映画『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』石川界人(咲太)、瀬戸麻沙美(麻衣)・久保ユリカ(花楓)インタビュー。声優陣も号泣した咲太の物語

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 2023年12月1日(金)より公開中の劇場アニメ『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』。今回は、メインキャストの梓川咲太役の石川界人さん、桜島麻衣役の瀬戸麻沙美さん、梓川花楓役の久保ユリカさんへのインタビューをお届けします。

梓川咲太役・石川界人さん、桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん、梓川花楓役・久保ユリカさんの3人が語る『ランドセルガール』の魅力

――はじめて台本を読んだときの感想をお願いします。

石川界人さん(以下、石川):『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない(以下、ランドセルガール)』は、こういう風にまとまったんだなという感じでした。台本を読みながら泣いてしまうほど、咲太の心情として辛いシーンが多い印象です。それをどう演じようか、どうお芝居に落とし込むのかは、すごく悩みました。

 いままでは、台本を読んで自分のセリフにチェックを付けてから映像を観ていたのですが、今回は映像を観てから台本を読みました。原作を読んで物語は知っていましたし、原作1巻全てを映像化するわけではないので、そのギャップ感がどのくらいなんだろうと自分の感情的なところとの差異を知りたかったんです。

  • ▲梓川咲太役・石川界人さん

瀬戸麻沙美(以下、瀬戸):『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない(以下、おでかけシスター)』から2部作になるというのはわかっていたので、台本を開くのがとても楽しみだった反面、咲太の心の動きとそれに寄り添う麻衣の感情を慎重に丁寧に汲み取らないといけないなと思っていました。

 実際に台本を読み始めて「どう演じよう」というのが増えてきてからは、1ページずつ止まりながらキャラクターの気持ちや感情を考えていました。

  • ▲桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん

久保ユリカ(以下、久保):『おでかけシスター』の劇場アニメが公開されてから、割と早い段階で『ランドセルガール』の台本を読むことができたので、個人的にはお話の流れとしても想いが熱いうちに花楓の心に触れられたのがすごくありがたかったです。

 なので台本を読みすすめていても「そうそう」「こうだよね」というのがありました。また、原作を読んでいたときも、これは本当に咲太が大変だなぁと感じていましたね。その上で『青ブタ』らしさが詰まった作品だなと思います!

  • ▲梓川花楓役・久保ユリカさん

――台本を読んだ時点で楽しみだったシーンや苦労したシーンなどはありますか?

瀬戸:咲太と麻衣さんが電話をするシーンがあるのですが、咲太が「ついしゃべりすぎちゃいました。」と言っていたのが可愛いなと思っていたので楽しみでした。大変そうだなと思ったのは、麻衣さんが咲太の力になるシーンがあるのですが、そこはどうすればおこがましくないのかな、どういう寄り添い方をしたらいいのかなと悩みました。

久保:花楓としては、お母さんと久しぶりに顔を合わせるという大きな試練があります。それが彼女にとってどのくらいの緊張感なんだろう、お母さんとの距離感はかなりあるのかな? 家族4人揃ったときの花楓のポジションは? そんな風に色々考えながらひとりで練習しているとどうしても家族へ壁ができてしまって。正解がわからなくなってしまったので、まずは現場に行って掛け合いをしてみないとわからないなと感じてしまったのが本音です。

 ただ、「今の自分をどこまで認めてもらえるんだろう」という不安な気持ちをちゃんと細かく表現したいと思っていました。

石川:今作はそんな暗い所にフォーカスされていますね、独占欲ではないですけど、支配欲というか……。咲太はこれまで、翔子さんとの出会いなどもあって成長したなという自覚がある中で、今回は急に少年に引き戻されるというのが楽しみでもあり、どういう部分が出てきちゃうんだろうとめっちゃ怖い部分もありました。

 本作があることで咲太が誰にとっても優しい人になろうと頑張っていたんだな、というのがわかると思います。初めて梓川咲太というキャラクターが前面に出されることになったのかな、って。

――それぞれキャラクターが絡んでいる好きなシーンはありますか?

