『SAOラスコレ』開発者インタビュー。DLCのボリュームや難易度、シリーズ10年の歴史や今後のゲームシリーズについて聞いてみた【SAOラスト リコレクション】

Ak
公開日時
最終更新

 バンダイナムコエンターテインメントが展開する展開する『ソードアート・オンライン -インフィニティ・モーメント-』から続いた『ソードアート・オンライン(SAO)』家庭用ゲームシリーズの完結作として、10月5日に発売された『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション(ラスコレ)』。

 発売から2カ月が経過した今、本作のプロデューサーを担当した上野瑛介さんと、『SAO』ゲームシリーズの立ち上げから携わってきたゲーム総合プロデューサーの二見鷹介さんの2人にインタビューを実施。『ラスコレ』発売後の心境や『SAO』ゲームシリーズ10年の開発秘話などを聞いてきました。

■二見鷹介さん(写真右)
 シリーズ初期から全てのタイトルに関わる『SAO』ゲーム総合プロデューサー。『ラスコレ』ではシナリオ関連の業務を担当。

■上野瑛介さん(写真左)
 『ラスコレ』でプロデューサーを務める。シリーズ初作品である『ソードアート・オンライン -インフィニティ・モーメント-』当時はいちプレイヤーだった。

『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-』のころは4タイトルの開発が同時進行していた

――『SAO』ゲームシリーズ1作目である『ソードアート・オンライン -インフィニティ・モーメント-』からスタートしたゲームシリーズですが、『ラスコレ』で本シリーズの物語が完結しました。改めて、『SAO』ゲームの歴史を振り返っての今の気持ちはいかがでしょうか?

上野:私は制作側としては『ラスコレ』からの参加なのでユーザー側の視点にはなりますが、こんなにも原作小説やアニメと違う世界観をしっかり描いているゲーム作品って珍しいなと感じていました。

 今回、『ラスコレ』でその『SAO』ゲームの集大成として、結末までしっかり続けられたのは本当にすごいことだなと、ユーザー視点からも思います。

二見:ゲーム第1作からずっと関わってきて10年間、今まで『SAO』のことを考えない日って……本当にありませんでしたね。週に3日以上は必ず『SAO』関係の打ち合わせでしたから(笑)。

 あっという間といえばあっという間でしたが、現在のゲームシリーズにおけるキリトの物語は完結ということで、私自身としてはようやく終わったなという感じです。こうして完結を迎えたことで、これからは今までの時間軸などに縛られずに新しいことにチャレンジしていけるのではないかなと思います。

  • ▲『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』

―― 一番思い出深いタイトルとなるとどれでしょうか?

上野:自分が制作に関わったので当然といえば当然ですが、やはり『ラスコレ』ですね。前作でユーザーの皆さんからいただいたご意見にどう向き合っていくのか、自分がユーザーとしてどんな『SAO』ゲームを遊びたいのか、暁佳奈先生の書かれたシナリオをどううまくゲームに落とし込むのかなど、とにかく試行錯誤が大変でした。

 つくづく、10年間こんな大変なことを続けてきた先達の開発チームの方々はすごいなと感じましたね。

二見:タイトルというと、なかなか難しいですね……。時期で言うともうこれはハッキリしていて、『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-』を開発していた時期ですね。『ソードアート・オンライン ーホロウ・フラグメント-』の開発終盤と『ソードアート・オンライン フェイタル・バレット』の立ち上げ、それに加えて『アクセル・ワールド VS ソードアート・オンライン 千年の黄昏』の開発も重なっていたので、4本同時進行で大変だった覚えがあります。

――4本同時進行となると、いろいろ混乱しそうですね。

二見:開発会社も違うので、同時進行はかなり大変でした。私と三木一馬さん(※電撃文庫『ソードアート・オンライン』をはじめ、数々のヒット作を担当した編集者)だけがすべてを知っている状態でしたね。全部の開発と同時に向き合っていた時期だったので、『-ホロウ・リアリゼーション-』は思い出深いです。

――『-ホロウ・リアリゼーション-』といえば、アップデートなどのサービスも非常に充実していた印象です。

二見:今から考えると、ある意味で私の功罪にはなりますが、擬似MMORPGとして、運営している雰囲気も擬似的に楽しめるようにサービスを行っていました。当時からサービスしすぎて、会社からは「ボリューム的に時代に合ってないやり方だ」と言われましたね。

  • ▲『ソードアート・オンライン フェイタル・バレット』

――二見さんは当初からずっとゲームシリーズに関わるつもりだったのでしょうか?

