売れなかったD3Pのあるゲームを原田勝弘氏&松山洋氏&林克彦ファミ通代表が辛口分析! TGS屈指におもしろかったこのステージをD3Pファンがレポ
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- まさん
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9月21日~24日にかけて、千葉県・幕張メッセで開催中の“東京ゲームショウ2023(TGS2023)”。2日目となる22日、ディースリー・パブリッシャーのブース(01-S01)において“業界ご意見番が斬る!”大江戸ローグライクアクション『Ed-0: Zombie Uprising』と題したトークショーが行われました。
登壇者は、バンダイナムコスタジオの原田勝弘氏。サイバーコネクトツーの松山洋氏。KADOKAWA Game Linkageの林克彦ファミ通グループ代表の錚々たる3名。D3P側が提示した“ゲームの出来はそこまで悪くないのに、なぜ、ここまで無風なのか!?”というトークテーマを飛び越え、見ていてハラハラするほどの鋭い切り口で『Ed-0:Zombie Uprising(以下、Ed-0)』をボコボコに。業界に関する気になる話題も飛び交い、じつは『Ed-0』だけではなくさまざまなタイトルにおいても当てはまるところのあるトークイベントでもありました。
すでに動画でも公開されていることと、別のメディアでも記事が上がってるので、ここではSIMPLE時代から『地球防衛軍』シリーズに触れ、@SIMPLE DLシリーズなどのダウンロード系SIMPLEシリーズも購入。『密室のサクリファイス』などの脱出系作品や『しあわせ荘の管理人さん。』といったキワモノまで、ディースリー・パブリッシャーが出す作品が好きで買ってきたファンである自分が、ファンとしての目線から気になる話題を取り上げていきたいと思います。
“なぜ『Ed-0』が売れないのか?”を3人がバッサリと斬る!
“なぜ『Ed-0』が売れないのか?”というテーマから始まったトーク・セッションでは、「言いたいことがたくさんある」という松山さんの発言にもあるように、何やら危険なトークが始まりそうな印象からスタート。
台本なしのガチンコであることもあり、歯に衣着せぬ本音のトークは、かつて20年ほど前までのTGSでは名物だった“危険なクリエイター・トークバトル”を思わせます。当時ゲームショウ恒例の人気企画としてあったのですが、こぼれ話が危険すぎたのかいつの間にか消えたんですよね、“危険なクリエーターバトル”。
今回のセッションは、そんな往年のコーナーを思わせる貴重なものだったと思います。サンキュー、ディースリー・パブリッシャー。
検索すると出ると思いますが、今見ると怒られそうな発言も多いコーナーだったので気になる方は検索で過去の記事を読んでみてください。脱線してしまいましたが、そんな危険球ギリギリな内容が飛び交ったトークセッション。最初に、いきなり世には出ない売上に関する社内データを開示したのにも驚きました。ステージでも指摘されていましたが、これ世に出していいの!?
林さんは「事前にディースリー・パブリッシャーさんから、本来はグローバルな欧米をターゲットにしているゲームではある」と聞いていたものの「Steamでも海外のほうが売上が多い」と分析。それに対し、原田さんも松山さんも「(Steamで海外より日本が売れることは)まずない」と同意しています。林さんは「日本よりも海外で売りたいのにリーチしていない。そこにコンセプトエラーが生まれているのではないか」とバッサリ。
そして、ここからどんどん話の切れ味が増していきます。じつは、本作のプロデューサーは原田さんの元部下。同じバンダイナムコのグループ会社であるディースリー・パブリッシャーに行って本作を販売したものの、売れなくて……との相談を受けていたそうです。だいぶプレゼンを受けたものの、結局パッケージすら開封していなかった原田さんは、「開封させる気にさえさせなかった時点で問題がある」とピシャリ。
「こちらの興味がゲームにまで届いていない。興味を引く評判が聞こえてこなかった。高難易度が強調されていてD3P作品っぽくないと思ってしまった」と続け、実際に遊んでみた松山さんも「優先順位としては低かった」と強調。本作を楽しめたという林さんも「積極的に食指が動くゲームではなかったのが実態かもしれない」と、3人の中では大人しめではあるが、見ていてハラハラする議論が展開していきました。
