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『SOUL COVENANT』レビュー&インタビュー。“死”を自分のものとして追体験するダークな世界観と、ヒーローになりきるプレイ感が融合【TGS2023】

まさん
公開日時

 Thirdverseが手掛け、2024年初頭にMeta Quest2/Steam/PlayStation VR2で配信予定の新作VRドラマチックアクション『SOUL COVENANT(ソウル・コヴェナント)』。

 東京ゲームショウ2023のThirdverseブース(9ホール09-E23)に展示された特別バージョンの試遊レポートと、開発者のインタビューをお届けします。

 本作は死闘感×感情体験をコンセプトに、世界の命運をかけた戦いが描かれる近未来SFアクションです。

 ディレクター/シナリオライターの下川輝宏氏をはじめ、コンポーザーの光田康典氏、プロデューサー/イベントディレクターの岡村光氏、エグゼクティブプロデューサーの鳥山晃之氏と、かつてPS Vitaで展開していたダークファンタジーアクション『SOUL SACRIFICE』シリーズを手掛けたスタッフが再集結。

 キャラクターデザインに松尾省吾氏を迎え、VRという新たな形で死の追体験を感じられる没入感の高い作品となっています。

巨大な怪物に立ち向かうヒーローのような興奮と、強烈な“死”の体験

 今回の体験版では、鎌のような武器を持って巨大ボスとの戦う一連の流れが楽しめました。体験できたのはPlayStation VR2版でしたが、VRと機械的なSF感も相性良し。ヘッドセットを被った先に広がるのは、もはや別世界です。

  • ▲すでに操作説明の時点で期待感を煽ってくれます。VRヘッドセットという未来的なデバイスを介しているので、世界がデジタルに切り替わっても違和感がないんですよね。

 ナビゲーションキャラクターの人工知能・イヴ(Eve)に導かれて戦場へ降りると、そこはすでに仲間たちが戦っている真っ最中。仲間たちの遺骸から作られたという機械的な鎌を武器に、敵をバッサバッサと薙ぎ払う!

 と行きたいところだったのですが、なにぶん初めてなので最初は相当なへっぴり腰で鎌を振ってました。たぶん、外から見たら情けなく映ってそう。VRだと、敵がかなり大きく見えてつい後ずさっちゃうんですよね。

 右手と左手の両手でしっかり握ってから振るという鎌ならではの戦い方も独特。鎌だと、どう振ればカッコ良く戦えるのかちょっと悩みましたね。

 漫画などで戦っているのを見ているのと、実際に振ってみるのでは大違い。だんだん、慣れてきて自分でも「カッコ良く鎌を振れたんじゃないかな……?」なんて考えながら戦っていました。

 敵味方が入り乱れるリアルな戦場ではありますが、通常の敵自体はそこまで激しく攻撃してこないので安心。仲間たちも頼りになります。

 左手を伸ばして、倒した敵が落とす青いモナド(経験値らしい)を吸うというシステムがあるのですが、最初は全然敵を倒せず仲間たちのおこぼれを吸う情けないプレイに。

 これはいけないと、遊びながら積極的に向かっていった結果、自分でもどんどんカッコ良く立ち回れるようになりました。

 移動自体は左スティック、カメラは右スティックで動かせるので、慣れてくれば位置取りも問題なくできます。

 当初は草刈りみたいな動きで鎌を振っていた自分も、ボス戦の終盤になる頃には思ったように動かせるようになり、回避しながら鎌を縦横無尽に切り付けることが出来ました。

  • ▲武器の位置を確認して、自分の両手でしっかり確保。倫理観に訴えかける巨大で不気味な化物に対し、自分の手で武器を振るう感覚はVRならでは。

 SF的なヒーローごっことでもいうべき動きが多く、そうした点でも没入感が高いですね。

 エネルギーが溜まると“デモニックバースト”というビームのような必殺技を放てるのですが、この動作もいちいちカッコ良い。画面に映っている左手の付け根に右手を合わせ、ボタンを押してエネルギーを注入するんですよ。

 もちろん、動作はちゃんと自分の体を動かして行います。まさに、ヒーローの必殺技モーション。

 本当に自分の肩に近い位置まで右手のコントローラーを合わせてから放つので、自然と画面内のキャラクターと同じポーズになりますし、必殺技を放っている気分に。これがもうキモチイイ! 手のひらからビームが一直線に伸びていく! ロマンあふれる技ですよ!!

