イヤホン王子による2023年注目のイヤホン・ヘッドホン総決算! 今年売れた商品ランキングは? 最新トレンドは? ゲーミングイヤホンで重視するポイントも聞いてみた

電撃オンライン
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 イヤホン・ヘッドホンの専門店e☆イヤホンの運営を手掛ける、“イヤホン王子”こと岡田卓也さんに、2023年に人気を集めたイヤホン・ヘッドホンについての総決算をお伺いしました。

 インタビューでは、岡田さんがオススメのデバイス5選や、ゲーマーが気になる“ゲーム用イヤホンで重視するポイント”などについてお話されています。楽天スーパーセールも近づく今、新たにイヤホン・ヘッドホンの購入する予定のある人は、検討材料のひとつとして参考にしてみてはいかがでしょうか?

■岡田卓也(おかだ たくや)さんプロフィール

 株式会社タイムマシン取締役社長。イヤホン・ヘッドホン専門店“e☆イヤホン”を運営し、“イヤホン王子”として知られる。過去にTBS『マツコの知らない世界』に3回出演。

 2012年には、世界中のイヤホン・ヘッドホンが集まる国内最大級のポータブルオーディオ展示試聴イベント“ポータブルオーディオフェスティバル(通称:ポタフェス)”の立ち上げにも関わり、イヤホン・ヘッドホンのユーザー開拓に精力的に取り組んでいる。

2023年に売れたイヤホン・ヘッドホンは?

――今回は“2023注目のイヤホン・ヘッドホン総決算”ということで、さまざまな観点から今年人気を集めた商品の改めて紹介していただければと思います。

 まずはe☆イヤホンの楽天市場での2023年販売ランキングをイヤホンが売れた数量ベースで見ていきます。ランキングはこの通りです。

数量ベースで見た2023年販売ランキング

順位 メーカーと商品名
1位 SONY WF-C500
2位 日本ディックス COREIR -コレイル- BRASS
3位 ag COTSUBU
4位 SONY WH-CH520
5位 SONY WF-1000XM5
6位 SONY LinkBuds S
7位 SONY WF-C700N
8位 EarFun EarFun Air Pro 3
9位 SONY WF-1000XM4
10位 SONY WI-C100

――こうしてランキング形式で見ると、SONY製品が圧倒的な人気ですね。

 そうですね。特に数量ランキングで1位の“WF-C500”はTrue Wireless(完全ワイヤレス)型のエントリーモデルですね。多くの方が購入されています。

――岡田さんの注目しているデバイスはどれでしょうか?

 日本ディックスの“COREIR -コレイル- BRASS”ですね。こちらはイヤーピース型の商品で、イヤーピースの軸の部分に金属の筒が付いていて、音を劣化させずに届ける珍しい特徴を持っています。数で言えば、2023年の1月1日から10月31日までの間に4000個購入されています。イヤーピースでここまで売れる商品は珍しいですね。TW型を持っているけど合わない、もう少しいい形で音を聞きたいという理由で購入される方が多い印象です。

 続いては、こちらは売上ベースで見た時のランキングになります。

売上ベースで見た2023年販売ランキング

順位 メーカーと商品名
1位 SONY WF-1000XM5
2位 SONY WF-C500
3位 SONY WH-1000XM5
4位 SONY LinkBuds S
5位 SONY WF-1000XM4
6位 SONY WF-C700N
7位 ag COTSUBU
8位 SONY WH-CH520
9位 SHOKZ OpenFit
10位 EarFun EarFun Air Pro 3

――売上ランキングでもSONY製品が強いですね。

 はい。“WF-1000XM5”が9月に出たばかりにも関わらず1位になっているのは驚異的な人気と言えます。集計期間が今年という影響で、1つ前の1世代前の“WF-1000XM4”もランクインしています。

 3位の去年発売されたヘッドホン“WH-1000XM5”も根強い人気があります。1世代前の“WH-1000XM4”からは形状が少し変化して、ガジェット感が薄れたイメージです。女性も使いやすいデザインですし、どうやら付けている際の“付けている感”を払拭したいという狙いがあるようです。

 イヤホン、ヘッドホンともに人気が凄まじく、イヤホンなら“WF-1000XM5。ヘッドホンなら“WH-1000XM5”となっていますね。まず買って間違いない商品です。

――他に注目されている商品はありますか?