これはトークセッションを見ていた私の感想なのですが、お三方が話していた内容がD3Pファンの自分としても納得できるんですよ。D3Pの作品は『地球防衛軍6』のように高評価でクオリティが高いものもたくさんあります。逆に、B級なタイトルでもD3Pでしか遊べない作品も多く、ほかにない魅力があるのです。林さんも「一点突破がすごい。突出した魅力があって手に取ってしまう」と言っていたのですが、D3Pらしい色は確かにおバカゲー寄り。
ゲームのタイトルに『夏色ハイスクル★青春白書 ~転校初日のオレが幼馴染と再会したら報道部員にされていて激写少年の日々はスクープ大連発でイガイとモテモテなのに何故かマイメモリーはパンツ写真ばっかりという現実と向き合いながら考えるひと夏の島の学園生活と赤裸々な恋の行方。~』みたいな、尋常じゃなく長い名前をつけちゃったり、『お姉チャンバラ』シリーズみたいな“テキスト的な意味でタイトルはキワモノだけどじつは良作”、みたいなゲームを無意識に求められているのかなと。
「『Ed-0: Zombie Uprising(エドゼロ ゾンビアップライジング)」はバカゲーに寄っていなくて真面目に作り過ぎて真面目に売り過ぎた」という話もこのステージでは出ていたのですが、業界の一線で活躍する原田さんや松山さんらしい指摘だと感じられました。
『Ed-0』というゲームに到達できていない。認知させて買おうかという気にさせてない
「『Ed-0』というタイトルが読めない」という3人のツッコミを皮切りに、“売れなかった理由”は、マーケティングについての話題へ。そこで原田さんは「認知させたあとに買おうかという気になっていないのが問題」と指摘。
Steamやamazonのカスタマーレビューがスライドで提示されたのですが、林さんが「良いも悪いも存在していることが知られていない」と言いましたが、まさにピッタリの数字です。筆者もよくSteamを利用するのでわかるのですが、正直に言ってしまうと、本作よりも売れているインディーゲームは数多くあります。会場や配信で見ていた人たちの中にも驚いた方はいるのではないでしょうか。
その点に関して原田さんは、「マーケティングとパブリッシングが強いバンダイナムコエンターテインメントでプロデューサーとして第1線を張っていた人が、D3Pに行って同じやり方をやってしまったのかもしれない」という指摘をしていました。「D3Pは(バンダイナムコエンターテインメントとは)売り方、攻め方が違うので、逆にD3Pからバンダイナムコに移ったのなら上手く行ったかもしれない」と語ります。
その原田さんの意見に、林さんも「どういうフックが必要なのかがちょっと置いてけぼりだったのかもしれない」と同調し、松山さんは「理屈で物を作っても誰にも届かないものの典型だなと。あと数時間のプレイですが、プレイした上で言うと単純に不出来ですよ。ちゃんとアクションゲームとしても成し遂げることができていない」と厳しい言葉が。
さらに、キーアサインに問題があることの一例として同じ△ボタンに“拾う”と“クナイを投げる”が割り振られていることを指摘。このことはチュートリアルを遊んだ時点でわかることで、15か月間のアーリーアクセスがあったにも関わらず放置していたことを身振り手振りを交えて指摘していました。
そんな中、「ボスにやられると潜り直してまたやり直すところとか、ロックオンのシステムとか、もっとやりようがあるとは思いますが、不思議な中毒性はあった」と林さん。「万人にはオススメできないけれど、ローグライクとして完全によくできではないけれど、だからこそ楽しめる」とフォローも入っていました。
しかし、松山さんの指摘は止まらず。「メインビジュアルのかわいいニンジャの女の子で遊んでみたいと思うじゃないですか? 思いますよね? でもすぐに遊べないんですよ!!」と指摘。この指摘に筆者のそばからも「えっ、そうなの?」という感じの声が上がっていました。
「けっこうゲームを進めないと動かせない。そういうところからお客様が望むことに応えられてない」という松山さんの勢いには、会場からも思わず笑いの声が漏れていました。「パッケージの真ん中にあるやつが最初からいないってことでしょ? それはアカンって! パッケージの真ん中にいる女の子がキャラセレクトにいないってことでしょ?」と応える原田氏に「3体いるキャラクターを最初から選べるようにするという改善は今すぐできる」と続ける松山氏。
メインビジュアルにカワイイ女の子を置くというのは、確かに納得できる話です。メディアもメインビジュアルに当たる“アイコン”に設定する画像はこういった点を意識します。例えば、この記事のアイコンはこうです。
