【サガ エメラルド ビヨンド】インタビュー。ネタバレ規制はとくになし? 実況者と同じプレイをしても同じイベントが起きないってホント!?【後編//サガエメ】

電撃オンライン
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 スクウェア・エニックスがNintendo Switch/PS5/PS4/Steam/iOS/Androidで2024年4月25日に発売予定の『サガ エメラルド ビヨンド』(サガエメ)。『サガ』シリーズ総合ディレクターの河津秋敏氏と、『サガ』シリーズプロデューサーの市川雅統氏へのインタビューを2回にわたってお届けします。


 『サガ エメラルド ビヨンド』(サガエメ)は、コンソールで展開する『サガ』シリーズの完全新作。どの世界へ行くか、6人5組の主人公から誰を選ぶか、どれくらい周回したかによって展開が異なるフリーシナリオによって、プレイヤーだけの独自の物語が紡がれていくのが特徴です。

 自分の運命や選ぶべきルートが見える“エメラルドヴィジョン”の導きに従いながら、風景も生活様式も異なる17の世界を渡り歩ける冒険の楽しさ。一筋縄ではいかず、頭を使うタイムライン式のバトルなど、RPGの魅力が濃縮された作品となっており、初心者からシリーズファンまで驚ける作品です。

 この記事では『サガ』シリーズのキーマンである河津秋敏氏と市川雅統氏にインタビューを行いました。シリーズファンの目線から、気になる要素やゲームの魅力について掘り下げていきます。

 河津秋敏氏(以下、敬称略):斬新なアイデアと骨太のゲーム性でファンを魅了する『サガ』シリーズ総合ディレクターにして、シリーズの生みの親。『サガ エメラルド ビヨンド』ではディレクターを担当。

 市川雅統氏(以下、敬称略):『ロマンシング サガ リ・ユニバース』や各種コラボなど、シリーズの総合的な監修を手掛けている『サガ』シリーズプロデューサー。本作でもプロデューサーを務めている。

 後編では、6人5組の主人公それぞれのプレイスタイルや初心者にオススメの遊び方。やり込み要素や周回などの仕様について聞いてみました。実際にプレイする時に、1周目の主人公を選ぶうえで悩みそうな人は、ぜひ目を通してみてください。

6人5組。プレイスタイルもプレイ時間もまったく異なる主人公たち

──ここからは、それぞれの主人公について教えてください。まず、御堂 綱紀(みどう つなのり)ですが、彼は初心者向けでわかりやすいキャラクターだとうかがいました。これは、ストーリーがわかりやすいということでしょうか?

河津:導入から作るという意識でゲームを作っていますので、御堂編から開発しているという理由が一番大きいです。

──ああ、なるほど。導入用のキャラクターとして作られていたんですね。

河津:世界観の説明や操作の説明が、一番丁寧に描かれているキャラクターです。だからと言って、難易度的に低いのかと言われると決してそういうことはありません。ただ、一番たくさん周回してもらえるように作っているのは御堂編です。

──周回するたびに、いろいろな面が変わっていきやすいキャラクターということですか。

河津:そうですね。彼の真実を知るには、何回もプレイしてもらう必要があります。

  • ▲御堂 綱紀のストーリーアート。

──御堂 綱紀は新種族のクグツがパーティメンバーのようですが、もしかしてクグツ以外は使えないのでしょうか?

河津:それはありません。クグツ以外も仲間にできますよ。クグツは特殊な種族ですが、バトル自体は何か特殊なことをするわけではないので初心者でも問題ないです。綱紀は1周ごとのプレイ時間が割と短めに設定してあるので、そういった意味でも初心者向けではあります。じつは、最初から1周がすごく長い主人公もいるんですよ。

  • ▲御堂 綱紀(みどう つなのり)(声優:三宅貴大)。“ミヤコ市”と呼ばれる世界で、クグツと呼ばれる人形を操る力を持つ御堂家の出身。

──1周が長い主人公と言うと、具体的には誰ですか?