  • ▲極太のビームが手のひらから敵めがけて発射されるので、本当に自分が撃っているような錯覚を抱くかも。

 何かを行うときに片手だけ動かすVRゲームはありますが、本作はあえて両手をどちらも使わせることで、本当に自分がその世界にいて実際に行動しているという感覚がより強いです。

 扉を開ける時も、両手を使って取っ手を捻るので気持ちが入りますね。些細な演出なのですが、これが雰囲気を盛り上げてくれるのです。

 大きすぎて、見上げないとすぐ全体像が見えなくなる巨大ボスもド迫力。懐に潜り込んでガンガン切り付けたり、相手が口からはいてくるビームに怖気づいて逃げ回ったり、実際にダメージを受けてしまいそうな恐怖感と戦いつつ、なんとかボスを撃破してきました。

 しかし、勝ったと思ったのもつかの間、どうやら人間としての意識が残っているらしく……なんと、直接語り掛けてくるんですよ。ここで、ボスにトドメを刺せないまま主人公が葛藤し始めます。いや、絶対ワナだって。ワナだってコレは!

 そう、本当にワナでした。情にほだされた結果「いた……だき……まぁす……」のひと声とともにガブリ。哀れ、主人公は丸のみにされてしまいました。VRで丸のみにされると本当に食べられているわけじゃないのに、ちょっとヒヤッとしますね。

 もっとも、丸のみなのでグロさはなく残酷な表現が苦手な方も安心です。

 バクっと食べられたところで、もう自分は助からないという無慈悲な通信が。敵の胃(?)のなかに取り残されながら、生存は絶望的だから“輪廻デバイス”なる装置だけは守れという通信だけが入る世界の無常さを噛みしめつつ、試遊版は幕を閉じます。

 ゲームとしては体感20分ほどの内容なのですが、かなり濃密な体験でした。あえてVRで死を体験させる行為も、死の追体験という『SOUL SACRIFICE』を思わせるダークな懐かしさがありましたね。

 一般日は整理券が必要ない試遊枠も用意されているので、気になる方は体験してみてください!

『SOUL SACRIFICE』ファンの熱狂的な活動も後押しになった『SOUL COVENANT』

 会場では、本作を手掛けたキーマンである岡村光氏と、下川輝宏氏にお話をうかがうことができました。

 『SOUL SACRIFICE』シリーズのファンはもちろん、新作のVRアクションとしても注目の本作。現在お話しできる範囲で、ゲームの見どころや武器の仕様などについて聞いたので、ぜひこちらもご覧ください。

  • ▲左:プロデューサー/イベントディレクターの岡村光氏、右:ディレクター/シナリオライターの下川輝宏氏(インタビューの文中は敬称略)。

──『SOUL SACRIFICE』は魔法アクションとして中距離から遠距離で戦うゲームでしたが、今回は近接主体のゲームだと感じました。これは、VRであるということが大きいのでしょうか?

下川:そうですね。VRで剣劇アクションというのは企画当初から決まっていました。

岡村:もともと、Thirdverse自体が剣劇アクション(『ソード・オブ・ガルガンチュア』『ALTAIR BREAKER』)を出しているので、まずそのノウハウをベースに魅力的な世界観を乗っけようということでプロジェクトがスタートしています。

──X(Twitter)では10年間『SOUL SACRIFICE』を語り継いでくれた方々のおかげだという発言がありましたが、具体的にどのような活動があったのですか?

下川:『SOUL SACRIFICE DELTA』が出てから10年近く経ちますが、その間も断続的にファンレターをもらっていて、最近も海外の方からお手紙をいただいたんですよ。

 人数は多くないのですが、熱狂的なファンの方たちの声は届いていたので、そういった方々の声に応えたいという想いは、僕も岡村さんも鳥山さんも共通してありました。

岡村:毎年、『SOUL SACRIFICE DELTA』がリリースされた3月の頭の時期になると、ファンの方が集まってSNSでイベントをやってくださったり、二次創作の絵を挙げてくれたりといった活動をしていただいています。

 年1でそうした活動をして繋げてくださったのも、今回の作品が出るうえでの力の1つになったと思います。

──実際に遊んでみると、世界観的にも救いのないダークさがあり『SOUL SACRIFICE』の流れを感じられました。

岡村:『SOUL SACRIFICE』は、下川さん的に救いがある話しなんですよ。

下川:世間的にはどう受け取られたかはわからないのですが、僕はとても救いのある話を書いたつもりでした。そういった意味では、変わらない魂みたいなものは同じだと思っています。

──生贄と救済を選択できる要素も特徴的なゲームでしたよね。今回も、そうした要素はありますか?