 数量ランキング6位から、SONYの“LinkBuds S”。売上ランキング9位からSHOKZの“OpenFit”ですね。ながら聴きや周りの音を遮らない商品がランキングに入ってきています。昔は変わり種のような商品だったのですが、最近はそれがトレンドになりつつあり、これらをメインに利用する方も増えてきています。テレワーク用のサブ機としても注目されています。

 特にSHOKZの商品は根強い人気がありますが“LinkBuds S”は出て間もない商品にも関わらずランクインしていることから人気具合が伺えますね。こちらも耳に乗せるスピーカー型の商品になります。

――やはり“ながら聴き”は1つのキーワードになってきているのでしょうか?

 そうですね。ここ数年で出てきたトレンドです。最初はそのために骨伝導型が主軸となっていたのが、最近は耳に乗せるようなスピーカー型に傾向が変化している印象です。

――岡田さんとしてはその傾向が変化した理由をどうお考えでしょうか?

 1つは骨伝導の振動がむず痒く、一定の方には合わないこともある点でしょうか。長時間の利用で違和感を覚える方もいらっしゃいます。そこに、後述するnwm(ヌーム)の音漏れ防止技術の登場などで、スピーカー型の商品が注目され始めました。

――他にもランキング内で特徴的な商品はあれば教えてください。

 前回の紹介記事でも紹介しましたが、EarFunの“EarFun Air Pro 3”も未だに人気です。SONY製品はやはり性能に比例した金額ですが、いきなり4万近くする商品は手が出にくいと思います。

 そこでEarFunのリーズナブルな価格の商品を購入する方も多いです。昔は価格重視でお世辞にも良いとは言えない商品も多かったですが、最近は低価格でも高品質な商品が増えてきています。国産商品と比較しても遜色なく、上位のSONY製品に匹敵する性能を持っています。Bluetoothも5.3に対応していたり、ワイヤレス充電も対応していたり、さまざまな要点を抑えつつこの価格にしているのは、一体どうやって作っているのか気になるレベルですね。

――みなさんが購入される価格帯としてはどのあたりの金額の商品が多いのでしょうか?

 業界全体の話では1万円を切るくらい、8,000円から9,000円くらいになります。e☆イヤホンだけで見ると1万4,000円近くにまで上がってきています。この価格帯は年々上がってきている印象で、昔は1万円のイヤホンは高いイメージがあったと思うのですが、今はそこがスタートラインと考えるような方も増えてきています。周りを見ても価格が高い商品が増えてきているので「ならいきなりSONYいっちゃおう」と考える方もいます。

――e☆イヤホンの店舗では試し聴きもできるので、性能を実感して購入される方も多そうです。

 そうですね。実際に試すと性能を実感できて、最初に出す金額のベースが上がるイメージもあります。トレンドとしては年々単価が上がってきており、楽天さんの売上を見てもイヤホンの売上平均単価が上がってきているのではないかと思います。

――最近は用途別に複数のイヤホンを持つ方が増えてきている印象ですが、e☆イヤホンから見ていかがでしょうか?

 うちが専門店ということもあり、うちのお客様に限ると使い分けをされるコアな方が多くなりますが、一般的にも仕事用や普段使い用など使い分けされている方が増えている印象を感じます。僕たちのようなマニアだと自然なことですが、一般の方にとっても服のように使い分けすることが当たり前のことになりつつあると感じます。

――e☆イヤホンから見たイヤホン・ヘッドホン業界の今後のトレンドについて教えてください。

 若年層を中心にヘッドホンの人気が高まりつつある印象です。e☆イヤホン秋葉原店では、店舗の顔となるので1階には流行の商品を置くようにしていますが、そこにヘッドホンが入ってきている状態です。それくらい、見た目の可愛らしさなどからファッションの1つのような感覚で多くの若年層の方が購入されています。今年の終わりくらいから来年にかけて、もう1回ヘッドホンの波が来るのではないかと思っています。

イヤホン王子がオススメする今(2023年末)買って損しないイヤホン&ヘッドホン5選!