河津:御堂 綱紀とアメイヤ アシュリンは、比較的短めに1周を設定しています。ほかの主人公は、まあまあ長いですね。

市川:本当に違うRPGというぐらい違うので、比較してプレイすると「アレッ?」と思うかもしれません。

──それを聞くと、今回は本当に1回クリアしただけでは終わらないゲームと言う感じがします。

河津:その通りです。1回では終わりません。それだけは間違いないです。1回どころか、2、3回でも全然終わりません。そういう意味でも、安心して買っていただいて楽しいゲームですよ。

市川:本当に終わらないですよね。1本買うとずっと遊べます。

河津:もう全部終わっちゃったよ……ということはありません。

──前作の『サガ スカーレット グレイス(以下、サガスカ)』も共通ルート自体はありましたが、主人公ごとにだいぶ違う印象でした。ただ、初心者だと難しいキャラクターもいましたよね。たとえば、1周目でバルマンテを選んでしまうと、地域の移動が制限されて苦労した人もいると思います。

河津:今回も、人によって割と自由に行く場所を選べる主人公もいれば、決まったルートや目的を進まなければいけない主人公もいます。

──そうなると、周回用の引き継ぎがどれくらい用意されているのかも気になります。

河津:当然、周回で引き継げるデータはありますし、プレイヤーが自分でエディットもできます。基本的にはデフォルトの引き継ぎが一番オススメになっているので、そのまま周回してもらえれば大丈夫です。もっとやり込みたいと思ったときには、自分で手を入れてもらえればと。そこら辺の情報は、発売してから出して行きたいと思います。

 2周目以降でもっと強い敵と戦いたい人は、さらに強い敵が出る設定をONにするといいですね。ただ、それをやると難易度が上がってしまいます。自分も成長しやすくはなりますが、最初のうちはそこをONにしないほうがいいでしょう。ですが、最初から歯ごたえがある周回を望んでいる方は、最初からONにしてもらっても全然構いません。引き継ぎ要素自体も、かなり細かく選べるようになっています。

──次に魔法少女のアメイヤ アシュリンですが、これもまた個性的というか珍しいですよね。そもそも『サガ』で、魔法少女の主人公自体が珍しいというか……。

市川:もう、変なキャラが多すぎて当たり前になっちゃってるんですよね(笑)。むしろ、魔法少女はイメージが想像しやすかったのですが、言われてみれば確かにそうです。

河津:魔法少女は最初からやろうと思っていたネタです。魔法少女が魔女の世界からやってきて、卒業試験に挑む。魔女の世界もちゃんとあって、魔女がたくさん出てくる光景がある。そういったことを全体の世界観を描くなかでやりたいと考えて入れたキャラクターです。

  • ▲アメイヤ アシュリン(声優:飯沼南実)。見習い魔女。一人前になるために、人間の世界で小学6年生の“泉 ゆめは”として過ごしていたが、何者かに魔法の力を奪われてしまう。

──彼女がいるミヤコ市には御堂綱紀もいますが、ここはあくまでも日本のように見えて日本ではない世界なのですか?

河津:ものすごく日本っぽさがありますが、日本ではありません。これまで『魔界塔士Sa・Ga』は別として、現代の日本に近い世界を出すのは避けてきました。今回は初めてそういった世界を出そうと思って、できれば関西、京都でやりたいと最初から考えていたんですよ。日本的で不思議なことを起こしても違和感がない場所といえば、京都が一番似つかわしい場所なので。京都でやりたいと考えて、ああいった世界をセッティングしています。

──魔法少女ということは、仲間にもどんどん魔女が増えていくとか?

河津:いやいや、魔女がたくさん仲間になったら魔法少女の存在価値がなくなってしまうじゃないですか。魔女の存在は、主人公に関して言えばアメイヤだけです。ちなみに、ほかの仲間はちょっと加入の仕方が特殊なんですよ。

 アメイヤは、結構ストーリーがメインの主人公になっています。きちんと魔法少女としてのストーリーを追いかけてもらう必要があるので、かなりシナリオベースの話です。ほかのキャラクターとも少し異なるのですが、普通のRPGともまたちょっと違った動機ですね。

  • ▲アメイヤのストーリーアート。

──それこそ、アメイヤ専用の魔法などもありそうですよね。

河津:装備品も特殊ですよ。魔法少女専用の、彼女を際立たせるための仕掛けがいろいろと入っています。

──なるほど。ただ、私のようにクセのあるプレイをする『サガ』シリーズのファンだと、魔法少女にはあえて魔法(術)を使わせずに剣や肉弾戦で戦わせそうな気も……。

河津:開発でも、そうなりがちなんですよ(笑)。みんなすぐ体術使いに育てちゃって「魔法(術)を使ってないですけど、いいでしょうか」と言われました。

 開発の序盤は、まだバランスがうまく取れていなかったこともあって、みんなムキムキの魔法少女になっていましたね。もちろん、今は魔法少女に術を使わせたほうがオトクになっています。

 術はどうしても詠唱時間があるので、慣れていない人は避けがちだと思いますが、そこはあえて術に意味がありますので頑張って使ってもらえればと。

  • ▲ボーニー&フォルミナ(声優:村中知&陶山恵実里)。大統領暗殺未遂事件の謎を追って、17の世界を巡る新米巡査ペア。

──本当に個性的な主人公が多いですね。次にボーニー ブレアとフォルミナ フランクリンという2人組の主人公についてですが、これまたバディで両方とも主人公という珍しいパターンだと思います。彼女たちは、最初から最後までずっとセットで使う形なのですか?