下川:今回は、選択の要素は入れていないですね。

岡村:ファンタジーからSFになって違う部分は多いのですが、下川さんらしい要素としては武器があります。

 武器の設定は、とくに『SOUL SACRIFICE』が好きな方は熱く感じてもらえると思いますし、そうではない方にもなかなかおもしろい設定だと思ってもらえるのではないでしょうか。

下川:死んだ仲間の数だけ武器が増えるという設定なんですよ。

岡村:試遊版で手にしていただいた武器にも、そういった台詞がありましたよね。前に死んだ仲間の体から武器が作られているという。

下川:物語を進めていくと、ほかの仲間も死んで新しい武器が手に入っていくんです。

──そうなると、試遊版で使えた鎌以外の武器も使えるんですね。

下川:二刀流ができるようになったり、もっと遠距離に攻撃できたりするような武器も増えます。

──試遊版で出来たアクションは、まだまだほんの一部と?

下川:そうです。基本的には武器ごとにアクションが増えていき、二刀流であったり、武器を振ることで衝撃波が出たりといった形でアクションのバリエーションが増えていきます。

──二刀流はカッコいいので使いたいですね。

岡村:VRだと、二刀流や両手持ちが直感的ですよね。だから、二刀流にすることで武器が変形するのは当初からアイデアとしてありました。

──ちなみに、『SOUL SACRIFICE』のファンがニヤリとするような要素は仕込まれていますか?

下川:あります。たとえば、この試遊版で声を聴いてもらえたらファンがニヤリとするのではないでしょうか。

 それから、ラストで死を追体験するような場面もありますね。死の追体験自体が『SOUL SACRIFICE』のキーワードでもあったので、そうした意味でもニヤリと出来ると思います。

岡村:あとは、今回も光田康典さんに楽曲をお願いできたのでファンの方々には喜んでいただけるのではないでしょうか。

──ほかにファンが気になるところとしては、本作はVRでプレイヤー=自分ですよね。衣装やアバターのカスタマイズ要素は?

下川:衣装は数パターン用意しています。マルチプレイだと、周りのプレイヤーが着ている衣装も見られますよ。

──『SOUL SACRIFICE』はマルチプレイのハンティングアクションでしたが、本作はVRということで繰り返し遊ぶタイプではないのでしょうか?

下川:いえ、マルチプレイもできますよ。敵が落としたアイテムで自分を強化していくサイクルにもなっています。

岡村:アクションゲームではあるのですが、『SOUL SACRIFICE』と同じように、何度も遊んで経験値を貯めていけばキャラクターが強くなります。だから、アクションが苦手な方でもクリアしていけるものになっていますね。

──試遊版では手を伸ばして拾える青いモナド(結晶のようなもの)がありましたが、アレが経験値なのですか?

下川:そうです。基本的には経験値に紐づいています。試遊版のラストではボスを倒したあとに黄色い結晶が出ていたと思いますが、あれはゲーム的に一番美味しいレアアイテム。レア装備のための素材に近いものです。

──VRでも、思っていたよりハンティングアクション的な要素があるのですね。

下川:ただ、コンシューマーゲームと違って長時間プレイできないので、その辺の配慮はしながらハンティングアクションのエッセンスを入れています。

 なるべくストレスがかからない範囲での時間を調整しつつ、ハンティングアクションとしてのおもしろさの中核は残しつつという形ですね。

──自分は、会場だとどうしても周りを気にして縮こまってしまいがちだったのですが、家庭で遊ぶ時は思いっきり体を動かしてプレイすると楽しそうです。

岡村:ぜひ、気にせず遊んで欲しいです。

下川:コンセプトが“ごっこ遊び”なんですよ。少年漫画などで必殺技を使うポーズなどをカッコ良くやってもらうのがコンセプトなので、会場だと周囲が気になってしまうかもしれませんが、家では人目を気にせずそういう風に遊んで欲しいです。

──現状で、完成度的にはどれくらいなのでしょうか?

岡村:完成度自体は、まだ絶賛制作中と言うところですね。リリース自体は、来年のなるべく早い時期を目指して開発中です。

東京ゲームショウ2023開催概要

【開催期間】
 ビジネスデイ……9月21日~22日 各日10:00~17:00
 一般公開日……9月23日~24日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)2,300円(税込)
※小学生以下は無料

※今回プレイしたバージョンは試遊用に調整されたものであり、製品版とは異なる場合があります。
© Thirdverse, Co., Ltd.

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