――続いては、岡田さんが個人的にオススメする商品をお伺いしたいです。

 まずはe☆イヤホンがオススメする5つの商品を紹介したいと思います。テーマは“2023年末に買っても損しないイヤホン・ヘッドホン”です。

その1:SONY WF-1000XM5

 1つ目は、SONYの“WF-1000XM5”。こちらは今年一番推している商品で、すでに大ヒット中の商品になります。これは今年のイヤホン・ヘッドホンを語る上で欠かせない商品ですね。

 ソニー最新のTWS(※True Wireless Stereo=完全ワイヤレスステレオのこと)で、大ヒットとなったWF-1000XM4からさらに本体、ケースも小型軽量化し、ノイズキャンセリング性能も向上しています。通話品質の向上や、3分の充電で1時間使用できる急速充電など全方位に進化し、高い完成度を誇るイヤホン。これを買っておけば間違いなしの2023年一番人気のアイテムです。

その2:nwm(ヌーム) MBN001 ワイヤレスパーソナルイヤースピーカー

 2つ目はnwmの“MBN001 ワイヤレスパーソナルイヤースピーカー”です。nwmは最近できたブランドで、NTTグループが作った音響ブランドです。音声と音響の研究を続けていて、音漏れに関する新たな技術を持ち込んできました。

 具体的には、ノイズキャンセリングが一般的になってきた現在、このイヤホンはこの本体から外に漏れる音に対してもノイズキャンセリングが働きます。つまり、解放型で外の音も聞きながら、自分から漏れる音を防ぐことができます。この技術は難しくて、単純に反対の音を出せば良いだけでなく、周囲の音の周波数や自分の漏れている音に対応する必要があります。これをnwmが解決した、という点が特徴です。

 TWS型の“MBE001”有線イヤホン型の“MWE001”ワイヤレスネックバンド型の“MBN001”があり、一番人気はネックバンド型ですね。

その3:CRAZY RACCOON EARPHONE

 3つ目は“CRAZY RACCOON EARPHONE”です。プロゲーミングチーム“Crazy Raccoon”と、私たちe☆イヤホンが製品企画を行い、“Crazy Raccoon”に所属する選手&ストリーマーが、試作段階のイヤホンを使って実際にゲームをプレイし、FPSに最適なチューニング監修を行ったイヤホンです。「ゲームをするなら、まずこのイヤホン」をコンセプトにしています。

――これは私も使用していますが、特にFPSなどを遊んでいる際に音からいろいろな情報が読み取れるようになったと感じます。

 このアイテムについては、今年の東京ゲームショウでいろいろなプロゲーマーさんに使い心地を聞いてみたのですが、音での位置把握がしやすいというお声をいただいています。目を閉じて音だけを頼りに撃ってみたらちゃんとその位置に敵がいたなんて驚いていた人もいたくらいです。

 『Apex Legends』の“AFTER 6 LEAGUE”という社会人リーグに出ることになりまして、社内大会を実施して選手を選出したのですが、そこでも多くのスタッフがこのイヤホンを使用していましたね。

――使用感としては、音はもちろんなのですが、ケーブルの素材もガッシリとした者が使われていて、耐久性があって魅力的です。あとはケーブルそのものの長さも長めで、取り回しがしやすいなと。

 実は、長さについては当初の想定ですともっと短かったのですが、現在の長さ(1.9m)になりました。使用している方にそう言っていただけると助かります。また、12月9日にはケーブル長1.6m版を発売予定となっています。

その4:JBL SOUNDGEAR SENSE

 4つ目は、JBLの“SOUNDGEAR SENSE”になります。JBLと言えばスピーカーですが、そこが出した耳掛けタイプのオンイヤースピーカーがこちらです。骨伝導のような形でスピーカーになっていると考えてもらえればわかりやすいかと。JBLのスピーカー技術は非常に高くて、この商品もイヤホンというよりもスピーカーに近い性能と形状なので、音質は圧倒的な信頼感があります。

 おもしろいところが、TW型なのにも関わらず、耳掛け部分の先にパーツを付けることでネックバンド型にしたり、片耳だけで使用したり、シーンに合わせた使い方ができます。ここ最近はながら聴きをする人も多く、オンイヤースピーカーも流行ってきている兆候を感じます。

――ネックバンド型にできると紛失リスク軽減型にもなりますね。

 そうですね。しかもJBLのアプリでは落としたイヤホンを探す機能もあり、ユーザーサポート面でも人気を集めている商品です。

その5:SONY WH-CH520

 5つ目がSONYの“WH-CH520”です。実は日本では現在イヤホンが80%を占めており、ヘッドホンの人気はあまりない状態です。ですが、先ほど少し触れたように、ここ最近SNSで写真撮影の際にヘッドホンを装着することがトレンドになりつつあります。うちでも最近は「ヘッドホンが売れているね」という話題があがるようになりました。寒くなってきた季節的な要素もあると思いますが、デザインの良いヘッドホンが最近注目を集めてきています。

 その中でもこの商品は人気の商品で、1万円以下でSONY製品の中では手が出しやすいにも関わらず、基本スペックが高いイヤホンです。147gの軽量さ、50時間の連続再生可能なバッテリー、3分の充電で90分の再生は可能なクイックチャージ機能、スマホとPCなど同時接続できるマルチポイント機能、アプリで設定するといつもの音楽の音質を向上させるDSEEなど、多彩な機能を備えています。

――マルチポイント機能は具体的にどういった機能なのでしょうか?