河津:そうですよ。もちろんワールドごとにシナリオがありますから、どちらがフィーチャーされるのかはその時によって切り替わります。常に2人で行動していくシナリオになっていますが、プレイヤーが自分の推しを決めてプレイしてもらっても構いません。

──ちなみに、この2人にしか使えない専用技や合体技などもあるのでしょうか?

河津:仕様的に合体技はないです。その代わり、2人だと連携しやすいといったような仕掛けはちゃんと用意されています。

──フォルミナはヒジャブを被っているのが特徴的ですが、これは海外を意識したキャラクターデザインなのでしょうか?

河津:どちらかと言えば、前作でバルマンテとアーサーという男性2人組のバディ物をやったので、次は女子2人組のバディ物をやりたいと思ったのが理由ですね。そこで、女性2人組の刑事物っぽくしようと考えてキャラクターを設定しました。

 あとは、どうしても女性キャラというと、男性目線で女性的な魅力をフィーチャーしたキャラになりがちじゃないですか。そうならないようにしようと意識して、キャラクター性やデザインを選択した結果です。それ以外の意図は、いっさいありません。どちらかというと今まで使ったことがないキャラクターを出したい、という発想です。

──バルマンテは大変でしたよね。アーサーを大事にしていないと、ろくでもない展開になりやすいというか……。

市川:「えぇーっ!?」となる展開がありましたね(笑)。

河津:今回は、そういうことはないので安心してください。最後にどちらか1人がいなくなるなんてことは、絶対にありません。約束しておきます。

市川:僕は前作のバルマンテ編が大好きなのですが、あの時と同じくらい、いや、もっとボーニー&フォルミナ編は刑事物風なバディ感がありますよ。

 開発中に、河津さんから「ボーニー&フォルミナ編がプレイできるようになりましたよ」と言われて遊んだときも、いきなり最初に●●が仲間になって驚きました。ネタバレなので伏せますが「この2人は、最初の仲間がこれなの!?」と。そういったおもしろさや女性2人の掛け合いが、すごく魅力的なパーティになっていると思います。

  • ▲シウグナス(声優:小野友樹)。“ヨミ”と呼ばれる世界の闇の王だったが、何者かによって別世界に飛ばされてしまった吸血鬼。

──なかなか、楽しそうな主人公ですね。では次の主人公ということで、おそらく女性人気が一番高そうなシウグナスについてはいかがでしょうか。

河津:たしかに女性人気を狙っているところはあるかもしれません(笑)。『ロマンシング サガ3』のレオニード伯爵は、HPの回復や効かない攻撃があることで特徴を出していましたが、シウグナスは本当に吸血鬼らしい吸血鬼。まだ詳細は伏せますが、血を吸えば吸うほどバトルで強力になるキャラクターです。

──人間だけではなく、モンスターや動物の血も吸えるのですか?

河津:いや、メカやモンスターの血は吸えません。いろいろなワールドに行って、そこにいる人たちの血を吸ったり、仲間のキャラからも血を吸うことができます。

市川:シウグナスは、仲間キャラクターのエピソードを辿っていくところが結構気になるお話になっていますね。画像にも男たちが映っていますが、彼らとの関係性や過去が物語を通じてわかっていくんですよ。そこがおもしろいところ。自分は女性ファンの気持ちまではわからないのですが、結構刺さるのではないかと思うような感じのシナリオですね。

──シウグナスだと男たちを仲間にしていく感じですよね。女性キャラは仲間にならないとか?

