『ティアムーン帝国物語』1話感想。ワガママだけどどこか憎めない主人公・ミーアは死の運命を覆せるのか?

米澤崇史
公開日時

 2023年10月8日(日)より放送がスタートしたTVアニメ『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』第1話の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

TVアニメ『ティアムーン帝国物語』とは

 本作は、小説投稿サイト“小説家になろう”にて連載されている、餅月望さんによるライトノベルが原作のTVアニメ。

 TOブックスからは書籍版が刊行、Web漫画サイト・コロナEXでは本編とスピンオフ『ティアムーン帝国物語~従者たちのお茶会~』が連載中、さらに3度に渡る舞台化と、さまざまなメディアで展開されている大人気シリーズとなっています。

 すでにご覧になっている読者も多いかと思いますが、今回は改めて第1話“断頭台から始まるお姫様”の内容を振り返ってみたいと思います。

いきなり主役が処刑される!? 未来を変えるためにスタートする“やり直し”の物語

 本作の主人公は、上坂すみれさんが演じるティアムーン帝国の第1皇女・ミーア。優雅に紅茶を飲むミーアでしたが、その一時は革命によって終わりを迎えることになります。

 ワガママ皇女として憎まれ、囚われの身となったミーアに味方する者はほとんどおらず、粗末な食事だけを与えられる日々を過ごしていました。刑執行の日、ミーアは死の直前までつけていた自身の日記を手に、処刑台まで連行されます。

 そしてギロチンの刃が落ちた瞬間、ミーアは自分の部屋のベッドの上で目を覚ましました。

 目を覚ましたミーアは、自身の姿やティアムーン帝国内の様子が、自身の子供の頃に戻っていること気づき、今まで悪い夢を見ていたと納得しようとするのですが、ベッドに残されていた血の付いた日記、時折脳裏に蘇る鮮明な記憶から、次第にあれが夢ではなく、現実に起こっていた出来事だと確信。

 以前の世界では、処刑の直前まで自分に尽くしてくれた唯一の侍女・アンナ(声:楠木ともりさん)を側近として迎え、自身が処刑される未来を変えるため、ミーアの”やり直し”の人生が始まるのでした。

大人と子供、異なるミーアを上坂すみれさんが熱演

 いきなり主人公がギロチンで処刑されるというショッキングなシーンでスタートする本作ですが、再度子供に戻ってからは、コミカルなシーンを中心に物語が進んでいきます。

 なかでも、コロコロといろいろな表情が変化するミーアの可愛らしさと、上坂すみれさんの演技・細かな作画の演出の素晴らしさが印象に残りました。

 時折挿入される過去の世界の回想では、心身共にボロボロになったミーアが登場しますが、消え入りそうなか細い声は、天真爛漫で表情豊かな子供の頃のミーアと到底同じ人物とは思えないほどの演じ分けがなされていました。

 一方、ミーアが処刑場に向かう直前、最後まで自分の世話をしてくれたアンナに礼を言って、抱きしめられるシーンでは、泣き崩れるミーアの表情の変化が非常に丁寧に描かれているのですが、このシーンだけは、大人になったミーアが子供の頃の顔つきに戻っているようにも見えました。

 身体は大きくなっても、本質的にはまだまだ誰かに甘えたい子供のままということを表しているようにも思えますし、アンナとの再会がミーアが本格的に過去の記憶を思い出すきっかけにもなっています。ミーアにとってアンナは、それほどまでに心を許せる存在になっていたのでしょう。

ワガママだけど根は悪人ではない、絶妙なバランスが生むミーアの魅力

 また、もう一度人生をやり直せるとなった時、ミーアが真っ先に優先したのが、アンナの忠義に報いることなのも面白い。

 ミーアは主人公としては珍しい、いわゆる“自己中心的”なキャラクターではあるのですが、アンナへの恩返しを初め、根は悪い人間ではないというのがいろいろなシーンから感じとれたのも印象的でした。

 第1話では、子供の頃に戻ったミーアは、かつて大嫌いだった黄月トマトのシチューを食べた瞬間、あまりの美味しさに涙を流すというシーンもありました。

 帝国滅亡後は、ほとんどまともな食事を与えられらなかったわけですから、そのギャップは凄まじいものだったと思いますが、美味しい料理を作ってくれた料理長に対して、ミーアは自然とお礼の言葉を口にできています。

 過酷な経験を経て成長した面もあるかもしれませんが、ワガママ皇女として好き放題していた頃からどこか憎めないところがあったからこそ、アンナも最後まで世話をしていたのではないでしょうか?

 とはいえ、自分の身を第一に考える利己的な面はしっかり残っており、悪人ではないけど善人でもない、絶妙なバランスの上で成り立っているミーアのキャラクター性はかなり秀逸で、見ていて楽しいです。

 このミーアの存在が、本作の魅力の中核にもなっていると感じました。

 以前の世界の出来事をミーアが1話で思い出したり、物語のテンポも非常に良いですし、シリアスなテーマながらコメディ色が強く、肩の力を抜いて楽しめるのも嬉しい。

 果たして、ミーアは処刑の運命を回避することができるのか? 今後が非常に楽しみな作品です。


©餅月望・TO ブックス/ティアムーン帝国物語製作委員会2023

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