久保:最後の最後で麻衣さんが咲太のもとに来てくれて、やっぱり咲太と麻衣さんの関係は素敵だなと思いました。もう気分的には、フェンスになってました(笑)。

瀬戸:私は麻衣が出てないシーンですけど、梓川家が病室に集まっていて、その後に3人が泣くところです。咲太って「わぁっ」って泣くようなタイプではないと思うんですけど、あそこでしか出ない感情というか……。あのエンドの仕方はとても好きですね。

石川:『おでかけシスター』を踏まえての梓川家の日常のシーンが好きです。改めて関係が深まっているなと感じます。みんな別々のことをしているけれど、一緒の空間にいるのが当たり前みたいな感じになってきていて、咲太にとってはそっちの方が家族感があるのかなと。

 だからこそ『ランドセルガール』の物語も生まれてきたのかなと思います。花楓と咲太、咲太と麻衣さん、そして花楓と麻衣さんの関係性も変わってきていますよね!

――瀬戸さんと久保さんは、麻衣と花楓が変わったなと思う部分はありますか?

瀬戸:『おでかけシスター』のときに思ったのが、麻衣さんが何かありそうなのに、弱味を見せないなという部分です。私としては親心じゃないですけど、大丈夫かなと心配していたんです。ですが、とくに何もなく『おでかけシスター』は終わってしまって……。

 咲太がその《何か》に気が付きそうになるシーンもあったのですが、話すことはなくて。そこで思ったのは、きっと麻衣は咲太と電話をするとかそういうことで声には出さないけれど、そういったモヤモヤを解消しているんだろうな、ということ。思っていたよりずっとすごい娘だったんだなと。

 『ランドセルガール』のタイミングでは、より絆が深まっているというのも咲太や花楓とのやりとりで感じ取れました。今回は咲太を助けるポジションになりますが、麻衣は『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』では1番力になりたかった時に側に居られなかったという経験があって。なので『ランドセルガール』で咲太の力になれることが嬉しいと思いますし、次は助けたいという想いが強くなっていたのかなと思います。

久保:花楓と麻衣さんの関係性が明確に変わったと感じたのは『おでかけシスター』でしたね。物語の冒頭で描かれている、花楓が下校中の咲太と麻衣さんにたまたま会うシーンで、麻衣さんから「おかえり、花楓ちゃん!」と呼びかけられた際の反応です。

 このシーンは最初に収録したときもそこそこ麻衣さんとの距離感が近づいているテンション感で演じましたが、「もっともっと麻衣さんにも心をひらいて、砕けていいよ」とディレクションを受けました。そこで私も、ああー! もうそんなところまで距離が縮まっているんだなと、なんだか嬉しくなりましたね。外や人が得意ではない花楓にとって、麻衣さんはばったり会っても、ホッとできる存在になっているのは、麻衣さんの存在が兄・咲太にとって大事な人で、自分にもよくしてくれているとちゃんと実感していて、その積み重ねで信頼感が生まれているからなのかなと感じました。

 咲太と麻衣さんは花楓に対して、お兄ちゃんお姉ちゃんというよりはお父さんお母さんみたいな……それくらいの大きな愛情を持っていて。抱いてくれていますが、決して過保護なわけではありません。1番いい距離感で大切に見守ってもらえているなというのが、今回の『ランドセルガール』でさらに分かりやすくみえてきた気がしますよ!

『ランドセルガール』でやっと恋人としてもう一段階先に進んだ(?)咲太と麻衣の関係

――アフレコ中の出来事で印象に残っていることはありますか?

石川:涙でぐちょぐちょになったことです! 泣き崩れてはないですよ、ちゃんと立って仕事していました(笑)。

瀬戸:私たちは収録している方の後ろ姿を見ているので、振り向くまで表情が分からないんですよね。なので、石川さんの演技が終わって振り向いたときに泣いているのを見て、お芝居として心が動いてるんだという嬉しさと、仕事としてテストでたくさん泣いちゃって本番で大変だろうなという心配が同時に来ちゃいました(笑)。

石川:わかる、わかる。俺、テストで泣きすぎて「本番大丈夫かな、泣けるかな」って話してたよね。テストでの演技が1番いいから……(笑)。

瀬戸:テストが1番、素でチャレンジできるから(笑)。いつものメンバーなので段取りよく収録が進んでいくのですが、それでも前半で押しはじめて終わるのかなと不安になるのですが、ちゃんとピッタリ終わって。「やっぱり終わるんだねぇ」とみんなで話していたのが印象に残っています。長時間短期集中というか(笑)。日本語としてはおかしいんですけど、限られた時間の中でそれぞれが演じ抜いたなと思います。