河津:いえ、そんなことはありません。誰を仲間にしてもらってもいいですし、血を吸ってもいいです。仲間にならない人からも血を吸えるので、自分の魅力で自身の力と仲間を増やしていくのが彼のプレイになっています。

市川:たとえば、同じ町でも御堂 綱紀で事件を解決したあと、2周目にシウグナスで行くと今度は血を吸う流れになったりするんですよ。不思議なことが起こるキャラクターなので、このゲームの中でも際立つ存在かもしれません。

  • ▲ディーヴァ ナンバー5(声優:諏訪彩花)。禁じられた歌を歌ったことで、人型のボディや歌声を奪われたメカの歌姫。

──次にディーヴァ ナンバー5ですが、彼女は序盤で女性型のボディがなくなってしまうんですよね。そのあとは、ずっとあのメカのままなのでしょうか?

河津:そうです。最初からそのつもりでシナリオを作っていました。ただ、実際に人間型ボディのデータを作ってみたら、あのボディでもうちょっと実際のフィールドや3D空間を操作できたほうが良かったかな……と。そこは、もったいなかったかも。モーション班が頑張ってくれたので、すごくいい動きをしているんですよ。ボディはほかにも種類があって、ユーザーが換えることもできます。

──それくらい、女性型ボディのほうは出番が少ないということですよね。ちなみに、メカということで成長システムが全然違うと思うのですが、過去作のように装備で成長していくのでしょうか?

河津:そうです。装備品で成長していく部分やプログラムをつけていくのはまったく同じです。

──ゲームボーイの『サ・ガ2 秘宝伝説』では、メカに武器を装備させると使用回数が半分になるデメリットがありました。ガラスのつるぎをメカに装備させて、回数が0になってしまうとか……。

市川:見た目はゲームボーイ時代のメカに似ていますが、武器の使用回数自体がないのでデメリットはありません。システム的には『サガ フロンティア』のT260Gに近いです。ボディを換えられる部分もT260Gをイメージしていただけるといいかもしれません。

──メカ専用の技もありますか?

河津:メカは“ひらめき”がないので、装備によってやれることが決まっています。武器ごとにメカ専用の技がついている形ですね。

1回や2回じゃ終わらない! 遊ぶたびに違う姿を見せる『サガエメ』はみんなでシェアしあうゲーム!?

──ここまで、主人公についてひと通りうかがってきましたが、お話を聞くだけでも『サガスカ』とはかなり違う印象を受けました。キャラクター選択画面の時点でもクリア数が書いてありますし、最初から複数の主人公で周回することを想定したゲームなのですね。

河津:はい。主人公自体を複数回選んでもらえるように作っていますし、各ワールドも二度三度行くとまた違うことが起きるように作っています。その組み合わせで、毎回どの主人公で遊んでも新鮮に遊んでもらえるのではないでしょうか。自分は、プレイヤーに二度同じことをして欲しくはないので、今回もそういうつもりで作っています。どのくらい変化があるのかは、実際に遊んで見てもらえればと。

市川:テストプレイをしている時も、まったく展開が違うんですよ。たとえば、複数の人間で同時に御堂綱紀編を遊んでみるとしますよね。1時間経ってから「どこまで進んだ?」と聞くと、もうその時点から人によって展開が違うんです。1周目でも違うし、次に選んだキャラクターでも展開が異なりますし、そのキャラクターの2週目でも展開が変わるし、お話の流れも変わる。そんなことが起こるゲームなので、これは永遠に飽きないのでは……というのが自分の感覚ですね。

──前作だと1周目でも50時間以上かかるくらい長いゲームでしたが、今回は1周がどれくらいのプレイ時間になるのかも想定しにくそうですね。

河津:昔のゲーマーは、金曜日にソフトを買ったら週末の土日に徹夜で遊び、学校が始まるまでにクリアするようなプレイをしていたと思います。今回は、そのくらいの時間で1人目が終わるように意識して作りました。

 もちろん、主人公と周回の組み合わせではそれくらいで終わる場合もありますし、じっくり遊んでいれば場合によっては100時間ぐらいかかる主人公もいます。そこは本当にバラバラになっちゃいましたね。本当は、もうちょっと短くしたかったんですよ。前作はちょっと長すぎたので、20時間から30時間で終わるようにしたいと思っていました。

市川:今もテストプレイ中なのですが、プレイ時間はキャラクターによって全然違います。強さの調整をしている最終段階なのでここから少し変わるかもしれませんが、先ほども言った御堂 綱紀とアメイヤ アシュリン以外のキャラクターは寄り道をしていると数十時間かかってしまうこともあると思います。

河津:どうしても、シウグナスとディーヴァ ナンバー5の2人は長いですね。この2人はシナリオ進行上、色んなワールドを巡ることになるキャラクターなのですが、1つのワールドだけでも、最低2時間では終わりませんから。

──お話を聞いていると、1周目のキャラクターですべてのワールドを回れるわけではなさそうですね。

河津:最初から全部回れるようにしてしまうと、ものすごく時間がかかってしまうんですよ。できるだけいろいろなキャラクターに変えて別のワールドへ行ってもらいたいですし、同じキャラクターでも一度行った場所に2周目で行けば、まったく違う展開が見られるかもしれません。そういった遊び方をして欲しいので、最初からすべてのワールドを回れる『サガスカ』のレオナルド編のような遊び方にはしていません。

──主人公によってはいけないワールドもあったり、周回しても全ワールドを回れるわけではないと?

河津:いえ。そこはある程度進めていけば、全ワールドを回れるキャラクターもいます。好きなメンバー構成でラスボスに挑むとか、やり込み要素としてプレイヤーが好きにできるように作っています。

──『サガ』シリーズは本当に奥が深いですね。自分はVita版の『サガスカ』を150時間遊んだのですが、それでもすべてを把握できませんでした。本作も、何百時間単位で遊んでも底が見えないような気がしています。

市川:今回は、よりそうなる可能性があります。できれば自分でプレイしていただいてから、いろいろな感想やほかの人とのプレイの違いを見て欲しいですね。こんな展開があったとか、自分はこんなことをしたとか、プレイした感想をシェアしていくと、よりおもしろくなると思っています。

──今はゲーム実況が盛んですが、作品によっては配信のガイドラインが厳しいものもありますよね。ネタバレの規制範囲はどこまで設定する予定なのでしょうか?

市川:厳しく設定しないと思います。このゲームはガイドラインを設定しても、あまりネタバレにならないんですよ。

河津:そこはもう、買った人の自由だと思います。たぶん、実況で見ても同じ場所にたどり着けるとは限りませんから。普通に遊んでいると「配信で見ている内容と、自分のプレイが全然違う結果だった」となるので、ガッカリする必要もありません。

市川:逆に、あの人と同じイベントがしたいけど起きない。たどり着けないというパターンはメチャクチャあると思います。

河津:どちらかと言えば、そちらのほうが心配ですね(笑)。「あの実況者がやっていたイベントが起きないのですが、本当にこれで合ってますか?」と言われても、う~ん起きることは起きるのですが、あなたのプレイだと起きないかも……と言わざるを得ないことが、どうしてもありそうで。

──聞いているだけでもデバッグが大変そうですが……。

市川:デバッグは本当に大変です。今、最終のデバッグをしているところですが、QAの時間が足りないと思うくらい時間がかかっています。

──今回は最初からマルチハードで展開しているので、それも含めて時間がかかりそうですね。

河津:発表から実際のリリースまで時間が空いてしまったのは、そこが大きな原因です。本当はギリギリまで作りたいのですが、そうはいかない。プラットフォームごとに締め切りがありますし、言語対応もありますから、ユーザーさんが考えているよりもずっと早く完成させないといけないんですよ。

──ユーザーさんのなかには『サガ』シリーズがゲーマー向けなイメージを持っている人もいると思います。『サガ』を遊んだことがない、あるいはもっとライトなユーザーに対して、どう捉えられているのかお聞かせいただければと。

河津:『サガ』は難しいゲームだから売れない……といったことはまったく考えていません。そういう意味では実はフロム・ソフトウェアさんの歯ごたえのあるゲームには、本当に勇気をもらってますね。もう『サガ』なんて全然優しいほうですよ。でも、今の若い人は難しいゲームを遊ばないのかと言えば、決してそんなことはないですよね。

 そもそも、ゲームが好きじゃない人に無理に遊んでもらう必要はないんです。ゲームが好きじゃない人に文句を言われても困りますが、ゲームが好きな人に遊んでもらって文句を言われるのはかまいません。

 ゲーム自体がエンタメなので、ゲームを遊ぶ人とまったく遊ばない人で明確に分かれていますよね。それでも、きちんと売るべき人に売っていけば、ちゃんとユーザーは付くと思っています。だから、ゲームを遊ばない人のことまでは考えなくていいと思っているんですよ。市川さんはまた全然違うと思いますが、自分はそういう発想ですね。

──ゲームが好きな人に向けている発想があってこその河津さんが作る『サガ』なのだとも思います。そこをバランス良く市川さんが舵取りをしていくと。

市川:僕はクリエイティブなことも少しはしますが、河津さんに比べたらもう全然大したことがないですし、クリエイターではなく厳密に言うとプロデューサーです。なので、河津さんとは少し考え方が違います。

 河津さんはゲームが好きじゃない方という話をされていたと思いますが、もっと手前の話で「そもそも、ゲームを遊ばなくてもいいよね」というファンの人もたくさんいるんですよ。『サガ』好きの方がゲームをやり込んでいるゲーマーなのかと言えば、オーケストラのコンサートや『ロマサガRS』のファンイベントをやっていると、そんなことはありません。ゲーマーと言うとゲームを遊んでばかりいる人のように見えるかもしれませんが、現実には全然そんなことがなくて、本当にIP自体を愛している人が多いです。

 『ロマサガRS』も、そうした人たちへの間口を広めるために作った要素が多いですよ。ただ、結果的に高難易度コンテンツは時間がかかりますし、難しいゲームにはなっています。『サガ』シリーズは割とそういうところがあるんですよ。それでも遊んでいただけているのですが、どんなにおもしろいものでも振り向いてもらう努力をしなければいけないと常日頃から考えています。

 間口を広めると言う意味では『ロマサガRS』をリリースして以降、そこから入った人に向けて定期的にリマスターを出しているのもそうですね。『ロマンシング サガ3』『Sa・Ga COLLECTION』『サガ フロンティア リマスター』『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』と、じつは運営中に毎年何かしらのリマスターを出しているんです。今年は『サガエメ』の開発もあって出していないのですが、毎年『ロマサガRS』からファンになった人が、過去作をさかのぼって遊べるような構造を作っているんです。

  • ▲当時の魅力はそのままに数々の便利機能や追加要素を導入した、新規ユーザーにもファンにもうれしいリマスター作品『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』。

 それでも、やはりどうしても運営型ゲームのファンとコンソールゲームのファンは、似ているようで全然違うユーザー属性なんですよね。スマホでゲームを遊ぶ人のなかには、コンソールのゲームをまったく遊ばないという人も多いです。

 でも、これが新作となれば話が別じゃないですか。『サガ』シリーズのコンソール最新作を、みんなが同じ位置で一緒に遊べるタイミングなんですよ。とくに『サガエメ』は同じ主人公でプレイしていても、ほかの人とまったく違う展開になるというイベント的なおもしろさがあるので、そこをぜひみなさんで味わってもらえるとうれしいですね。難しいゲームですが、みんなで遊んだら楽しいと思います。

──発売日が2024年の4月25日ということで、今なら同じタイミングで遊ぶのにも間に合いますね。発売日が決まりましたが、あらためて発売日に向けた施策なども考えておられるのでしょうか。

市川:まだ言えないことも多いですが、いろいろ考えています。シリーズを遊んでくださった方はもちろん、今は『サガ』シリーズのユーザーさん自体がすごく広がっているんですよ。そういった方たちに向けて、いろいろな施策を準備しようと思っていますし、『ロマサガRS』とのコラボなども考えています。12月15日から『サガ』シリーズの35周年も始まるので、いろいろと盛り上がっていければと。

 ゲームボーイの初代『魔界塔士 Sa・Ga』が出てから、来年の12月15日で35周年。そこに合わせて盛り上げていきますし、イベントもおこなっていきたいと考えています。2月末に舞台もやる予定なので、そのタイミングで35周年の展示もしようと思っていますし、12月15日の生放送で発表したように限定ボックスもあります。また、12月15日のタイミングだと佐賀県とのコラボも始まっていますし、来年は佐賀県コラボの10周年でもありますよね。こちらも何かできないかと考えていますので、楽しみにお待ちください。

──個人的にも期待しています。では、最後に発売日も発表になったということで、あらためてサガファンのみなさまにメッセージをいただけないでしょうか。

市川:35年間、みなさまに楽しんでいただいた『サガ』シリーズですが、このタイミングで最新作を出すことができました。自分はプレイヤーさんの前に立つことが多かったのですが、本当にファンに支えられてきたと思いますし、ファンの方々がいなかったら新作は絶対に出せなかったと思います。本当にありがとうございます。発売日も発表されたので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

河津:コマンドRPGが大好きな方であれば、遊んでいただけると今までのRPGとは全然違う体験ができますので、ぜひ楽しんでもらえればと思っています。また、あまりRPGを遊ばないという方も、ひょっとするとこれをきっかけに「RPGって、意外とおもしろかったんだな」とハマってもらえるかもしれません。ぜひ手を伸ばしてもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。


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