中にはこういった画像を設定することもあります。例えばコレがシリーズもので、有名な敵ボスキャラに圧倒的な人気がある場合など。
3つ目のこちらも意図はわかっていただけるのではないかと思います。ですが人によってはちょっと狙い過ぎと言われるかもしれませんね。また、アイコンはどうしてもキャラの顔をアップにするケースが圧倒的に多いので、そことの差別化を図ってこうしたアイコンにすることもあります。
さすがに4つめの画像を設定するケースはほぼゼロでしょうが、「アイコンって大事なんだよ」をわかりやすくするためにあえて並べてみました。…………一周回って逆に読まれ……ないですね、さすがに。
ちょっと脱線してしまたので話を本筋に戻しますが、メインビジュアルのセンターに女の子を持ってきているということは、このキャラが引きになることはD3Pもわかっているはず。なのになぜ……というのが松山さんの主張です。
ただしここでひとつフォローしておきますと、裏技として解禁されているんですよ。本作、あまりに売れてないということもあるのか“公式サイトに攻略サイトがある”ということも知られていなかったのです。もちろん、トークセッションの3名も知るわけがないのですが、そこのFAQで早めに解禁する方法が書かれていたりします。
「普通に解禁すればいいのに……」という原田さんの声が幻聴で聞こえてきそうな気もしますが、使い方自体はあるのです。真面目に攻略サイトを作って裏技として載せている。こういうところが、トークセッションの指摘にもある通りなのかもしれません。D3Pは真面目過ぎです。原田さんの指摘は大いに当たっていると言えるでしょう。
その後も、パッケージビジュアルも含めて、コンセプトが見えてこない。客層のズレが向けている方向がズレているという話などがありましたが、トークを通して多く出てきたワードは「社員が真面目」ということ。そして、認知度不足という結論でした。
おもしろかったのが、最後に話題として出ていたグッズとして配っていたウチワ。『CUSTOM MECH WARS -カスタムメックウォーズ-』のイラストにNot For Saleの文字が大きく書かれているのですが、これだと「このゲームは売りものではないですよ」というようにも見えてしまう。「そういうところや!」と言う原田さん。「社員が真面目すぎて、非売品のウチワだから非売品と入れなくちゃいけないと思って書いちゃう。でも、ゲームの発売時期(2023年12月14日)が書いていない。せっかく良いのに社員が真面目過ぎるのが良くない」と笑い話に変えていました。
これを聞いて確かに……と思ってしまった自分。『CUSTOM MECH WARS -カスタムメックウォーズ-』はおもしろそうなのに、もったいないですよね。ゲームのクオリティよりも認知度という面で、D3P作品が苦戦していることがわかるトークセッションだったと思います。『Ed-0』も刺さる人には刺さるゲームではあるんですよね。
最後に、Xbox Game Pass会員限定で2023年9月29日から10月2日の期間、本作を無料で遊べるキャンペーンが発表されました。この発表にも総ツッコミ。「Xboxだけとか……“そういうとこやぞ!”と言っておきます。PCとかPS5はないの?」と言われたり、無料でコードを配るべきだと言ったり、やりたい放題でした。
やりたい放題だったのですが、自分もかなりウンウン頷いてしまうことばかり。現在、Steamでセール中であることなども言っておけばいいのに……。とはいえ、そうした硬すぎる真面目さがD3Pのゲームで良いところに転じる部分もあると思います。
無茶苦茶に言われ放題でしたが、筆者は決して、本当の意味で『Ed-0:Zombie Uprising』が駄目なゲームだとは思いません。実際に遊んでみれば、自分に刺さるタイトルだと思う人もいるかもしれません。Xbox Game Pass会員の方は無料期間があるので、試しに入れてみるのもアリだと思います。
なお、記事には書けないような楽しい発言が飛び交うトークセッションだったので、危険すぎる発言も盛りだくさん。気になる方は、動画のほうで確認してみてください!
※トークセッションは、1:39:16から
東京ゲームショウ2023開催概要
【開催期間】
ビジネスデイ……9月21日~22日 各日10:00~17:00
一般公開日……9月23日~24日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)2,300円(税込)
※小学生以下は無料
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