二見:『フェイタル・バレット』の立ち上げでいったん終わりかなと思ってましたが、いろいろあって開発の最後まで関わることになりました。ちなみに当時から『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス(アリリコ)』の構想までは浮かんでいましたね。

――『SAO』のゲームシリーズは、かなりコンスタントに発売していますよね。

二見:ゲームシリーズの開発が始まった2013年当時は、新規のIPということでユーザーに定着させるために、アニメ放送に合わせて毎年タイトルを発売するのを目標にしていました。今ではシリーズとしてある程度認知されるようになったのと、開発環境も変わり1本のタイトルを作るのに3~5年かかるようになりました。『ラスコレ』は『アリリコ』での制作から引き継げるものを使い制作させていただいたので、2年で制作できた感じですね。

――今だから話せる、『SAO』ゲームシリーズの裏話はありますか?

上野:『ラスコレ』について言うのでしたら、暁佳奈先生のシナリオをゲームに落とし込むにあたって、イベントシーンでその魅力をどう再現するかに苦労しました。ムービーまですべて完成したものの、昨年末くらいのタイミングでそのすべてを見直したことがあります。モーションのひとつひとつをどう改善できるか検討しながら、最終的にはほぼすべてに手を入れることになりました。

二見:『アリリコ』の開発当時、新型コロナウイルス感染症の影響で会社に私しかいなくて、開発はいろいろと大変でした。デバッグチームもあまり稼働できていなくて、ユーザーの皆さんにはバグでいろいろとご迷惑をかけてしまい申し訳ないという気持ちでした。リリースこそできたものの、そこからの立て直しも含めて、いろいろと考えなければいけないことが多かったですね。

 そんな『アリリコ』の裏話なのですが、開発当初からゲームの構想自体が全面的に変更されています。当初は『アリシゼーション』編の前半だけのシナリオで、メディナもいなかったんです。

――最初はメディナがいなかった……というのはかなり意外ですね。

二見:はい。あくまで“原作小説やアニメの追体験”という形だったんです。ですが、ゲームでキリトたちの物語として出すには追体験だとテーマとしては弱いということで、全面的に変更することになりました。

  • ▲『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス』

――どういう経緯でメディナが生まれたのかお聞かせいただけますか?

二見:ユージオの生きている世界で、その代わりになるキャラクターとして生まれました。コンセプトは私が決めて、細かい設定については開発会社と詰めていった形です。プレイした方はおわかりかと思いますが、非常に強烈なキャラクターなので、三木さんからも最初は「大丈夫? 嫌われない?」と心配されました。

 そうそう、他にも『-ホロウ・リアリゼーション-』でオリジナルの仮想世界《ソードアート・オリジン》が生まれたことについてもここで話しておこうかなと。

――確かに『SAO』ゲームシリーズは基本的に原作小説やアニメに登場したゲームや仮想世界を舞台にしていますが、『-ホロウ・リアリゼーション-』の舞台は異なる形となっていましたね。

二見:初期案では《ソードアート・オンライン》をそのまま舞台にしようとしていたんです。1層から順々に攻略していく『IF』に近い形で、シリカやリズベットも含めてキリトたちがどう行動していたのかを考えて、そこにプレイヤーがキリトとして介入したらどう変わっていくのか……みたいな。

 いろいろあって初期案がNGとなりまして、そこからさらにプロットを30個くらい用意した結果、最終的にあのような形になりました。ちなみに《ソードアート・オリジン》という舞台は川原先生のアイデアです。作品のテーマに関しては、ボトムアップ型AIを描いた《アリシゼーション》編との対比として、トップダウン型AIについて描こうと決めていました。

  • ▲『ソードアート・オンライン -ホロウ・リアリゼーション-』

『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』は『SAO』ゲームライト層でも楽しんでいただけるよう遊びやすさを重視したつくりに

――改めて『ラスコレ』発売から約2カ月が経って、手応えはいかがですか?

