『FFXIV』願いと祈りが生み出す偽りの神――“蛮神”と、創造魔法にまつわる仮説思考【The Villains of FFXIV】

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地に満ちたエーテルであるクリスタルを喰らう蛮神は、
その肉体までもがエーテルで構成されている。
だから、倒すことで肉体は砕け、
そのエーテルは大地へと還元されてゆく……。
それでも魂だけは、エーテル界に還ると考えられているわ。
【暁の血盟 盟主 ミンフィリア】

よいか、人の子よ。
神とは想像力の産物……
願いの力が、星の命を用いて作り出す虚像。
【七大天竜 闇竜ティアマット】

 オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』でこれまで冒険者の前に立ちはだかってきた敵対者たちを追想する企画【The Villains of FFXIV】。その第2回で扱うのは特定個人の回顧録ではなく、『FFXIV』の物語全編を通して重要な“蛮神”についての考究です。

 これまで冒険者が旅の中で対峙した蛮神の多くは、召喚者(たち)が自らの願いを叶えるための力としてこの世に顕現した存在でした。神降ろしの儀を経て知性ある者が喚び出した、尋常の命とは異なるもの……争いの内に在り、いくつもの悲劇を生み出してきた蛮神とは、いかなるものなのか? 今後さらに核心へと向かうであろうメインストーリーをより楽しむために、パッチ5.1までの情報を参考にしつつあらためて迫ってみたいと思います。

※本企画の解説・考察は、ゲーム内の情報や世界設定本“Encyclopaedia Eorzea ~The World of FINAL FANTASY XIV”などを参考に筆者が独自に展開したものです。

【第2回:蛮神 目次】

◆蛮神の定義、その推移

・七大天竜によって告げられた“蛮神”の新たな側面
・蛮神と、創造魔法による始源の“召喚獣”

◆祈りと願いが生んだ物語――これまでに出会った蛮神と、それに類するものたち

(焔神イフリート/岩神タイタン/嵐神ガルーダ/善王モグル・モグXII世/水神リヴァイアサン/雷神ラムウ/氷神シヴァ/友神エンキドウ/闘神オーディン/龍神バハムート/不死鳥フェニックス/雲神ビスマルク/武神ラーヴァナ/騎神トールダン/機工城アレキサンダー/魔神セフィロト/女神ソフィア/鬼神ズルワーン/神龍/豪神スサノオ/美神ラクシュミ/夜神ツクヨミ/創神エウレカ)

◆“星の理を紡ぐもの”の具現……ハイデリンとゾディアーク、第一世界における蛮神やテンパード化についての雑考

・ゾディアークはなぜ創られた?
・ゾディアークを構築する概念とは
・第一世界の魔法技術と創造魔法

“蛮神”の定義、その推移

 ガイウス・ヴァン・バエサルを筆頭とするガレマール帝国軍第XIV軍団の脅威が去ったのち、暁の血盟やエオルゼア諸都市国家首脳があらためて直面したのは、エオルゼアを蝕みつつある“蛮神”問題です。これまでに暁の面々と協力してイフリート、タイタン、ガルーダの3柱を討伐してきたとはいえ、当時はまだまだ謎の多かった“蛮神”。最初のうちは、獣人がアシエンから神降ろしの儀を授けられた結果、“帝国の侵攻や周辺のヒトとの摩擦で種の安寧を脅かされたことをきっかけに、救いを求める切なる祈りと多量のクリスタル(エーテル)を用いて召喚された、彼らの神”……といった程度の認識しか明らかになっていませんでした。その基本的な特徴は以下のようなもの。

→長そうだし結論だけ見たい! という方はコチラ
●蛮神と、創造魔法による始源の“召喚獣”

・強い信仰心を糧にして顕現(信徒の数が多いほど、祈りが強いほど蛮神は強大となる)

・召喚には多量のエーテルが必要(多くの場合は環境中のエーテルだけでは足りず、エーテルの結晶体=クリスタルを大量に用いる必要がある。召喚時のエーテル量が多いほど蛮神は強大となる)

・身体までもがエーテルで構成されている(人間の場合は、基本的に肉体の内に魂=精神エネルギーとしてのエーテルが内在している)

・存在しているだけで環境エーテルを吸い続ける(土地のエーテルが枯渇すると生命の芽吹かない死の大地となる)

・独自の意思を持つ(魂を宿しており、再召喚されても人格が同一と見られる)

・倒すと、身体を構成するエーテルは大地に還元される

・特殊なエーテルの放射により他者の魂を“テンパード化”することができる(テンパードとなった者は日常生活に支障を来すほどの心神喪失状態となったり、対象の蛮神に有利な行動をとったりするようになる)

・“超える力”を持つ者や他の蛮神のテンパードに対してはテンパード化のエーテルが無効となる

・一度テンパード化したのち繰り返しテンパード化のエーテル放射を受けると、死に至ったり、肉体そのものが変質してしまう

 このように、蛮神は願いの力と多量のエーテルをもとに顕現し、存在の維持に環境エーテルを消費し続ける存在です。

 そしてエーテルとは、すべての命に宿る生命エネルギーのこと。生き物の内には“魂”として精神エネルギーたるエーテルが内在しており、肉体にもエーテルが宿って血液とともに循環しています。エーテルが肉体から消えれば命も尽きる……その意味ではエーテルは命そのものとも言い換えられるでしょう。