久保:アニメシリーズだと主に「かえで」がみんなと会話をしていたんですけど……。「かえで」は妹としてキャラクター感が強くてどうしてもひとりだけ違う世界で生きているようなところがあって。そこから『おでかけシスター』の花楓になると、自分自身に向き合っている時間が多かったので、やはり‘‘何気ない会話‘‘を楽しむシーンも少ないままでした。なので! やっと今回の『ランドセルガール』で他のキャラクターたちと日常の会話ができているなとアフレコ中も感じられたのが本当に嬉しかったです。『おでかけシスター』での収録は1人だったので、温度を感じ、心を通わせてお芝居ができる幸せを噛みしめていました。

瀬戸:梓川家が収録するのを見ていて、やっぱり一緒にアフレコをすると距離感とか嬉しさとか伝わってきていいなと思いました!

久保:え……ありがとっ(照)

――石川さんへの質問になるんですが、咲太の「居心地がよすぎる」にはどんな気持ちを込めましたか?

石川:成功例としての自分を見てしまったわけなんですが、失敗したからこそ得たものもあって……。“できすぎてない咲太”はずっともがいてきて、もがいてきた結果手に入れたものがあるという、ギリギリの自尊心を込めました。僕は違う、ここじゃないという。

――高校生編完結ということで、物語のはじめから比べるとキャラクターたちは成長しているかと思います。どんなところが成長したなと感じますか? また、演じ方の変化などはありますか?

石川:本気で甘えるようになったかな? 咲太は。

瀬戸・久保:あ~‼

瀬戸:もともと2人は、高校生とは思えないような恋愛をしているなという印象ではありました。麻衣は弱音を吐くとかはしないんですけど、咲太と話すとか、咲太が自分のことを考えているというだけで安心できているんじゃないかなと思います。あとは、自分がなにかをしてあげたいというよりは、咲太になにかできている自分というのが心地いいのかな?

 咲太が甘えるようになったというのも、麻衣が引き出したのかもしれないし、咲太も麻衣がそうした方が安心してくれるとわかってきたから甘えるようになったのかなとは思います。口にはしないけれど、お互いがお互いのために動いているんじゃないかなと。

石川:今までの咲太って、麻衣さんはどこまで許してくれるのかなと、冗談みたいにして距離感を計っている感じがしていました。でも『おでかけシスター』では本気で欲望をぶつけはじめて。そして今回の『ランドセルガール』では、身体的な接触で麻衣さんを感じたいという、精神的な繋がりだけじゃないものも求め始めているんです。なので、恋人としてもう一段階先に進んだのかなと思います。

“婚姻届け”のシーンは劇場をいたたまれない雰囲気しようと全力で演じた⁉

――御守り(婚姻届け)が登場しますが、このシーンのやりとりはいかがでしたか?

瀬戸:御守り……?

石川・久保:えっ……忘れてる⁉

瀬戸:さっき、『青ブタ』のヒット祈願で神社に行ったところだったから(笑)。

久保:わかる、わかる(笑)。

瀬戸:もう、恥ずかしかったです。あんまりこういうこと言わないんですけど、今日は言おうかな(笑)。麻衣さんが照れると、こっちも恥ずかしくならないですか? なんかこう、見てる(演じてる)こっちも。冗談でもそういう部分を見せないし、本人がそういうのを見せたくないと思っているのを知ってるからこそ、見えちゃったときに「恥ずかしい! 見えちゃった、麻衣さんのこんなシーンを!」という感じで。

 劇場で観ているみなさんが隣の人といたたまれなくなるような空気感を作るのが、私たちの使命なのかなと(笑)。そこはもう意図的にやってやろう、と思っていました。

石川:あのシーンは「う~わ、やってんなぁ!」と思いました(笑)。婚姻届けにうんぬんかんぬんを将来の約束としてやるというのが「若い!」みたいな(笑)。 

瀬戸:この2人は絶対に別れないと思うけど、高校生のときにこういうことしている人たちって、だいたい別れるよね(笑)。

久保:ね、一般的にはね(笑)。

石川:かなり大人な付き合いをしている2人なのに、急に年相応のことを始めるからとても面白くて!