 2つのデバイスに同時接続して、音が出ている方の音声を自動で選択する機能です。通常はPC接続になっていて、スマホに通話が来るとそちらに接続が切り替わるといった形ですね。

ゲーム用イヤホンで注目するべきポイントは?

――e☆イヤホンはゲーミングデバイス方面に注力されてきましたが、今のゲーム業界を見て感じたことはありますか?

 今年3月にオープンしたe☆イヤホン ゲーミングAKIBAでは、ゲーミングに全振り状態で営業していますが、今後もゲームはイヤホン業界でキーワードになってくると思います。“CRAZY RACCOON EARPHONE”を作って感じたのは、どれを使って良いのかわからないユーザーさんがすごく多いということです。e☆イヤホンとしては、ご自身に合ったイヤホン・ヘッドホンを選んで欲しく、それのお手伝いをしたいと思っています。ゲームのカテゴリも2024年も力を入れて取り組んでいきます。

――ゲームジャンルごとに合うイヤホン・ヘッドホンがあると思いますが、ゲーム用として購入する際に注目するべきポイントはどこでしょうか?

 まずはイヤホンなのかヘッドホンなのかという部分ですね。まずゲームで用いるデバイスとしては、圧倒的にイヤホンに傾いている印象です。アンケートでも50%以上の方がイヤホンを利用しているとのことで、今回はイヤホンに絞ってお話したいと思います。

 ひとつめはFPSなど敵の音を聴く際に重視したいポイントについて。今回“CRAZY RACCOON EARPHONE”を作った際にも意識したポイントですが、敵の位置が分かる“定位感”が重要です。敵との距離感、方向性を認識する際には不可欠な要素なので、これを表現するための前後左右、遠近を表現してくれるイヤホンが良いでしょう。

 また、重要などは敵の音なので、BGMのような低音域が不要になる傾向があります。人間は距離感を低い音よりも高い音で判断するので、FPSで重要になるのは高音域です。その表現に優れたイヤホンがFPSに合うイヤホンと言えますね。

 逆に、RPGなどで没入感を楽しむには、周囲の環境音やBGMの広がり表現する低音域が重要になります。プレイするゲームに応じて、この音域を重視して商品を選んでいただくと良いでしょう。

――2023年に東京ゲームショウへの出展もされましたが、手ごたえはいかがでしたか?

  • ▲こちらは東京ゲームショウ2023に出展したe☆イヤホンブースの模様。

 ものすごい手ごたえでしたね。出展前は「イヤホン専門店が出展してどうするの」という意見もありました。最初は来場者(約24万人)のうち2%の6千人くらいをブース来場者目標にしていましたが、蓋を開けると2万4千人がブースを訪れてくださりました。全体の10人中1人が来てくれた計算になります。抽選にも5千人以上が参加してくださいました。

――出展したことで、何か目に見える収穫はありましたか?

 他の収穫としては、これまで販売店でしかなかったe☆イヤホンが、ゲームのメーカーさんたちと繋がることができた点ですね。多くのメディアの方、配信者の方、プロゲーマーの方など、ご挨拶できただけで30名以上にもなり、あの場に出展したことがその後多くのことに繋がっていきました。

 出展費用について言われた部分もありましたが、実際に足を運んでからは「もっとやった方が良かったんじゃない?」と言われるくらいの大成功でした。社内にもゲーム好きのスタッフが多くて、この会社でゲームショウに出られると思わなかったという声もありました。出展効果が採用にまで影響していたこともあり、いろいろな副産物がありました。

――今後e☆イヤホンとしては、業界に対してどのような取り組みをしていこうと考えていますか?

 東京ゲームショウではアンケートを実施したのですが、イヤホンを店舗で購入する方は全体の15%程度しかおらず、とても少ないことを再認識しました。今は家電量販店さんでもじっくり試せる場は少ないと思います。最終的に買う場所は通販でも全然問題ないと思いますが、実際に試せる場の必要性をより感じました。引き続きe☆イヤホンでは、イヤホン・ヘッドホンを試せる場を用意して、ユーザーさんの商品選びに協力してまいります。

――ありがとうございました。

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