 さて、前述のとおりエーテルは生命体の内を循環しているわけですが、それは冒険者たちが暮らすこの惑星も同様。大地を伝うエーテルの奔流は“地脈”、風とともに大気を流れるエーテルは“風脈”と呼ばれ、星のエーテルは絶えず巡っています。しかし蛮神の顕現により環境に宿るエーテルが奪われて枯渇してしまえば、血の通わなくなった末端が壊死するようにその土地の命脈は絶え、新たな生命すら生まれなくなる……。ゆえに、この星にとって取り返しのつかない事態を招く蛮神は危険視されているのです。

  • ▲目に映る世界……物質界は、冥界とも呼ばれる“エーテル界”と重なり合って存在しています。そしてこの2つの界では、物質界で新たな命が生まれればエーテル界から生命エネルギーが流れ込み、死すればその生命体のエーテルはエーテル界へ還る“生命の循環”が常に起きている様子。蛮神召喚によるエーテル枯渇は、この命の流れの根本を断つ現象だというわけですね。

 ちなみに、“蛮神”とそれを召喚した“蛮族”という呼び名は、近代、ガレマール帝国によって用いられるようになった呼称。エオルゼアでは、蛮神は古来“闘神”や“荒神”などと呼ばれていました。また、神への信仰を糧にしてその信仰対象を具現する……という構造上、多くの蛮神の性質・外見は各地の神話・伝承と深い結びつきがあります。

 そして神とは、ときに異なる体系の神話にまたがって語られることの多いもの。現実世界でも、とある神話で神と崇められた存在が(あるときは支配側の政治的戦略として)別の宗教では悪魔とみなされている……なんてことが多々あります。蛮神の一部にもその傾向は見られ、例えばシルフ族の守護神である雷神ラムウとエオルゼア十二神の壊神ラールガーは、“人の姿をした神”“老人”“雷の力を持つ”という共通点があることから、本質的に同一のものではないかという見方もある様子。

 冒険者は、先の3柱に加えて、“神”ではなくモーグリ族に伝わる物語の登場人物である善王モグル・モグXII世や、サハギン族が喚んだ水神リヴァイアサン、そしてシルフ族の召喚した雷神ラムウなどと邂逅しました。これまでの蛮神は獣人たちの“外敵を排してほしい”という類の願いをもって具現したため即座に戦いとなりましたが、“静かに暮らしたい”という願いのもとに具現したラムウとは対話が成立し……その際に、冒険者は以下のような言葉を投げかけられています。

結果的にヒトは、森に穢れと争いを持ち込むだけじゃ。
すべてはヒトが、闇を抱える存在だからにほかならん。
……そもそも、ヒトはいつから闇を抱えるようになった。

始原の時…そこには光も闇もなかった……。
まさか、ヒトがヒトたるために生まれたというのか。
ならば、ヒトがいる限り、この世から、穢れと争いが無くならぬ道理よな。
なぜなら、ヒトが生きるために必要なことだからじゃ。

 当時は単に“人の心の闇が新たな争いを引き起こす”といった意味合いで受け取れましたが……パッチ5.0のメインストーリーを終えた方であれば、また違った意味合いに受け取ることもできるかもしれません。

七大天竜たちによって告げられた、“蛮神”の新たな側面

 その後、冒険者は北方の都市国家イシュガルドにおける異端者騒動のなかで、異端者の一団を率いる“氷の巫女”イゼルが己の身に氷神を降ろす瞬間を目撃。氷神の元となったのはかつてドラゴン族とヒトの融和を成した“聖女シヴァ”だということで、またしても神ならぬ存在をモデルとした蛮神が登場した形です。

 パッチ2.X終盤の当時は、ちょうど事件屋ヒルディブランドの物語のなかでギルガメッシュがかつての相棒・エンキドウを“友神”として召喚したこともあり、「蛮神とは?」という問いにあらためて注目が集まっていたように思います。「ただ神を召喚しているのとは違うようだけど……」そんな疑問に新たな答えが提示されたのは、『蒼天のイシュガルド』の物語の渦中でした。

神降ろしとは、神を創造する行為にほかならぬ。
弱きものが信仰にすがり、その内に見せる幻よ……

 1000年続く人とドラゴン族の戦い――竜詩戦争。上記は、その戦いに深くかかわることになった冒険者が、アルフィノやイゼル、エスティニアンとともに七大天竜の一角・聖竜フレースヴェルグと邂逅した際に聞いた言葉です。

 数千年の昔、南メラシディア大陸に生息していたドラゴン族(の1氏族)は、当時世界各地に侵略の手を伸ばしていた古代アラグ帝国の攻撃を受け、一族の長であった七大天竜・光竜バハムートを失いました。その伴侶だった闇竜ティアマットは悲嘆に暮れ、アシエンの囁きに耳を貸す形で光竜を蘇らせようとしましたが……神降ろしの儀で顕現した龍神は元のバハムートとは似つかぬ破壊の化身であり、荒れ狂うフレアの力でアラグ帝国兵に甚大な被害を与えたといいます。そういった過去の事柄や、悠久の年月を生き多くを目にした経験から、ドラゴン族は“神降ろしの儀で顕現するものは、願った者の心が創り出した幻想である”ということを身をもって知っていたのでしょう。

 このようにして、七大天竜たちにより、蛮神とは真なる神ではなく“召喚者(たち)の想像力によって生み出された虚構の存在だ”という見解が示されました。呼び出すものが神である必要がないということはつまり、宗教的背景がなくとも、疑いなく、強く対象を信じることさえできれば、誰もが幻想を具現できるということ。イゼルやギルガメッシュたちが神ならぬ神を召喚できたのもそういうことですが……本来大勢が共通のイメージを持たない限り成立しない神降ろしをたった1人で為しているあたり、彼らの“願う力”(魂の力=精神的エネルギー?)は余人と比べものにならないほど強かった……ということでしょうか。

 なお、『紅蓮編』メインストーリーでは、霊験あらたかで人々から神器と祀られるような物品を召喚者に持たせて、簡易的に蛮神を呼び降ろす手法も用いられました。人々の信仰を集める特別な品物……それそのものに強い神話性があれば、召喚者自身に信仰心がなくとも容易にイメージの具象化が叶うということですが、これが成り立つ背景には、海、山、木々、年経た器物などなど天地のあらゆるものに八百万(やおよろず)の神が宿ると信じられている東方地域特有の性質も関係していたのかもしれません。

 ちなみに……先の話と少し被りますが、蛮神が神話に根付いた姿をしていることが多いのは、“神話に語られる存在(誰もが知る物語の登場人物)”というものが、不特定多数の者たちに同一のイメージを抱かせやすいからという側面もあるのだと思います。多数が同一イメージを描くための温床として、“宗教”や“物語”はじつに都合がいいというわけですね。

蛮神と、創造魔法による始源の“召喚獣”

 このように、冒険者はこれまでの旅路のなかで蛮神についての見識を得、多様な“願いの産物”と相対してきました。蛮神は、多量のエーテルを用い、願いと祈りによるイメージを具現化した存在――。ただ、それでもまだ「蛮神とは何なのか?」という問いについてすべての答えが提示されたわけではなく、大小いくつもの疑問が残されたままであったように思います。

 いくつか挙げると、例えば……「想像力が具現した存在であるにもかかわらず明確な人格(魂)が存在しているのはなぜか」「幾度か再召喚されているにもかかわらず、蛮神たちの人格が(ガ・ブのときのような例外を除いて)毎度同じものであるように見えるのはなぜなのか?」「ラムウのように、召喚者たちが知り得ないような情報を持っている蛮神がいるのはなぜか?」「イゼルは己の身に氷神シヴァを降ろしたのちに元の姿に戻っている……超える力がかかわっているのは間違いないだろうが、具体的にどういうことをしていたのか」などなど。

 その答えを考えるにあたって“創造魔法”という大きな情報が投じられたのが、『漆黒のヴィランズ』5.0のメインストーリー(+“創造機関 アナイダアカデミア”関連のサブクエスト)でした。

 創造魔法とは、その名のとおりイメージからものを生み出す魔法。悠久の過去、遙か1万2000年も前の時代――この世界が14に分割される以前に存在していた人々が用いた技術。エーテルを媒介に、強い願いとイメージによって虚構を実体化するという創造魔法は、まさに蛮神を呼ぶ“神降ろし”と符号する理とも言えるでしょう。当時の人々は現行人類とは比べ物にならないほど強大な魂(エーテル/精神エネルギー)を有しており、体内エーテルを用いて、生物、無機物問わずこの世の森羅万象をイメージから紡ぎ出すことで、文字通り“世界を創り、管理して”いました。彼らは願いを具現化した際、そのイメージを構成する要素――概念(イデア)を保存して、誰でも扱えるようにアーカイブ化していたのだとか。そしてそのイデア自体は、現行人類が魂の分割によって創造魔法を自在に行使できなくなったというだけで、今も世界に理として息づいているのだと思います。

  • ▲ものを構築する要素をイデアとして管理・保存し技術体系化……というと、創造魔法には“エーテルを用いたプログラミング技術”といった趣も感じます。ただ、イメージが重要なだけに、雑念が混じると思いもよらない失敗となる危険もあるのだとか。

 古代人そのものについてはいずれ別の機会に詳しく扱えればと思いますが……彼らは当時、人々の潜在的恐怖の集合体が具現化した“獣”に対抗するための力を模索し、“己の命をエーテルに変換して全消費することで、強大な幻獣を具現化する”という術を編み出しました。こうして生み出されたのが、召喚獣(ガーディアンフォース)。蛮神の原型と思われる存在です。

 ただ、この時点では召喚獣はあくまでも強力な幻獣でしかなく、魂や意思は宿っていないものと見受けられます。漆黒秘話の第4話(5.0メインストーリー終了後の閲覧を推奨)によれば、いかに創造魔法といえど魂を作ることはできず、さらに生物として形作られていない“生きた魔法”たる存在には生来の魂は宿らないという話でした。ただそれと同時に、ふと迷い込んだ魂が、あたかも虚ろな器に入り込むような形で創造物に宿った事例もあったようです。

  • ▲こちらは、メインクエスト“岩神を喚ぶ声”で明確な願いなく混乱状態で具現化したタイタンの言葉。まるでコボルド族の子ガ・ブの魂が入り込んでいるような言動ですが……。

 ここからは現段階で事実として語られていないただの仮説ですが……古代人はゾディアーク召喚前後どこかのタイミングで、術者が命を賭けて生み出した召喚獣に何らかの魂を外部から(あるいは術者自身から)意図的に乗り移らせる(ジャンクションさせる)方法を確立したのではないでしょうか。前述の通り、召喚獣はもともとは“獣”に対抗するための力として生み出されたもの。どのような願いと自己犠牲の賜物としても、その用途は兵器に近いものであったものと思われます。そして兵器としての運用を考えるならば、召喚のたびに古代人が命を落とし、具現化したのちも制御が覚束ないとあっては、とても積極的な使用はできないでしょう。戦力としては最低限制御できること、そして可能ならば、倒されて消滅しても、命をむだに費やさず再召喚できるのが望ましいはず。

 ゆえに彼らは召喚獣に何らかの魂を宿らせることで人の意思による制御を可能とし、さらには召喚獣の身体とそこに宿った魂を“1つの存在”と定義づけたうえでイデアを保存した……のかもしれません。そうすることで、ほかの創造魔法と同様、単にエーテルを消費するだけで召喚獣を再度呼び降ろすことを可能とした……そうして作られた存在こそが、兵器としての召喚獣の完成形、つまりは蛮神の原型ということだったのではないでしょうか。

 召喚獣の身体を構成するエーテルが散れば魂はエーテル界(冥界や星海とも呼ばれる、惑星の内で命がたゆたう場所)へ還るものの、再召喚されれば同じ魂が呼び戻される……。再召喚された蛮神の魂が同一であるように見えるのも、召喚者の及ばない知識を持ち得るのも、いちおうはこれで説明が通るように思います。

 また、イゼルのように自分自身に蛮神を呼び降ろすケースは、願いと創造の力で蛮神の身体を形成(身体の再構築)し、そこに己の魂を憑依させているものと推測されます。彼女が“シヴァ”と“イゼル”を障害なく行き来できるのは、超える力があればこそだったのではないでしょうか。蒼天編メインストーリーではアシエン・ラハブレアとアシエン・イゲオルムが共同で構造体“アシエン・プライム”を作りだし、そこに自分たちの魂を憑依させていましたが……つまるところ、イゼルは原理的に不滅なる者と同じことをしていたのかもしれません。

  • ▲超える力を持つ者による似たような事例を、冒険者は昨今幾度かその目で見てきました。

 さて、もしも蛮神の多くが“概念としてすでにあった”存在だとするならば……神降ろしの儀を伝えたアシエンたちは、はるか古代から、イデアとして登録されている召喚獣を信仰対象とするような神話や宗教を獣人や各民族に流布していたのでしょうか。あるいは、古代人たち自身の行いが語り継がれ神話となったのか……。案外、世界各地に残るいくつかの神話の“原型の作者”は、アシエンや古代人だったのかも? だからこそ神話を伝える者として“天使い”という呼び名が成立した……そんな推測もできるかもしれませんね。

 とはいえ、もちろんすべての蛮神が古代人の管理下にあった存在というわけではないでしょう。あくまでも、願いの力で想像を具現化するという創造魔法の理を(そうとは意識せず)用いて生み出されたのが蛮神であるとするならば、なかには、古代人が思いもよらぬ力を秘めたものもあったのかもしれません。ただ、そういった“新たな”蛮神はエネルギーと能力だけが具現した存在であるわけで、本来(なんらかの外的要因がない限り)、魂は宿っていないはず……。それぞれの蛮神に宿った魂とは“何”なのか? 言葉を解し会話が成立する蛮神がいること、それらの神話で語られる内容の真の意味とは? などなど、思索の種は尽きません。

  • ▲ちなみに、現行人類に召喚された蛮神が環境エーテルを吸収し続けるのは、召喚者のエーテルが足りないために蛮神が活動維持に必要なエーテルを環境エーテルで補おうとしているからだそうです。

 このように、創造魔法という概念の登場で蛮神にまつわるいくつかの物事にいちおうの説明がつくようになりました。しかしもちろん現段階では仮説の域を出ず、さらには『漆黒のヴィランズ』近辺において、“この星の理を管理し得る存在――ハイデリンとゾディアークが、創造魔法で生み出された蛮神だった”という真実が明かされたため、それに絡んだ謎はまだまだ存在しています。これまで蛮神についての情報がじょじょに明らかになってきたのと同様、今後も多くの展開が待ち受けていることでしょう。

  • ▲『旧FFXIV』のオープニングムービーでは、幻龍ミドガルズオルムが倒れた際に、蛮神と思われる無数の光が方々に散っていく様子が描かれていました。ミドガルズオルムは、イデアを元とした蛮神たちを封印する楔のような役割を担っていたりしたのでしょうか?

祈りと願いが生んだ物語――これまでに出会った蛮神とそれに類するものたち

 本項では、これまでに冒険者が出会ってきた蛮神とそれにまつわる物語を、ごく簡単に振り返ってみたいと思います。それぞれの神話・伝承と、“創世の時代”というワードにまつわる情報を紐解き、世界の再創造時の様子に想像をめぐらせてみると、興味深いことに気づけるかもしれません。

●焔神イフリート
 アマルジャ族の神。“知性のない獣ばかりが地に満ちていた始源の時代”、ひときわ生命力の高いトカゲ――のちのアマルジャ族に己の炎を分け与えたとされる。

●岩神タイタン
 コボルド族の神。創世の時代、命通わぬ堅く危険な大地を育む者としてコボルド族を生み出し、彼らが生きられるよう、採掘と冶金の術を授けたと伝えられる。

●嵐神ガルーダ
 イクサル族の神。“浮遊大陸アヤトラン”でイクサル族を使役し、天を守っていたとされる。なお、古代アラグ帝国の資料には、キメラ獣“イクサリオン”を指揮するアラグ人の女将軍の記述が残っているのだとか。

●善王モグル・モグXII世
 モーグリ族の神話に語られる“最後の王”。神々の争いで被害を受けた際、一族を誘導して下界に避難させたという。ただ、仲間を地上へ降ろすための長い糸を王が持ち支えていたため、彼自身は地上へ降りることができなかったようだ。

●水神リヴァイアサン
 サハギン族の神。創世の時代、渇きに苦しむこの星に海を創るべく、神々に招かれたと伝えられる。海を生んだのちは一時的に力を使い果たしていたものの、多くの魚たちが自らの命を差し出したことで復活。その魚はリヴァイアサンの祝福を受け、サハギン族となったという。

●雷神ラムウ
 シルフ族が崇める神。シルフ族の神話はいっぷう変わっており、シルフ族が生まれる前に、すでにこの星には“人々”が暮らしていたと語られる。人々に搾取されるのみであった木々が救いを求める悲痛な願いを聞き届け、“人の神”でもあったラムウがシルフ族を創り、森を護る知恵を授けたのだとか。

●氷神シヴァ
 イシュガルドの異端者を率いる“氷の巫女”イゼルが己の身に降ろした憑依型蛮神。1200年前にドラゴン族との融和を為した聖女シヴァと、イシュガルドの民が崇める氷河と戦の神ハルオーネの伝承が混交した結果この姿となった。

●友神エンキドウ
 ギルガメッシュがかつての親友を思い出していたところ、周囲のクリスタルが反応して顕現した“友神”。得意技はホワイトウインドだが、ここ最近、ミサイルを使うことを切望され、使用後は即座に倒されるという経験をしたとかしないとか。

●闘神オーディン
 黒衣森をさまよう、アラグ帝国時代の旧き闘神。携えた魔剣“斬鉄剣”が本体で、手にした者の身体を乗っ取る形で幾度も復活を遂げてきた。オーディンという存在については諸説あり謎に満ちているが、現代に伝わる資料には、アラグ帝国に反逆していたこと、ウルズという女性を斬り殺したという事実が記されているようだ。なお、バルデシオンアーセナルに出現したライディーンは「嗚呼、オーディン……悲哀の英雄よ!我は、その意思を継ぎて、悪しき帝国に挑まん!」との言葉を残している。もろもろの資料から仮説を立てるならば、オーディンはかつてアラグ帝国の圧政に抗うため聖女ウルズとともに立ち上がったものの、より強い力を求めて手にした斬鉄剣に身体を乗っ取られウルズを斬殺。無念のまま魂を失ったのではないかと思われる。

●龍神バハムート
 闇竜ティアマットをはじめとする南メラシディアのドラゴン族が、七大天竜“光竜バハムート”を蘇らせようとして生み出してしまった闘神。アラグ帝国に甚大な被害を与えるも、機械生命体“オメガ”に敗北し拘束される。のちにフレアを操る力を利用して莫大な太陽エネルギーを得ようとしたアラグ帝国により、信徒たちとともに“衛星ダラガブ”に詰め込まれ、空に打ち上げられた。受信施設であるクリスタルタワーがダラガブからのエネルギーを受け止め切れず地殻が崩壊した“第四霊災”や、近年の“シタデル・ボズヤ蒸発事変”といったいくつもの災厄の原因となったが、第七霊災で衛星ダラガブが地表に落下した際についに復活。破壊の限りを尽くす。第七霊災後の消息は長らく不明だったものの、冒険者とアリゼーの調査の結果、バハムートのテンパードとなったガレマール帝国軍第VII軍団長・ネール(のエーテル体)によって地下深くで再生されつつあったと判明し……冒険者との激闘の末、消滅した。

●不死鳥フェニックス
 太古より再生の象徴として崇められてきた幻獣。第七霊災当時、バハムートの爆炎に焼かれ数多の命が消えゆくなかで、エオルゼアじゅうに再生を願う心とエーテルが満ちていた。バハムートの再封印を試み敗れたルイゾワはその状況を利用し、己の身にフェニックスの力だけを顕現。エオルゼアじゅうの祈りを受けて、辛くもバハムートの心核を貫くことに成功する。ルイゾワはその後自身が完全に蛮神化しないよう命を絶ち、すべてのエーテルを大地の再生に費やすつもりだったが……瀕死のバハムートはその瞬間を逃さずルイゾワを喰らった。その結果、ルイゾワは半神というべき存在のままバハムートのテンパードと化し、龍神の再生に利用されることとなる。大迷宮バハムートの調査時、冒険者とアルフィノ&アリゼーはテンパード化した祖父ルイゾワと再会。戦いののち、ルイゾワはその意思を双子の孫たちに託してその命を終えた。

●雲神ビスマルク
 雲海を泳ぐものとして伝承が残る巨大な白鯨。空に雲海が存在しなかった遙か昔、空を泳ぐ鯨の一族に白い体の子が生まれたが、黒鯨たちに虐げられ殺されてしまった。それを憐れんだ神々は白鯨を天で蘇らせ、蘇った白鯨は雲を吐き出して平和な雲海を作ったという。バヌバヌ族の神であり、彼らの祖先を浮島に導いてくれた存在とされている。第一世界にも“ビスマルク”という巨大な鯨の妖精がいたが、関連性が気になるところ。

●武神ラーヴァナ
 グナース族の呼び降ろした神。武勇を尊び、天敵のドラゴン族を斬り伏せる、彼らにとっての理想の姿。戦いとは生の営みにほかならないとの考えを持っており、“戦いに勝って縄張りを広げる”というグナース族の本能に根差した願いが具現化されたゆえか、年経たドラゴン族にとっても手強い存在となったようだ。

●騎神トールダン(ナイツ・オブ・ラウンド)
 イシュガルドの教皇トールダンが、建国の父である祖先を神として顕現させた蛮神。付き従う蒼天騎士団をテンパード化したうえで建国十二騎士を呼び降ろし、円卓の騎士――ナイツ・オブ・ラウンドという“群体としての蛮神”とでもいうべき存在となっている。

●機工城アレキサンダー
 時空を操る力を持つ蛮神。ゴブリン族の“万能のクイックシンクス”率いる科学者集団“青の手”が廃墟となったシャーレアンの防衛施設を依代に呼び降ろし、冒険者やガーロンド・アイアンワークスの面々が調査・討滅にあたった。なお、その起源はゴブリン族の神降ろしではなく、さらに3年ほど遡った時分の出来事……理想郷を求める青髪のアウラ族(ホトゴ族)・ダヤンとミーデたちが、エニグマ・コーデックスに記された移動都市計画実現のため、アレキサンダーの召喚を試みたことにある。その際、アレキサンダーは一瞬だけ顕現したものの、ミーデとダヤン以外のアウラ族は命を落とし、ダヤンもアレキサンダーのコアに飲み込まれて消失。以後、ミーデはダヤンとの“再会”を求めてエニグマ・コーデックスを集め、青の手をそそのかして蛮神を召喚させ、そしてのちに冒険者の調査に同行することになる。最後にはすべてを捨て、アレキサンダーのコアに宿ったダヤンの魂とともに世界の果てへと消えるために……。

 一方、科学の理想郷を追い求めるべく顕現したアレキサンダーは、幾兆もの未来を演算した末に、“理想の未来に、蛮神たる自身がいてはならない”という結論に達していた。しかし、青の手の行動如何では、アレキサンダー自身が星を破壊する事態すら招きかねない。ゆえに“彼”は小さな幼獣を遣わして時の円環を創り出し、自身を閉鎖時空へ封じることのできる瞬間を待つことになる。

 冒険者たちは万能のクイックシンクス率いる“青の手”との激戦の末、アレキサンダーの制御権を奪ってコアの停止に成功するが、クイックシンクスの最後の足掻きでエニグマ・コーデックスが破砕。アレキサンダーが暴走を始める。もはや制御のすべはないものと思われたが……ミーデが蛮神の中枢へ身を投じたことで、状況が変化。彼女とダヤン2人の力をもって、アレキサンダーは自身の制御を回復し、閉じた時空に己を封じたのだった。

●魔神セフィロト(三闘神)
 古代アラグ帝国時代、南方大陸メラシディアで召喚された神々……それが三闘神。魔大陸アジス・ラーにて長らく封じられていたが、その封印は弱まっていた。冒険者は、闇の氾濫に飲まれた第十三世界(異界ヴォイド)に生まれし光の戦士……幼すぎたために故郷を救えなかった少年・ウヌクアルハイや、クルル、ガレマール帝国第IV軍団長レグラ・ヴァン・ヒュドルスらとともにその撃破を目指した。樹状種族の神であるセフィロトは生命を司る存在とされ、環境エーテルを操ることで自身を含む生命体を自在に成長させることができた。

●女神ソフィア(三闘神)
 メラシディア大陸の人々が召喚した、叡智を司る神。姿も性質も異なる多民族が集う国をまとめるため、人々の心に調和と均衡を尊ぶ心を植え付けたという。これだけ聞くと良神であるように見えるが、彼女のもたらす“調和と均衡”の真なる姿は、バトル中に流れる曲の歌詞に語られている。

●鬼神ズルワーン
 メラシディア大陸の人馬種族が召喚した神。永劫を司り、すべての神の上に立つ存在と信じられていた。その性質上、ほかの神(異なる信仰の対象、悪しき神)に対しての“勝利”の象徴ともされていたのだとか。

●神龍
 ガレマール帝国への強い強い憎しみだけを糧に、元クリスタルブレイブ隊長・イルベルドが呼び降ろした神。召喚にはニーズヘッグの竜眼のエーテルが用いられており、“召喚の背景となる神話や伝承をいっさい持たない神”というべき特異な存在となっている。賢人パパリモがその命を賭した封印を打ち破り暴れるも、激戦の末オメガに敗北し、最後は憎きガレマール帝国の皇太子ゼノスに身体を乗っ取られ冒険者と戦うこととなった。

●豪神スサノオ
 東方においてコウジン族が呼び降ろした、海を統べるとされる神。霊験あらたかな三種の神器に宿る八百万の神の一柱で、神代の時代に人に害なす悪しき者どもを退治してきたという豪気な英雄としての側面も備えている。なお、三種の神器とはヤタノカガミ、ヤサカニノマガタマ、神剣アメノムラクモのこと。

●美神ラクシュミ
 豊穣と癒しの力を司る、アナンタ族の神。始源の時代において、生きるため他者を傷つける者ばかりであることを嘆いたラクシュミは泥を集めて自身の似姿を作り、そこに命を吹き込んでアナンタ族を生み出したのだとか。信徒には心優しく愛情深いとされるが……「争いに満ちた世を嘆き、自分の似姿に命を吹き込んで愛情を注いだ」という点を鑑みるのであれば彼女のそれはあくまで自己愛に類するものではなかろうか。

●夜神ツクヨミ
 神器“白銅鏡”を媒介してドマ属州代理総督・ヨツユがその身に降ろした蛮神。ツクヨミは夜を支配し月の運行を司るほか、人々の魂を死後の“夜見の国”へ導く存在としても知られる。伝承では男神として描かれることが多いようだ。

●創神エウレカ
 地脈からエーテルを吸い上げ、武具をはじめあらゆるものを創り出すことができるという古代アラグ帝国時代の蛮神。闘神オーディンの斬鉄剣もエウレカ製と見られ、エウレカ製の武具を使い続ければ意思を奪われやがて闘神と化す……創られた武具そのものが憑依型蛮神とも言える存在である。「仮に使用者が新たなマザークリスタルを望めば、星のエーテルが枯渇するまで世界を再創造しようとする」と評される大きな危険を秘めており、かつてバル島でクルルの祖父・ガラフをはじめとする4戦士とアシエン・エメロロアルスの間でこの蛮神にまつわる熾烈な戦いがあった。動けないキューブ状の本体と人の形をした“端末”とで成り、環境エーテルを吸収する役割を持つ端末の動きを封じれば正常な創造ができなくなる。

“星の理を紡ぐもの”の具現……ハイデリンとゾディアーク、第一世界における蛮神やテンパード化についての雑考

 『漆黒のヴィランズ』5.0のメインストーリーでは“星の意思たるゾディアークとハイデリンは、古代人が生み出した蛮神である”という衝撃の情報が明らかになったほか、パッチ5.1のメインストーリーでは、テンパード化を癒やす光明も見えてきました。これらに関してはまだまだこの先も新たな展開があるとは思いますが、本項では現状判明している事実を鑑みつつ、考察も交えた内容を最小限(?)でまとめてみようと思います。

ゾディアークはなぜ生み出された?

 世界が14に分かたれる前の時代――古代人は創造魔法を駆使して世界を管理・運営し、争いのない恒久的な平和を実現していました。しかし、詳細不明な“災厄”が発生したことをきっかけとして、古代人の潜在的な恐怖が具現化した醜悪な“獣”が出現。恐怖はさらなる恐怖を呼んで世界は獣であふれ、創造魔法は暴走し……すべてが破壊されていきました。もはや古代人といえど収拾をつける方法がない、未曽有の災い。古代人の代表たる十四人委員会の面々は逡巡し、星の理を再び紡ぐべく、星の管理者たる存在を生み出す決断をします。こうして、古代人の約半数が自らの命を投げ出すことで創造されたのが、“星の意思”。最古の蛮神ゾディアークだったのです。

 古代人はゾディアークの力で災厄を鎮めて崩壊した世界を再創造しましたが……そのあまりに強大な力の在り方をめぐって、古代人同士が対立。ゾディアークの力を封じるべきと唱える者たちによって対となる蛮神“ハイデリン”が創造され、両陣営は相争う形になります。激化と活性を司る“闇”属性のゾディアークと、鎮静・停滞を司る“光”属性のハイデリン……両者の戦いはハイデリンの勝利によって幕を閉じ、決着の一撃の影響でゾディアークとともに世界が十四に分割。世界のあらゆる命が、魂が分かたれることになりました。

 以上が、ゾディアークおよびハイデリンが生み出されるまでのざっくりとした経緯です。

ゾディアークを構築する概念とは

 ゾディアーク召喚に際して古代人が願ったのは、前述のとおり星の理の再構築。では、彼らはこれほど強大な力を持つものを、どのような概念によって創出したのでしょうか。創造魔法で世界を管理してきた古代人にとって、命≒エーテルの運行を紡ぐ星の意思とは、自分たちの“神”たり得るものとは、はたしてどのような概念だったのか? 無論、現時点で真の解答を得ることは叶いませんが……ここでは、“数多の古代人のイメージが具現したもの”という観点から、ゾディアークという存在について少しばかり雑考を巡らせてみようと思います。

 世界が滅びゆく災厄を目前に、全人類の半数が命を捧げることで生まれたというゾディアーク。創造魔法の性質上、古代人たちはゾディアーク顕現にあたり、極力雑念が入らないよう一心に臨んだことと思われます。彼らが生み出そうとしたのは、止まりかけた属性の力を活性化させ、エーテルを星じゅうに巡らせ管理する(と思われる)、大いなる存在。しかし、考えてみてほしいのですが……思考のロジックも道筋も様々な多数の人間が何の基礎もなく同一のものをイメージするというのは、じつはとても難しいことなはずです。単に“星の意思たる強大なもの”という情報だけでは、そもそもどのような形なのかさえ統一がとれないでしょうし、意見の異なる相手と議論することを好む古代人たちであればなおのこと多様な考え方が生まれたでしょう。加えて、当時は“まだ祈りを捧げられる神はなく、人が神であったころ”……信仰対象となる“神”などなかったはず。古代人たちはそのような状況下で、人類全体の共通概念をもとに、しかも早急に星の理を紡ぐものを創造する必要があったと思われますが……さて、彼らがイメージしたゾディアークのもととなる概念とは、いったい何だったのでしょうか?

 この問いは、”古代人たち全員が容易に・強固にイメージ可能な、世界を創造・管理することが叶う存在とは何か?”という内容にも等しいものかと思います。ただの空説かもしれませんが……その答えとは、“古代人自身”ではないでしょうか。前述のとおり、古代人たちはこれまで長きにわたり“創造魔法を駆使して世界を管理・運営して”きました。つまり彼らが容易に考え得る世界の管理者とは、彼らが心に抱く神の概念とは、すなわち“古代人”“自分たちの総合”という概念だったのでは? であるならばゾディアークとは、人類(古代人)の総体たる存在……“理の管理者”である古代人のアーキタイプ、人の顕在意識の集合体、あるいは集合的無意識までもが汲み取られ顕現した存在ではなかろうか……というのが、筆者の至った考えとなります。現実世界の著名な宗教では“人は神のかたちに似せて作られたもの”とも言われていますが、古代人たちは自らのかたち(存在、在り方の概念)に似せて最古の蛮神を創った……そう考えると、彼らの思考にはとても興味深い趣があるかもしれません。

 ちなみに、アナイダアカデミアにはゾディアークと思われる像が設置されていました。このことを考えると、あるいは古代人の間で“集合的無意識を具象化した概念”のようなものはすでに存在していて、あの無貌の神像はイメージを具現しやすくするためにあらかじめ創られていた元型的象徴という可能性もあるのかもしれませんね。

 さて、誰もがどこかで知っている、感じたことのある普遍的なもの……そんな、人の根源たる無意識領域をも統べる存在がいたとしたら、それはたしかに全人類の神たり得るものでしょう。もしそうであれば……同じく多数の人類によって生み出されたハイデリンも、概念としては同一のものということでしょうか? ハイデリンの代弁者が語った「かつてゾディアークとハイデリンはひとところに在った」という言葉も、“人類の集合的無意識という同一の存在であった”と考えれば納得できるかと思われます。しかしながら、先の仮説をもととするならば、蛮神の原型とは創造魔法で形作った召喚獣としての身体に魂を宿らせることで完成する(と思われる)もの。いくら強大な力を持つ存在を創造しても、そのままでは力の塊。その力を行使する意思が必要なはずです。ゾディアークに意思があるかは謎なれど、我々はすでにハイデリンに己の言葉を紡ぐ意思があることを知っています。その内にあるかもしれない意思……魂とは、はたして“何”なのでしょうね?

 いずれにせよ、ゾディアークは何らかの概念をもとにして全古代人の半数の命を糧に創られた存在ですが、召喚時の状況はおそらく最悪のものでした。災厄に見舞われ、恐怖が具現した獣が跋扈し、同胞の命が次々に失われていくそんな状況において、もし人類の集合的無意識を統べるようなものを生み出したのだとしたら……それはゾディアークという存在そのものに、最初から恐怖と混沌の要素が混ぜ込まれていることにほかならないのではないでしょうか。であれば、星を管理するために創り出した神の内に、すでにして忌むべき獣の芽が、恐怖の概念そのものが息づいている……? 世界の理を紡ぎ直したのち、なぜゾディアークが危険視されたのか、確たる情報はまだ語られていませんが、現段階ではそのような想像もできるように思います。

第一世界の魔法技術と創造魔法

 直近のパッチ5.1メインストーリーにおいて、停滞の光を過度に受けた結果魂が不活性化してしまうという罪喰い化の症状が、原初世界の蛮神にテンパード化されたときの症状と似ているという情報が明らかとなりました。つまりテンパード化とは、蛮神召喚によって魂が強制的に不活性化した状態……自分の魂よりも巨きな存在の影響を受けたがゆえに、その存在の属性に魂が強制同調し、正常なエーテルの循環が叶わなくなっている状態だということができるようです。

現代の人は、神降ろしをしたり、蛮神のエネルギーを身に受けることで、強制的な同調……テンパード状態になるだろう?
実のところ、私たちにも、同じことは起きている。
精神の干渉こそ、いくらかは防げるが、
あれほどの存在を顕現させれば、どうしても引っ張られるのさ。
結果、アシエンはゾディアークの有する力
「闇」とも呼ばれる、活性と激化の力に寄った存在に、
ならざるを得なかったわけだ。

 上記は、『漆黒のヴィランズ』5.0メインストーリー内におけるアシエン・エメトセルクの言葉。パッチ5.1メインストーリーでは、罪喰い化を治す方法とは、魂を活性化させることだと判明しました。そして、それが可能な存在として、冒険者たちは水と土、そして妖精のランプを用意し、アリゼーの使い魔・ポークシーを生み出します。このときの技法は、偶像を作り、完成物を明確にイメージしてエーテルを注ぐ……という、創造魔法や神降ろしに近しいもの。原初世界ではいわゆる“魔法”と神降ろしの手法はまったく異なるものという話でしたが、第一世界における“魔法”は、創造魔法と近しい印象を与えるもののようです。

 原初世界では度重なる霊災によって文明が幾度も崩壊・再発生してきたために失われた技術が、ここ第一世界では未だ息づいているということでしょうか。その一方でこの世界に“蛮神”という概念すら存在していないということは……やはり魂の濃度が薄い第一世界の人々では、蛮神の召喚自体ができないのか、それとも蛮神が生まれ得るのはそもそも原初世界だけなのか……。パッチ5.1の物語は、ほのぼのとした流れではありつつもいろいろと気になる点の多いお話だったように思います。


 このようなところで、【The Villains of FFXIV】第2回、蛮神についての記事は終了となります。人の想像力と願望が創り出す蛮神。我々は、これまでに出会った蛮神を、シンプルに“星の脅威”として討滅してきました。記事内で語ったように、その正体についても大まかなところが判明しつつあるように思います。しかし……そもそもこの世界になぜ“星の理を紡ぐ者”以外の神々が生まれなければならなかったのか、彼らの魂はどこからもたらされたものなのか、そういったところへの明解な答えは、まだ想像の内にしかない状況。折しもハイデリンとゾディアークが“創造物”であると明かされた昨今、近いうちに、あらためて蛮神の根源について考える日が来るのかもしれません。その日に向けて、今一度“蛮神”について想いをめぐらせてみるのも一興というものではないでしょうか。

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