上野:一番重視していた『アリリコ』からプレイしやすくするという点に関しては手応えを感じています。前作でいただいた意見や自分が感じたことなどを元に、アクション性も増して戦いは楽しんでいただけるものになっているんじゃないかなと。

 今回は全体的にライトに遊ぶ方にも楽しんでいただける作品になっているので、その調整はできたかと思っていますが、反面歯応えを求めるユーザーの要望も多かったですね。今回大型アップデートは有料DLC以外では予定していませんが、それ以外の形でコアユーザー向けの仕組みを入れられないかを検討中です。

――その仕組みというのは、クリア後の話になりますか?

上野:歯応えのある仕組みについてはクリア後の話になるかと思いますが、それ以外にも遊びやすさや自由度を高めることができないかと検討しています。

――本作は、ストーリークリアだけなら難易度を控えめにしてある印象です。

上野:そうですね。難易度を下げることもできるので、ストーリークリアだけだったらライトな人でもサクッと遊べるようになっています。

――シナリオに関しての手応えはいかがですか?

二見:ネット上などでは、クリア報告をした方から物語や、エピローグに関してよい感想をいただきまして、それを見られるだけでうれしいなと思っています。とくにエンディング後のシーンに関しては絶対に入れたいと考えていたので、そこが好評でよかったですね。

  • ▲『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』

――ユーザーからは具体的にどういった要望が寄せられたのでしょうか?

上野:スタイルに関しての要望が多かったです。プレイアブルキャラクターが多い中で、スタイルによるバランスが重要になるので好きなキャラクターでパーティが組めないという要望ですね。まだ具体的にどうするかは決まってないですが、そこは改善を検討中です。

 それとチュートリアルの時点で説明されている要素が多いという意見も多かったですね。そこは反省点であったと思っています。

――本作でお気に入りのキャラクターについて聞かせてください。

上野:やっぱりドロシーですね。本当に好きで夢に出てくるくらいです(笑)。最初は生真面目でそこまで印象的ではないにしても、物語が進むにつれてバックボーンが明らかになると好きになってくるキャラクターだと思います。キリトたちとの旅の中で、挫折も味わって成長していくのが感動的ですね。

 サブエピソードでもドロシーの生い立ちや人間関係、ほかの人に抱いている気持ちなどがわかるので、よりシナリオに没入できるようになるかと思います。

二見:私も同じくドロシーです。ゲームにおける、キリトのストーリーを飾る最後のオリジナルキャラクターということで印象深いですね。ドロシーが見せ場である行動をするのも、戦いを終えるという意味もありますが、シリーズに決着を付けるという意味もあります。

  • ▲『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』

――本作では暗黒界のキャラクターの活躍の場も多いですが、そちらの注目点についてもお聞かせいただけますか?

二見:ひとつの敵に対して暗黒界も含めてみんなで共闘する、という構成ができないかは一番最初から考えていました。みんなで立ち向かうラスボスに関しては……具体名はネタバレなので秘密ですが、“ヤツ”以外に考えられませんでしたね(笑)。

『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』のDLCはクリアを前提した難易度にはならない

――アップデートについてはどのようなものが予定されていますか?

上野:不具合修正やバランス調整に関しては継続して行っていきます。とくに遊びやすさに関する部分は重点的に直していく予定です。ただ、本作では前作のような大型アップデートの予定はありません。

二見:『アリリコ』やそれ以前の作品では、ある意味でクリア後が本番!! という勢いでプレイしてくださった方もいらっしゃったのですが、『ラスコレ』ではクリアまでを最大限に楽しめるように設計しました。『アリリコ』であったような長期運営で擬似的なオンラインゲームを再現した作品ではなく、あくまでストーリーを重視したRPGとして楽しんでいただければと思います。

――前作までのアップデートが大ボリュームだったので、期待してしまうユーザーも多そうですね。

二見:そこが難しい部分ですね。前作までもモバイルゲームのような運営型のゲームではなかったものの、疑似MMOというコンセプトで作ったためネットゲームのような感覚でプレイされたユーザーの方も多くいらっしゃいました。

 前作まで大型無料アップデートを続けられたのは、次回作までの楽しみを用意して長く遊んでもらうという狙いもありました。本作はシリーズ完結作であり、しっかりと終わりを描いているわけで、今までと同じような形でのアップデートやDLC展開が難しいという理由もあります。