瀬戸:いきなりピュアなことするから「なぁになぁに⁉」ってなりました(笑)。

石川:だからこそ、真剣に演じました! こっちが恥ずかしがっていると、本当に恥ずかしいシーンになっちゃうから(笑)。

瀬戸:2人は至って真面目だし、ふたりきりの空間でやってることだからね!

石川:劇中でも「あ~ん」とかしたり、同じコートに入ったりもしちゃうよね。

久保:きっとベタなこと好きなのよ、麻衣さん! じゃないと、小指つなぎしないもん~(笑)。どんな経験もお芝居にも活きるだろうしね!

瀬戸:咲太も咲太ですごいよね! 絶対、少女漫画とか読んでないのに、それを天然でやるってすごい男だなって(笑)。

石川:だからこそ、照れがないのかも。

瀬戸:そうか、やろうと思ってやってないもんね。心が動いてやっちゃうのか!

石川:麻衣さんがやってほしそうとか、僕はこういうことやってみたいな、とか。

久保:転生してきたのかなぁ、少女漫画から(笑)。

瀬戸:でもやっぱり、こういうシーンって『青ブタ』の中で大事だと思うんですよ。見ていて恥ずかしいけど、そこで心がキュウってなるのも『青ブタ』のエッセンスなので。

――劇中で御守り(婚姻届け)が登場しますが、みなさんは自分の中で大切にしている御守りなどありますか?

石川:待ち受け画面にしている縄文杉です! 今年の6月に声帯ポリープの手術で1カ月休業していたのですが、そのときに屋久島へ行って自分で撮ってきたんです。御守りは御守りとして、結果が出せるかどうかは自分が頑張るしかないのですが……!

瀬戸:私は要所、要所で御守りがあるかも。おでかけしたときに買ったものとか、撮影した写真を印刷して飾ったりとか、思い出の物が御守りになっているかもしれないです! 楽しい記憶を思い出せるようなものというか。また行きたいなと思えると、それまで頑張ろうというモチベーションになりますよね。

久保:私は本物の御守りなんですけど、奈良にある大神神社という所があって。芸能御守りがあるので、毎年頂きに行っています。これが通常の御守りの販売ラインナップに入ってなくて、「芸能御守りってありますか?」って聞かないと頂けないんですよ! この御守りを頂くようになってから、仕事がうまくいっているような気がします。

――最後に、ファンのみなさんに向けてメッセージお願いします。

石川:ついに高校生編完結です。これまで咲太はいろいろな人のために奮闘していましたが、今回の『ランドセルガール』はそんな咲太の内面に関する話、そして周りの環境に関する話がメインになっています。いままでみなさんと一緒に歩んできた咲太だからこそ、みなさんの心に刺さるような物語になっていると思いますので、これからも共に歩んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!

瀬戸:今作では、家族もそうですし麻衣と咲太もそうですけど、みんな何かひとつ乗り越えて進んだところにまたひとつと言う感じで、家族との関りが深く描かれます。そんな中で、これまでみんなのことを助けてくれていた咲太が、思春期症候群になってしまうんです。

 なので、咲太がこれまで見せてこなかった表情というのを最後まで見守っていてほしいなという想いが強くあります。『おでかけシスター』のときのインタビューで石川くんが「花楓の頑張りを見てくれ」と言っていたのですが、今回は「咲太の頑張りを見てくれ」という感じですね! みなさんの心が動く物語になっていると思いますので、ぜひ観ていただけたら嬉しいなと思います!

久保:テーマは《家族》なのかな。私自身が梓川家と家族構成が同じで、見ていると咲太に感情移入できて、兄弟がいるところのあるあるなのかわからないですけど、どこかで比べてしまう、比べられているような気がしちゃう……。それはひとりっ子の場合もあるとは思いますが、改めてそれが人間だから当然なんだけど、辛いなと感じてしまいました。

 でも、それを乗り越えられるのは自分自身だし、周りにいる人たちがどういう人かというのも関わってくるんだなと本作を通して考えることができました。なので、いま側にいてくれる人に感謝しながら観ていただければと思います!

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©2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project 

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