん
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 昨年、『信長の野望』シリーズが40周年を迎え、来年は『三國志』シリーズが40周年を迎える歴史SLGの大家、コーエーテクモゲームス。

 しかし意外なことに、過去のSLGシリーズが大規模にリメイクされたことはこれまでなかった。移植やHD化は幾つかあるものの、現在の開発陣で過去の名作を本気で作り直して欲しい……とファンが願うこと幾年月。今回、その初の試みとなるのが『三國志8 Remake』なのである!

 『三國志8 Remake』は、PS5、PS4、Nintenndo Switch、そしてsteamでの展開を予定しており、幅広いユーザーが楽しめそうだ。発売時期は、2024年初頭を予定しているとのこと。また、9/21から9/24まで幕張メッセで開催される東京ゲームショウ2023にもデモプレイ映像を出展し、来場者特典として『三國志8 Remake』特製“孔明扇”を配布するようだ。参加予定のある方はぜひ足を運んでみてほしい。

  • ▲『三國志8 Remake』特製“孔明扇”をもらって軍師気分に浸れて、かつ涼しい! 東南の風を起こすのだ。

 さて、突如と発表されたこのリメイク作品なのだが、なぜ今なのか、なぜ『三國志Ⅷ』なのかなど、さまざまな疑問についてプロデューサーの越後谷和広氏と開発プロデューサーの石川久嗣氏にお話を伺った。

  • ▲都市のグラフィックも精細に生まれ変わっている。※『三国志8 Remake』より
  • ▲イベントのワンシーンか? ※『三国志8 Remake』より
  • ▲張飛大好き越後谷和広氏。『三國志14』『太閤立志伝ⅤDX』に続きプロデューサーとして指揮をとる。
  • ▲開発プロデューサーとして活躍する石川久嗣氏。

なぜ今『三國志Ⅷ』リメイクなのか

――近年、『信長の野望・天翔記HD』『大航海時代ⅣHD』『太閤立志伝ⅤDX』と名作のHD化が続いていましたが、過去作の完全なリメイクは初ですよね?

越後谷:そうですね。こんなに気合を入れてリメイクするのは初になります。

――今回HD化ではなく、リメイク作品として『三國志8 Remake』を出すことになった経緯を教えてください。

越後谷:じつは今回のリメイク、そもそもは次の『三國志15』をどう作ろうかという話から始まりました。前作『三國志14』は君主プレイとしてご好評をいただきまして、次はじゃあ武将プレイがいいよね……という話が進んでいました。その開発スタートは『信長の野望・新生』の開発が終わったらと考えていたのですが、ちょっと期間的な問題などがありました。『新生』に戦力を集中している中で、『15』を並行して走らせることが難しいこともあり、そこで新作ではなくリメイクという形にしてはどうかということで、『三國志Ⅷ』が選ばれました。ちょうど『大航海時代ⅣDX』や『太閤立志伝ⅤDX』も出したあとで、「過去作の復刻もいけるのではないか?」という空気が社内に出来ていたことも大きいですね。

――名作のHD化はユーザー間でも話題になりましたが、社内での評判もよかったんですね?

越後谷:『太閤立志伝ⅤDX』はとくにそうですね。我々の予想を完全に超えた世間の反応でした。過去復刻作品で成功を収めたと確実に言える結果です。

――ですよね! ではそんな過去復刻が社内でも受け入れられる流れができたなかで、『15』の代案として選ばれたのはなぜ『Ⅷ』だったんでしょうか。『三國志』シリーズリメイクとなると、名作と名高い『Ⅴ』か『Ⅸ』が選ばれそうに思いますが……。

越後谷:そこはまず、先ほどの「次は武将プレイでいこう」という話があったからですね。武将プレイ作品というと『Ⅶ』『Ⅷ』『Ⅹ』『13』の4作品があり、そのなかの『13』は発売から近すぎるということで除外して。残り3作品でリメイクする価値を考えると、やっぱり売り上げ本数になります。とくに『Ⅶ』は当時初の武将プレイということで相当話題になりました。『Ⅷ』はその正当続編であり、個人的にもすごく好きな作品だったので今回リメイクに選ばせていただきました。

――武将プレイそのものの話になりますが、『Ⅶ』を初めてさわったときは衝撃を受けた記憶があります。『三國志』で『太閤立志伝』的な遊びというか、シミュレーションというよりロールプレイング的な楽しさだったなあと。

越後谷:そうですね。当時『三國志』シリーズはけっこう煮詰まっていたところがありました。『Ⅴ』は今でも評判のいい作品ですが、初代『三國志』から続く国盗りSLGとしては進化の限界だったと思います。次作『Ⅵ』でも、ものすごくいろんなチャレンジはしたのですが、逆にマニアックになり、新規ユーザーにとっては敷居の高いものになってしまいました。シリーズ全体の売り上げが伸び悩むなか、武将プレイができる『Ⅶ』はシリーズファンの方にも新規の方にも好評をいただき、大きなターニングポイントになりました。

  • ▲steam版『三國志V』より。システム面は比較的シンプルながら、スピーディーかつ奥深い戦略性でシリーズ屈指の高い人気を誇った『Ⅴ』。悪逆の限りを尽くす暴君プレイでも十分天下を目指せる絶妙なゲームバランスは、よいぞよいぞ。ちなみにスマホアプリ版ではDS版で好評だったやり込み要素「英雄バトルロード」も採用されており、こちらも超オススメ。
  • ▲steam版『三國志Ⅵ』より。特徴的な同時プロット戦闘を採用しているほか、存在感ある献帝、早熟型や晩成型など成長タイプによって大きく能力増減する武将たち、武将個々が持つ夢など、どこをとっても個性的なシリーズの怪作。

『Ⅷ』といえばやっぱり全年代シナリオ!

――『Ⅷ』も相当個性的な作品ですよね。『Ⅷ』と聞いてまっさきに思い浮かぶのは、50以上の年代が選べる全年代シナリオでした。あとにも先にも全年代シナリオを実現したのは『Ⅷ』だけなんですが、やっぱり労力的に大変な作業なんですよね。

越後谷:このシナリオは、『三國志8 Remake』の開発プロデューサーを務める石川が当時作ったものですが、知識とセンスはもちろん三国志の生き字引的な人間じゃないと作れません。言ってみれば『Ⅷ』そのものが三国志の百科事典のような存在。シナリオを見ているだけでも楽しいものですし、濃いファンの方ほど楽しめる要素じゃないでしょうか。そういう意味でも復刻の価値は大いにありますね(笑)。

  • ▲Steam版『三國志Ⅷ』より。184年から234年まで、50年に及ぶシナリオを網羅する恐るべき濃密さ(さらに『PK』では241年、249年、263年を追加)。シナリオと配置は見ているだけで楽しすぎて、実際のところ筆者は止められなくなって本稿の締め切りを1日遅らせた戦犯である。

――原作『Ⅷ』はもう20年も前の作品になります。三国志の知識的なアップデートもありますし、『REMAKE』版で配置の見直しはされているのでしょうか?

石川:もちろんです。何より武将数が当時の約600人から1000人に大幅に増えて、シナリオも追加されているので、ほとんどすべて作り直しですね。今回も私が作ったのですが(笑)。

――もともとの全年代シナリオと『PK』の3本で歴史はほぼ網羅していたわけで、そこからの追加となると仮想シナリオなんでしょうか?

石川:その予定です。どんなシチュエーションかはまだ秘密ですが、仮想シナリオの追加になります。

――仮想シナリオいいですね! 個人的には『信長の野望』より『三國志』の仮想シナリオのほうがよりドラマチックで楽しめる印象があります。『三國志14』のユーザーシナリオコンテストも盛り上がってましたし。

越後谷:地形的なものもあると思います。中国大陸が舞台なので、一地方の影響が他に及びやすい。話が広がりやすい。『信長の野望』の横長な日本地図だと、別の地方はいつも通りで局所的な話になりやすい印象があります。

リメイクで変わる『Ⅷ』の遊びやすさ

――ゲーム部分の話になりますが、そもそも『三國志Ⅷ』の魅力はどんなところだと思いますか?

越後谷:個人のドラマですね。君主プレイだと他の勢力とどう戦うかということに尽きるのですが、武将プレイは視点がとてもミクロですよね。誰かに会って仲良くなって、好きな武将を助けて……。だからシリーズを初めてさわるという方にもすごく遊びやすいですし、コアな方には自由度の高い遊びを提供できますし。それに加えて先ほどの百科事典的なボリュームもあって、幾らでも遊び続けることができるのが『三國志Ⅷ』の魅力だと思っています。

――越後谷さん自身も当時かなりプレイされたのでしょうか?

越後谷:じつは当時はかなり忙しい時期で、そんなにやり込めなかったです……。シリーズ自体はずっと遊んでいたのですが、開発に関わるようになったのも『13PK』が初でした。それ以前は主に『無双』シリーズの開発に携わっていましたね。

――小笠原さん(小笠原賢一:『信長の野望・創造』及び『新生』プロデューサー)も『無双』シリーズから来ましたし、似た経歴になのですね。

越後谷:そうですね。シリーズが40年も続いていくなかで、そういう外から人を入れるというか、制作陣の世代交代、新陳代謝はやっぱり必要で。今回も開発の中心は若手になっていて、ベテランがそれを助けるという体制になっています。ちなみに私個人でいうと、『無双』以前にも三国志作品に関わっていたことはあって……私の初めての仕事が『三國志英傑伝』のすべてのメッセージを作ることでした。とにかく三国志の漫画や小説を読みまくってセリフを考えました(笑)。

  • ▲steam版『三國志英傑伝』より。ステージクリア制のいわゆるシミュレーションRPGとして描かれた三国志作品。初代『英傑伝』のほか、『孔明伝』『曹操伝』と続いた。史実ルート以外にも復活の関羽、生きていた曹操、孔明に謀反そそのかす馬謖、魔王孔明など、外連味あふれるIFルート展開が語り草の名シリーズである。

――そんな『三國志Ⅷ』ですが、リメイクにあたってとくに変わるところはなんでしょうか?

越後谷:一番変わるのは戦闘部分ですね。もとの戦闘部分はテンポが悪かったというのは指摘されているところで。ターン制の戦闘という大筋は変わりませんが、かなり遊びやすくなるように大きく作り直しています。じつはチームNINJAの安田(安田文彦、『仁王2』『Wo long』プロデューサー)は『三國志Ⅷ』がものすごく好きで、戦闘部分を必ず直すように言われました(笑)。

――では、とくに力を入れている部分は?

越後谷:ボリューム感ですね。歴史SLGって長く遊べるべきだと思っています。スルメのようにずっと嚙み続けて、いつまでも味わえる。それが歴史SLGの本質のひとつであるべきです。具体的に言うとイベント数であるとか、さらに追加したシナリオ数であるとか、ワンプレイの濃度をとにかく高めたく思っています。とくにイベント数は過去シリーズでも最大級のものになるのではないでしょうか。武将プレイですから、専用イベントも汎用イベントも、とにかくたくさんあったほうがいい。ゲーム自体のテンポを改善しつつ、ボリューム感は増してもらうというだいぶハードルの高い要求を開発陣にはお願いしていますね。

  • ▲Steam版『三國志Ⅷ』より。元祖『Ⅷ』での戦闘シーンは、補給線の概念を導入したターン制バトルで展開された。細やかな戦術が楽しめた反面、戦闘時間が長いという不満も……。これが『三國志8 Remake』ではどう改善されていくのか、今後の情報に注目したい。

――ありがとうございます。それにしてもHD化の流れときて、今回初の大規模リメイクときて、過去作の復刻の流れが来ていますよね。1ファンとしては是非売れて、この流れが止まらないでくれればと思っています。

越後谷:そうですね。私なんかここ最近は復刻職人のようなポジションになっていますが、過去の名作はHD化やリメイクを可能ならしていきたいですね。歴史SLGって古い作品でも面白さそのものは色あせていないですから。でも、やっぱり今遊ぶと操作性やグラフィックがどうしても厳しいものがあって。あれやこれや作り直したいのですが、とりあえず今の流れが続いてこその話ですし、制作するにしても当時の売り上げの強い順にはなると思います。

――大いに期待しておきます。逆に未来の話なのですが、先ほど最初は『15』として動いていたという話がありましたが、これは逆に言うと2024年度に『15』は出ないということなんでしょうか? 最初、24年初頭に『三國志8 Remake』が出るとお聞きしたとき、ああ、じゃあシリーズ40周年となる25年に満を持して『15』を出すのかな、と思ったのですが……。

越後谷:そういうわけではないです(笑)。単純にまだ『15』がどうなるか、誰がプロデューサーをやるかも決まってはいないのです。まずは今回『三國志8 Remake』が出てからの話ですね。

――なるほど! では最後に本作に注目しているユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。

越後谷:今回はリメイクということですが、新作と同じレベルで作り込んでいます。是非そのボリューム感を楽しんでいただければと思っていますので、よろしくお願い致します。

石川:『Ⅷ』をプレイしていただいた皆様にはもちろん、最近の三國志シリーズを遊んでいただいている皆様にも楽しんでいただけるように制作しています。是非、ご期待ください。

  • ▲武将グラフィックももとの作品から一新されているほか、シリーズ過去最大級の収録ボイス数も謳われている。※『三國志8 Remake』より

 というわけで初報インタビューとなる今回は、なぜ今『三國志8 Remake』なのか。どんな部分が変わるのか。その概要をお伝えした。まだ細かなシステム部分は未公開となっており、今後の続報にて判明次第、当編集部もさらなる情報をお伝えしていく予定である。乞うご期待!!

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