――本作にも《絆の儀式》というDLCシリーズが展開されていきますが、こちらの見どころを教えてください。

上野:ゲームオリジナルヒロインを含むキャラクターたちといっしょに、ひとつのダンジョンを攻略していくという内容になっています。ダンジョン攻略では、キャラクターごとに異なるアドバイスがもらえるので、そちらも楽しんでいただければと。メディナは勘に近いコメントをしたりセブンは緻密な計算をしたりとキャラクターごとに個性が出ているので、そこも見どころです。

 あとはもちろんその後の絆を深めるパートも注目ですね。キャラクターによって違うやり取りが見られます。ちなみに主人公がキリトではなかった『フェイタル・バレット』のキャラクターたちに関しては、どう絆を深めていくかにも気を使っているのでご安心ください。

――DLCのボリュームや難易度はどうなるのでしょう? ここまでのお話を伺っていると、前作のものとは違うものになりそうな気がしますが……?

上野:前作のようなクリア前提の難易度にはなっていないです。8章まで進めれば挑戦可能で、難易度も高くないです。推奨レベルとしては35前後ですが、それより低くても問題はないかと思います。

 とはいえ、コアユーザー向けのエンドコンテンツも何か用意できれば……と考えてはいて、お約束はできませんが、有料DLC以外の形で実装できないか検討中です。

――DLCで衣装が追加されるのは、公式サイトでビジュアルに出ているキャラクターですか?

上野:そうですね。ビジュアルに写っているキャラクターに衣装が実装されます。ちなみに、それ以外にキリトの衣装も追加される予定です。

今後も『ソードアート・オンライン』のゲームシリーズの開発は続いてゆく

――『SAO』家庭用ゲームシリーズは一区切りということですが、今後の展開についてはいかがでしょうか?

二見:『-インフィニティ・モーメント-』から続くゲームシリーズは完結しますが、あくまで物語や世界観のリセットであって、これからも『SAO』ゲームは作られていきます。まったく新しい形の、新規の『SAO』ファンも気軽に入り込めるような作品が生まれてくると思いますので、今後も応援いただければうれしいです。

――ちなみに、今後『SAO』ゲームを作るとしたら、どんなものを作りたいですか? 願望レベルでも構いませんので、ありましたら教えてください。

上野:ギャルゲーのように絆を深めることに特化した『SAO』ゲームを作ってみたいですね(笑)。すごい数のキャラクターがいるので、そこは某アイドルゲームのようにアペンドディスクを出していって……あくまで願望ですが(笑)。

 ただ『SAO』のキャラクターをギャルゲーの世界観に当てはめるだけではおもしろくはならないと思うので難しいですが、ストレアと青春してみたいじゃないですか! まあプレイヤーはキリトになるとは思いますが。

二見:幅広いユーザーが楽しめるような、今までのシリーズのことを知らない人でも、『SAO』好きなら誰しもが満足できるようなゲームを作りたいです。原作小説やアニメで『SAO』を少しでも知っていれば気軽に遊べるようなものになればいいですね。

――『SAO』ゲームシリーズのファンに向けてメッセージをお願いします。

上野:いろいろな方々に遊んでいただきつつ、さまざまなお声を頂戴していて本当にありがたいです。今後もDLCやそれに付随するアップデートなどで冒険できる世界がどんどんよくなるような改善を進めていきたいと考えていきたいと考えているので、引き続き『ラスコレ』とこれからの『SAO』ゲームシリーズを応援していただければと思います。

二見:いろいろな経験をさせていただいた10年でした。ファンの皆さん、原作小説の作者である川原礫先生、アニメの制作陣、ゲームの開発にかかわってきた皆さんなどなど、感謝でいっぱいです。これからはファンを大事にしつつも、それを広げていくという難しいステップに突入するので、自分も『SAO』らしいエッセンスを出すための協力をしつつ、若い力で作られていく『SAO』ゲームシリーズを楽しみにしています。皆さんもともに応援していただければと思います。

『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』のセールが実施中!

 なお、PlayStation Storeでは『ラスコレ』の初となるセールが12月11日まで実施中。デジタルデラックスエディションが30%オフで購入できるようになっています。Steamでも、12月12日まで通常版の30%オフセールが実施中です。まだ遊んでいない人は、この機会にプレイしてみてはいかがでしょうか?


©2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
©Bandai Namco Entertainment Inc.

©2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO Ⅱ Project
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

🄫2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
🄫2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/GGO Project
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら